財産分与の基本とやり方を解説!遺産分割との違いや対象財産も紹介

離婚や相続の場面では、財産の分け方について悩む人は多いです。特に財産分与と遺産分割は言葉が似ており、手続きの違いに戸惑うケースも少なくありません。本記事では、財産分与のやり方や対象となる財産、遺産分割との違いについて解説します。最後まで読み進めると、自身の状況に合わせた正しい手続きを理解し、将来への不安を解消できるでしょう。
目次
財産分与と遺産分割の制度上の違い

財産分与と遺産分割は、財産を分ける行為こそ共通していますが、財産分割が発生する原因が明確に異なります。言葉が似ていて混同しやすいため、まずは両者の違いを正しく理解しましょう。
離婚時に夫婦の財産を分ける財産分与
財産分与とは、離婚時に夫婦が協力して築いた財産を公平に分配する制度です。婚姻期間中に形成された財産の場合は、名義に関わらず「夫婦の共有財産」として扱われます。
対象は預貯金や不動産、将来受け取る予定の退職金などです。たとえ離婚のきっかけを作った側であっても、原則として財産分与を請求できます。また、専業主婦でも基本的には2分の1の割合で財産を受け取る権利があります。
後から「分け忘れた」といったトラブルを防ぐためにも、離婚を検討し始めた段階での、財産の仕分けが大切です。
相続時に被相続人の財産を分ける遺産分割
遺産分割は、人が亡くなった際に行う相続手続きの一つで、遺産の分け方を決めるための話し合いです。亡くなった人(被相続人)が残した財産を、配偶者や子供などの相続人全員で分配します。
例えば、被相続人名義の預貯金や自宅、不動産、株式などが遺産分割の対象です。相続財産は相続が発生した時点で、相続人全員の共有状態となります。
財産分与との大きな違いは、対象が「亡くなった人個人の財産」である点です。民法の定めにより、遺言書がない場合は相続人全員の合意がなければ、預金の解約や不動産の名義変更はできません。
相続が発生した場合は、まず遺言書の有無を確認し、そのうえで相続財産の内容を整理しましょう。
財産分与の種類
財産分与には3つの種類があり、それぞれ目的が異なります。どのような理由で財産を受け取れるのか知っておくと、話し合いをスムーズに進められます。自身の状況を整理し、適切に請求を行いたい人は、以下の章の確認がおすすめです。
夫婦の財産を公平に分ける清算的財産分与
清算的財産分与は、婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産を公平に清算するもので、財産分与の中心的な考え方です。
名義に関わらず、婚姻期間中に形成された財産の場合、実質的に夫婦の共有財産として扱われます。具体的には、夫名義の預貯金や不動産、妻名義の投資資産、婚姻中に積み立てた退職金の見込額なども対象です。
原則として2分の1ずつ分けますが、特殊な事情があると貢献度に応じて割合が変わるケースもあります。離婚後の生活資金を確保するためにも、自身がどのように家計や資産形成に関わってきたのかを整理しましょう。
生活費を補助するための扶養的財産分与
扶養的財産分与は、離婚により片方の生活が困窮する場合に、経済力のある側が費用を一時的に補助するものです。
専業主婦や病気療養中の人など、離婚後すぐに自立できないケースで認められます。支払いは、就職して収入を得るまでの一定期間に限られるのが一般的です。
離婚後の資金面に不安がある人は、再就職の準備と並行して、生活が安定するまでの扶養的な支払いを求めてみましょう。
精神的苦痛を償う慰謝料的財産分与
慰謝料的財産分与は、不貞行為やDVなどによる精神的苦痛への賠償を含めるものです。本来、慰謝料と財産分与は別物ですが、実務上はまとめて取り決めるケースも少なくありません。
財産分与の対象になる財産

財産分与では、婚姻期間中に夫婦が協力して築いたすべての財産が対象です。名義に関係なく、実質的な共有財産の場合は、原則として財産分与に含まれます。財産の種類を把握し、漏れのないように確認しましょう。
預貯金や現金
婚姻後に蓄えた預貯金や現金は、名義に関わらずすべて対象です。夫婦共同名義はもちろん、個人名義の口座やへそくりであっても、婚姻期間中に増えた分は共有財産とみなされます。
ただし、独身時代の貯金や相続財産が混在している場合は、その分を差し引いて計算します。正確な分与額を算出するため、離婚時(または別居時)の残高証明書や通帳のコピーを用意し、金額を確定させましょう。
株式や投資信託などの有価証券
株式や投資信託などの有価証券も、婚姻期間中に取得したものは対象です。価格変動があるため、実務上は「別居時」または「離婚成立時」の時価を基準に評価額を決定します。
分割方法は、売却して現金を分けるか、保有する側が相手に代償金を支払う形が一般的です。保有している有価証券がある人は、取引残高報告書を取り寄せ、現在の評価額を確認しておきましょう。
不動産
自宅や土地などの不動産は金額が大きく、トラブルになりやすい財産です。単独名義であっても、婚姻中に購入したものは共有財産として扱われます。
分与方法は、売却して現金を分ける「換価分割」や、一方が住み続けて代償金を払う「代償分割」などがあります。ローンが残っている場合は、評価額から残債を引いた額が対象です。
まずは不動産会社に査定を依頼し、市場価値とローン残高の整理から始めましょう。
自動車
自家用車も現在の査定価格を基準に分配します。どちらか一方が乗り続ける場合は、査定額の半額を相手に支払うのが一般的です。
ローン残債がある場合、査定額から残債を引いた額を分与します。査定額よりローンが多い「オーバーローン」の状態なら、財産価値はゼロとみなされるのが一般的です。
車を所有している人は、買取業者などで査定を受け、現在の価値を確認するところから始めましょう。
退職金
すでに受け取った退職金や、将来受け取りが確実な退職金も対象になる可能性があります。
対象範囲は、基本的に全勤続年数のうち「婚姻期間に対応する部分」に限られます。まだ受け取っていない場合は、会社の退職金規定を確認し、支給見込額の算出が必要です。
解約返戻金のある生命保険
積立型保険や学資保険など、解約返戻金がある保険も対象です。掛け捨て型は資産価値がないため、通常は対象外となります。
対象額は、離婚時(または別居時)の解約返戻金相当額です。必ずしも解約する必要はなく、契約継続側が返戻金の半額を相手に支払う方法でも対応できます。
まずは保険会社に解約返戻金証明書を発行してもらい、価格の把握から始めましょう。
資産価値のあるもの
上記で解説してきた資産以外にも、経済的価値があるものは基本的に財産分与の対象です。例えば、高価な家具・家電、貴金属、骨董品、ゴルフ会員権などが該当します。
資産価値のあるものを財産分与する場合は、一般的に購入価格ではなく現在の「時価」で評価します。ただし、日常的に使用している家財道具は、厳密に評価せず現物を引き取る形で済ませるケースも多いです。
処分に迷う高価な品は、専門業者に査定を依頼して価値を明確にしておきましょう。
住宅ローンや借金などのマイナスの財産
財産分与では資産価値のあるものだけではなく、住宅ローンや生活費のための借金など「マイナスの財産」も考慮します。原則として、プラス財産の総額からマイナス分を差し引き、残額を分配します。ただし、ギャンブルや浪費による個人的な借金は考慮しません。
借金過多で債務超過の場合は、財産分与自体が発生しないのが一般的です。そのため、財産分与ではプラス財産だけではなくマイナス財産の整理も必要です。
財産分与の対象にならない財産
財産分与はすべての資産が対象になるわけではなく、特有財産は対象外です。特有財産とは、夫婦の協力とは無関係に得た個人の財産を指します。
具体的には、以下のようなものが該当します。
- 結婚前から貯めていた預貯金や所有していた家具
- 結婚前に購入した不動産や自動車
- 親や親族から相続・贈与された財産
- 別居後に取得した財産
上記は原則として財産分与の対象外です。ただし、結婚前の預金が生活費と混在して区別できない場合は、共有財産とみなされる可能性があります。
財産分与のやり方
財産分与をスムーズに進めるには、正しいやり方を知る必要があります。感情的な対立を避けるためにも、客観的な事実に基づいた手続きが大切です。
共有財産をリストアップする
まずは夫婦の共有財産をすべて洗い出し、目録の作成をしましょう。通帳や保険証券、不動産の権利証などを確認し、漏れがないように書き出します。
全容が分からないと正確な分与はできないため、各財産の現在の評価額も整理しておきます。相手の財産隠しが疑われる場合は、弁護士会照会の制度利用の検討もおすすめです。
夫婦間で協議する
共有財産のリストアップが完了後、分け方を夫婦で話し合います。割合は2分の1が原則ですが、合意があると自由に決められます。
決定事項はトラブル防止のため、必ず離婚協議書に残しておくのが大切です。法的効力を持たせるため、公正証書の作成もおすすめです。
調停や裁判を検討する
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に財産分与請求調停を申し立てると、調停委員が間に入り、解決策を提示してくれます。
調停不成立の場合は審判手続へ移行し、裁判官が分与の内容を決定します。話し合いが平行線の場合は、第三者の介入による解決を検討しましょう。
よくある質問

財産分与のやり方に関するよくある質問に回答します。誤解やトラブルの種を事前に把握し、スムーズな解決に役立てましょう。
専業主婦の財産分与の割合はおかしい?
専業主婦でも原則として財産分与の割合は2分の1です。不当に低い割合には安易に合意せず、正当な権利を主張しましょう。
子供名義の通帳は財産分与の対象になる?
資金の出どころが親の収入の場合は、子供名義の通帳であっても財産分与の対象です。ただし、お年玉や入学祝い金など、子供自身の財産は対象外です。共有の財産で積み上げた資産と子供自身の固有財産は、区別して考えましょう。
財産分与を払わないとどうなる?
財産分与を支払わない場合、給与や預貯金を差し押さえられる可能性があります。特に「強制執行認諾文言付き公正証書」があると、裁判なしで強制執行が可能です。未払いリスクに備えるためには、公正証書の作成がおすすめです。
財産分与や遺産分割の悩みは税理士へご相談ください
財産分与は、離婚後の生活基盤を支えるための大切な手続きです。対象となる財産を漏れなく把握し、正しいやり方で分与を進めると、スムーズに対応できます。
しかし、不動産や株式、将来の退職金など、価値の算出が難しい財産が含まれる場合、正確に整理するのは簡単ではありません。
財産の評価額算出や手続きの進め方に少しでも不安がある人は、専門家への相談がおすすめです。まずは税理士に相談し、適正な財産分与の実現に向けてサポートを受け、不安の解消につなげてください。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。

