相続税の申告期限に間に合わない!期限を過ぎるリスクや対処法を解説

相続税の申告期限に間に合わない!期限を過ぎるリスクや対処法を解説

相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月以内です。期限内の申告が難しいといえる特殊な事情がある場合を除き、申告期限の延長は認められません。期限までに申告するのが大前提ではあるものの、どうしても期限に間に合いそうにない場合の対処法についても知っておくべきでしょう。

今回は「相続税の申告期限に間に合わない」という事態を防ぐために押さえるべきことについて解説します。

相続税の申告期限に間に合わない場合のリスクとは

はじめに、相続税の申告期限に間に合わないとどうなるかについて解説します。

ペナルティを課せられる

相続税に限らず、期限までに申告・納税をしない場合は以下のペナルティを課されます。

  • 延滞税
  • 無申告加算税

延滞税は税金が期日までに納付されていない場合に発生する付帯税です。厳密には申告期限ではなく、納付期限を過ぎたことに対して課されます。納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課されるため、日数が経過するほど延滞税の額が増えていきます。

無申告加算税は申告期限を過ぎても無申告である場合に課される付帯税です。納付すべき税額に一定税率を乗じた金額を支払う必要があります。

なお、相続税の無申告を隠し通すことはほぼ不可能です。無申告状態を放置するといずれ「相続税についてのお尋ね」や税務調査の事前通知などが届き、調査の後にペナルティを課されます。

一部の特例の適用を受けられない

相続税には様々な特例制度が設けられていますが、以下の特例は適用要件として「期限内申告」の定めがあります。

  • 配偶者の税額軽減
  • 小規模宅地等の特例
  • 相続税の寄附金控除
    (国、地方公共団体、公益目的の事業を行う特定の法人に寄附した場合の特例)
  • 農地、山林、非上場株式等を相続した場合の納税猶予の特例

申告期限を過ぎてしまうと上記の特例の適用を受けられません。控除の適用を受けられないため課税対象が多くなり、税額も高額になってしまいます。

なお、申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して未分割申告をすれば、修正申告や更正の請求で特例の適用が可能です。未分割申告については後述します。

相続税の申告期限を延長できる例外的なケース3選

時計と砂時計、カレンダー

原則として、相続税の申告期限は延長できません。遺産分割が終わっていない場合でも延長は不可能です。

しかし、例外的に相続税の申告期限の延長が認められるケースがあります。相続税の申告期限を延長できるケースを3つ紹介します。

[例外その1]災害その他やむを得ない理由がある

国税通則法施行令第3条で、災害その他やむを得ない理由がある場合は申告および納税期限の延長が認められると規定されています。延長できる期間はやむを得ない事由が解消した日から2ヵ月以内です。

なお、申告期限の延長を受けるには「災害による申告、納付等の期限延長申請」を提出する必要があります。

参考:国税通則法施行令 | e-Gov 法令検索C1-15、H1-22 災害による申告、納付等の期限延長申請|国税庁

[例外その2]申告期限1ヵ月以内に一定の事由が生じた

申告期限の1ヵ月以内に以下いずれかの事由が生じた場合、当該事由の発生日から2ヵ月の範囲内で申告期限の延長ができる場合があります

  1. 認知等により相続人の異動が生じた
  2. 死亡退職金の支給が決定した

根拠となるのは相続税法基本通達の第27条5項です。自己の責めに帰さないやむを得ない事実によるものとして、申告期限の延長が認められる場合があります。

参考:第27条《相続税の申告書》関係|国税庁

[例外その3]相続人の中に胎児がいる

相続人の中に胎児がおり、相続税の申告期限までに生まれない場合は、胎児の生まれた日から2ヵ月の範囲内で申告期限の延長が可能です。相続税法基本通達の第27条6項で定められています。

参考:第27条《相続税の申告書》関係|国税庁

相続税の申告期限に間に合わせるためのポイント3選

チェックポイント

相続税の申告期限の延長が認められるのは、災害を始めとしたやむを得ない理由がある場合のみです。基本的には、申告期限に間に合うように手続きを進めることが前提となります。

以下では、相続税の申告期限に間に合わせるために押さえるべきポイントを3つ紹介します。

[ポイントその1]手続きを早めに開始する

最も大切なのは相続税に関する手続きを早めに開始することです。

前述のように、相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内です。10ヵ月と聞くと余裕があるように感じるかもしれませんが、相続財産の調査や相続人の確定など、やるべきことは多岐にわたります。その上、遺産分割協議がスムーズに進むとも限りません。

申告期限までに申告書作成が終わらないというリスクを最小限に抑えるため、なるべく早く作業を開始しましょう。

[ポイントその2]トラブルの原因となり得る要素を可能な限り解消しておく

相続トラブルが発生すると、手続き完了までにかかる時間が長くなる上に精神的な負担も重くなります。そのため、相続トラブルの原因となり得る要素は生前のうちに可能な限り解消しておくのが理想です。

相続トラブルおよび生前のうちから対策できる要素として以下の例が挙げられます。

例)相続人同士の仲が悪くトラブルの懸念がある

[対策]遺言書で遺産分割の内容を指定する

例)推定相続人の中に連絡先がわからない人がいる

[対策]事前に連絡先を調べる、必要であれば調査を依頼する

相続発生後はやるべき手続きが多く、トラブル対処のための十分な時間をとるのは難しいです。すでに把握している懸念がある場合、生前のうちに少しでも対策を進めておきましょう。

[ポイントその3]税理士に依頼する

相続税の申告期限に間に合わない原因として、「手続きに不慣れなために時間をかけすぎてしまう」というケースも多くみられます。このような事態を回避する最も確実な方法は、相続税申告の手続きを税理士に依頼することです。

税理士には相続税に関する内容のすべてを依頼できます。相続税申告の代行はもちろん、相続人や相続財産の調査、相続税申告書に添付する遺産分割協議書の作成も可能です。

相続税申告は複雑で難易度が高いため、専門知識のない人が行うとどうしても時間がかかってしまいます。相続人の負担を最小限に抑えつつも期日までに確実に申告できるよう、専門家である税理士に依頼するのが安心です。

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相続税の申告期限に間に合わない恐れがある場合の対処法

遺産分割協議書

相続税の申告期限を過ぎてしまうと、「相続税の申告期限に間に合わない場合のリスクとは」で紹介した事態を避けられません。申告期限に間に合わない恐れがあるとわかった時点で対処をしましょう。

相続税の申告期限に間に合わない恐れがある場合の対処法は、遺産分割協議が終わっているか否かで異なります。以下よりそれぞれ詳しく解説します。

遺産分割協議が終わっていない場合|未分割申告をする

遺産分割協議が終わっていない場合、申告期限までに未分割申告が必要です。

未分割申告とは、法定相続分で遺産分割したものと仮定して相続税を計算し、申告・納税をすることです。一旦未分割の状態で申告をし、遺産分割の完了後に正しい内容で申告し直します。

なお、未分割申告では申告書とあわせて「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出も必要です。

遺産分割協議自体は終わっている場合|概算で申告する

遺産分割協議は終わっているものの、財産評価や必要書類の収集に時間がかかっているために時間的な余裕がないケースもあります。

このように遺産分割協議自体は終わっているものの、申告期限に間に合わない恐れがある場合、概算で申告するのも1つの手段です。概算でも期限までに申告・納税をすれば無申告とはみなされません。

概算で申告する際のポイントは実際の税額よりも少し多めになるようにすることです。過少申告の場合は、延滞税や過少申告加算税などの付帯税が発生しますが、過大納付にはペナルティがありません。また、更正の請求をすれば納付し過ぎた分の還付を受けられます。

相続税の申告期限遅れではペナルティを避けられない!「間に合わないかも」と思った時点での対処が必須

相続税の申告期限を過ぎてしまえば、延滞税や無申告加算税などのペナルティを避けられません。また、期限後申告では一部の特例の適用が不可能となります。

申告期限を過ぎてしまった後にできることはありません。そのため、申告期限に間に合わせるためのポイントを押さえる必要があります。それでも申告期限に間に合わない恐れがある場合、未分割申告または概算による申告が必要です。

相続税申告は複雑で難易度が高いため、専門知識のない人が行おうとするとどうしても時間がかかってしまいます。申告期限を過ぎてしまうリスクをなくすため、専門家である税理士に依頼するのが安心です。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。