遺産整理はどこに頼むべき?専門家の役割と状況別の選び方

遺産整理には、財産調査や遺産分割協議、相続税申告、相続登記などの多くの手続きが含まれます。司法書士や税理士といった複数の専門家が関わる場合もあるため、どこに頼むか迷いがちです。
本記事では、遺産整理を依頼できる専門家の役割と選び方を解説します。あなたの状況に合った依頼先を選択する参考にしてください。
目次
あなたの「遺産整理」は相続手続き?遺品整理?

「遺産整理」という言葉は、相続手続きを指す場合と、遺品の片付けや形見分けを指す場合があります。ご自身の遺産整理に照らし合わせ、どこに依頼をするのがベストなのかを確認しましょう。
相続手続きは士業に依頼
相続手続きには、亡くなった方の財産調査や遺産分割協議、銀行口座や不動産の名義変更、相続税申告・納税などが含まれます。専門知識と法律に基づいた正確な対応が求められるため、士業に依頼する場合が多いです。
法的リスクや相続トラブルを避けてスムーズに手続きを進めるには、専門家選びが重要です。登記は司法書士、相続税申告は税理士など、相談したい内容によって適切な相談先が異なります。内容別の相談先や専門家選びのポイントは後述します。
遺品整理・片付けは業者に依頼
故人の家財道具や日用品の分類、不用品の処分、清掃など物理的な片付け作業は、遺品整理の専門業者に相談しましょう。遠方で一人暮らしをしていた親が亡くなり、空き家となった実家の片付けに手が回らないといったケースに利用されることが多いです。
専門業者に依頼して早期に整理を進めることで、放置空き家となるリスクを避けられます。業者を選ぶ際は、安さだけでなく、遺品の取り扱い方や、不用品の買い取り、遺品の供養など、きめ細やかなサービスを提供しているかを確認しましょう。
遺産整理でやることー相続手続きの全体像

相続が伴う遺産整理で何から手をつけたらよいか分からない方は、まず相続手続きの全体像を把握しましょう。どの段階にいるのかを確認することで、次はどの遺産を整理するべきかが見えてきます。
遺言書の有無を確認する
遺言書があるかないかで相続手続きの方針が変わります。遺言書がある場合、遺産の分け方は原則として遺言書に従うためです。遺言書がない場合や、遺言書で分け方が指定されていない財産がある場合は、後述の「遺産分割協議」を行うことになります。
遺言書の保管場所として考えられる場所はいくつかあります。公正証書遺言の場合は、原本は必ず公証役場に保管されています。最寄りの公証役場に問い合わせると照会が可能です。
自筆証書遺言の場合は、法務局の保管制度を利用しているケースでは原本が法務局で保管されています。この制度を利用していない場合は、自宅のタンスや金庫などに保管している方もいます。
ここで注意したいのは、自宅などで遺言書を発見した場合は勝手に開封してはいけません。家庭裁判所での検認が必要なため、司法書士や弁護士などの専門家に相談して適切に対応しましょう。
財産調査を行う
亡くなった方のすべての財産と負債を洗い出す作業です。ここで作成する財産目録は、遺産分割や相続税申告の基礎となります。資産には預貯金、不動産、株式、生命保険などが含まれます。債務には借金、クレジットカードや税金などの未払金、連帯保証債務などが該当します。
もし財産の見落としがあると、負債の全体像が把握できず相続放棄の判断ができなかったり、相続税の申告漏れが生じたりするリスクがあります。特に、非上場株式や不動産などは、その評価額が相続税額に直結します。また、遺産分割の公平性を担保する上でも非常に重要な要素となります。
財産目録の作成や財産評価の算定が難しい場合は、早期に税理士や司法書士などの専門家に相談しましょう。
相続するかどうかの判断
財産調査の結果、負債(借金など)が財産を上回る可能性がある場合は、相続放棄または限定承認を検討しましょう。その場合、いずれも相続が発生したことを知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所へ申述が必要です。
相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったことになり、プラスの財産も負債も一切引き継ぎません。これは誰かの許可を得なくとも、個々の相続人が自分の判断で手続きできます。
一方、限定承認はプラスの財産の範囲で負債も引き継ぐ方法になります。万が一、多額の借金が見つかったとしても、相続人自身の財産で返済する必要はありません。ただし、相続人全員の合意の上で行う必要があります。限定承認は手続きも複雑なため、判断は弁護士など専門家に相談をした上で行うことが望ましいです。
特に、負債の有無だけでなく、プラスの財産(特に不動産や非上場株式)の評価額がいくらになるかによって、限定承認とするかどうかの判断が大きく左右されます。正確な財産評価は税理士などに依頼できます。
準確定申告
準確定申告は、亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得税を計算し、所得税の申告と納税を行う手続きです。手続きの期限は相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内です。相続人全員で、亡くなった方の居住地を管轄する税務署へ申告します。
準確定申告が必要なのは、確定申告の義務がある方と同じです。例えば、亡くなった方が個人事業主だった場合やアパートや駐車場などの不動産賃貸収入があった場合などです。生前に土地、建物、株式などを売却して所得があった場合も申告が必要です。
遺産分割協議
遺産分割協議は、相続人全員で財産の分け方を話し合い、その内容を遺産分割協議書にまとめる手続きです。相続税申告をする場合は、申告が10ヵ月の期限に間に合うように協議を完了させます。
遺産総額が多かったり、不動産など公平に分けるのが難しい財産が含まれる場合は、相続人同士で揉める前に専門家に相談するのが望ましいです。特に不動産は、財産の分割方法によっては相続税の特例(小規模宅地の特例など)の適用外となるリスクがあるため注意が必要です。
財産の名義変更(登記)
遺産分割協議書の内容に基づいて、各種財産の名義変更を進めます。
不動産の場合は法務局で相続による所有権移転登記(相続登記)を行います。不動産登記は2024年4月から義務化されたため、相続発生を知った日から3年以内に登記を行わなければなりません。自分で申請することも可能ですが、書類の収集や作成に専門知識が必要なため、司法書士に依頼する場合が多いです。
預貯金については、金融機関、有価証券は証券会社へ名義変更の申請を行います。自動車は、普通自動車の場合は運輸支局、軽自動車の場合は軽自動車検査協会に申請しましょう。
自分ですべての手続きを行うのが難しい場合は、行政書士に代行を依頼する方法もあります。
相続税申告
遺産総額が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告と納税が必要になります。相続開始の翌日から10ヵ月以内に、相続人全員が共同で申告書を提出し、相続人それぞれが自分の取得分に応じた税額を個別に支払います。
特例適用などの税金対策は、知識がないと適用漏れや計算ミスによる追徴課税のリスクが高まります。正確な申告のためには、相続に強い税理士に依頼することを強くおすすめします。
遺産整理をどこに頼むかは依頼内容によって異なる

遺産整理をどこに依頼するべきかは、相談したい内容によって異なります。相続手続きには複数の分野の専門家が関わってきます。費用と手間を削減するためにも、状況に合った相談先を選ぶことが鍵です。ここでは、各専門家が担う役割とメリットを解説します。
相続税申告・税金対策の窓口|税理士
税理士は、相続税の計算や節税対策の専門家です。相続税申告を行う場合、一連の遺産整理の手続きは、相続税申告の期限を意識して進める必要があります。
相続税申告の可能性がある場合は、税理士を最初の窓口としましょう。スケジュール管理と税務のアドバイスを一任することで、効率的に手続きを進められます。不動産や非上場株式などの複雑な財産がある場合、財産評価も含めて税理士に依頼すると安心です。
また、今回の相続だけでなく、二次相続まで見据えた長期的な節税シミュレーションと遺産分割のアドバイスが期待できます。
法的トラブルの解決|弁護士
相続人同士のトラブル解決は、弁護士が適切な相談先です。税理士や司法書士は法的に紛争解決に関与することができません。すでに相続人間で争いが生じてしまっている、あるいは生じそうな場合は、迷わず弁護士に相談しましょう。
また、限定承認における債務者への対応など、法的に複雑な手続きが必要な場合も、弁護士に相談すると安心です。逆に、一般的な相続手続きでトラブルのおそれがない場合は弁護士に依頼する必要はありません。
不動産の名義変更・遺産分割協議書の作成|司法書士
不動産の名義変更登記は司法書士の専門分野ですが、登記以外にも幅広い手続きに対応できます。相続人調査や財産目録の作成、遺産分割協議書の作成も一括して行うのが一般的です。
また、相続放棄の申述書や遺言書の検認申立てなどの家庭裁判所に提出する書類の作成も代行してもらえます。相続税申告の必要がなく、財産に不動産が含まれる場合、司法書士に一連の手続きを依頼する場合が多いです。
遺産分割協議書の作成・各種名義変更手続き|行政書士
行政書士は、権利義務や事実証明に関する書類を作成する専門家です。相続関係図や財産目録、遺産分割協議書の作成を依頼できます。
また、銀行や証券会社などの金融機関における、故人名義の口座の解約・払い戻しや名義変更手続きを代行します。自動車の名義変更手続きや廃車手続きも可能です。
ただし、税務や登記も含めた遺産整理全体を行政書士だけで完結することはできません。行政書士に相談する場合は、他の専門家を紹介してくれる連携体制があるかを確認しましょう。
遺産整理代行サービス|信託銀行
信託銀行や一部の金融機関は、遺産整理代行サービスを行っています。すべての手続きを丸投げできる安心感がある一方、費用が一般の士業に依頼するよりも高額になりやすい点がデメリットです。
銀行自身が相続税申告や登記を行うのではなく、実務は提携している外部の税理士や司法書士に委託します。費用対効果や専門性を重視する場合は、最初から相続に強い専門家に直接依頼するとよいでしょう。
相談先選びで失敗しないための4つのポイント
スムーズに手続きを進めるには、信頼できる専門家を選ぶことが重要です。専門家選びで失敗すると、余計なコストがかかったり、手続きが長引いたりするリスクがあります。ここでは、自分に合った相談先を見極めるための4つの視点を紹介します。
相続の実績と専門性
専門家にはそれぞれ得意な分野があるため、実績や専門性を確認することが大切です。
なかでも特に専門性の確認をおすすめしたいのは税理士です。法人税や消費税が得意な税理士もいれば、相続に強い税理士もいます。相続の実績が豊富な税理士であれば、相続税の特例を活用した節税や、二次相続対策、適切な財産評価などをしっかり行えます。
まずは事務所のWebサイトなどで相続の案件を取り扱っているか確認し、無料相談が可能であれば、複雑なケースやご自身と似たケースへの対応経験があるかを聞いてみるのもよいでしょう。
明確な料金体系
相続手続きの費用は、依頼先や相続財産の規模、手続きの複雑さなどによって大きく変わってきます。依頼後に「想定外の追加料金が発生した」というトラブルを避けるためにも、事前に見積もりを提示してもらいましょう。
報酬の計算根拠や、基本料金に含まれる業務の範囲は必ず把握し、依頼したいサポート内容が含まれているかを確認しましょう。見積もりの内訳を教えてもらえない場合や、追加料金の発生条件が明確でない場合は、最終的な費用が膨らみ後悔するリスクがあります。
金額の妥当性に不安がある場合は、複数の事務所から見積もりをとって比較検討することをおすすめします。
他士業との連携体制
遺産整理の手続きは、税務や登記など複数の専門家が関わるケースが多々あります。これらの専門家にそれぞれ個別に依頼すると、連絡や調整に手間がかかり、相続人の負担が大きくなってしまいます。
こうした負担を軽減するため、相続専門の税理士や司法書士に依頼すると、他の士業と連携してワンストップで手続きを完了できる場合が多くなります。相談内容に応じた連携体制があるかどうかは依頼前に確認しておくと安心です。
専門家との相性
専門家を選ぶ上で実績や費用と同じくらい大切なのが、あなたと専門家との相性です。
相続手続きは、家族関係や財産などプライベートな事項を開示する必要があります。そのため、話しやすいと感じるかどうかは専門家選びの重要な指標です。あなたの不安や疑問に耳を傾けて、分かりやすく説明してくれる専門家に依頼しましょう。
この相性は実際に話してみないと分からない部分が大きいです。無料相談を実施している事務所も多くあるため、積極的に活用して見極めましょう。あなたの精神的な負担を減らし、安心して任せられるサポートを提供してくれるかどうかが専門家選びのポイントです。
まとめ
遺産整理は相続手続きと遺品整理に分かれ、相続手続きの場合は士業に依頼するのが一般的です。遺産分割協議書の作成や相続税申告など、依頼したい内容によって適切な相談先が異なります。
期限のある手続きもあるため、すべて自力で行おうと悩むよりも、税理士や司法書士に相談することをおすすめします。相談先を選ぶ際は、専門性や料金体系、話しやすさなど複数のポイントを確認し、信頼できる専門家に依頼しましょう。
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相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。









