数次相続の遺産分割とは?手続きの流れと重要ポイントを解説

数次相続の遺産分割とは?手続きの流れと重要ポイントを解説

数次相続が起きると、遺産分割をどう進めればよいのか分からず不安に感じる方は少なくありません。数次相続は、一次相続の手続き中に相続人が亡くなり、相続関係が二段階に広がることで、持分計算や協議が一気に複雑化するのが特徴です。本記事では、数次相続の仕組み、遺産分割が難しくなる理由、注意点、実務で起こりやすい問題を整理して解説します。数次相続の遺産分割で迷っている方は、ぜひ最後までご覧ください。

数次相続とは

数次相続とは、一次相続の遺産分割が完了する前に相続人が死亡し、その未確定の持分を含んだまま次の相続が発生する状態を指します

一次相続で本来確定するはずの財産割合が二次相続へそのまま持ち越されるため、相続関係が連鎖して発生し、二つの相続を別々に扱えないのが特徴です。

数次相続が発生しやすい状況

数次相続が起こりやすい典型例は、高齢の親の相続が始まったものの遺産分割がまとまらないうちに子が亡くなるケースです

また、遺産分割協議を数年単位で放置してしまうと、その間に相続人の死亡や家族構成の変化が起こりやすく、結果として二次相続・三次相続へ連鎖し、相続人の人数が増加します。

数次相続が複雑になる理由

数次相続では、一次相続と二次相続それぞれの相続人が入り混ざり、持分の承継関係が段階的に入れ替わるため「誰がどの財産をどれだけ受け継ぐのか」が把握しづらくなります。

その結果、法定相続分の算定や遺産分割協議書の作成が通常より高度になり、計算間違いや記載漏れのリスクも増加します。協議の調整が難航しやすい点も複雑化の大きな理由です。

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数次相続と他の相続制度の違い

数次相続は、名称が似ている相続制度がいくつか存在するため、どれが自分の状況に当てはまるのか判断しづらい場面があるでしょう。制度ごとに仕組みや前提が異なるため、正しく理解しておく必要があります。

数次相続と混同されやすい制度について、違いを整理しながら解説します。

「代襲相続」との違い

代襲相続との違いは、死亡のタイミングによって適用が分かれる点です。

代襲相続は、被相続人が亡くなる前に本来の相続人が死亡している場合に、その子や孫が代わりに相続する制度ですが、数次相続は、一次相続が始まった後で相続人が亡くなり、未確定の持分を含んだまま次の相続が発生する状態を指します。

適用場面が根本から異なるため、両者を明確に区別して理解するのが大切です。

「相次相続」との違い

相次相続との違いは、遺産分割の有無が判断基準になる点です

相次相続は、短期間に複数の相続が連続して発生する現象で、一次相続が未分割かどうかは関係ありませんが、数次相続は、一次相続の遺産分割が済んでいないまま相続人が死亡し、未確定の持分が次の相続へ持ち越されるケースを指します。

前提条件が大きく異なるため、制度の趣旨を正しく理解する必要があります。

「再転相続」との違い

再転相続との違いは、二次相続が発生するタイミングです

再転相続は、一次相続の熟考期間中に二次相続が発生したケースを指すため、再転相続人自身が一次相続と二次相続において相続放棄を検討できる可能性がありますが、数次相続は、一次相続の承認をした後に二次相続が発生したケースを指すため、二次相続の法定相続人が一次相続に対して相続放棄を選択することはできません。

財産の状態で手続きが異なるため、違いを押さえておくとスムーズに相続を進められます。

数次相続が発生した場合の遺産分割手続き

相続と贈与で悩む夫婦

数次相続が起きると、手続きの流れが通常より複雑になりやすくなります。相続が段階的に発生するため、確認すべき点や進め方に迷うケースも少なくありません。

数次相続の遺産分割を進めるうえで押さえたい基本的なポイントを順に解説します。

相続人関係を二段階で確定する

数次相続では、まず一次相続と二次相続の相続人を順番に確定する作業から始めます。両相続で相続人が異なるため、戸籍を集め直し、一次→二次の流れで関係者を整理する必要があります。

ここで漏れがあると後の協議が無効になるおそれがあるため、最初に相続関係図を作成し、続柄を正確に整理したうえで次の手続きに進むのが重要です。

未確定の持分を含めて財産構成を整理する

相続人確定が済んだら、次に一次相続の未確定分→二次相続で新たに発生する財産という順で構成を整理します。

一次相続で未分割だった持分はそのまま二次相続へ承継されるため、どの財産がどの段階で発生した持分なのかを順番に区分する必要があります。

この整理が不十分だと、次の協議や登記で大きな混乱が生じる原因になります。

協議・登記・申告を相続順に処理する

財産の整理が終わったら、手続きを一次相続→二次相続の順番で進めます。

遺産分割協議は両方の相続人全員で行い、協議書も二段階の相続関係を反映しながら順に作成します。不動産登記は中間省略ができないため、一次相続の名義変更を完了してから二次相続の登記へ進みます。

相続税申告もそれぞれ別に一次→二次の順で行うのが基本となります。

参考:不動産登記申請手続  |  法務局

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数次相続の遺産分割で押さえておくべき注意点

数次相続では、手続きが二段階にまたがることで通常の相続より検討事項が増えます。数次相続の遺産分割で押さえておくべき注意点について解説します。

相続人が増えて協議が複雑化しやすい

相続人が一次と二次にまたがって増えやすい構造なので、早い段階で関係者を整理して全員の参加状況を把握しておきましょう。

数次相続では死亡に伴い相続人が連鎖的に広がり、当事者の層が一気に拡大します。その結果、日程調整や意見調整が難航し、協議の合意形成に時間がかかる傾向があります。

話し合いが長期化しないよう、最初の整理が重要になります。

法定相続分や遺留分の計算が通常より難しくなる

持分が一度で確定しない構造なので、割合を算定するときは一次相続の前提も踏まえて慎重に確認しましょう。数次相続では未確定の持分がそのまま二次相続へ引き継がれるため、法定相続分や遺留分の計算が二段階になります。

前提を一つ誤るだけで取り分の認識がずれ、後の紛争に繋がりやすいため、計算プロセスを丁寧に確認する必要があります。

分割方法の選択肢が実務上狭まりやすい

最終的な承継者を整理しながら検討する必要があるため、理想だけで分割方法を決めず、現実的な選択肢を意識して決めましょう。

数次相続では相続人ごとの利害が複雑に絡むため、現物分割・換価分割・代償分割のいずれも選択可能ですが、希望通りの方法を採れないケースも多くあります。

分割手法を決める際は当事者の事情と持分関係を総合的に考慮するのが重要です。

協議書・登記・申告などの手続きが煩雑になる

前段階の相続関係を踏まえて確認すべき点が増えるため、各手続きを順に点検しながら慎重に進めましょう

数次相続では協議書の続柄・持分の書き方、不動産登記の名義変更、相続税申告の回数や期限など、通常より確認事項が格段に増えます。

相続関係が二段階にわたるため誤記や漏れが生じやすく、手続きの正確性を確保する姿勢が求められます。

数次相続の遺産分割に関してよくある質問

数次相続では、一次・二次の手続きが重なるため疑問が生じやすい部分が多くあります。特に相談の多い質問を以下に取り上げますので、状況整理の参考にしてください。

数次相続が起きると遺産分割の当事者はどう変わりますか?

当事者は一次相続と二次相続にまたがって増えるため、遺産分割の参加者が大きく変わります

生前贈与がある場合は一次相続で特別受益として扱われ、その評価が二次相続にも引き継がれます。

過去の贈与内容を把握しておかないと、持分計算に不公平感が生じ、協議が紛糾しやすくなる点に注意しましょう。

未分割の財産は数次相続後に誰が管理するのですか?

未分割財産は、数次相続でも「相続されたもの」として扱われ、二次相続の相続財産に持分ごと含まれます

一次相続の未確定分がそのまま承継されるため、持分が細かく分かれ、評価や協議が複雑化します。放置すると整理が難しくなるため、できるだけ早めに分割内容を確定しておくのが重要です。

遺言書があっても数次相続は発生しますか?

遺言書があっても、相続人が遺産分割前に死亡すれば数次相続は発生します

相続放棄も数次相続では別々に効力を持ち、一次相続を放棄しても二次相続では相続人となる場合があります。

また、放棄しても債務の状況によっては思わぬ負担が発生する可能性があるため、各相続の財産内容を事前に確認しておきましょう。

数次相続の手続きに不安がある方は専門家に相談

数次相続は相続人の増加や持分構造の複雑化により、遺産分割・登記・申告のすべてで誤りが起きやすく、放置すると協議が長期化したり、相続税が過大となるリスクがあります。

複数の相続が連続する場面では、一次と二次の双方を踏まえて最適な分割・税務判断を行う必要があり、自己判断だけで進めるのは危険です。

こうしたケースでは、相続実務に精通した専門家に早期に相談し、相続人の整理、持分計算、必要書類、税務判断を総合的にサポートしてもらうのが安心でしょう

小谷野税理士法人では、数次相続の申告・遺産分割の助言・登記専門家との連携まで一貫して対応し、状況に応じた最適な手続きを提案しています。複雑な相続で不安がある方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。