相続税を納めすぎた場合どうなる?正しい手続きと還付の要点を解説
相続税を「納めすぎているかもしれない」と感じたことはありませんか。土地評価の誤りや特例の適用漏れなど、申告後に見直すと税額が本来より高く計算されているケースは珍しくありません。本記事では、相続税を払いすぎる典型的な理由、更正の請求による還付手続き、見直しの判断ポイントまでわかりやすく解説します。相続税が適正か不安な方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
相続税を納めすぎてしまう典型的なケース

相続税はどのような場合に納めすぎが発生しやすいのでしょうか。実務で特に多い納めすぎの典型的なケースを紹介します。
土地の個別事情が反映されず評価額が高くなっている
土地は形状や接道、高低差、私道負担、崖地の有無など多くの要素が評価に影響しますが、机上の路線価計算だけで処理されると大きな誤差が生じます。不整形地や特殊条件のある土地は実勢に応じて減額される場合が多く、現地確認を前提とした再評価により評価額が大幅に下がるケースも珍しくありません。
こうした評価誤りは、相続税の納めすぎにつながる最も典型的な原因です。
小規模宅地等の特例や配偶者控除などが申告時に漏れていた
小規模宅地等の特例や配偶者控除は、相続税を大幅に減らせる制度ですが、要件確認の不足や書類不備により本来使えるはずの特例が申告時に適用されていないケースが多く見られます。
特に、小規模宅地等の特例は減額効果が大きいため、適用漏れがあると税額が大きく膨らみます。制度の理解不足や必要書類の不足が原因で、本来より多くの相続税を納めてしまう典型的な要因となります。
参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
未分割申告のまま特例を使わずに申告してしまった
遺産分割が期限までにまとまらないと、特例を適用せずに申告する「未分割申告」となり、税額が高く算定されます。その後、分割協議が成立して特例要件を満たしても、初回申告では税額が過大なまま確定してしまうため、結果的に納めすぎが発生しやすくなります。
遺産分割の遅れによる特例未適用は実務でも非常に多く、見直しや更正の請求に繋がる代表的なパターンです。
債務控除や未払費用の申告漏れがあった
相続税は、被相続人の借入金や未払の医療費、税金、葬式費用などを控除できますが、これらの計上漏れは実務でしばしば起こります。控除漏れが生じると、その分だけ正味の相続財産が多く計算され、税額が過大になります。
特に預金や不動産の把握に比べ、債務や費用は見落とされやすいため、控除漏れによる納めすぎは典型的な問題として多く確認されています。
評価不要の資産まで誤って申告してしまった
庭木・立木・老朽化した構築物など、本来は相続税の評価対象にならない財産を誤って申告してしまうケースがあります。庭園設備として評価対象になる場合もありますのでご注意ください。評価不要の資産を計上すると、その分だけ課税価格が増えてしまい、相続税の負担が本来より重くなります。
必要のないものを申告してしまう原因は、財産の区分や評価方法への理解不足であり、これも納めすぎを招く典型的な誤りのひとつです。
土地の利用区分を誤って評価してしまった
土地は宅地・貸宅地・借地権など利用状況によって評価額が大きく異なります。特に貸地や底地の評価は複雑で、自用地として高く評価してしまう誤りが頻発します。利用区分を誤ると、評価額が必要以上に高くなり、そのまま相続税額も過大になります。
土地の利用形態を正確に把握できなかったことが原因で、納めすぎが生じる典型的なパターンです。
相続税を納めすぎた場合に使える「更正の請求」とは

相続税を本来より多く納めてしまった場合でも、税額を見直して返金を受けられる「更正の請求」という制度が用意されています。制度の基本的な考え方や利用時に押さえておきたいポイントについて解説します。
更正の請求でできること
更正の請求とは、相続税を本来より多く納めてしまった場合に、税務署へ税額の訂正を求めて返金を受けるための制度です。土地評価の誤りや控除・特例の適用漏れなど、過大となった理由を資料で示し、正しい税額へ修正してもらいます。
申告時には気づかなかったミスが後から判明するケースも多く、その見直し手段として活用される重要な制度です。
更正の請求ができる期限(5年ルール)
相続税の更正の請求は、原則として「相続税の申告期限から5年以内」であれば手続きできます。この期限を過ぎると、たとえ明らかな評価誤りがあっても訂正を求めることができないため注意しましょう。
また、土地評価の再調査や資料作成には時間を要する場合が多く、早めに着手しないと期限に間に合わないケースもあります。疑いがある場合は早期に確認しましょう。
必要書類と手続きの流れ
更正の請求では、土地の再評価資料や特例適用の根拠を示す書類など、過大申告となった理由を裏づける資料をそろえて税務署に提出します。提出後は税務署が内容を精査し、必要に応じて追加資料の照会が入る場合もあります。
特に土地評価の見直しを含む場合は審査に数ヵ月以上かかるケースもあるため、余裕を持って準備し、問い合わせへ適切に対応するのが重要です。
納めすぎた相続税の還付が認められやすい典型パターン

相続税の還付は、特定の状況で誤りが見つかりやすく、見直しが進むケースが実務でも多く確認されています。どのような場面で更正の請求が通りやすくなるのか、代表的なパターンを紹介します。
不整形地・崖地・私道負担など大きな評価減要素がある土地を相続した場合
不整形地や高低差のある土地、崖地、私道負担のある敷地などは、本来評価額を下げる要素が多く存在します。しかし、机上計算のみで評価されると、これらの個別要因が十分に反映されず、過大評価となるリスクが高まります。
現地状況を踏まえて再評価すると大幅に評価額が下がるケースが多く、更正の請求で還付に繋がりやすい典型例でしょう。
相続税に不慣れな税理士や相続人自身で申告した場合
相続税申告の取扱件数が少ない税理士が担当した場合や、相続人自身が手続きを行った場合は、土地評価の細かな確認や複雑な特例の判断を十分に行えないケースがあります。
その結果、評価の過大計算や特例の適用漏れが生じ、税額が本来より高くなるリスクが高まります。申告後に専門家が精査すると誤りが見つかり、更正の請求で還付が認められるケースも多くみられます。
相続人が後から調査し申告内容との不一致に気づいた場合
相続人が遺産内容を整理する過程や専門家に相談した際、申告時の評価額や計算内容と実際の財産状況が一致していないと気づく場合があります。
特に土地は実態と評価額の乖離が起こりやすく、調べ直すことで評価誤りが発見されるケースも多いです。こうした不一致が確認できれば、更正の請求による見直しが進み、還付が認められる可能性が高まります。
相続税の納めすぎを見抜くために確認すべきポイント
相続税の申告内容に不安がある場合、どこを確認すべきかを押さえておくのが重要です。納めすぎの可能性を早期に把握するためにチェックすべきポイントについて解説します。
土地評価や特例の適用状況を自分でも点検する
土地は形状・高低差・接道・利用制限など評価要素が多く、誤りが起きやすい資産なので、自分でも点検しておきましょう。
専門家でも見落とす場合があるため、現地状況や制約が正しく反映されているかを確認するだけでも、納めすぎに気づける可能性があります。特に不整形地や私道負担の有無などは要チェックです。
相続税専門の税理士にセカンドオピニオンを依頼する
相続税は高度な専門性が求められる分野であり、担当者の経験によって評価精度に大きな差が出やすいため、専門税理士に再確認を依頼しましょう。
特に土地評価や特例判断は経験が結果を大きく左右します。相続税専門の税理士によるセカンドオピニオンは、納めすぎの発見や改善に繋がる有効な手段です。
更正の請求の期限を把握し早めに対応する
更正の請求には「申告期限から5年」という厳格な期限が定められているため、早めに対応しましょう。
この期限を過ぎると、明らかな誤りがあっても原則として還付を受けられないため、納めすぎの疑いがある場合は速やかに調査と判断を行う必要があります。迷った時点で専門家へ相談するのが確実です。
相続税の納めすぎに関してよくある質問
相続税を払いすぎた可能性に気づいたとき、多くの方が同じような疑問を抱えます。よく寄せられる質問をまとめましたので、納めすぎの可能性を見極める際の参考にしてください。
還付額はどのくらい戻ることが多いですか?
還付額はケースごとに大きく異なり、財産内容を精査しなければ正確には判断できません。土地評価の修正幅が小さい場合は数十万円程度にとどまりますが、宅地の特例修正の場合には数百万円単位になる場合もあります。
特例や控除の漏れが複数あるケースではさらに増える可能性もあり、個別の状況確認が必須です。
還付を受けても税務調査の対象になりませんか?
更正の請求を行ったこと自体が税務調査の直接の契機になるわけではなく、正当な根拠があれば過度に不安を抱く必要はありません。
税務署は提出資料に基づいて審査するため、内容に合理性があれば問題ありません。むしろ誤った申告を放置するほうが後々のリスクが大きくなるため、適切な手続きを行ったほうが安全です。
自分で調べた結果だけで更正の請求を出しても大丈夫ですか?
手続き自体は相続人だけでも行えますが、特に土地評価は高度な専門知識が求められるため、自己判断の資料だけでは誤りに気づけず、請求が認められない原因になりやすくなります。
特例や控除の判断も複雑なため、誤った申請は時間ロスにもつながりやすいのが実情です。還付の可能性がある場合は、事前に相続税専門の税理士へ確認するほうが成功率を高められます。
相続税の納めすぎが不安な方は専門家に相談
相続税の土地評価や特例適用は誤りが起きやすく、気づかないまま申告すると本来より多く税金を負担してしまうリスクがあります。さらに、還付請求には期限があり、判断が遅れるだけで返してもらえるはずの税金を取り戻せなくなる可能性があります。
こうしたリスクを避けるには、早い段階で相続税に詳しい専門家へ相談し、評価や申告内容を客観的に点検してもらうのが確実でしょう。
小谷野税理士法人では、土地評価の再検証や特例適用の確認、更正の請求の可否判断まで、豊富な実務経験に基づいて丁寧にサポートしています。相続税を払いすぎているか不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。
相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。
やさしい相続相談センターでは、お客様の資産をお守りする適切な申告をサポートさせていただきます。
初回相談は無料です。ぜひご相談ください。
また、金融機関や不動産関係者、葬儀関連企業、税理士・会計士の方からのご相談やサポートも行っております。
小谷野税理士法人の相続専門スタッフがお客様へのサービス向上のお手伝いをさせていただきます。
監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。





