相続税は分割納付できる?要件や利子税、手続きを解説

相続税は分割納付できる?要件や利子税、手続きを解説

相続税は、現金一括で納税するのが基本です。しかし、高額になりやすいからこそ、一度に用意できないケースも少なくありません。

そのような場合に、一定の要件を満たすことで相続税の分割払いが認められる「延納」という制度があります。この制度を利用すれば、納税者の負担を軽減し、計画的に納税を進めることが可能です。

そこで本記事では、相続税の延納制度の概要から、利用するための要件などを解説します。利子税の計算や具体的な手続きの流れ、注意点などに関しても、詳しく確認していきましょう。

相続税の支払いを分割できる延納制度とは

相続税の延納制度とは、相続税を一括で納付することが難しい場合に、税務署長の許可を得て年賦で分納できる制度です。具体的には、以下のような理由で納税資金の確保が困難な納税者を救済する目的で設けられています。

  • 相続財産が不動産メインで現金が少ない
  • 相続財産の売却が納期限までに間に合わない
  • 相続財産に預貯金がなく自己資金もない
  • 億単位の遺産があり相続税が非常に高額

延納を利用するためには、法律で定められた4つの要件をすべて満たした上で、期限内に申請手続きを行う必要があります。許可されると、最長で20年間の分割納付が可能となります。ただし、延納期間中は利子にあたる「利子税」の支払いが発生するため、事前に利子も含めた納税額がいくらになるのかご確認ください。

相続税の分割納付を利用するための4つの必須要件

条件

相続税の分割納付(延納)を申請するためには、国税庁が定める4つの要件をすべて満たす必要があります。これは納税者が本当に一括納付が困難な状況にあるか、かつ将来にわたって確実に納税を完了できるかを見極めるためのものです。

1つでも要件を満たせない場合、原則として延納は認められません。申請を検討する際は、まず自身が条件に該当するかどうかを正確に確認してください。

要件1:納税額が10万円を超えている

延納制度を利用するための要件としては、まず第1に納付すべき相続税額が10万円を超えていることです。

納税額が10万円以下の場合は対象になりません。この10万円という基準は、相続人一人ひとりの納税額に対して適用されます。

要件2:期限内に金銭で一括納付することが難しい

分割納付を申請するには、納付期限までに金銭で一括納付することが困難な理由があることを証明しなければなりません。

具体的には、納付すべき税額から以下のような財産を差し引いてもなお金額的に不足しているかどうかを示すことが重要です。

  • 相続した現金や預貯金
  • 換金が容易な財産
  • 申請者の固有の現預金

この不足額は「納付困難額」と呼ばれ、その範囲内でのみ延納が認められます。また、自身の資産状況を正確に把握し、なぜ一括での支払いが難しいのかを客観的に示す書類の提出が求められます。

この証明をする書類としては、預貯金通帳や相続税申告書、不動産の媒介契約書の写しなどが該当します。

要件3:延納税額および利子税額に見合う担保を提供する

分割納付を申請する場合、原則として「担保」を提供しなければなりません。これには延納する税額(延納税額)と、それにかかる利子税の合計額に見合う価値が必要です。

ただし、なかには担保として認められない財産も存在します。担保となるもの、ならないものの一例は以下の通りです。

認められる財産

認められない財産

  • 国債及び地方債
  • 上場されている社債その他の有価証券
  • 土地、建物・立木で保険に附したものなど
  • 税務署長が確実と認める保証人の保証
  • ゴルフ会員権、書画骨董品
  • 非上場の株式(一定のものを除く)
  • すぐに差し押さえができない海外資産
  • 評価が難しい、あるいは換金性が低い財産

重要なのは、担保の形や種類よりも「確実な価値を持ち、換価可能なもの」です。ただし、延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下の場合は担保の提供は不要です。

参考:国税庁「No.4211 相続税の延納」

要件4:納付期限までに延納申請書と担保提供関係書類を提出する

相続税の分割納付を希望する場合、定められた申請手続きを期限内に完了させなければなりません。具体的には、所轄の税務署へ「延納申請書」および「担保提供関係書類」の提出が必要です。

これは相続税の納付期限通常は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内)までと決まっています。

1日でも過ぎてしまうと原則として延納は認められないため、納付期限には充分注意しましょう。

相続税の分割納付が可能な期間と金額の上限

相続税の分割納付(延納)が認められる期間や金額には、一定の上限が設けられています。

不動産の割合によって最長の分割期間が変わる

分割納付が許可される期間は、相続した財産の総額に占める不動産等の割合によって決まり、最長で20年です。

不動産等の割合

延納期間

75%以上

20年以内

50%以上75%未満

15年以内

50%未満

5年以内

参考:国税庁「No.4211 相続税の延納」

不動産等には土地や建物、立木などのほか非上場株式も含まれます。

また、なかには特に不動産の割合が低く、現金や預貯金などといったすぐに納税に充てられる財産の割合が高い場合もあるでしょう。不動産割合が50%未満になるケースでは、延納期間は最長で5年以内となります。

不動産の相続に関しては高い専門性が求められる部分もあるため、不明瞭なことがあれば税理士や不動産鑑定士など専門家にご相談ください。

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分割納付が認められる金額(延納許可限度額)の計算

相続税の分割納付が認められる金額には上限があり、これを「延納許可限度額」と言います。

計算式については以下のとおりです。

延納許可限度額=(納付すべき相続税額)-(一時に納付できる金額)

上記のうち「一時に納付できる金額」とは、現状支払える税額を指します。これは相続によって取得した現金預貯金や容易に換金できる財産の価額に、納税者が保有する資産を加えたものです。

例えば相続税額が2,000万円だったとします。しかし、相続した預貯金や自身の貯金を合わせても1,200万円までしか用意できない場合、延納許可限度額は800万円となり、この金額が分納納付できます。

参考:延納の許可限度額の計算|国税庁

延納期間中に発生する利子税の計算方法

お金の計算をするイメージ

利子税は、納税を待ってもらうことに対する一種の利息であり、延納する元本の税額に加えて支払う必要があります。

税率は延納する財産の種類(不動産の割合など)や、その時々の公定歩合などの金利動向によって変動します。また、長期間にわたるほど支払う利子税の総額は大きくなるのが特徴です。最終的に支払う税金の総額は、当初の納税額よりも増えると理解しておきましょう。

延納期間中に納める利子税は、未納の相続税額(元本)に対して、定められた利率と期間を乗じて計算されます。

具体的な計算式は以下の通りです。

利子税額=延納している元本税額×年利率×(前回の納付期限の翌日から今回の納付期限までの日数÷365日)

参考:国税庁「No.4211 相続税の延納」

利子税は分納税額と併せて毎年納付することになるため、元本が減るにつれて利子税の額も減少していきます。

また、条件ごとの延納期間や利子税の割合については以下の記事でも詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

相続税の分割納付を申請する際の手続きと流れ

相続税の分割納付(延納)を申請する場合、定められた手順に沿って手続きを進める必要があります。

以下より必要書類や延納審査の手順、申請における注意点について解説します。

延納申請に必要な主な書類一覧

相続税の分割納付(延納)を申請する際には、以下の書類を所轄の税務署に提出する必要があります。書類に不備があると審査が遅れる原因となるため、漏れなく準備することが大切です。

書類名

概要

延納申請書

延納を希望する税額や期間などを記載する基本的な書類

金銭納付を困難とする
事由を説明する書類

相続財産の内訳や納税者本人の資産・負債状況などを記載し、一括納付が難しい理由を具体的に示すもの

担保提供関係書類

担保として提供する財産の種類に応じた、登記事項証明書(不動産の場合)等の証明書

その他

相続税申告書の写しなど、税務署から追加で求められる書類

これらの書類は以下、国税庁のウェブサイトからダウンロードできるほか、税務署の窓口でも入手可能です。

参考:国税庁「延納・物納申請等」

延納審査後、許可されれば分納可能に

書類の提出期限は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内」です。

提出後、税務署では提出された書類に基づいて審査が行われます。この審査には通常2~3ヵ月かかるため、相続税の申告期限から逆算して提出をすることが重要です。

審査の結果、分割納付が認められる場合は延納許可通知書」が、認められない場合は「延納不許可通知書」が送付されます。延納が許可された後は、通知された分納計画に従って、毎年、元本と利子税を納付していくことになるでしょう。

分割納付を申請する前に知っておきたい注意点

注意点、気を付けるポイント

相続税の分割納付(延納)を検討する際には、いくつかの注意点を事前に理解しておく必要があります。

分割納付(延納)は不許可になることもある

まず、延納許可の審査には時間がかかり、申請したからといって必ず認められるわけではありません。不許可になった場合に備え、他の調達方法も並行して考えておきましょう。

また、延納期間中は担保として提供した不動産を自由に売却したり、担保価値を損なうような行為は決して行ってはいけません。

更に毎年の分納を一度でも滞納しないよう注意が必要です。滞納すると延納の許可が取り消され、残りの税額を一括で納付するよう求められるリスクに繋がります。

延納が認められなかった場合の対処法(物納)

延納申請が不許可になった場合には、「物納」という最終手段を検討するのが一般的です。物納とは、金銭の代わりに相続した財産そのもの不動産や株式などで相続税を納める方法です。

ただし、物納の要件は延納よりもさらに厳格となっています。「延納しても金銭で納付することが困難」である場合にのみ認められる最終的な救済措置です。

また、物納できる財産にも優先順位があり、第一順位は国債、地方債、不動産、船舶などです。ただし、管理や処分が難しい財産(境界が不明確な土地など)は物納不適格財産とされ、受け付けてもらえないこともあります。

まとめ|専門家にも相談の上、延納を選択すべきか検討を

相続税の分割納付(延納)制度は、相続税を一度に支払うのが難しい場合に、分割で納められるようにするための仕組みです。この制度を利用すれば、相続した大切な財産を急いで手放すことなく、無理のないペースで納税を進めることができます。

ただし、延納を利用するにはいくつかの条件をすべて満たした上で、期限内に必要書類をきちんと提出しなければなりません。また、延納期間中は利子税がかかったり、担保を用意しなければならなかったりするケースもあります。

更に、延納の申請や要件の判断、利子税の計算は少々複雑です。ご自身の状況で申請が通る可能性はあるのかを見極めるためにも、相続税に詳しい税理士へ相談することをおすすめします。専門家に相談することで、手続きをスムーズに進められるのはもちろん、より良い方法を提案してもらえるでしょう。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。