親から借金、返済前に親が死亡するとどうなる?借金の扱いをパターン別に解説

親から借金、返済前に親が死亡するとどうなる?借金の扱いをパターン別に解説

金銭の貸し借りは金銭消費貸借契約に該当し、貸主(債権者)は借主(債務者)に対して「貸金返還請求権」を有します。

このような金銭の貸し借りに関するルールは、親子間や親族間でも変わりません。親からの借金についても、通常の債権と同じように相続財産として扱う必要があります。

今回は親から借金をしており、返済前に親が死亡した場合の扱いについて詳しく解説します。

前提|相続における債権の扱い

前提として、親からの借金はお金を貸している側である親にとっては「債権」に該当します。

債権とは、特定の人に対して特定の行為(金銭の支払いや物の引き渡し等)を請求できる権利です。債権は一部を除き相続税の課税対象になります。

以下では相続における債権の扱いについて詳しく解説します。

相続税の課税対象になる債権は2種類に大別できる

相続税の課税対象になる債権は、可分債権不可分債権に大別できます。

可分債権とは分割しても価値が変わらない債権です。例えば、合計100万円の貸付金を2人でそれぞれ50万円ずつ承継しても、債権全体の価値は変わりません。

親からの借金は親にとって「貸金返還請求権」となります。そして詳しくは後述しますが、貸金返還請求権は可分債権に該当するため分割が可能です。

可分債権は原則として法定相続分で分割します。ただし、遺産分割協議により全員が合意すれば、法定相続分と異なる割合での分割もできます。

可分債権に対して、不可分債権は分割ができない(難しい)債権です。例として、不動産や美術品など高価な物品の引き渡し債権が挙げられます。相続財産に不可分債権が含まれる場合、遺産分割協議により相続する人や分割割合を決める必要があります。

親からの借金は貸主である親にとっての「貸金返還請求権」に該当

お金の貸し借りでは、お金を貸した側は借りた側に対してお金を請求できる権利を有します。このような債権を「貸金返還請求権」といいます。すなわち、親から借金を受けている場合、親は子供に対して貸金返還請求権を有している状態になるのです。

貸金返還請求権を含む債権も相続税の課税対象になります。そのため、親からの借金を返済するよりも前に親が亡くなった場合、遺産分割や相続税の計算では貸金返還請求権についても考慮が必要です。

参考|相続できない債権も存在

被相続人名義の債権は原則として相続財産に含まれますが、例外として「一身専属権」は相続できません

一身専属権とは特定の人に帰属し、他者に移転しない性質の権利を指します。該当する権利としては以下の例が挙げられます。

  • 扶養請求権
  • 養育費の請求権
  • 年金の受給権
  • 生活保護의受給権

これらは特定個人の身分や人格と密接な関係にあり、いずれも権利を有する人の死亡により消滅します。

親から借金、返済前に親が死亡した場合の扱い3パターン

特別受益のイメージ

親から借金をしており、返済前に親が亡くなった場合の借金の扱いは、主に3パターンに大別されます。これより各パターンについて詳しく解説します。

[パターンその1]相続人が自分1人のみ

相続人が自分1人のみの場合、親から子(自分)に対する債権を債務者である自分が承継することになります。債権と債務を同一人物が保有することになるため借金が相殺され、返済義務も消滅する仕組みです。

[パターンその2]相続人が複数人、自分が貸金返還請求権を承継する

相続人が複数人の場合でも貸金返還請求権を自分が承継するのであれば、債権と債務が相殺されるため借金は消滅します

なお前述のように、可分債権は法定相続分での分割が原則です。貸金返還請求権を自分1人がすべて承継するためには他の相続人全員による同意を得る必要があります。

[パターンその3]相続人が複数人、貸金返還請求権を別の相続人が承継する

貸金返還請求権を別の相続人が承継する場合、貸金返還請求権を承継した相続人に対して借金の返済義務を負うことになります。すなわち借金は消えず、返済相手が対象の相続人に変わる仕組みです。

なお、法定相続分で分割するのであれば、債務者である自身も貸金返還請求権の一部を承継することになります。

例えば相続人が子供2人の場合、自分が貸金返還請求権の2分の1、もう1人の相続人が残りの2分の1を相続します。この場合、自分が相続した分は債務との相殺により消滅するため、返済が必要なのはもう1人が承継した2分の1の部分のみです。

また、貸金返還請求権を法定相続分で分割する場合、返済相手が複数人になる可能性もあります。例えば法定相続人が3人の場合に法定相続分で相続するのであれば、自分以外の2人それぞれに対して返済が必要です。

親からの借金は相続放棄をしてもなくならない

相続放棄とはプラスの財産・マイナスの財産を問わず一切の相続権を放棄する手続きです。主に借金のようなマイナスの財産が多い場合に、負債の返済義務の承継を避ける目的で実施されます。

前述のように、親からの借金は親(被相続人)にとっては債権でありプラスの財産です。仮に債務者が相続放棄をしても、別の相続人が貸金返還請求権を承継することになります。すなわち、相続放棄をしても親からの借金の返済義務は消えませんそれどころか自身はプラスの財産も一切相続できず自己資金のみで返済する必要があるため、かえって負担が重くなります。

親から借金をしている場合、負担を解消する目的での相続放棄はできない旨にご注意ください。

親から借金している場合の相続トラブルを避ける方法

遺言書

最後に、親から借金している場合の相続トラブルを避ける方法を2つ紹介します。

[方法その1]遺言書に債務免除の記載をしてもらう

遺言書に債務免除する旨の記載があれば、債権者である親の死亡と同時に借金の返済義務が消滅したとみなされます。相続財産となる貸金返還請求権も同時に消滅するため、他の相続人が貸金返還請求権を承継することもありません。

ただし、債務免除額は特別受益とみなされる可能性があります。

特別受益とは一部の相続人が生前贈与や遺贈によって被相続人から受けた利益です。親族間の扶養の範囲を超えた高額の財産贈与は特別受益とみなされ、遺産分割において考慮する必要が生じます。

相続人に対する貸付金の債務免除は、当該相続人に対する金銭支援とみなされ特別受益となる可能性があります。特別受益に該当するかは判断が難しいため、債務免除を受ける場合には専門家に相談するのが安心です。

[方法その2]貸金返還請求権を自身がすべて承継する

貸金返還請求権を自身がすべて承継すれば、債権と債務の混同により借金が消滅します。借金が原因で他の相続人とトラブルになるのを回避するためには、貸金返還請求権を自身がすべて承継するのが理想です。

ただし前述のように、貸金返還請求権は可分債権に該当するため、法定相続分での分割が原則です。貸金返還請求権を自身がすべて承継するという方法は、可分債権の原則的な分割方法とは異なります。遺産分割協議でほかの相続人から拒否されてしまうといった事態により、自身がすべて承継する方法を実施できない可能性もあります。

親からの借金が親の死亡により消滅するとは限らない!借金の扱いについて要確認

親から借金をしている状態は、親にとっては子供に対して「貸金返還請求権」を有している状態です。貸金返還請求権は可分債権に該当する相続財産であり、プラスの財産として扱われます。

相続人が自分1人の場合および貸金返還請求権をすべて自分が承継する場合、債権・債務の混同により借金が消滅します。一方でほかの相続人が貸金返還請求権を承継する場合、債権者が当該相続人に変わり、当該相続人に対する返済義務が生じる仕組みです。

以上のように、親からの借金が親の死亡により消滅するとは限りません。

相続における貸金返還請求権は扱いが難しく、トラブルの原因になる恐れもあります。少しでも疑問や不安があれば、専門家に相談することをおすすめします。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
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