親名義の家の相続税はいくら?二世帯・同居・空き家で変わる税額の目安を徹底解説

親名義の家を相続するとき、「相続税はいくらかかるのか」が気になる方もいらっしゃるでしょう。
親名義の家を相続する場合、二世帯で同居を続けるのか、しばらく空き家として管理するのか、早期に売却するのかで税金が変わってきます。評価の起点となる路線価や固定資産税評価、配偶者・同居親族の有無、小規模宅地等の特例の適用可否も重要です。
この記事では、二世帯・同居・空き家だった場合の相続税の目安と判断手順を解説します。
目次
親名義の家の評価方法:路線価と固定資産税評価の使い分け
親名義の家の評価方法には、路線価と固定資産税評価の2つの方法があります。これら2つの方法はどのように異なり、どういった適用基準があるのでしょうか。詳しく解説します。
相続税評価の基本は「路線価」
相続税で土地を評価するときは、国税庁が毎年公表する「財産評価基準書」の路線価を用いるのが原則です。評価は相続が生じた年分の基準で行い、路線価はその年の1月1日を評価時点として、公示価格等の80%程度を目安に定められます。市街地など路線価が付された地域では、当該道路の1㎡単価(千円単位)を起点に、地積や形状等の補正を加えて算定します。
路線価が設定されていない地域では「倍率方式」を用いるため、まずは相続年分の路線価図に該当があるかを確認し、なければ評価倍率表と固定資産税評価額で計算する流れです。
親名義の家の相続税額を見積もる際も、この手順に従って評価根拠をそろえると、特例適用や費用計画の前提が明確になります。
家屋は固定資産税評価が起点
家屋の相続税評価は「固定資産税評価額をそのまま用いる」のが基本です。国税庁は家屋の価額を原則として固定資産税評価額×1.0と定めており、マンション等の区分所有でも課税明細書の評価額が起点となるのです。
建築中でまだ評価額が付いていない場合は費用現価の70%で評価する特則があり、相続年分の状況に応じて判断します。
家屋は路線価の適用対象外で、土地は路線価方式等で別途評価するため、両者を切り分けることで特例適用や資金計画の前提が明確になります。また固定資産税評価は原則3年ごとに評価替えが行われるため、最新の評価年度も併せて確認しましょう
親名義の家の「相続税はいくらから?」を素早く押さえる:基礎控除と速算表

親名義の家を相続する場合、どのくらいの評価額になったら相続税が発生するのでしょうか。土地や家屋の評価額によっては、基礎控除の適用により、相続税が発生しない可能性もあるでしょう。詳しく解説します。
基礎控除の式と“課税の有無”の目安
親名義の家を相続する際、まず把握すべきなのは相続税の基礎控除額です。基礎控除額は3,000万円に法定相続人1人あたり600万円を加えた金額で計算され、相続財産の総額がこの基礎控除額を下回れば相続税は発生しません。
基礎控除の具体的な計算式は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」となります。
配偶者と子ども2人が相続人となるケースの場合、法定相続人は3人となり、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)となります。親名義の家と預貯金などを合わせた正味の遺産額が4,800万円以下であれば相続税はかかりません。
一方で遺産総額が6,000万円の場合、課税遺産総額は1,200万円(6,000万円-4,800万円)となり、この金額に対して相続税が課されます。
相続税の速算表で“だいたいの税額”がわかる
相続税の全体像を手っ取り早く把握したい場合は、国税庁の「速算表」を使って概算を出す方法があります。基礎控除後に残る課税遺産総額を法定相続分で按分し、各人の「法定相続分に応ずた取得金額」に税率と控除額を当てはめ、人数分を合計して相続税の総額を求める流れです。
計算は各人に直接税率を掛ける方式ではない点が重要です。
例えば課税遺産総額が一定額となり、配偶者と子2人で按分した場合、各人の金額に速算表の区分を適用して税額を出し、合計後に配偶者の税額軽減など個別の控除を検討します。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
まずは基礎控除の判定と按分の手順を踏分、速算表で“だいたい”を掴んだうえで詳細な控除・特例の可否を精査しましょう。
同居・二世帯で変わる「小規模宅地等の特例」:最大80%減で税額が激変
同居・二世帯で自宅の敷地を相続する場面では、「小規模宅地等の特例」が税額を大きく左右します。ただしいくつかの条件があります。以下より詳しく解説します。
自宅(特定居住用)330㎡まで最大80%減の中身
特定居住用宅地等は、被相続人の自宅の敷地について相続税評価額を最大330㎡まで80%減らせる制度です。この制度により税負担を大きく圧縮できます。
対象は相続開始直前に被相続人や生計を同じくする親族が居住に使っていた宅地で、配偶者が取得する場合は原則要件緩和、同居親族は申告期限まで居住継続など取得者ごとの条件があります。
特に重要なのは、330㎡を超える土地でも特例対象外となるわけではなく、330㎡までの部分について80%減額が適用され超過部分は通常評価となる点です。
たとえば400平方メートルの土地(評価額5,000万円)の場合、330平方メートル分の評価額に対して80%減額が適用されます。
計算式は以下のようになります。
5,000万円×330㎡÷400㎡×80%=3,300万円 |
つまり減額後の評価額は1,700万円(5,000万円 ー 3,300万円)となるのです。
参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
二世帯住宅の取り扱いと“落とし穴”
二世帯住宅は親名義の家であっても登記の仕方によって、小規模宅地等の特例の扱いが大きく変わります。
具体的には、親と子が同じ敷地で暮らしていても区分所有登記をしてしまうと別々の家として扱われ、親が実際に住んでいた部分に対応する敷地しか最大80%の評価減の対象にならないケースがあるのです。
一方で、内部で行き来できる二世帯住宅であっても、建物全体を親名義の単独登記にするか、親子の共有登記にしておけば、敷地全体を親の居住用宅地として扱い、小規模宅地等の特例を広く使える可能性があります。
相続税対策のつもりで完全分離型・区分登記の二世帯住宅を建てた結果、期待していた評価減が受けられない事例もあるため、建築や登記を検討する段階から、同居親族の要件と登記形態を税理士と一緒に確認しておく姿勢が重要です。
参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
「家なき子の特例」の活用も検討
親と同居していない子などが親名義の自宅土地を相続する場合でも、「家なき子」に該当すれば小規模宅地等の特例で最大80%の評価減を使える可能性があります。法律上の「家なき子」とは「親とは別居していて、自分名義の持ち家を持たず、賃貸暮らしをしている子などの親族」のことを指します。
ただし、この「家なき子の特例」を活用するためには、以下の要件を満たさなければなりません。
- 同居親族がいないこと
- 相続開始前3年以内は自分や配偶者、3親等内の親族、特定の法人が所有する家屋(亡くなる直前の親の自宅を除く)に住んでおらず、賃貸住宅などに住んでいること(いわゆる借家居住であること)
- 相続時点で自分が住んでいる家屋を過去に所有していた事実がないこと
- 相続した自宅土地を申告期限まで継続して所有すること
途中でマイホームを購入したり、親族所有のマンションに転居したりすると対象外になりやすいため、同居親族がいないケースでは、相続の相談を受けた段階で過去3年の住所履歴や名義関係、賃貸借契約の状況を確認し、「家なき子」の借家居住要件を満たすかどうかを早めに整理しておくと安心です。
空き家のまま所有する場合のコスト:固定資産税・都市計画税と“最大6倍”のリスク

空き家をそのまま所有し続けると、毎年の固定資産税・都市計画税の支払いが必要になるだけでなく、固定資産税の税額が「最大6倍」に跳ね上がるリスクが生じます。
なぜなら住宅として利用されている土地は、原則として小規模住宅用地なら固定資産税の課税標準が6分の1、一般住宅用地でも3分の1まで抑えられる特例がありますが、誰も住んでいない家で管理が行き届いていない場合は、「特定空家等」や「管理不全空家等」と認定されてしまい、自治体から勧告を受けると、住宅用地特例が外れてしまうのです。
その結果、同じ評価額でも軽減前の水準まで課税標準が戻り、固定資産税だけで最大約6倍、都市計画税も含めると負担が大きく膨らみます。
空き家を放置することによる税負担増と行政指導の可能性を理解し、売却や利活用、解体の検討を税理士と連携しながら早めに進める姿勢が大切です。「空き家になりそう」との見通しが出た場合は、早めに信頼できる税理士に相談しましょう。
参考:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針 (ガイドライン)|国土交通省
相続後に売却するなら:「相続空き家3,000万円控除」の最新要件
相続した空き家を売却する場合、「相続空き家3,000万円控除」の要件を押さえておくと、譲渡所得税を大きく抑えられます。ここでは「相続空き家3,000万円控除」の要件について解説します。
いつまで使える?何が変わった?
相続空き家の3,000万円特別控除は、「いつまで使えるか」と「令和6年以降に何が変わったか」を押さえるとイメージしやすくなります。
まず適用期限ですが、制度そのものは平成28年4月1日から令和9年12月31日までに行う譲渡が対象です。加えて、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があり、この二つの期間要件を両方満たして初めて特例が使えます。
そのうえで、令和6年1月1日以降の譲渡から運用が拡充されました。
従来は「売る時点までに耐震改修を終えている」か「事前に家屋を取り壊して更地で売る」場合だけが対象でした。改正後は、譲渡の時点では古い家が残っていても、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに、買主側で耐震改修や取り壊しを行えば特例の対象に含められるようになりました。
また、家屋と土地を相続した人が3名以上いるケースでは、合計3,000万円ではなく、一人あたり2,000万円まで控除できる仕組みに変わりました。
つまり「いつまでに売ればよいか」という時間軸と「どのようなタイミングで改修・取り壊しをしてもよいか」という要件が緩和され、相続人や買主の選択肢が広がったのです。
とはいえ、親名義の空き家を売却して税負担を抑えたい場面では、売却時期と工事の予定をセットで検討し、期限内に手続きが完了するよう、早めに不動産会社や税理士へ相談することをおすすめします。
まとめ
親名義の家の相続税がいくらになるかは、家だけでなく預貯金などを含めた相続財産の合計額から、基礎控除や各種特例を差し引いた後の金額で決まります。相続税は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除額を超えた部分に対してのみ課税され、実際に相続税がかかるケースはごく一部にとどまるケースが多いです。
親の自宅については、条件を満たせば小規模宅地等の特例により土地の評価額を最大80%まで抑えられるほか、空き家を相続後に売却する場合には「相続空き家3,000万円控除」によって譲渡益を圧縮できる可能性もあります。
つまり同じ「親名義の家」でも、同居か別居か、二世帯の構造や登記の仕方、相続後に住むのか売却するのかといった事情によって、最終的な税額は大きく変わります。
相続が身近に感じられた段階で、早めに税理士に相談し、納税資金の準備や節税の検討を行いましょう。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。






