原戸籍とは?相続で必要な場面や取得方法、似た書類との違いを解説

原戸籍とは戸籍改製よりも前に作られた戸籍です。現在の戸籍には原戸籍の情報がすべて転記されているわけではなく、改製に伴い削除されてしまった項目が存在します。そのため、被相続人が生まれたのが戸籍改製よりも前の場合は原戸籍の取得手続きが必要です。
今回は原戸籍が必要になる場面の具体例や取得方法、似た書類との違いについて解説します。
目次
原戸籍とは
原戸籍とは戸籍法の改正以前に作られた古い様式の戸籍です。「改製原戸籍」とも呼ばれます。正式な読み方は「げんこせき」ですが、現戸籍との混同を避けるため「はらこせき」「はらこ」と呼ばれることが多いです。
現在の戸籍と原戸籍の違い
戸籍法は明治4年(1871年)に制定された法律で、これまでに複数回の改正が行われています。最新の法改正より前に作られたものすべてが原戸籍に該当しますが、単に原戸籍と呼ぶ場合は以下のいずれかを指すのが一般的です。
- 昭和23年(1948年)改正前の「昭和改製原戸籍」
- 平成6年(1994年)改正前の「平成改製原戸籍」
昭和23年改正における主な変更点として以下の2つが挙げられます。
- 基本単位を家から夫婦・親子に変更
- 家制度の廃止により、「戸主」を「筆頭者」に変更
平成6年の戸籍法改正では、戸籍をコンピューターで記録・管理できるようになりました。また、記載方法が文章形式から項目化形式に、書式が縦書きから横書きに変更されています。
以上をまとめると、現在の戸籍と原戸籍の主な違いは記載事項・記載方法・書式の3点です。
原戸籍と混同されやすい書類の違い
原戸籍をはじめ戸籍関連の書類は複数存在します。必要な書類を正しく取り寄せるため、それぞれの違いを押さえることが大切です。
大前提として、戸籍関連の書類は「〇〇謄本(抄本)」と「〇〇事項証明書」の2つに大別できます。
前者の謄本や抄本は紙で作成されたもの、後者の「〇〇事項証明書」は電子化された戸籍情報を紙に印刷したものです。紙と電子のどちらで管理されているかが異なるだけで、記載された内容や性質は同じです。例えば、戸籍謄本が必要な場面で戸籍事項全部証明書を提出しても問題ありません。
以上を踏まえた上で、原戸籍と混同されやすい戸籍関連の書類の違いを紹介します。
名称 |
特徴 |
戸籍謄本、戸籍事項全部証明書 |
戸籍に含まれる全員の身分事項を記載 |
戸籍抄本、戸籍個人事項証明書 |
戸籍に含まれる人のうち、一部の人の身分事項のみ記載 |
戸籍一部事項証明 |
戸籍事項のうち、一部の事項のみを抜き出して記載 |
除籍謄本、除籍全部事項証明書 |
婚姻、転籍、死亡などの理由により全員が除籍になった戸籍について、全員の身分事項を記載 |
除籍抄本、除籍個人事項証明書 |
全員が除籍になった戸籍に含まれる人のうち、一部の人の身分事項のみ記載 |
除籍一部事項証明書 |
除籍事項のうち、一部の事項のみを抜き出して記載 |
改製原戸籍謄本 |
改製前の戸籍について、当該戸籍に含まれる全員の身分事項を記載 |
改製原戸籍抄本 |
改製前の戸籍について、当該戸籍に含まれる人のうち、一部の人の身分事項のみ記載 |
関連記事:【税理士監修】除籍謄本とは?戸籍謄本等との違いや取得方法、注意点などを解説
【参考】戸籍法改正の歴史
戸籍法は明治4年に制定されてから令和7年7月現在に至るまでに複数回の改正が行われています。戸籍法改正の歴史を大まかに紹介します。
改正の時期 |
主な変更内容 |
明治31年 |
民法で制定された家制度を反映させた「戸主トナリタル原因及ヒ年月日」欄が追加される |
大正4年 |
|
昭和23年 |
家制度の廃止に伴い、戸籍の基本単位や記載事項を変更 |
平成6年 |
戸籍のコンピューター化 |
平成19年 |
戸籍の公開制度の在り方の見直しにより、戸籍の届出や証明書の請求時に本人確認書類が必要に |
令和元年 |
戸籍の広域交付制度の導入により、本籍地以外でも戸籍証明書等の請求が可能に |
令和5年 |
記載事項に氏名のフリガナを追加 |
参考:法務省:戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)
相続で原戸籍が必要になるケースとは
結論として、被相続人が生まれたのが戸籍のコンピューター化よりも前の場合、相続手続きに際しては原戸籍が必要です。
前述のように、相続では被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍を用意する必要があります。出生が法改正よりも前、すなわち戸籍のコンピューター化よりも前であれば、最低でも出生時点の戸籍は必ず原戸籍に該当します。
被相続人が生まれたのが平成6年の法改正よりも前であれば、原戸籍も必要になると認識しておくべきでしょう。
関連記事:【税理士情報】相続手続きには戸籍謄本が必要。使う場面や入手方法、注意点などを解説
相続で戸籍が必要な場面の例
相続で原戸籍を含む戸籍が必要になる場面として以下の例が挙げられます。
- 法定相続人の調査
- 銀行口座や証券口座の解約、名義変更、払い戻し等
- 株式、自動車、不動産などの名義変更
- 相続放棄や限定承認など家庭裁判所への申立て
- 相続税申告
特に重要なのが1つめの「法定相続人の調査」です。収集した戸籍に抜け漏れがあると、婚外子や養子などの想定外の相続人に気づけない恐れがあります。
関連記事:【税理士監修】遺産相続の順位とは?法定相続人の意味や相続割合、具体的な例などを解説
原戸籍と現在の戸籍では記載内容が異なる可能性がある
改製後の戸籍に引き継がれているのは、改製時点に効力のあった事項のみです。したがって以下のような事項は転記されません。
- 改製前に除籍された人の身分事項
- 改製前の離婚
- 改製前の子供の認知や養子縁組
例えば改製前に子供が婚姻により除籍となった場合、コンピューター化された戸籍には子供の除籍情報が載りません。このように現在の戸籍だけでは把握できない情報が存在する可能性があるため、原戸籍の取得も必須です。
関連記事:【税理士監修】養子縁組制度の解説。普通養子・特別養子の違いや条件、相続税への影響は?
原戸籍の取得方法
続いて、原戸籍の取得について解説します。
原戸籍の取得申請ができる人とは
原戸籍の取得申請ができるのは、原則として以下のいずれかに該当する人のみです。
- 戸籍に記載されている人(本人)
- 本人の配偶者
- 本人の直系血族
本人以外が取得申請を行う場合は、本人との続柄を証明できる資料が必要です。
ただし、正当な理由があれば上記に該当しない人でも原戸籍の取得申請ができます。例として、本人の兄弟姉妹等が法定相続人の調査を行う場合や、税理士・弁護士等の業務のために必要な場合などが挙げられます。
[取得方法1]市区町村役場の窓口で取得
原戸籍の取得方法は2種類あります。
1つ目は市区町村役場の窓口で取得する方法です。窓口で取得する場合に必要な書類として以下の例が挙げられます。
- 交付申請書(役所の窓口や公式ホームページ等から取得可能)
- 取得者の本人確認書類
- 手数料750円
- 委任状(代理人が取得申請をする場合)
なお、以前は戸籍を取得できるのは本籍地の市区町村役場の窓口のみでした。しかし令和6年3月1日施行の改正戸籍法から広域交付制度が導入され、本籍地以外の市区町村役場でも戸籍の取得が可能になりました。現在は最寄りの役場でも被相続人の戸籍を取得できます。
ただし、広域交付に対応しているのはコンピューター化された戸籍等のみです。自治体によっては原戸籍の広域交付には対応していない可能性もあるため、詳しくは各自治体へご確認ください。また、広域交付での請求は事前にオンライン申請が必要な場合もあります。
[取得方法2]郵送による取り寄せ
取得方法の2つ目は郵送により取り寄せる方法です。
郵送による取り寄せでは、被相続人の本籍地に以下の書類を送付する必要があります。
- 交付申請書
- 取得者の本人確認書類の写し
- 手数料(750円)分の定額小為替
- 切手を貼付した返信用封筒
- 委任状(代理人が取得申請をする場合)
定額小為替は郵便局で購入可能です。
必要書類を送付してから原戸籍が届くまで1〜2週間程度かかります。相続手続きの期限に間に合わない事態を避けるため、郵送による申請手続きは早めに行いましょう。
原戸籍は相続で必要になる可能性が高い!早めに取得手続きを進めよう
原戸籍とは戸籍法改正よりも前に作成された古い様式の戸籍を意味します。
被相続人の出生が平成6年改正よりも前であれば、相続手続きに際して原戸籍が必要です。出生から死亡までの戸籍に抜け漏れがあると法定相続人の正しい調査・確定ができない可能性があるためご注意ください。
原戸籍の取得方法として、市区町村役場の窓口で取得する方法と郵送による取り寄せの2つが挙げられます。相続手続きの期限に間に合わない事態を防ぐため、取得申請手続きは早めに進めましょう。
原戸籍に限らず、相続手続きで必要な書類の取り寄せには時間がかかる場合や、手続きに手間がかかる場合が多いです。書類集めに際して少しでも疑問や懸念があれば、当事者のみですべて対応しようとせず、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
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