遺産分割で揉める原因ってなに?事前にできる対策を紹介

遺産分割で揉める原因ってなに?事前にできる対策を紹介

相続が発生すると、相続人は遺産分割協議を行います。この際に、なかなか話がまとまらずトラブルに発展するケースは少なくありません。

この記事では、遺産分割の際に揉める原因や事前にできる対策について解説しています。また、遺産分割にあたって知っておきたい相続の基礎知識も紹介しています。

相続の基礎知識

相続という制度には、細やかなルールが設けられています。遺産分割で揉めないようにするためにも、まずは基本的な相続のルールについて確認してみみましょう。

原則として法定相続人が相続する

相続というのは、誰でもできる訳ではありません。原則として、民法で定められた法定相続人のみが相続できることになっています。法定相続人に該当するのは、配偶者・子ども・両親・兄弟姉妹です。

基本的には上記以外の人は相続できませんが、事情により上記以外の人に遺産を渡したい場合は遺贈という選択肢があります。遺贈とは、遺言書を用いて相続人以外の方に財産を譲る方法のことです。

遺贈には特定遺贈と包括遺贈という2つの方法があります。特定遺贈とは、引き渡す財産の種類を指定する方法のことです。例えば、「○○の不動産をAに遺贈する」というものが特定遺贈に該当します。

対する包括遺贈とは、引き渡す財産の割合のみを指定する方法のことを指します。具体的には、「財産の5分の1をAに遺贈する」という内容が該当します。この方法では、遺贈により財産を受け取る人も遺産分割協議に参加することになります。

法定相続人には順位と相続できる割合が決められている

相続が発生した場合、すべての法定相続人が相続できるわけではありません。法定相続人には、それぞれ順位と相続できる割合が決められています。遺言書がない場合は、この順位と割合に則って遺産分割を行うのです。

具体的には、以下のように設定されています。

相続順位

続柄

法定相続割合

常に相続人

配偶者

他の相続人との組み合わせで異なる

第一順位

配偶者がいる場合: 2分の1
配偶者がいない場合:すべて

第二順位

直系尊属
(親・祖父母など)

配偶者がいる場合:3分の1
配偶者がいない場合:すべて

第三順位

兄弟姉妹

配偶者がいる場合:4分の1
配偶者がいない場合:すべて

例えば、亡くなった方が結婚しており、かつ子どもがいる場合は配偶者と子どもが2分の1ずつ相続をします。子どもが複数人いる場合は、2分の1を人数で等分します。

子どもがいない場合は配偶者が3分の2、親が3分の1、親がいない場合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。このように上の順位から順番に相続していく仕組みになっているのです。

遺留分により最低限相続できる割合が保証されている

兄弟姉妹以外の法定相続人には、最低限相続できる割合が民法により保証されています。これを遺留分と言います。

たとえば、遺言書によって「財産のすべてを配偶者に相続させる」と記されてあった場合、本来相続する予定だった人は相続できなくなってしまいます。これでは、相続人同士の不平等感が生まれてしまい、感情的な対立にも繋がりかねません。特定の相続人が損をしないように作られたのが遺留分という制度なのです。

遺留分を侵害された場合は、遺留分侵害請求を行うことで侵害額の支払いを受けられます。

相続人が亡くなっていた場合は代襲相続が発生する

相続発生時点で本来の相続人がすでに亡くなっていた場合は、代襲相続という制度が適用されます。たとえば、相続発生時点で被相続人の子どもが亡くなっていた場合は孫が子どもに代わって相続人となります。代襲相続が起こるのは、直系卑属(孫や玄孫など)と甥姪のみです。

代襲相続が生じた場合、代襲相続によって相続する人(代襲相続人)は、本来の相続人が引き継ぐはずだった財産をそのまま引き継ぐことになります。

相続税申告の流れ

自分で相続税の申告

原則として、相続が発生したら以下の流れに沿って申告や納税を行います。

  1. 相続財産と相続人の確定
  2. 遺産分割協議
  3. 申告・納税

相続が発生したら、まずは亡くなった方がどのような財産をどれくらい持っていたのか、借金などの負債はいくらあるのかという確認を行います。負債まで確認するのは、相続財産に負債などのマイナス要素も含まれるためです。具体的には、預金や株式、不動産、保険金、自動車、借入金などが挙げられます。

すべての財産が確認できたら、これらを目録にまとめましょう。財産の確認だけでも多くの時間と労力がかかるため、なるべく早めに取り掛かると安心です。また、この作業と並行して相続人の確認も行わなくてはなりません。

面識のない相続人がいた場合、後々のトラブルの原因となりかねません。そのため、相続人の確認は戸籍謄本を用いて第一順位から順番に行ないましょう。

ここまで完了したら、誰がどの財産をいくら相続するのかを話し合わなければなりません。これを遺産分割協議と言います。遺言書がある場合は、基本的にはその内容に沿って分割しますが、法定相続分通りに行いたい場合はその旨も話し合います。

原則として、遺産分割協議は相続する人全員が揃った状態で行わなければなりません。誰か1人でも欠けていると、その協議自体が無効になってしまいます。多くの相続トラブルは、この話し合いの際に生じます。

無事に話し合いがまとまったら、決定事項を遺産分割協議書にまとめましょう。その後、相続税の申告および納税を行うことで手続きは完了します。

遺産分割で揉める主な原因

養子縁組によるトラブル

遺産分割協議の際にトラブルに発展する原因はケースバイケースですが、特に多いものを以下で紹介していきます。

原因1:特定の相続人だけが生前贈与を受けていた

相続人のうち特定の相続人だけが生前贈与を受けており、かつ特別受益に該当する場合はトラブルの要因になりやすいと言われています。

特別受益とは、特定の相続人だけが財産を譲り受けることを指します。たとえば、2人いる子どものうち第一子のみが財産を譲って貰っていた場合、特別受益に該当する可能性があります。

特定の相続人のみが前もって財産を受け取っていると、他の相続人との不平等感が生まれてしまいます。また、特別受益は遺産分割の際に相続財産に持ち戻して分割することになっているため、その際に特別受益を受けた側とそれ以外の相続人で揉めるケースもあります。

原因2:財産に不動産が含まれている

相続財産の大部分が不動産である場合や、相続財産に不動産が含まれている場合は遺産分割の際に揉めてしまう可能性があります。これは、不動産が分割しづらい性質であることに起因しています。

不動産の分割は換価分割現物分割代償分割という3つの方法があります。それぞれの分割方法の特徴は以下の通りです。

分割方法

特徴

換価分割

不動産を売却し、そのお金を分割する

現物分割

不動産自体を相続人で分ける

代償分割

特定の相続人が相続する代わりに他の相続人にお金を支払う

上記を見ても分かる通り、不動産の分割方法は様々です。どのように分割するのかで揉めたり、複数の不動産がある場合は誰がどの不動産を相続するか揉めたりするケースは珍しくありません。

原因3:相続人同士の感情的な対立がある

亡くなった方の介護を担っていた相続人がいる場合などは、法定相続割合通りの分割に否定的な感情が生まれるケースがあります。通常、遺言書がない場合は法定相続割合に則って分割しますが、その際に「介護をしていたから多く貰いたい」といった対立が生じることがあるのです。

また、この他にも婚外子がいた場合や兄弟が不仲である場合なども感情的な対立からトラブルに発展することもあります。

原因4:遺留分の侵害がある

相続人が最低限受け取れる財産のことを遺留分と言います。この遺留分がある場合は、相続人同士のトラブルに発展しやすいと言われています。これは、遺留分を侵害している側が侵害相当額の支払いをしなくてはならないからです。

例えば、兄が弟の遺留分を30万円侵害していた場合では、兄は侵害額である30万円を弟に支払わなくてはなりません。遺言書が遺留分を侵害してしまう内容だったり、特別受益があったりするとトラブルになる可能性が高まります。

原因5:遺言書に不備がある

遺言書に不備がある場合、その遺言は無効となります。例えば、「長女に○○の不動産を譲る」と記載していたとしても、不備があれば法定相続割合に従って分割せざるを得ません。

無効となる具体的な不備には、以下のようなケースが挙げられます。

  • 全文の非自書:遺言の本文はパソコンで印字されていてはいけません。
  • 日付の不備:遺言書に「令和7年吉日」など、具体的な日付の記載が必要です。
  • 押印の欠如:遺言者本人の署名はあっても押印が欠けていると無効となります。

故人の意思とは異なった結果になるだけでなく、相続できる財産の金額や内容にも影響するため、揉め事に発展する恐れがあるのです。

出典:民法 | e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」第968条

遺産分割で揉めないようにするには?

遺産分割での揉め事を避けるためには、遺言書の作成が有効です。

遺言書には、自筆遺言秘密証書遺言公正証書遺言という3つの種類があります。

自筆遺言とは

被相続人が自筆で作成した遺言書のことです。この方法は、費用がほとんど掛からない反面、紛失や改ざんされる可能性があります。

秘密遺言とは

遺言内容を他者に明かすことなく作成できる遺言書のことです。公証人によって作成の事実を証明できるという特徴があります。ただし、遺言書そのものは被相続人が作成するため、不備があった場合は遺言書が無効となります。

公正証書遺言とは

公証人によって作成された遺言書のことです。被相続人が口頭で遺言内容を伝え、それを公証人が書き起こす形で作成されます。紛失改ざんや不備により無効となるリスクがない点が特徴です。

確実に遺言を実行したい場合は、公正証書遺言を作成しておくと良いでしょう。遺言書があれば、特定の相続人に対して他の人の遺留分を侵害しない範囲で多めに相続できるように計らうこともできます。積極的に介護を担ってくれていた相続人の感情的な不満を解消する方法としても遺言書は有効です。

遺産分割で揉めてしまった時の対処法

財産の分割でもめる親族

原則として、遺産分割でトラブルが生じたとしても、申告や納税は決められた期間内に行わなくてはなりません。具体的な申請および納税の期間は、財産の持ち主が亡くなった日の翌日から起算して10ヵ月以内となっています。

以下では、遺産分割で揉めてしまった時の対処法を解説していきます。

対処法1:遺産分割調停を行う

遺産分割協議の末、相続人全員が納得できる答えが出ない場合は遺産分割調停により解決を図ります。遺産分割調停とは、調停員を交えて話し合いを円滑化する手続きのことです。

第三者を交えることで感情的な衝突が生じづらくなるため、それぞれが納得できる折衷案を見出すことができます。調停を希望する場合は、家庭裁判所に申立てが必要です。ただし、調停では話がまとまるまでに多くの時間を要することを覚悟しておきましょう。

対処法2:士業の専門家に相談する

調停は避けたい、なるべく早く解決したいという場合は、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。専門家ごとで得意なことが異なるため、悩みに応じて相談先を選ぶことがポイントです。

専門家の決め方としては、相続税に関することであれば税理士、相続争いがある場合は弁護士などが挙げられます。

それぞれの専門家の専門分野については、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてお読みください。

二次相続を見据えた節税を

一次相続で節税しても二次相続で税負担が大きくなるケースが多く見られます。当法人では家族全体で最適な相続設計をご提案します。

対処法3:期限内に手続きが終わらない場合は未分割申告をする

相続税の申告と納税には10ヶ月という期限があります。この期限を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税などの追徴課税が課されてしまいます。不必要な課税を避けるためには、必ずこの期限内に申告と納税を終わらせなければなりません。

しかし、遺産分割協議がまとまらずに期限内に終わりそうにない場合は、未分割申告を行いましょう。未分割申告とは、いったん法定相続割合どおりに申告をする方法を指します。未分割申告を行う場合は、申告期限後3年以内の分割見込書という書類の提出が必要です。

未分割申告を行えば、正式な分割方法が決まったあとに修正申告や更正の請求により正しい税額で納税し直すことができます。

遺産分割で揉める原因を把握して生前に対策しておこう

相続が発生すると、遺言書がない場合を除いて誰がどの財産を相続するのか遺産分割協議をしなければなりません。

その際、特定の相続人だけが生前贈与を受けていた場合や財産に不動産が含まれている場合はトラブルの原因になりやすいと言われています。また、特定の人のみ被相続人の世話をしていた場合や懇意にしていた場合などは、相続人同士の感情的な対立が生じやすいです。

相続時のトラブルを回避するためには、生前にできる対策を講じておく必要があります。具体的には、遺言書を作成して遺産分割の内容を指定しておくという方法が有効です。この他にも円滑に相続手続きが進むように、財産状況を家族と共有しておくことも大切です。

本記事を参考に遺産分割で揉める原因を把握して、スムーズに相続手続きが完了するように対策しておきましょう。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。