親が死ぬ前にした方がいいことは?親の状態別にできる準備を解説

親が高齢になったり入院や通院が増えたりすると、「死後に向けて何か準備をした方がいいのでは」と不安になりがちです。ただし、準備は親の状態によって「今ならできること」と「もうできないこと」に分かれます。この記事では親の状態別に、後悔やトラブルを避けるために最低限押さえておきたい準備を解説します。
目次
親がまだ元気で意思疎通ができるうちにした方がいいこと

親が元気で意思疎通ができるなら、本人の意思を前提にした判断や整理が可能です。この段階を逃すと後からは利用できない制度もあります。
エンディングノートなどで親の資産や気持ちを整理してもらう
エンディングノートは、手軽に始められる終活の1つです。親の希望や気持ちだけではなく、口座や不動産などの資産情報も整理できます。
重要なのは、元気なうちに書いてもらうことです。体調が悪くなってからでは、死を意識しているようで書くことを依頼しづらくなります。
ノートもなく預金や不動産の全体像も分からないまま相続が始まると、相続税がかかるかどうかの判断が遅れるリスクがあります。結果として申告漏れや修正が必要になるケースもあるため注意しましょう。
なお、エンディングノート自体に法的な効力はありません。あくまで相続手続きの出発点として役立つ資料の1つです。法的効力を求める場合は「遺言」の作成を検討しましょう。
エンディングノートに書ける具体的な内容や、無料テンプレートの入手方法は下記の記事で解説しています。
複数の金融機関に親の口座がある場合は集約を検討する
生活に必要な口座を残しつつ、使っていない口座を解約しておくと、親の死後の事務負担を軽減できます。
死亡すると、口座を所有する金融機関ごとに相続手続きをする必要があります。金融機関の数が多いほど、必要書類の取得や手続きの手間が増え、相続人の事務負担が大きくなってしまうのです。
例えば「付き合いで開設したもののほとんど使っていない口座」が存在する場合があります。また、ネット銀行は通帳がなく郵送物も少ないため、死後でも存在に気づかれにくい傾向があります。こういった口座は、生活に支障がなければ解約を検討しましょう。
なお、この段階で子や孫名義の口座に親のお金が入っている場合は、名義預金に該当する可能性があります。該当する場合は、親名義の口座にお金を戻すなど、早めに解消に向けて整理しましょう。死後の相続人トラブルや税務リスクを防ぎやすくなります。
遺言・家族信託・相続税対策が必要な状況か一緒に整理する
遺言書や家族信託、相続税対策といった法的・税務上の制度の利用は、すべての家庭で必要なわけではありません。そのため、利用を検討する前に、そもそも制度を利用する前提条件があるかを整理しましょう。
制度 | 検討した方がいいケースの例 |
遺言 |
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家族信託 |
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相続税対策 |
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いずれの制度も、親の判断能力が低下すると、利用や検討そのものが難しくなります。そのため、親が元気なうちに、どの制度が関係しそうかを整理しておく必要があります。
遺言書や家族信託については、下記の記事で詳しく解説しています。
親の判断能力が弱ってきた段階でした方がいいこと

親の物忘れが増えたり、複雑な判断が難しくなってきたりしている場合は、「把握」と「確認」に専念しましょう。子供側で状況を整理しつつ、事実関係を親に確認して進めます。
親がどの銀行・金融機関に口座を開設しているかを本人と確認する
親がどの銀行・金融機関に口座を持っているかを、本人と一緒に確認しておきましょう。余力があれば使っていない口座の集約や解約もできますが、優先したいのは「どこに口座があるか」の把握です。
口座の集約や解約には、原則として本人の意思確認が必要です。判断能力が低下し始めた段階に無理に進めると、かえって混乱を招く恐れがあります。
特に、ネット銀行や証券口座には注意が必要です。これらには通帳がなく、郵送物も少ないため、親が亡くなると存在に気づけない場合があります。
口座の把握をしないまま親と意思疎通ができなくなると、手続きの長期化や相続人の負担増に繋がります。通帳や郵便物、スマートフォンの履歴などを手がかりに、金融機関を一つずつ洗い出す必要が生じます。
参考:預金者ご本人の意思確認ができない場合における預金の引出しに関するご案内資料の作成について | 2020年 | 一般社団法人 全国銀行協会
重要書類の保管場所を親や家族と共有しておく
相続手続きでは、親が管理していた書類の提示を求められる場面があります。そのため、どの書類がどこに保管されているかを、親本人や他の家族と共有しておきましょう。
相続で必要になる主な書類は、次の通りです。
- 遺言書
- 通帳・キャッシュカード・印鑑
- エンディングノート
- 登記済証(権利証、登記識別情報)
- 保険証券
- 年金関係の書類
- 固定資産税など税金関連の書類
- 家賃収入やローンなどの契約書類
- 贈与契約書や贈与の記録
これらの保管場所が分からないと、金融機関や役所での相続手続きが進まない場合があります。書類の再発行や確認に時間を要し、相続人の精神的・事務的負担が増える恐れもあるでしょう。
特に注意したいのが、重要書類を貸金庫に保管している場合です。貸金庫は、原則として契約者本人が亡くなると、中身を確認するために相続人全員の同意や立ち会い、または遺言で指定された遺言執行者による手続きが必要になります。
そのため、相続で使う書類を貸金庫に入れたままにしていると、書類を取り出せず、相続手続きが止まってしまいます。上記の書類は貸金庫から出し、家族が把握できる場所に保管しておきましょう。
法定相続人を確認し誰が相続手続きの窓口になるかを決める
相続手続きをスムーズに進めるためには、まず法定相続人が誰になるのかの確認が必要です。親が亡くなった場合の法定相続人は、原則として親の配偶者と子です。ただし念のため、親に対し、自分が把握していない子供がいないか確認しておきましょう。
例えば、前の配偶者との子や認知した子、養子なども法定相続人となりますが、家族が把握していない場合があります。該当する子がいる場合は、相続時に連絡が取れるよう、連絡先を親に聞いておきましょう。
その上で、相続手続きを誰が中心となって進めるのか、法定相続人同士で窓口を決めておくのがおすすめです。窓口を一本化しておくと、金融機関や役所とのやり取りがスムーズになります。
窓口を決めないでいると、各相続人が個別に問い合わせを行ったり手続きが重複したりして、情報が錯綜する場合があります。結果として、相続人間の不満やトラブルに繋がる恐れもあります。
介護費や生活費などの立替状況を整理し親の認識を確認しておく
親の介護費や医療費、生活費などについて相続人の誰かが立て替えている場合は、立替状況を整理しておきましょう。立替金の扱いによっては、相続財産の金額や相続税の計算に影響する可能性があります。
立替金は、相続開始後に「親に貸したお金(借金)か」「相続人が好意で出したお金か」といった性質の判断が必要です。この判断が、相続財産の計算や、相続人間で精算できるかどうかに影響します。
立替金が借金であれば、親の債務として相続財産から差し引かれ、立て替えた相続人が精算を求めます。一方、好意の援助だと返済義務がないため、相続財産から差し引けない場合があります。つまり親がどのように理解していたかで、相続時の扱いが変わります。
そのため、誰が・いつから・どのような費用を立替えているのか整理し、親に認識を確認してメモを残しておきましょう。
整理しないまま相続が始まると、立替金の扱いを巡って相続人間のトラブルに繋がる恐れがあります。また、相続税申告でも生前の資金の動きについて説明に苦労する場合があります
親との意思疎通が難しい場合に死後に備えてしておくこと
親との意思疎通が難しくなると、本人の考えを前提にした判断や整理は行えません。そのためこの段階では、死後の手続きを見据えた準備をしておきましょう。
相続に関する手続きの多くは、死亡日を起算日として期限が定められています。死亡前に準備を進めておくと、相続開始後に余裕をもって対応しやすくなります。
書類やスマホ履歴などをもとに財産や口座の所在を洗い出しておく
通帳や郵便物、スマートフォンの履歴といった客観的な資料を手がかりに、財産や口座の全体像を確認しておきましょう。相続で、把握している財産を前提に、金融機関での手続きや不動産の名義変更、相続税の申告などを進められるようにするためです。
確認対象となるのは、主に下記の通りです。
- 現金や預貯金
- 株式や投資信託
- 生命保険・損害保険
- 不動産
- 車・貴金属・骨董品などの動産
- 貸しているお金
- ローンなどの負債
事前に財産を整理しておくと、相続開始後の初動が早まり、手続き漏れや相続人の負担を抑えやすくなります。
親のお金を勝手に動かさないよう家族内で共有しておく
親との意思疎通が難しい場合は「親名義の口座のお金を勝手に動かさない」と家族内で共有しておきましょう。相続開始前に勝手に親のお金を動かすと、他の相続人から使い込みを疑われるなどのトラブルに繋がりやすくなります。
医療費や介護費などの支払いが必要な場面であっても、親の口座から出すのは避け、当面は相続人の誰かが立替で対応しましょう。その際、誰が・何のために・いくら支払ったのかを整理し、領収書や請求書を保管しておくと、後から精算や説明がしやすくなります。
相続手続きの相談先を決めておく
親の死後は、不動産の名義変更や相続税申告など、専門的な判断を一定の期間内に行う必要があります。そのため、どの専門家に相談するかを事前に決めておくのがおすすめです。焦った判断による不要なトラブルを防ぎやすくなります。
専門家を選ぶにも、料金比較や口コミリサーチなどの時間が必要です。相続が始まってから相談先を探すと時間的な余裕がなく、十分な比較や検討ができない場合があります。
親が死ぬ前にやらない方がいいこと

親の死が近づくと、「今のうちに動いた方がいいのでは」と焦って判断してしまうケースがあります。しかし、善意であってもかえってトラブルの原因になる行動もあるため注意しましょう。
親の預金を生前に引き出すのは避ける
相続が開始すると亡くなった人の口座は凍結されるため、生前に親の預金を引き出しておこうと考える人もいます。しかし、生前であっても多額の引き出しは後からトラブルになりやすいので避けましょう。
使い道を十分に説明できないと、他の相続人から使い込みを疑われ、相続人間で不信感を招く原因になります。やむを得ず引き出した場合は、領収書や支出の経緯を整理して残しておきましょう。
一人で判断して手続きを進めて家族に共有しないのは避ける
独断で進めた判断は、たとえ結果が良くても他の相続人に不満を残す原因となり得ます。相続に関わる判断は、法定相続人全員に対し、何を検討し、なぜその判断に至ったのかを常に共有しましょう。
手続きの進め方をLINEやメールなど記録が残る形で共有しておくと、後からの誤解を防ぎやすくなります。判断そのものよりも、判断に至るまでの経緯を共有するよう意識しましょう。
親が亡くなる前にこそ税理士にご相談ください
相続の準備は、親が元気なうちほど選択肢が広がります。親の判断能力が十分にあるうちであれば、遺言書の作成や家族信託、任意後見契約などの踏み込んだ生前対策が行えます。
生前対策についてのお困りごとやご相談は、ぜひ「やさしい相続相談センター」までお気軽にお問い合わせください。「何から考えればいいのか分からない」「今から動くべきか迷っている」といった段階でも大丈夫です。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。




