【税理士情報】相続手続きには戸籍謄本が必要。使う場面や入手方法、注意点などを解説

更新日:2023.9.8

戸籍謄本とは、戸籍全員の身分事項を証明する書類です。戸籍全員の名前や生年月日のほか、婚姻や親子関係などが記載されています。

相続手続きでは戸籍謄本が必要な場面が多く存在します。スムーズな相続手続きのためには、戸籍謄本に関する理解が必要不可欠です。

本記事では相続で戸籍謄本を使う場面や入手方法、戸籍謄本に関する注意点を紹介します。

相続に必要な戸籍謄本とは

戸籍謄本は相続に欠かせない書類のひとつです。この章では、戸籍謄本の概要について解説します。

戸籍謄本とは

戸籍謄本とは、戸籍全員の身分事項を証明する書類です。戸籍全員の氏名・生年月日・性別といった基本情報のほか、婚姻や親子関係などが記載されています。

法定相続人は被相続人の配偶者および特定の血族が該当します。相続人となる人を正しく特定するために、婚姻や親子関係が明記された戸籍謄本が必要です。

なお、戸籍謄本と似た用語として、戸籍全部事項証明書が挙げられます。戸籍謄本は本来、役所に保管されている戸籍の紙原本の写しを意味します。一方、戸籍全部事項証明書はコンピュータ管理している戸籍データを出力した証明書です。現在はほとんどの自治体が戸籍情報をコンピュータで管理しているため、厳密には戸籍謄本ではなく戸籍全部事項証明書と呼びます。

戸籍全部事項証明書に記載されている内容は戸籍謄本と同じです。そのため、戸籍謄本が必要な場面で戸籍全部事項証明書を提出しても問題ありません。また、実際には戸籍全部事項証明書を指す場合でも、戸籍謄本という呼び名を使用するケースが多いです。

戸籍謄本の種類

戸籍謄本の種類は大きく3つに分けられます。

  • 戸籍謄本:戸籍全員の身分事項を証明する書類です。戸籍に一人でも属している場合は戸籍謄本が発行されます
  • 除籍謄本:全員が戸籍から抜けた事を証明する戸籍謄本です。戸籍の全員が結婚や死亡などにより抜けた場合、その戸籍は誰もいない状態になり閉鎖されます。このように、閉鎖された戸籍の写しを除籍謄本と呼びます
  • 改製原戸籍謄本:戸籍法の制定や改正前の戸籍謄本です

戸籍謄本と戸籍抄本の違い

戸籍謄本と似た書類として、戸籍抄本が挙げられます。戸籍抄本とは戸籍に記載されている人のうち、一部の人のみの情報が記載された書類です。記載される身分事項は戸籍謄本と同じです。

戸籍の全員が記載されている書類が戸籍謄本 戸籍の一部の人のみ記載されている書類が戸籍抄本となります。

相続手続きで必要になるのは戸籍謄本です。戸籍抄本は相続手続きで利用できない恐れが大きいためご注意ください。

相続手続きで必要となる戸籍謄本とは

相続手続きで必要となる戸籍謄本として以下の2つが挙げられます。

  • 相続人の出生から死亡まですべての戸籍謄本:相続人を特定するために必要です
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本:相続人が存命することを証明するために必要です

なお、相続人の現在の戸籍謄本は、遺言の内容通りに相続を行う・被相続人と相続人の戸籍が同じなどの理由から必要ないケースもあります。また、相続人が兄弟姉妹になる場合、上記に加えて被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本も必要です。

ケースによって必要な戸籍謄本が異なる可能性があるため、事前にしっかり確認する必要があります。

相続で戸籍謄本が必要になる場面

相続で戸籍謄本が必要になる場面として、大きく以下の4つが挙げられます。

  • 相続人の調査・確定
  • 各種相続手続き
  • 相続税申告
  • その他(遺言書の検認など)

それぞれの場面について詳しく解説します。

相続人の調査・確定

相続人の調査・確定のため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。

戸籍謄本には戸籍にいる人の婚姻や親子関係が記載されています。そして、法定相続人になり得るのは、被相続人の配偶者および特定の血族です。法定相続人を正しく調査・特定するため、婚姻や親子関係が記載された公的な書類である戸籍謄本が必要となります。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本だけでなく、相続人の現在の戸籍謄本も必要です。こちらは、相続人が現在も存命であることを証明するために用いられます。

また、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人になる場合、被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本も必要です。法定相続人となる兄弟姉妹には、隠し子や養子縁組などによる兄弟姉妹も該当します。すべての兄弟姉妹の存在を正しく認識するために、被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本から親子関係や婚姻関係を調べる必要があるのです。

各種相続手続き

各種相続手続きの提出書類として、戸籍謄本が指定されているケースも多くみられます。相続手続きに戸籍謄本が必要なケースの例は以下のとおりです。

  • 不動産の相続登記
  • 銀行口座の名義変更
  • 自動車の移転登録

なお、提出先によって、戸籍謄本の原本が必須・原本を提示すればコピーでも可能・後日返却してくれるなど対応が異なります。コピーで問題ない・後日返却してくれる提出先が含まれる場合、提出先の数よりも発行する戸籍謄本の数が少なくて済みます。

戸籍謄本の必要部数を確認するためにも、戸籍謄本に関する対応について、提出先ごとに事前に確認することがおすすめです。

相続税申告

相続税申告の際にも戸籍謄本が必要です。相続税申告で提出する戸籍謄本は、原本ではなくコピーで問題ありません。

なお、法務局で証明を受けた法定相続情報一覧図の写しがあれば、戸籍謄本の提出は必要ありません。相続税申告で必要となる添付書類の種類はケースによって異なるため、事前に確認する必要があります。

その他必要な場面

これまで紹介した以外にも、相続に関連して戸籍謄本が必要な場面があります。主なケースは以下のとおりです。

  • 遺言書の検認:亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本など、通常の相続人調査とほぼ同様の戸籍謄本が必要となります
  • 遺言執行者選任の申立:亡くなった人の死亡が記載された戸籍謄本が必要です。被相続人の親族が申立を行う場合、申立人である親族の戸籍謄本も必要になります

また、以下のように家庭裁判所への各種申立にも、戸籍謄本が必要です。

  • 相続放棄:遺産の相続権を放棄する手続きです。被相続人の死亡が記載された戸籍謄本と、申立を行う相続人の現在の戸籍謄本を提出します
  • 限定承認:プラスの財産の範囲内で、負債などマイナスの財産を相続することです。相続人調査と同じく、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本が必要となります
  • 特別代理人選任:相続人が未成年である場合、家庭裁判所に申立を行い、相続人でない人を特別代理人として選任します。未成年の相続人およびその親権者の戸籍謄本が必要です
  • 遺産分割調停:相続人同士の遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停の申立を行うケースがあります。遺産分割調停では相続人調査と同じく、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本をそろえる必要があります。加えて、3ヶ月以内に発行された相続人全員の住民票も必要です

相続で必要な戸籍謄本の取得方法

戸籍謄本の取得方法には明確なルールが存在します。相続で必要な戸籍謄本の取得方法について詳しく解説します。

取得場所・取得方法

戸籍謄本を取得できるのは、本籍地のある市区町村の役所のみです。被相続人の戸籍謄本は出生から死亡まですべて必要であるため、別の自治体への転籍があった場合、複数の市区町村の役所で取得手続きを行う必要があります。

取得方法は窓口で直接請求する方法と、郵送で請求する方法の2種類があります。それぞれの流れは以下のとおりです。

  • 窓口で直接請求:必要書類を用意し、役所の窓口で戸籍謄本が欲しい旨を伝えます。書類や手続きに問題がない場合、当日中に戸籍謄本の受取が可能です
  • 郵送で請求:請求先の市区町村役所に必要書類を郵送します。書類や手続きに問題がない場合は役所から戸籍謄本が発送されますが、必要書類を郵送してから手元に届くまでにトータルで1週間程度かかる可能性があります

戸籍謄本の取得に必要なもの

戸籍謄本の取得に必要なものは以下のとおりです。

  • 戸籍交付申請書:窓口で直接請求する場合、役所で申請書を記入します。郵送で請求する場合は自治体のホームページからダウンロードが必要です
  • 本人確認書類:申請を行う人の本人確認書類を提示します。保険証など顔写真がついていないものの場合、年金手帳など別の本人確認書類も必要です。郵送の場合はコピーを提出します。なお、郵送で請求する場合、パスポートのコピーは本人確認書類として利用できません(住所の記載がないため)
  • 印鑑:認印でも問題ありません
  • 手数料(郵送の場合は手数料相当額の定額小為替):戸籍謄本は1通450円、除籍謄本および改製原戸籍謄本は1通750円です
  • 郵送の場合は切手を貼った返信用封筒

申請書の書式や必要書類は自治体によって異なる可能性があるため、詳しくは自治体のホームページで確認が必要です。

代理人による取得も可能

戸籍謄本は代理人による取得も可能です。代理人が取得する場合は、通常の必要書類に加え委任状も必要となります。自治体のホームページに用意されている委任状の様式を利用するのがスムーズです。ただし、特に決まった様式はないため、必要事項が記載されていれば別の様式も利用できます。

同一戸籍内の人・配偶者・直系親族であれば、委任状を用意する必要がなく、本人と同じ方法で取得可能です。

相続に用いる戸籍謄本の注意点

相続に際して戸籍謄本を用意する際は、以下の3点に注意が必要です。

  • 戸籍謄本の取得時期に注意
  • 戸籍謄本の収集は早めに始めることが大切
  • 戸籍に漏れがないよう入念に確認が必要

注意点についてそれぞれ詳しく解説します。

戸籍謄本の取得時期に注意

戸籍謄本の収集にあたって、取得時期に注意が必要です。

相続手続きに必要な戸籍謄本のひとつに、被相続人の死亡が記載された戸籍謄本が挙げられます。戸籍謄本に被相続人の死亡が反映されるまで、死亡届を提出してから10日前後かかります。

被相続人が亡くなってすぐに戸籍謄本を申請してしまうと、被相続人の死亡が反映されておらず、利用できない恐れがあるため注意が必要です。

また、金融機関の場合、利用できる戸籍謄本に有効期限が設定されているケースがあります。具体的な有効期限は提出先によって異なるため、いつのものが利用できるのか、事前に確認するのが安心です。なお、裁判所や税務署に提出する戸籍謄本には有効期限がありません。

戸籍謄本の収集は早めに始めることが大切

被相続人の戸籍謄本は、出生から死亡まで連続したすべてが必要です。

被相続人が転籍している場合、最初に亡くなったときの本籍地で戸籍謄本を取得し、続いてひとつ前の戸籍が存在した自治体に請求します。転籍が行われた回数によっては、すべての戸籍謄本を取得するためにかかる時間が膨大になる可能性があります。

また、兄弟姉妹が相続人になる場合、通常必要な戸籍謄本に加えて被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本も必要です。

このように、相続に必要な戸籍謄本をすべて集めるには時間と手間がかかります。戸籍謄本の収集を後回しにすると、相続放棄や相続税申告などの期限に間に合わない恐れが大きくなります。期限までに余裕を持って相続手続きをスムーズに進めるため、戸籍謄本の収集は早めに始めると安心です。

戸籍に漏れがないよう入念に確認が必要

被相続人の戸籍は、出生から死亡まで漏れなく集める必要があります。戸籍謄本の取得に漏れがあると、前妻との子供など、想定外の相続人に気づけない恐れがあるためです。

法定相続人に漏れや誤りがあると、すでに実施した遺産分割協議や相続手続きなどが無効になる恐れがあります。被相続人の戸籍謄本は、必ず亡くなったときのものからひとつずつさかのぼるように集め、連続しているか(漏れがないか)確認が必要です。

まとめ

相続で戸籍謄本が必要な理由として、相続人の調査・特定に使う、各種手続きの添付書類として定められているなどが挙げられます。申請先は本籍地のある役所であり、直接窓口に出向くほか、郵送での請求も可能です。戸籍謄本の請求に必要な書類は自治体によって異なるケースもあるため、事前に自治体のホームページで確認する必要があります。

戸籍謄本の収集には時間や手間がかかるうえ、必要な分がすべてそろっているかの確認も欠かせません。負担を最小限に抑えながらも必要な戸籍謄本を確実に収集するためには、専門家に依頼するのが安心です。

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監修者

小谷野 幹雄

小谷野 幹雄 小谷野税理士法人 代表社員税理士 公認会計士

84年早稲田大学在学中に公認会計士2次試験合格、85年大手証券会社入社、93年ニューヨーク大学経営大学院(NYU)でMBAを取得し、96年小谷野公認会計士事務所を開業。2017年小谷野税理士法人を設立、代表パートナー就任。FP技能検定委員、日本証券アナリスト協会、プライペートバンキング資格試験委員就任。複数のプライム市場上場会社の役員をはじめ、各種公益法人の役員等、社会貢献分野でも活躍。