相続税の延納(分納)と利子税はどう決まる?仕組みと注意点を解説

相続税を一括で払えない場合、延納(分納)という制度があるのをご存じでしょうか。しかし延納制度を利用すると利子税がかかります。延納の利率は財産の内容や延納期間によって大きく変わり、総支払額に影響するため、仕組みを正しく理解しておく必要があります。本記事では、相続税の延納にかかる利子税の計算方法、延納の条件、手続きの流れ、利用できない場合の代替策まで解説します。相続税の納付に不安のある方は、最後までご覧ください。
目次
相続税の延納(分納)とは

相続税は原則として申告期限までに一括で納付しますが、財産の多くが不動産や非上場株式など換金しにくい場合、必要な現金を準備できず納付が困難になるケースがあります。
このようなときに利用できるのが「延納(分納)」制度です。相続税を複数年に分割して支払える仕組みで、資金繰りを確保しながら納税できます。
ただし、利用には申請と税務署の許可が必要となります。
延納(分納)にかかる利子税について

延納(分納)を利用すると、相続税を後払いする代わりに「延納利子税」という利息が発生します。
これは延納した税額に年利をかけて計算されるもので、延納期間の長さや財産の種類(不動産かどうか)によって利率が変動します。
利子税は総支払額に大きく影響するため、延納を選ぶ前に仕組みを正しく理解しておきましょう。
利子税の利率が決まる条件
延納利子税の利率は、延納期間に応じた区分利率に加えて、不動産の割合によって区分されています。
利子率の計算に当たっては、特例基準割合という特殊なレートを基準としています。現在の日本の金利は超低金利が続いており、特例基準割合ですと市場の実勢金利とかけ離れてしまうので一定の計算式により調整して低い金利に抑えています。その低い金利が特例割合であり、実際に適用される年利率となります。
利子税の計算方法の仕組み
延納利子税は、延納残高に特例割合を乗じて算定し、毎年の年賦額に利子として加算されます。
利率は国税庁が示す以下区分表のとおり、不動産割合や延納期間により細かく設定されています。なお、利率は年度ごとに見直されるため、以下の数値は2025年時点のものを基準としています。
区分 | 延納期間 (最高) | 延納利子税割合 (年割合) | 特例割合 | |
不動産等の割合が75%以上の場合 | ①動産等に係る延納相続税額 | 10年 | 5.4% | 0.6% |
②不動産等に係る延納相続税額(③を除く) | 20年 | 3.6% | 0.4% | |
③森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額 | 20年 | 1.2% | 0.1% | |
不動産等の割合が50%以上75%未満の場合 | ④動産等に係る延納相続税額 | 10年 | 5.4% | 0.6% |
⑤不動産等に係る延納相続税額(⑥を除く) | 15年 | 3.6% | 0.4% | |
⑥森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額 | 20年 | 1.2% | 0.1% | |
不動産等の割合が50%未満の場合 | ⑦一般の延納相続税額(⑧、⑨および⑩を除く) | 5年 | 6.0% | 0.7% |
⑧立木の割合が30%を超える場合の立木に係る延納相続税額(⑩を除く) | 5年 | 4.8% | 0.5% | |
⑨特別緑地保全地区等内の土地に係る延納相続税額 | 5年 | 4.2% | 0.5% | |
⑩森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額 | 5年 | 1.2% | 0.1% | |
元金の返済に伴って残高が減少するため、利子税は年を追うごとに減っていく一方で、延納期間が長くなるほど利子負担の総額は大きくなるため、期間を踏まえた総額試算が重要です。
利子税の計算例
利子税の仕組みをイメージしやすくするため、相続税1,000万円を延納し、特例割合0.4%が適用されるケースで計算してみます。
初年度の利子税は以下の通りです。
利子税 = 延納残高1,000万円 × 0.4% = 40,000円
延納は年賦で元金を分割して返済する仕組みのため、翌年の延納残高は元金返済分だけ減少します。
ここでは例として元金が 50万円減った場合(残高950万円) を想定すると、以下のように、残高が減るほど利子税も年々少なくなります。
950万円 × 0.4% = 38,000円
延納(分納)を利用するための条件

では相続税の延納は、どのような条件を満たすと利用できるのでしょうか。延納が許可されるために必要な要件について解説します。
相続税額が10万円を超えること
延納を申請できるのは、延納対象となる相続税額が10万円を超えている場合に限られます。
少額の税額に延納を認めると制度趣旨にそぐわないため、この下限が設けられています。対象税額が基準に満たない場合、申請自体が受け付けられない点に注意しましょう。
金銭での一括納付が困難である
延納は「便利だから使う」制度ではなく、一括納付が客観的に困難と認められた場合にのみ許可されます。
不動産が多く換金しにくい、売却すると生活に重大な支障が出るなどが典型例です。納税者は、困難である理由を具体的かつ合理的に説明しなければなりません。
延納税額に見合う担保を提供できる
延納を認める条件として、延納税額に相当する担保の提供が求められます。
担保として認められるのは不動産や有価証券などに限られ、評価が難しい財産は対象外となる場合があります。
必要書類を申告期限までに提出する
延納の申請は、相続税の申告期限(相続開始から10ヵ月以内)までに行う必要があり、期限後の申請は一切認められません。
提出書類には、金銭納付困難理由書、担保目録、財産評価明細書などが含まれ、税務署が延納の可否を判断するための重要な資料となります。
延納(分納)の手続きの流れ
延納はどのような手続きで申請し、どの順序で進むのでしょうか。延納手続きの全体像をご紹介します。
申告期限までに必要書類を提出する
延納を利用するには、相続税の申告期限(相続開始から10ヵ月以内)までに、以下の書類を提出します。
書類 | 説明 |
延納申請書 | 延納を希望する旨と分割計画を記載する主申請書 |
金銭納付を困難とする理由書 | 一括納付が困難な理由を説明する書類 |
延納申請書別紙 | 提供する担保の内容・評価額などを記載する書類 |
担保提供関係書類 | 担保物件の権利関係を証明する資料 |
また、申請書提出に加えて原則として担保の提供が求められます。担保は延納税額と利子税相当額を確保できる価値が必要で、担保不要と認められるのは「延納額100万円以下」かつ「延納期間3年以下」の場合に限られます。
参考:3 様式集|国税庁
税務署が審査を行い、延納の許可・不許可を判断する
提出された申請書と添付資料を基に、税務署は金銭納付困難の理由が妥当か、担保の価値は十分かなどを総合的に審査します。
要件を満たしていると判断されれば延納が許可され、年賦方式で相続税を支払えるようになります。
反対に、必要性が弱い、担保価値が不足しているなど要件が整わない場合は不許可となり、相続税は申告期限までに全額納付しなければなりません。
延納(分納)を利用する際の注意点
延納(分納)は納税負担を和らげる制度ですが、利用にあたってはリスクや制約を理解しておく必要があります。申請前に押さえておきたい注意点について解説します。
利子税負担が想定以上に大きくなる可能性がある
一般に、延納期間が長くなるほど利子税の総額は大きくなりやすいため、延納前に総支払額を必ず試算しましょう。
延納は一括納付より総額が高くなる場合が多く、特に通常割合の利率が適用されると負担はさらに増えます。延納を選択する際は、期間・利率の両面から慎重に判断するのが重要です。
支払いは年賦となり計画的な納付が必要になる
延納は毎年決まった年賦で支払う制度なので、長期的な資金計画を立てておきましょう。
年賦額には元金に加えて利子税も含まれ、期間が延びるほど利子部分の割合が大きくなります。毎年確実に納付することが前提となるため、収支見通しに不安がある場合は慎重に検討しましょう。
担保として利用できない財産がある
すべての財産が担保になるわけではないので、事前に担保候補の評価を行いましょう。
価値が不安定な財産や、評価が難しい財産は担保不適格と判断される場合があります。適切な担保を確保できなければ延納は許可されないため、早期に担保の適否を確認しておくのが重要です。
申請期限に遅れると延納制度は一切利用できない
延納申請は申告期限が絶対条件なので、早めに書類準備を進めましょう。
期限を1日でも過ぎると延納は利用できず、全額を期限内に納付する必要があります。書類不備・準備遅れで間に合わないケースも多いため、余裕をもったスケジュール管理を行いましょう。
要件を満たしても税務署が許可しない場合がある
延納は許可制なので、申請内容の説得力を高めるために資料を丁寧に整えましょう。
金銭納付困難の合理性や担保価値の妥当性などが厳しく審査され、必要性が不十分と判断されれば不許可となる場合もあります。申請理由の説明や資料の精度が、審査の通過に大きく影響します。
延納(分納)が使えない場合の代替手段
延納(分納)が利用できない場合、どのような方法で納税資金を確保すれば良いのでしょうか。状況に応じた代替手段をご紹介します。
金融機関の納税資金ローンで資金を確保する
金融機関の納税専用ローンを利用すれば、延納が認められない場合でも納税資金を確保できます。利息負担はあるものの、延納利子税より有利なケースもあります。
迅速に資金調達ができるため、納付期限が迫っている場面で有効でしょう。
相続財産の一部売却で納税資金を準備する
借入を避けたい場合は、相続財産の一部を売却して納税資金を捻出する方法があります。
不動産中心の相続では一般的な手段で、一括納付に必要な現金を確保できます。ただし、売却には時間がかかる場合があるため、早めの検討が必要です。
生命保険金を納税資金として活用する
被相続人が生命保険を契約していた場合、受取った保険金をそのまま納税資金に充てられます。現金で受け取れるため流動性が高く、不動産などの換金しにくい財産が多い相続で特に役立ちます。
延納が使えない場合の対処だけでなく、生前の納税対策としても有効です。
物納制度の利用を検討する
延納が認められない場合には、不動産などの財産で相続税を納める「物納」を検討しましょう。
物納は延納よりも要件が厳しく、金銭納付・延納がどうしても困難な場合に限り使える手続きです。審査は詳細かつ厳密で、必要書類も多いため、利用には十分な準備と専門的な対応が必要です。
相続税の延納(分納)に不安がある方は専門家に相談を
相続税の延納は、利子税の負担や担保の確保、申請期限の厳格さなど、手続きを誤ると大きな不利益に繋がるリスクがあります。
こうしたリスクを避けるには、相続税申告や延納制度に詳しい専門家へ早めに相談し、最適な方法を見極めるのが重要です。
小谷野税理士法人では、延納の活用判断、利子税の試算、担保評価、申請書類の作成支援まで幅広く対応しています。相続税の納付方法にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。
相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。

