建物のみの生前贈与によるトラブルとは?注意点と後悔しないためのポイントを紹介!

建物のみの生前贈与によるトラブルとは?注意点と後悔しないためのポイントを紹介!

「自分が生きているうちに子供に家を譲りたい」と考えている方は多いのではないでしょうか。相続税の対策として生前贈与を行うのは効果的です。しかし、生前贈与を行うことで相続税対策をしたとしても、贈与税が発生する点には注意しなければいけません。

特に建物のみの生前贈与を考えている方は注意が必要です。建物のみの生前贈与は後から思いもよらない税金の負担や他の相続人とのトラブルに発展する可能性があります。

本記事では、建物のみの生前贈与を行う際に押さえておくべき注意点や、よくあるトラブルについて回答します。建物のみの生前贈与を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

建物のみの生前贈与で知っておくべき注意点

注意

相続税を抑えるために、ひとまず建物だけでも生前贈与をしておこうと考える親御さんも多いかと思います。しかし、実際は税負担の増大や家族間のトラブルを招きかねないリスクもあります。

ここでは、建物のみを生前贈与する際に必ず押さえておきたい3つの重要な注意点を解説します。

注意点1:相続税よりも贈与税の方が高くなる可能性がある

「生前に建物を贈与すれば、相続税を避けられて得になるのでは?」と考える方は少なくないでしょう。しかし、税制度の仕組みを踏まえると、必ずしも得になるとは限りません。むしろ、生前に贈与することで想定以上の税負担が発生するケースもあります。

相続税と贈与税は別の制度であり、贈与税は相続税よりも税率が高めに設定されていることが特徴です。また、贈与税には相続税のような多額の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)が存在せず、年間110万円を超える贈与に対しては基本的に課税対象となります。

そのため、相続であれば非課税となる状況でも、贈与に切り替えたことで多額の税金を支払う事態に陥る可能性は十分に考えられます。例えば、他に財産がなく自宅の建物だけを相続するようなケースでは、相続税がそもそも発生しないことも珍しくありません。

また、亡くなる前の一定期間内に行われた贈与については、「生前贈与加算」という仕組みがあります。その期間内に行った贈与については、相続財産に持ち戻して相続税を計算しなければなりません 。そのため、節税になると思って贈与したにも関わらず、実際には税負担が増えてしまったという結果になる可能性もあります。生前贈与加算に該当する場合は、生前贈与だとしても相続税が発生するという点を覚えておきましょう。

参考:贈与税がかかる場合|国税庁

参考:相続税の計算|国税庁

注意点2:不動産取得税がかかる

建物を贈与する場合に、もうひとつ忘れてはいけないのが不動産取得税です。建物や土地を贈与・購入などで取得した際に発生する地方税で、相続の場合には課税されませんが、生前贈与の場合は課税対象となります。

例えば、固定資産税評価額が1,000万円の建物を贈与した場合、約30万円前後の不動産取得税がかかる可能性があります。不動産取得税の納税通知書は、贈与の手続き(登記)が完了してから数ヵ月後に自治体から届くため、この時初めて不動産取得税の金額の多さに気づくという人も多いです。

贈与税だけでなく、不動産取得税のような見落としやすい税金も含めてトータルコストを事前に確認することが重要です。

参考:不動産取得税|総務省

注意点3:他の相続人とのトラブルの火種になりやすい

税金の負担だけでなく、家族内のトラブルに発展するリスクも問題です。親が元気なうちは特に問題がなくても、相続発生後に「兄だけ家をもらって不公平だ」と不満が噴出することはよくあります。

法律上、相続人の一人が生前に財産を受け取っていた場合、それは特別受益として扱われ、相続財産の中に含めて再計算することがあります。自分の名義だから問題ないと思っていたとしても、後から相続人全体での相続財産の見直しが求められるかもしれません。感情的な対立を招く原因となる可能性もあります。

円満な相続を実現するためには、法律も十分に理解し、贈与時から家族間での情報共有と合意形成をしっかり行うことが大切です。

参考:第九百三条(特別受益者の相続分)|民法

建物のみの生前贈与はするべき?

不動産・建物の生前贈与

では実、「建物のみ渡す場合は生前贈与と相続のどちらが得なの?」と疑問に思っている方もいるでしょう。生前贈与はするべきかどうかは、家庭の事情や資産の構成、贈与する目的など、様々な要素によって変わります。

ここでは一般的に生前贈与を選んだほうがよいケースと、相続の方が有利とされるケースについて紹介します。ご自身にあてはめながら実際に考えてみてください。

生前贈与した方がいいケース

生前贈与の方がメリットがあるのは以下のようなケースです。

例えば、建物が賃貸アパートや店舗などで、今後も継続的に収益を生む場合は生前贈与した方がよいといえるでしょう。収益を早期に子どもに渡しつつ、所得税や相続税を減らせます。

また、地価が上昇している地域に建物がある場合も生前贈与がおすすめです。評価額が安いうちに贈与することで、将来の相続税を抑える効果が期待できます。

親の判断能力がしっかりしているうちに、財産を引き継がせたいという意向がある場合も、生前贈与が適しているといえるでしょう。しかし、生前贈与の場合でも、贈与契約書の作成や贈与税の計算などは怠らないようにしましょう。

相続した方がいいケース

多くの家庭においては、相続の方が税務面・実務面で有利になりやすいです。その理由のひとつに基礎控除があります。

先ほどもお伝えしたように、基礎控除は「3,000万円+×600万円×法定相続人の数」で求められます。例えば、法定相続人が子ども2人の場合の基礎控除は以下の通りとなります。

3,000万円+600万円×2=4,200万円

このケースでは、4,200万円以下の遺産であればそもそも相続税が発生しません。そのため、無理に生前贈与をして贈与税や不動産取得税を負担する意味がなく、相続の方が合理的です。

また、自宅の土地については「小規模宅地等の特例」が使える可能性があります。自宅の土地評価額を最大80%まで減額できる制度です。適用されれば相続税を大幅に抑えることができます。しかし、小規模宅地等の特例は相続によって取得した場合にしか使えないため、建物を生前贈与すると適用できなくなるリスクがあります。

そのため、遺産総額が基礎控除内に収まりそうな場合や、特例制度を最大限活用したい場合は、相続による取得が有利となる可能性が高いと言えるでしょう。

参考:相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

土地と建物の名義が異なるときのトラブル例

建物のみを生前贈与するケースでは、土地が親名義のまま残ることが多くなります。問題がなさそうに見えても、建物と土地の名義が別々である状態は、トラブルの原因になるかもしれません。

ここでは、実際に起こりうる典型的な3つのトラブル事例を紹介します。

自身の都合で売却ができない

建物を贈与された子どもが、数年後に転勤や引っ越しを理由に不動産を売却したいと考えたとします。しかし、建物の所有権は子どもでも、土地の所有者が親のままでは、不動産全体としての売却ができません。

土地と建物を一体で売るには、両方の所有者の合意が必要です。もし土地所有者である親が「土地は売りたくない」と拒否すれば、売却手続きはストップしてしまいます。所有権が分かれていると、いざというときに資産を処分できないという事態になりかねません。

土地を相続した兄弟から地代を請求された

もうひとつの典型的なトラブルが、親の死後に土地を相続した兄弟姉妹からの「地代請求」です。例えば、生前に建物は兄が贈与を受け、土地は弟が相続したとします。最初は合意していたつもりでも、親の死後に弟が「月々地代を払ってほしい」と主張してくるケースは実際にあります。

兄は実質的に「借地人」として地代を支払う立場となり、親族間での関係が一変してしまいます。感情的なすれ違いから、兄弟関係が悪化してしまう事態も少なくありません。

小規模宅地等の特例が使えない

相続税の節税策として広く活用されているのが、「小規模宅地等の特例」です。建物だけを贈与すると、法律上は親が子どもに無償で土地を貸していたという扱いになります。結果として、小規模宅地等の特例が使えなくなり、相続税の負担が増える可能性があります。

数百万円から数千万円単位の納税額の差が生まれることもあるため、建物のみの贈与を行う場合には、節税効果が薄くなるリスクにも注意が必要です。

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建物の生前贈与で後悔しないためのポイント

ポイント 注意

建物の生前贈与を行う際は、どうすれば後悔しないかを知っておくことが大切です。ここでは、建物の生前贈与で後悔しないためのポイントを紹介します。生前贈与を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

贈与する目的を家族全員で共有する

建物の生前贈与を行う際に最も重要なのが「なぜ生前贈与をするのか」という目的を家族全員で共有することです。相続税対策、子どもの生活支援など、生前贈与には様々な理由があります。

目的が家族間で共有されていないと「そんな意図だとは思わなかった」「話が違う」といった認識のずれが生じやすくなります。生前贈与は不動産という大きな財産が関わるため、事前にしっかり話し合い、全員が納得した状態で進めることが大切です。

土地を含めた資産の引き継ぎを考える

建物のみの生前贈与にこだわりすぎないことも重要です。土地と建物を別々に所有する状態は、税務面や将来の相続時に問題が生じる可能性があります。

場合によっては、土地と建物をセットで贈与した方が手続きや管理が簡単になることもあります。生前贈与を行わず相続で引き継いだ方が税負担を抑えられるケースも多いです。家庭の状況によって最適な方法は異なるため、複数の選択肢を比較することが欠かせません。

贈与契約書を作成する

親子間の贈与であっても贈与契約書の作成は必須です。口約束だけでは贈与の事実や内容を第三者に証明するのが難しく、後々のトラブルや税務上の指摘につながる恐れがあります。

贈与契約書を作成することで「いつ」「誰が」「どの財産を」贈与したのかを明確にできます。税務上の証拠資料として効果的なだけでなく、他の相続人に対しても贈与が正式なものであったことを示す材料になります。

参考:贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

土地の利用に関する使用貸借を同時に検討する

建物のみを生前贈与した場合、子どもが親名義の土地を無償で利用する形になります。この関係を曖昧にしておくと、地代に関する指摘を受ける可能性があります。そのため、贈与契約書とあわせて使用貸借契約書を作成し、土地を無償で使用することを明確にしておきましょう。

書面として残しておくことで、税務上の説明がしやすくなり、将来の相続人間のトラブル防止にも繋がります。

参考:第六節 使用貸借|民法

まとめ

建物のみの生前贈与は、一見すると相続税対策として有効に思えるかもしれません。しかし、贈与税や不動産取得税といった新たな税負担、さらに家族間のトラブルなどが発生するリスクがあります。

特に土地と建物の名義が分かれることで、将来的な売却が困難になったり、地代請求などの問題が発生しやすくなったりします。後悔のない建物の贈与を行うためには、贈与の目的を家族全体で共有し、贈与契約書や使用貸借契約書を作成することが大切です。

建物の生前贈与は複雑になりやすい手続きです。インターネット上の情報だけを参考に進めると、想定外の税負担が発生したり、相続時に問題が生じたりする可能性があります。

また、相続と贈与のどちらが有利かは家庭ごとの状況によって異なるため、税制や相続法に精通した専門家のアドバイスを早めに受けることも欠かせません。税理士や司法書士などの専門家に相談すれば、家庭の状況に応じた方法を見つけられます。早い段階で相談するようにしましょう。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。