FXポジションの相続|未決済ポジションの評価方法と手続き・相続税を解説

FXポジションの相続|未決済ポジションの評価方法と手続き・相続税を解説

FX(外国為替証拠金取引)を行っていた方が亡くなった場合、故人が保有していた未決済のポジションは、他の金融資産と同様に相続財産として扱われます。

しかし、株式などとは異なり、FXのポジションをそのまま相続人が引き継いで取引を続けることは原則できません。そのため、死亡時点での評価や清算後の残高の扱い、所得税と相続税の関係を整理しておくのが大切です。

本記事では、FXポジションの相続に関する基本的な流れ、相続税を計算する際の正しい財産の評価方法を解説します。また、手続きを進めるうえで知っておきたい注意点についても紹介しますので、参考にしてください。

FXポジション(未決済ポジション)は相続できる?

FXの未決済ポジションは、原則として株式のように引き継いで取引を続けられません。FXは名義人本人と業者との間の契約として行う取引であり、約款でその立場を相続人に移すことを認めていないためです。

名義人の死亡が分かった時点で、FX業者によって口座は停止(凍結)され、保有中の未決済ポジションはすべて強制決済されます。そのうえで、清算後の口座残高だけが相続の対象になります。

相続手続きで一般的に必要な書類

  • 死亡の記載がある戸籍謄本
  • 相続関係を示す書類(法定相続情報一覧図など)
  • 遺産分割協議書 など

相続人は必要な書類を準備したうえで、FX業者からの案内に従って手続きを進めることになります。

被相続人の死亡後、FX口座はどのように処理される?3つの手順

FXの画面 口座

被相続人が亡くなった後のFX口座は、相続人が自由に運用を続けられるわけではなく、各社の約款に沿って事務的に処理されます。

[ステップ1]相続人がFX業者へ死亡の事実を連絡する

相続が開始されたら、代表になる相続人は早めにFX業者へ名義人の死亡を連絡しましょう。連絡が遅れるほど、その間の為替変動で残高が変わる恐れがあります。

どの業者を利用していたか分からない場合は、故人のPCやメールの約定通知、郵便物、通帳の入出金履歴(「証拠金」「スワップ」などの記載)を確認しましょう。

[ステップ2]FX業者が口座を凍結しポジションを強制決済する

死亡の連絡を受けたFX業者は、口座を凍結し、新規取引や入出金を停止します。その後、相続関係書類を受理した段階で、未決済ポジションを一括で強制決済します。決済のタイミングやレートは業者のシステム運用に左右され、相続人が任意に選ぶことはできません。

[ステップ3]決済後の口座残高が相続財産として確定する

すべてのポジションを決済し、預託証拠金やスワップポイント(未収・未払)などを加減した金額が最終的な口座残高です。

  • 口座残高がプラスの場合:「相続財産」として加算
  • 口座残高がマイナスの場合:「相続債務」として控除

損失が証拠金を上回り、不足金(追証)が発生した場合には、その不足金も相続人が引き継ぐ債務に含まれます。

【重要】FXポジションの相続税評価額の計算方法

FXポジションの相続税評価では、実際に強制決済された金額ではなく、「被相続人が死亡した日」の為替レートを用いて計算する必要があります。

評価の基準レート(TTBとTTS)

外貨建て資産・債務の評価には、原則として以下のレートを用います。

  • TTB(対顧客電信買相場):外貨を円に換える時のレート(資産の評価に使用)
  • TTS(対顧客電信売相場):円を外貨に換える時のレート(債務の評価に使用)

※死亡日が休業日の場合は、死亡日前の最も近い営業日のレートを用います。

買いポジション(ロング)の評価額

買いポジションは資産としての性質を持つため、死亡日のTTBを用います。

評価損益 =(死亡日のTTB - 取得レート)× 通貨数量

算出された金額がプラスなら評価益、マイナスなら評価損(債務控除対象)となります。また、死亡日までの未収スワップポイントもあわせて評価に反映します。

売りポジション(ショート)の評価額

将来外貨を買い戻す(円を売る)契約であるため、死亡日のTTSを用います。

評価損益 =(取得レート - 死亡日のTTS)× 通貨数量

相続税の対象となる総額の考え方

最終的に申告する金額は、以下の合計となります。

相続税の対象額 = 証拠金残高 + 未決済ポジションの評価損益 + 未収スワップポイント

通常、FX業者が発行する「残高証明書(死亡日時点)」にこれらの内訳が記載されますので、必ず取得して保管しておきましょう。

相続トラブルを避けるために生前にできる対策

FX・株価を見る男性

家族にFX口座の存在を共有しておく

家族が口座の存在に気付かないと、財産漏れになるだけでなく、証拠金維持率の低下によるロスカットで資産が大幅に目減りするリスクがあります。

会社名、口座番号、問い合わせ先をエンディングノートなどに整理しておきましょう。

ポジションを定期的に整理・縮小する

いざという時、家族はすぐに取引を操作できません。レバレッジを高く設定していると、数日の為替変動で証拠金が底をつき、家族に借金を残す可能性もあります。体調や年齢に合わせ、低レバレッジでの運用に切り替えるなど、リスクを抑えた形に調整しておくのが優しさです。

まとめ

FXポジションの相続は、ポジションそのものではなく「強制決済後の現金」を引き継ぐことになります。しかし、相続税の評価は「死亡日時点のレート」で行うという点に注意が必要です。

強制決済までのタイムラグで生じた損益の扱いなど、税務判断が複雑になるケースも少なくありません。手続きや申告に不安がある場合は、自己判断せず、FXや相続に詳しい税理士へ早めに相談することをおすすめします。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。