相続税の申告期限を過ぎたらペナルティがある?間に合わないときの対処法まとめ
相続税の申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内」と法律で定められています。もしこの期限を過ぎてしまうと、「無申告加算税」や「延滞税」といったペナルティが発生し、税負担が大きくなるおそれがあります。また、配偶者控除や小規模宅地等の特例など、本来受けられるはずの優遇措置が使えなくなるケースもあるので要注意です。本記事では、期限を過ぎた場合のリスクと、間に合わないときの対処法を解説します。
目次
相続税の申告期限を過ぎたら課せられるペナルティ

相続税の申告・納付期限は相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月以内と定められています。この期限までに「申告」と「納税」の両方を済ませる必要があります。もし期限を過ぎてしまうと、次のようなペナルティが発生します。
無申告加算税
期限内に相続税の申告をしなかった場合、まず課されるのが「無申告加算税」です。申告期限の翌日以降に自主的に申告した場合や、税務調査の通知後に申告した場合に課されます。
ただし、申告期限から1ヵ月以内に自主的に申告し、納税も完了している場合は、一定の条件を満たせば無申告加算税が免除されます。一方、税務調査で「財産を隠していた」など仮装・隠蔽行為があったと判断されると「重加算税(本来の税額×40%)」が課される場合もあります。
重加算税
重加算税は、故意に申告をしなかったり、財産を隠したりした場合に課せられる非常に重いペナルティです。税務調査で「納税を逃れるための隠ぺいがあった」と判断されると、無申告加算税ではなく重加算税(税額の40%)が適用されます。一度課されると税負担が大幅に増えるため、早期の申告と正確な財産把握が必要です。
延滞税
相続税の納付が期限に間に合わなかった場合には「延滞税」が発生します。延滞税は、申告期限(法定納期限)の翌日から納付日までの日数に応じて課され、遅れた期間が長いほど金額が増えていきます。
税率は2ヵ月を境に段階的に変わり、近年は低金利の影響で年数%前後の特例利率が適用されています。納付の遅れが長引くほど延滞税は膨らむため、資金繰りに不安がある場合は早めに税理士へ相談しましょう。
相続税の申告や納付は、少しの遅れでも大きなペナルティにつながることがあります。「やさしい相続相談センター」では、期限後申告や延滞税が発生しているケースにも丁寧に対応しています。専門の税理士が状況に応じた最適な方法をご提案しますので、まずはお気軽にご相談ください。
相続税を期限後申告するデメリット

相続税の申告を期限後に行うと税額が増えるだけでなく、本来受けられるはずの控除や特例が適用できなくなるというデメリットがあります。期限後申告によって利用できなくなる主な控除・特例は、以下のとおりです。
配偶者控除(配偶者の税額軽減)
相続税の申告期限を過ぎると、配偶者控除が適用できなくなる可能性があります。この控除は、被相続人と共に築いた財産や配偶者の生活保障の観点から設けられた制度です。この控除を受けることで配偶者が相続する財産に対して大幅な税軽減が認められます。
具体的には、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額までが非課税となります。多くのケースで配偶者に相続税がかからないよう配慮されていますが、この控除を受けるには期限内申告が必須です。期限を過ぎてしまうと、たとえ要件を満たしていても適用されなくなってしまいます。
小規模宅地等の特例
「小規模宅地等の特例」は、被相続人の居住用や事業用に使っていた土地の評価額を、最大80%まで減額できる制度です。土地の評価額は相続税額を大きく左右するため、この特例の有無で納税額が何百万円も変わることもあります。
しかし、この特例も申告期限内に申告書を提出していなければ原則として利用できません。期限後申告になると、適用が認められず、結果的に相続税の負担が大幅に増えるおそれがあります。
参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
相続税の申告期限が間に合わないときの対処法

相続税の申告・納付期限(相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内)に間に合わない場合、原則としてペナルティを避ける方法はありません。期限を過ぎてしまうと、「無申告加算税」や「延滞税」などの追徴課税が課されます。そのため、できる限り期限内に申告・納付を完了させなくてはいけません。
ただし、どうしても遺産分割がまとまらず、期限内にすべての手続きを終えられないケースもあります。その場合は「未分割のまま申告する」という方法を取ることで、あとから特例を適用できる可能性があります。このときは、いったん「法定相続分」で分割したものとして税額を計算し、期限内に申告します。
ただし、未分割の状態では一部の税制優遇(特例)を受けることができません。ただし、次の特例については、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して期限内に申告すれば、分割後に特例を適用できます。
申告期限を過ぎてしまった場合でも、前提として放置せずできるだけ早く申告・納付することが大切です。自主的に申告した場合は、加算税が軽減または免除されるケースもあります。
相続税の申告を期限内に終わらせるためのポイント
ここでは、相続税の申告を期限内に進めるための3つのポイントを解説します。
被相続人の財産を早めに洗い出して把握する
まず最優先で行うべきは、亡くなった方の財産を正確に把握することです。相続財産には、預貯金・不動産・株式などの「プラスの財産」だけでなく、住宅ローンや借入金などの「マイナスの財産」も含まれます。
財産の全体像を把握するには、通帳・登記簿謄本・証券会社の取引明細などを確認しながら一覧表にまとめるのがおすすめです。財産調査に時間がかかると、申告準備が遅れてしまう原因になります。できるだけ早い段階で財産リストを作成し、専門家にも共有できる状態にしておきましょう。
相続人を正確に確定する
次に重要なのが、誰が相続人になるのかを正確に把握することです。相続手続きは、相続人が確定していなければ一歩も進めません。
まずは戸籍謄本を遡って取得し、法定相続人を明確にする作業を早めに行いましょう。もし申告期限間近になって新たな相続人が判明すると遺産分割協議をやり直す必要が生じ、申告期限に間に合わないリスクがあります。
遺産分割の方針を早めに決めておく
相続税の申告では「遺産を誰がどのくらい受け取るか」を決める遺産分割協議をする必要があります。しかし、相続人の意見が食い違うと協議が長引き、申告や納税が間に合わなくなることも考えられます。
トラブルを防ぐためには、生前に遺言書を作成しておくことが最も効果的です。もし遺言書がない場合でも、早い段階で家族間で話し合いの場を設け、分割方針をまとめておくとスムーズです。
相続税の申告を期限内に終えるには、財産調査や書類の準備などやるべきことが多く、個人で対応するのは大きな負担になります。「やさしい相続相談センター」では、初期の財産整理から申告書作成までを一括サポートしております。経験豊富な税理士が期限内申告をしっかりサポートするので、相続税申告でお悩みの方はまずお気軽に無料相談をご利用ください。
相続税の申告期限に関するよくある質問
最後に相続税の申告期限に関するよくある質問についてまとめたので、こちらも合わせて参考にしてください。
相続税の無申告はバレる?
相続税の無申告は、税務署に簡単に把握されてしまいます。死亡届の情報は、法務省から国税庁へ翌月末までに通知されるため、税務署は遅くとも死亡から2ヵ月以内に死亡事実を把握します。
さらに、税務署は「KSK(国税総合管理)システム」を使い、故人の所得・不動産・保険金・有価証券などの資産情報を一元的に照合可能です。そのため、相続税の未申告はすぐに発覚します。加えて、マイナンバー制度により情報連携が強化され、今後さらに把握精度が高まると考えられます。
相続税申告が必要ないケースは?
相続税の申告が不要かどうかは相続財産の総額が「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という基礎控除額を超えるかどうかで判断できます。この金額以下であれば、基本的に相続税の申告は不要です。
ただし、財産の把握漏れや評価の誤りがあると、実際には申告が必要なケースを見落とすおそれがあります。さらに、相続税額がゼロであっても特例や控除を適用するために申告が必要な場合もあるため、自己判断せず専門家に確認しましょう。
まとめ
相続税の申告・納付期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があります。それだけでなく、配偶者控除や小規模宅地等の特例が使えなくなるなど、大きな不利益が生じます。
遺産分割がまとまらず期限に間に合わない場合でも「未分割のまま申告」や「分割見込書の提出」によって、あとから特例を適用できる可能性があります。期限を過ぎてしまったとしても、放置せずに早めに申告・納税を行いましょう。
専門家のサポートを受けることで、ペナルティの軽減や特例の適用など、最適な対応が取れる可能性があります。相続税の申告や期限対応に不安がある方は、ぜひ一度「やさしい相続相談センター」へご相談ください。経験豊富な税理士が、状況に合わせて丁寧にサポートいたします。
相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。
相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。
やさしい相続相談センターでは、お客様の資産をお守りする適切な申告をサポートさせていただきます。
初回相談は無料です。ぜひご相談ください。
また、金融機関や不動産関係者、葬儀関連企業、税理士・会計士の方からのご相談やサポートも行っております。
小谷野税理士法人の相続専門スタッフがお客様へのサービス向上のお手伝いをさせていただきます。
監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。

