土地保有特定会社から外れる方法(土地特外し)とは?仕組みと注意点を解説
土地保有特定会社から外れるには、どのような方法や手続きが必要なのでしょうか。土地を多く保有する企業は、自社株評価が高くなり相続税の負担が増えるため、「土地特外し」によって評価方法を見直すケースが多くあります。本記事では、土地保有特定会社の判定基準から、土地特外しの具体的な手法、実施時の注意点までをわかりやすく解説します。自社株評価を適正に抑えたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
土地保有特定会社を「外す(特外し)」とは?

「土地特外し」とはどのような対策なのでしょうか。「土地特外し」の基本的な仕組みと目的について解説します。
土地保有特定会社とは
「土地保有特定会社」とは、会社の総資産のうち土地や借地権などの「土地等」が占める割合が一定以上となっている会社を指します。
通常、非上場会社の株価は「類似業種比準価額方式」または「純資産価額方式」のいずれかで評価されますが、土地保有特定会社に該当すると、類似業種比準価額方式が使えず、原則として純資産価額方式で評価されます。
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評価方法 |
概要 |
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類似業種比準価額方式 |
上場企業の株価や利益、配当などを基準に算定する |
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純資産価額方式 |
会社の保有資産をすべて時価で評価し、負債を差し引いて株価を算定する |
「純資産価額方式」は、土地などの含み益がそのまま株価に反映されるため、土地を多く保有する企業ほど株価が高くなり、相続税や贈与税の負担が増える傾向にあります。
「土地特外し」とはどういう行為か
このような評価上の不利を避けるために、土地や建物などの資産構成を見直し、土地等の割合を一定基準未満に引き下げる行為を「土地特外し(とちとくはずし)」と言います。
目的は、「純資産価額方式」から「類似業種比準価額方式」へ戻し、株式の評価額を下げるためです。評価方法が変われば、事業承継や相続時の税負担を軽減できる可能性があります。
特に、土地を多く保有している中小企業や不動産賃貸業のように、資産の大半が土地に偏っている企業では、土地特外しの効果が現れやすいでしょう。
土地保有特定会社の具体的な判定基準

では、具体的にどのような会社が土地保有特定会社に当たるのでしょうか。土地保有特定会社の判定基準や対象となる資産の種類について解説します。
どのような会社が該当するのか
土地保有特定会社に該当するかどうかは、会社の規模と総資産に占める土地等の割合によって判断されます。例えば、以下表の基準を超えると、「土地保有特定会社」とみなされ、株式の評価方法が制限されます。
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会社区分 |
会社区分の判定基準 |
土地保有特定会社の判定基準 (総資産に占める土地等の割合) |
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大会社※ |
従業員数70人以上 または 総資産価額が20億円以上 |
70%以上 |
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中会社 |
従業員数20人以上70人未満 または 総資産価額が2億円以上20億円未満 |
90%以上 |
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小会社 |
上記いずれにも該当しない会社 |
大会社・中会社の基準にある会社 |
※相続税評価での株式評価上の技術的な分類であり、会社法上の「大会社」(資本金5億円以上など)とは異なる。また、業種によって総資産価額を区分する金額などが異なる。
大会社では総資産の70%以上、中会社では90%以上が土地等で構成されている場合に該当します。小会社は原則対象外ですが、総資産規模が大会社や中会社並みであれば、同様の基準が適用されるので注意しましょう。
参考:第1表の1 評価上の株主の判定及び会社規模の判定の明細書 | 国税庁
「土地等」に含まれる資産とは
判定に用いられる「土地等」には、土地や借地権、地上権などのほか、販売用土地や造成中の土地なども含まれます。所有目的や利用状況に関係なく評価対象とされるため、事業用として保有している土地でもカウントされる点に注意しましょう。
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区分 |
含まれる主な資産 |
補足説明 |
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宅地 |
自社が所有する土地 |
事業所・工場・倉庫などの用地を含む |
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借地権 |
他人の土地を借りて使用する権利 |
借地権付建物を保有している場合も対象 |
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貸宅地 |
他人に貸している土地 |
借地契約を結んで賃貸収入を得ているケース |
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貸家建付地 |
建物を貸している土地 |
建物と一体で貸している土地部分が該当 |
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販売用土地 (棚卸資産) |
不動産業などで販売目的に保有している土地 |
売買目的で保有している場合でも評価対象 |
「土地保有特定会社」と「株式保有特定会社」の違い

「土地保有特定会社」と混同されやすいのが、「株式保有特定会社」です。
どちらも、会社の資産構成に偏りがある場合に「類似業種比準価額方式」が使えず、株価が「純資産価額方式」で評価されるという点で共通していますが、判定に使う資産の種類が異なります。
土地保有特定会社は「土地等」の割合、株式保有特定会社は「株式等」の割合を基準として判定します。
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区分 |
判定の対象となる資産 |
判定基準 |
評価への影響 |
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土地保有特定会社 |
土地・借地権・貸宅地などの「土地等」 |
大会社:総資産の70%以上 中会社:90%以上 |
土地の保有割合が高いと、純資産価額方式が適用され株価が上がる |
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株式保有特定会社 |
他社株式や出資金などの「株式等」 |
総資産の50%以上 |
株式や投資を多く保有していると、純資産価額方式が適用される |
中小企業の中には、事業用地と関係会社の株式を同時に多く保有しているケースもあり、状況によっては両方の特定会社に該当する可能性があるため注意しましょう。
土地特外しの具体的な方法
では、土地特外しはどのように進めるのでしょうか。土地等の割合を見直すための具体的な方法について解説します。
建物・設備などの取得によって土地割合を下げる
建物や設備などを新たに取得して、総資産に占める土地の割合を下げる方法です。
例えば、老朽化した事務所や倉庫の建て替え、新しい生産設備の導入などを行うと、建物や機械の評価額が増える分だけ土地の比率が下がります。
このような設備投資は、事業拡大や生産性向上などの経営目的と一致していれば、自然な形で土地特外しの効果が得られます。節税目的だけでなく、実際の事業運営にもプラスになる方法と言えるでしょう。
他の有価証券・事業用資産を購入してバランスを取る
株式や投資信託などの金融資産、あるいは事業用の車両や備品などを購入し、土地以外の資産を増やして土地割合を下げる方法です。
総資産に占める土地の比率を相対的に小さくすれば、判定基準を下回るように調整できます。
ただし、「土地割合を下げるためだけ」の取引は税務上認められない可能性があります。
投資や資産購入は、実際の事業活動や資金運用の方針と整合しているかどうかを確認し、経営上の合理的な理由が説明できる形で行いましょう。
土地を売却して保有割合を下げる
土地そのものを売却し、土地等の保有額を直接的に減らす方法です。
特に、使われていない遊休地や事業に関係の薄い土地を整理する場合、経営の効率化にも繋がります。
ただし、土地を売却して利益が出た場合には法人税などが課されるほか、相続や決算の直前に売却を行うと「一時的に土地割合を下げただけ」と判断される可能性がある点に注意しましょう。
税務上のリスクを避けるためにも、売却の時期や目的を十分に検討したうえで実施するのが重要です。
土地特外しを行う際の注意点
土地特外しを行うときには、どんな点に気をつければ良いのでしょうか。土地特外しを実施する際に注意しておきたいポイントについて解説します。
経済的合理性のない資産移動は認められない
実際の事業運営や経営上の必要性に基づいて資産を動かすようにしましょう。
土地特外しはあくまで経済的合理性があることが前提であり、税金を減らすためだけの目的で行う取引は認められません。
短期間だけ資産を移動して土地割合を下げたように見せかけると、「実態のない取引」と判断される可能性があります。
投資や売却を行う際は、なぜその取引が必要なのか、どのような経緯なのかを社内で明確にしておくのが大切です。
決算や相続の直前に行う取引はリスクが高い
取引のタイミングにも十分注意しましょう。
相続や決算の直前に慌てて土地を売却したり、他の資産を購入したりすると、「一時的に土地割合を下げただけ」と判断されるリスクがあります。
その場合、土地特外しの効果が認められず、最終的には「土地保有特定会社」として扱われ、株価評価で純資産価額方式が適用されてしまう可能性があります。
安全に進めるためには、余裕をもった準備期間を確保し、資産構成の変化が継続的であると示しましょう。
外した後も再び該当する可能性がある
土地特外しを行った後も、定期的に資産構成を確認するようにしましょう。
地価や路線価の上昇、新しい土地の取得などにより、再び基準を超えてしまう場合があります。また、建物や設備は減価償却で価値が下がるため、時間の経過とともに土地割合が上がるケースも少なくありません。
土地特外しを行った後も、定期的なモニタリングと資産バランスの見直しを続けるのが重要です。
業種や資産構成によっては実施が難しい場合もある
自社の事業内容に合わせて、現実的に実施できるかどうかを見極めましょう。
不動産賃貸業のように、土地を保有すること自体が事業の中心である場合は、土地割合を大きく下げることが難しいのが実情です。また、小会社であっても土地等の割合が90%を超えるような場合は、構造的に基準を下回るのは困難です。
こうした場合は、土地特外しにこだわらず、別の株価対策や事業承継スキームの検討を行うようにしましょう。
土地特外しを検討する際は専門家に相談を
土地特外しは、自社株評価を抑える効果が期待できる一方で、実施方法を誤ると税務上の否認や思わぬ課税リスクを招く可能性があります。資産の売買時期や取引目的の説明が不十分だと、節税効果が認められないケースもあります。
こうした判断には、税務と事業承継の双方に精通した専門家の助言が欠かせません。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。