夫婦で行う贈与の贈与税はどのくらい?節税のポイントを解説
夫婦の間で贈与があった場合、どのくらいの贈与税が課せられるのかご存知でしょうか。
本記事では夫婦で行う贈与における税金の取り扱いや、節税のポイントをご紹介していきます。夫婦間で贈与を検討している方や節税をしたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
夫婦で行う贈与は課税される?基本的な考え方
財産を無償で譲ることを贈与といいます。原則として贈与には贈与税という税金が課せられることになっています。以下では、贈与税の基本的な知識や夫婦で行う贈与に贈与税が課せられるのかについて解説していきます。
贈与税の基礎知識
贈与税の課税方法には、相続時精算課税と暦年課税という2つの方法があります。
相続時精算課税は、本来贈与時に課せられる税金を相続時にまとめて課す方法です。この課税方法を選択できるのは、18歳以上の子ども・孫が60歳以上の両親・祖父母から受けた贈与のみです。
一方の暦年課税は、1年間に譲り受けた財産の総額に対して税金を課す方法です。税率は譲り受けた財産の総額によって10%〜55%に設定されており、1年につき基礎控除として110万円を控除できます。これにより、年110万円までの贈与であれば税金が課せられないようになっています。
原則として、夫婦で行う贈与でも贈与税は発生します。夫婦で贈与を行う場合は基礎控除内に収まるように心がけ、節税するようにしましょう。
夫婦で行う贈与で課税されないケース

夫婦で行う贈与は原則として贈与税がかかりますが、生活費や教育費のやりとりなどは日常生活に必要な範囲であるため贈与にはあたりません。そのため、夫が毎月生活費として妻の口座に一定額を振り込んだり、手渡ししたりしたとしても課税されることはないのです。
贈与税は、あくまでも財産を無償で譲るケースに適用されるということを覚えておきましょう。
節税のカギを握るおしどり贈与とは
夫婦の間で自宅や自宅を取得するための費用を贈与した際に、最大で2,000万円の控除が受けられる制度をおしどり贈与といいます。この制度は、贈与税の基礎控除と併用できるため、実質2,110万円の控除が適用されるのです。
この制度をうまく活用できれば、大幅な節税に繋がります。以下では、本制度が適用される要件や利用時の注意点について解説していきます。
適用要件
本制度を利用するための要件は以下の通りです。
- 20年以上婚姻関係が継続していること
- 制度の利用が初めてであること(複数回の利用は不可能)
- 贈与されたのが自宅またはそれを取得するための費用であること
- 贈与があった翌年の3月15日までに、贈与された住宅に住んでおり、その後も住み続ける予定であること
上記の要件をすべて満たしている場合にのみ、申請が可能となります。
参考:No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|国税庁
利用する際の注意点
原則として、おしどり贈与を利用しても自宅を取得する際にかかる不動産取得税および登録免許税は免除されません。
不動産取得税の目安は取得した不動産の評価額に税率の3〜4%を掛けた額となっています。また、贈与による居住用不動産の登録免許税は不動産の価額に2%を掛けた金額が課せられます。
全く税金をかけず住宅を取得できるわけではないため、控除額が大きいという理由だけで利用することは危険です。ただし配偶者居住権を利用すれば、配偶者が亡くなった後でも住む場所を失うことはない点はメリットでしょう。
参考:配偶者居住権とは|法務局
夫婦で行う贈与で確実に節税するためのポイント

一般的に、贈与により相続財産を減らすことは相続税の節税に繋がると言われています。しかし、贈与のしくみをしっかりと理解しておかなければ確実に節税できるとは限りません。
以下では、夫婦で行う贈与で確実に節税するためのポイントを紹介していきます。
名義預金に注意する
元々のお金の持ち主と口座の名義人が異なる預金を名義預金といいます。贈与の際に配偶者名義の口座を使用していると、名義預金と判断されて相続税が課される可能性があります。
名義預金と見なされないためには、配偶者が自由にお金を引き出せる状況にしておくことが大切です。口座を利用した贈与の場合は、配偶者が普段使っている口座に振り込む、入金のたびに贈与契約書を作成するなどの対策を行いましょう。
贈与契約書に決まった形式はありませんが、以下の内容を記載しておくと安心です。
- 贈与者の名前
- 受贈者の名前
- 贈与を行う日付
- 財産の内容
- どのようにして譲るのか
契約書の作成方法は手書きやパソコンなど、ご自身に合った方法を選びましょう。また、贈与者と受贈者がそれぞれ保管するため、2通作成する必要があります。不動産の贈与には収入印紙が必要となる点も覚えておきましょう。
生前贈与加算による持ち戻しのリスクを知っておく
暦年贈与の場合、亡くなる前7年間に受けた生前贈与については相続発生時に相続財産として持ち戻すことになっています。このルールは生前贈与加算と呼ばれており、税金逃れを防ぐ目的で作られました。これまで、生前贈与加算の対象期間は3年でしたが、令和6年より対象期間が7年に拡大されています。
夫婦の間で行う贈与も生前贈与加算の対象です。「病気が見つかったから亡くなる前に贈与しよう」などの無計画な贈与は、かえって税金を課せられるリスクがあります。贈与を検討している場合は計画的な贈与設計が必要です。
ただし、おしどり贈与を利用している場合は生前贈与加算の対象外です。
相続税には配偶者控除がある
通常、相続税の計算の際には相続財産から基礎控除額を差し引いた金額に対して税率をかけます。しかし、相続税には配偶者控除が設けられているのです。
相続税における配偶者控除では、1億6,000万円または法定相続分いずれか金額が高いほうまでは相続税が非課税になります。相続時に配偶者が受け取る財産の金額が上記いずれかに収まるのであれば、贈与よりも相続を選んだ方が低リスクになる可能性があります。
実際は相続額や相続人の数によって変わってくるので、どちらの方がより節税効果が高いのかは税理士などの専門家に相談してください。
夫婦で行う贈与は課税対象!制度内容を理解して賢く節税を
無償で財産を譲る行為である贈与は、原則として贈与税が課せられます。これは夫婦で行う贈与も同じで、年間110万円を超える贈与は税金がかかります。
しかし、贈与には夫婦間で利用できる「おしどり贈与」という控除があり、条件を満たせば基礎控除を含めて2,110万円の控除が受けられます。この制度を利用することで得られる節税効果はケースバイケースです。確実に節税したい場合は、贈与のタイミングや相続財産の金額などから総合的に判断する必要があります。
賢く節税するためにも贈与税やおしどり贈与、相続税の配偶者控除などの制度内容をきちんと理解しておきましょう。不安な場合は専門家の力を借りることも検討してみて下さい。本記事を参考に、夫婦での贈与について話し合ってみましょう。
相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。
相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。
やさしい相続相談センターでは、お客様の資産をお守りする適切な申告をサポートさせていただきます。
初回相談は無料です。ぜひご相談ください。
また、金融機関や不動産関係者、葬儀関連企業、税理士・会計士の方からのご相談やサポートも行っております。
小谷野税理士法人の相続専門スタッフがお客様へのサービス向上のお手伝いをさせていただきます。
監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。


