贈与と譲渡の違いは?2つの大きな違いと注意点、よくある質問を紹介

贈与と譲渡はいずれも財産を譲り渡す行為で、取引として大きな違いはないと感じるかもしれません。しかし、財産の譲り渡しが贈与と譲渡のどちらに該当するかによって課される税金が異なるため注意が必要です。
今回は贈与と譲渡の違いについて解説します。贈与と譲渡の違いに関するよくある質問の紹介もしていますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
前提|本来「譲渡」は財産を他人に移転させる行為全般を指す

本来「譲渡」という言葉は有償無償に関係なく、所有資産を移転させる行為全般を指す言葉です。売買・交換-贈与・相続など、財産を移転させる行為はいずれも譲渡に含まれます。
しかし実務においては、贈与と譲渡を異なる取引として扱う場面が多くみられます。特に、不動産や株などの有価証券の移転に関する文脈では、有償による取引を譲渡と表現するのが一般的です。財産の移転にかかる税金について考える際も「その取引は贈与と譲渡のどちらに該当するか」を基準とすることが多いです。
本記事でも、贈与と譲渡は異なる取引を指す言葉として、それぞれの意味や違いを解説します。
参考:No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法|国税庁
[贈与と譲渡の違い1]対価の有無
贈与と譲渡の違いの1つが対価の有無です。財産を譲り渡す際に対価を受け取るか否かによって、贈与と譲渡のどちらに該当するかが変わります。
贈与|対価は発生しない
贈与は財産を無償で譲り渡すことです。対価が発生しない、無償による財産の譲り渡しが贈与に該当します。
譲渡|対価の支払いがある
譲渡とは財産を対価を受けて譲り渡す行為です。財産をもらう人から財産を渡す人に対して対価の支払いがある場合は譲渡に該当します。
[贈与と譲渡の違い2]発生する税金
結論として、贈与で発生するのは贈与税、譲渡で発生するのは譲渡所得税です。
贈与税は個人から贈与によって財産を取得した人に課される税金です。「個人から」という記載の通り、個人から個人の贈与のみが贈与税の課税対象になります。
譲渡所得税とは,、財産の譲渡によって得た譲渡所得に対して課される税金(所得税・住民税・復興特別所得税)の総称です。財産を譲渡した人に課されます。
贈与税と譲渡所得税の主な違いを3つ紹介します。
申告・納付義務者
贈与税の申告および納付義務を負うのは贈与を受けた人です。1年間に受けた贈与財産の額を基に贈与税を計算し、申告・納税を行います。
譲渡所得税の申告・納付義務者は財産を譲渡した人、すなわち譲渡による対価を得た人です。
贈与税は財産を受け取った側、譲渡所得税は財産を渡した側と、どちらが申告・納税義務を負うかが異なる点にご注意ください。
計算方法
贈与税と譲渡所得税では税額の計算方法が全く異なります。それぞれ詳しく解説します。
贈与税
前提として、贈与税の課税方式には、暦年課税制度と相続時精算課税制度の2種類が存在します。
暦年課税とは、その年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産の額から基礎控除110万円を差し引いた額に税率を乗じて計算する方法です。原則的な課税方式であり、特に手続きをしなければ自動的に暦年課税が適用されます。
暦年課税の税率は10%〜55%です。18歳以上の人が直系尊属から贈与を受けた場合は特例税率、それ以外の場合は一般税率が適用されます。一般税率より特例税率の方が低く設定されています。
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母などから18歳以上の子または孫などに対する贈与で選択できる制度です。累計2,500万円の特別控除枠の範囲内であれば贈与時は課税されず、贈与者が亡くなった時に相続税の課税対象として扱われます。
累計2,500万円の特別控除枠を超える部分に対しては一律20%の贈与税が課されます。
譲渡所得税
続いて譲渡所得税です。譲渡所得税の計算方法は、譲渡する財産の種類によって以下のように異なります。
財産の種類 | 課税所得の計算方法 | 課税方式・税率 |
土地や建物などの不動産 | 収入金額 – ( 取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額 | 申告分離課税 (ほかの所得とは合算せず分離して税額を計算) 【所有期間5年超の場合】
【所有期間5年以下の場合】
ほかの所得とは合算せず分離して税額を計算する(申告分離課税) |
株式等 | 総収入金額‐必要経費(取得費+委託手数料等) なお、上場株式等に係る譲渡所得と一般株式等に係る譲渡所得等は分けて計算する。相殺は不可 | 申告分離課税
|
上記以外 |
| 総合課税
|
申告・納付の受付期間
贈与税と譲渡所得税の申告・納付の受付期間は以下のように多少のズレがあります。
- 贈与税:翌年2月1日から3月15日まで
- 譲渡所得税:翌年2月16日から3月15日まで
贈与税の方が申告・納付が少し早く開始されますが、どちらも期日は同じです。期日を過ぎてしまうとペナルティの対象になる恐れがあるためご注意ください。
【注意】譲渡のつもりでも贈与税の対象になるケースがある

以下2つの取引は名前に譲渡という言葉が含まれているものの、贈与税の課税対象になります。
- 無償譲渡
- 低額譲渡
贈与と譲渡のどちらに該当するかを判断する際は、単純な呼称ではなく、取引の性質・実態を考えることが大切です。
以下では無償譲渡と低額譲渡のそれぞれについて詳しく解説します。
無償譲渡とは
無償譲渡は名前の通り財産を無償で譲り渡すことです。譲渡と呼んではいるものの実態は贈与であり、通常の贈与と同じように税額を計算します。
無償譲渡と贈与は呼び方が異なるだけで、法律上の違いはありません。個人から個人への財産の譲り渡しで対価を伴わない場合は、いずれも贈与税の課税対象になります。
低額譲渡とは
低額譲渡とは財産を本来の価値(時価)よりも大幅に低い価額で譲り渡すことです。税法上は「みなし譲渡」や「みなし贈与」と呼ばれます。
譲渡価格が時価の2分の1未満の場合は低額譲渡と判断され、実際に支払った金額と時価との差額が贈与財産として扱われます。低額譲渡とみなされた場合、時価と実際に支払った金額との差額が贈与税の課税対象になる仕組みです。
参考:No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき|国税庁
贈与と譲渡の判断基準は対価の有無!発生する税金が異なるため正確な判断が必要
贈与と譲渡の判断基準となるのは対価の有無です。贈与は無償による財産の譲り渡しであり、対価は発生しません。一方、譲渡は有償による財産の譲り渡しを指す言葉です。対価を受けて財産を譲り渡す行為が譲渡に該当します。
贈与の場合は贈与を受けた人に贈与税が、譲渡の場合は財産を譲り渡した人、すなわち対価を受け取った人に譲渡所得税が課されます。贈与税と譲渡所得税は全く異なる税金のため、自分が申告・納付するのがどちらであるか正しい判断が必要です。
取引の内容によっては、自分が行なった取引が税法上どの行為に該当するか、どの税金の対象であるかの判断が難しい可能性があります。少しでも疑問や不安があれば、専門家である税理士に相談するのが安心です。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
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