小規模宅地等の特例とは?計算方法・適用条件・注意点をわかりやすく解説

小規模宅地等の特例とは?計算方法・適用条件・注意点をわかりやすく解説

相続税を軽減できる「小規模宅地等の特例」とは、どのような制度なのでしょうか。どんな土地が対象になり、どのように計算するのか、また適用を受けるにはどんな条件があるのか分かりにくいという方も多いでしょう。本記事では、小規模宅地等の特例の仕組みから計算方法、適用条件や注意点、手続きの流れまでをわかりやすく解説します。相続税の節税制度を正しく理解したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

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小規模宅地等の特例とは

小規模宅地等の要件

小規模宅地等の特例とはどのような制度なのでしょうか。相続税の負担を大きく軽減できる仕組みとして知られていますが、対象となる土地の種類や適用条件には細かなルールがあります。

相続税の負担を軽減するための制度

「小規模宅地等の特例」とは、被相続人が所有していた宅地のうち、一定の要件を満たすものについて、相続税の評価額を減額できる制度です。

被相続人の居住や事業のために使われていた土地など、生活や事業の基盤となる宅地における税負担の軽減を目的として設けられています。

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

関連記事:【税理士監修】小規模宅地等の特例とは?計算方法や適用要件をわかりやすく解説します

対象となる宅地の種類

小規模宅地等の特例で対象となる宅地は、被相続人がどのような目的で土地を利用していたかによって以下の4つに区分されます。

区分

主な利用目的

特定居住用宅地等

被相続人が自宅として使用していた土地

特定事業用宅地等

被相続人が自営業など事業のために使用していた土地

特定同族会社事業用宅地等

被相続人が経営していた同族会社の業務で使用していた土地

貸付事業用宅地等

アパート・駐車場などの賃貸事業に使用していた土地

それぞれの宅地区分ごとに、減額割合や上限面積が異なり、適用要件も個別に定められています。自分が相続した土地がどの区分に当てはまるのか確認しましょう。

小規模宅地等の特例の計算方法

相続税の計算をする夫婦

小規模宅地等の特例は、どのように計算するのでしょうか。この制度は、宅地の種類ごとに決められた「減額割合」と「面積の上限」をもとに、相続税評価額を計算します。基本ルールと具体的な計算例について解説します。

減額割合と面積上限の基本ルール

小規模宅地等の特例では、以下のように、宅地の区分ごとに減額できる割合と面積の上限が定められています。

区分

減額割合

上限面積

特定居住用宅地等

80%減額

330㎡まで

特定事業用宅地等

400㎡まで

特定同族会社事業用宅地等

貸付事業用宅地等

50%減額

200㎡まで

複数の宅地を組み合わせて特例を適用できますが、合計で減額できる面積の上限は730㎡です。例えば、自宅(特定居住用宅地等)と事業用地(特定事業用宅地等)を相続する場合、居住用で330㎡、事業用で400㎡の合計730㎡まで併用できます。

また平成30年の税制改正により、貸付事業用宅地等の対象範囲が見直されており、相続開始前3年以内に新たに貸付を始めた土地などは特例の対象外となる点に注意しましょう。

関連記事:【小規模宅地等の特例の計算方法】減額割合・計算例・注意点などポイントを解説

居住用宅地の計算例

自宅の敷地にあたる「特定居住用宅地等」は、最大で評価額の80%を減額できます。被相続人が居住していた自宅敷地の評価額が6,000万円、面積が300㎡の場合は以下のように計算します。

6,000万円 ×(1 − 0.8)= 1,200万円

評価額の80%が減額され、相続税の課税対象額は1,200万円となります。

事業用・貸付用宅地の計算例

事業に使用していた土地(特定事業用宅地等)は80%減額、貸付事業に使用していた土地(貸付事業用宅地等)は50%減額されます。被相続人が事業で使用していた土地の評価額が5,000万円、面積が300㎡の場合は以下のように計算します。

5,000万円 ×(1 − 0.8)= 1,000万円

アパートや駐車場などの貸付事業に使用していた土地の評価額が4,000万円、面積が200㎡の場合は以下のように計算します。

4,000万円 ×(1 − 0.5)= 2,000万円

このように、宅地の用途に応じて定められた減額率を適用すれば、相続税評価額を大幅に抑えられるでしょう。

複数の宅地を併用する場合の計算例

自宅と事業用地など、複数の宅地を併用する場合は、それぞれの区分ごとに計算し、合計します

例)以下の2種類の宅地を相続する場合

区分

評価額

面積

減額割合

減額後の評価額

特定居住用宅地等

6,000万円

300㎡

80%

1,200万円

特定事業用宅地等

5,000万円

1,000万円

それぞれの特例を適用したあとの評価額を合計すると、2,200万円(1,200万円 + 1,000万円)になります。この場合、両方の宅地を合わせても合計730㎡(居住用330㎡+事業用400㎡)まで特例が適用されます。

このように、区分ごとの要件を満たせば、複数の土地に対しても減額を受けながら相続税を大幅に抑えられるでしょう。

計算の仕方は分かっても、自分の相続でどれくらい減額できるかは状況によって異なります。
小谷野税理士法人では、土地の利用状況や相続人の構成を踏まえた減額シミュレーションを行っています。

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小規模宅地等の特例を受けられる条件

チェック

小規模宅地等の特例は、どのような条件を満たせば適用されるのでしょうか。

制度を活用すれば相続税を大幅に抑えられますが、誰がどのような宅地を相続するかによって、認められるかどうかが異なります。小規模宅地の特例を受けるための条件について解説します。

関連記事:【税理士監修】小規模宅地等の特例が適用される条件とは?宅地等の相続税を減額するための要件や添付書類を解説

配偶者が相続する場合

被相続人の配偶者が宅地を相続する場合は、居住の有無や持分の有無にかかわらず、無条件で特例が適用されます。

これは、配偶者が被相続人と生活を共にしていたとみなされるためで、特別な書類を提出しなくても減額が認められます。小規模宅地等の特例のなかでも、配偶者は最も優遇された立場と言えるでしょう。

同居親族が相続する場合(特定居住用宅地等)

「特定居住用宅地等」の場合、被相続人と同居していた親族がその宅地を相続し、相続後も居住を続けていることが特例の適用条件となります

この「同居」は居住用宅地に限られる要件で、事業用宅地や貸付事業用宅地には該当しません。

また、相続税の申告期限(相続開始から10ヵ月以内)まで居住している必要があり、転居や賃貸に出すと特例が受けられなくなるため注意しましょう。

別居親族が相続する場合(家なき子特例)

被相続人と同居していなかった親族でも、自分や配偶者が持ち家を所有していない場合には、特例を受けられるケースがあります。これがいわゆる「家なき子特例」です。

ただし、過去に自宅を所有していた場合や、他人名義の家に無償で住んでいる場合などは対象外なので注意しましょう。登記簿謄本などで、自身や配偶者が不動産を所有していない事実を証明する必要があります。

適用条件を誤ると、特例が使えず相続税が数百万円増えるケースもあります。
小谷野税理士法人では、特例の適用可否の判定から申告手続きまでを税理士が直接サポートします。

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関連記事:家なき子特例とは?制度の内容や適用条件・手続きについて詳しく解説!

小規模宅地等の特例を計算する際に注意すべき4つのポイント

小規模宅地等の特例を活用すれば相続税を軽減できますが、手続きや要件を誤ると適用されないリスクがあります。申告や手続きの際に注意すべき以下4つのポイントについて解説します。

  1. 相続税の申告が必要
  2. 申告期限前に売却した場合は対象外
  3. 遺産分割が未確定だと適用できない
  4. 他の特例との重複適用はできない場合がある

相続税の申告が必要

小規模宅地等の特例は、相続税の申告書を提出して初めて適用される制度です。たとえ相続税の支払いが発生しない場合でも、申告をしなければ自動的に減額はされません。

「税金がかからないから申告不要」と誤解すると特例が使えなくなるため、必ず期限内に申告を行いましょう。

申告期限前に売却した場合は対象外

相続した宅地を申告期限(相続開始から10ヵ月以内)まで保有していない場合、この特例は適用されません。申告前に土地を売却したり、名義を変更したりすると対象外になります。

一度でも譲渡や移転の手続きを行うと特例が無効になるため、申告が終わるまでは売却しないのが重要です。

遺産分割が未確定だと適用できない

相続税の申告期限までに、宅地の相続先(誰が取得するか)が確定していない場合は特例を使えません。宅地の帰属が決まっていないと、減額の計算が行えないためです。

遺産分割協議が長引きそうな場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておくと、後から特例を適用できる場合があります。

参考:B1-5 相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続

他の特例との重複適用はできない場合がある

小規模宅地等の特例は、他の税制優遇と同時に適用できないケースがあるので注意しましょう。例えば、「相続時精算課税制度」を使って生前に贈与を受けた宅地は、その時点で相続財産とみなされるため、相続時に小規模宅地等の特例を重ねて適用できません。

また、同じ土地を「特定居住用宅地」と「貸付事業用宅地」など、2つの種類として同時に扱えません。どちらか1つの区分を選んで申告する必要があります。

参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁

小規模宅地の特例を受けるための手続き

小規模宅地等の特例を適用するには、どのような書類を準備し、どのような流れで申告すればよいのでしょうか。必要な書類と手続きの流れについて解説します。

提出書類

小規模宅地等の特例を受けるには、被相続人との関係や居住状況を証明する書類を提出する必要があります。書類の添付漏れがあると、特例が適用されない場合もあるため注意しましょう。

区分

提出書類

共通

  • 相続税申告書
  • 小規模宅地等の特例に関する明細書
  • 被相続人と相続人の関係を証明する戸籍謄本

同居親族が対象の場合

  • 住民票の写し
  • 被相続人と同居していたことを示す資料(電気・ガスなどの公共料金明細など)

「家なき子特例」が対象の場合

自己所有の不動産がないことを証明する書類(不動産登記簿謄本など)

参考:相続税の申告書等の様式一覧(令和7年分用)|国税庁

手続き方法

特例の適用を受けるためには、以下の流れで準備・申告を行います。

内容

説明

相続財産の整理

被相続人の財産内容を確認し、宅地の利用状況(居住用・事業用・貸付用など)を判断する。

評価額の算出

各宅地の評価額を求め、該当する区分の減額割合を適用して再計算する。

申告書類の提出

「小規模宅地等の特例に関する明細書」を作成し、必要書類を添付して相続税申告書と一緒に税務署へ提出する。

相続税の申告期限は相続開始から10ヵ月以内です。期限を過ぎると特例の適用が認められないため、早めに準備を進め、余裕をもって提出しましょう

小規模宅地等の特例でお悩みの方は専門家に相談

小規模宅地等の特例は、要件や組み合わせの判断を誤ると特例が適用されず、相続税が数百万円単位で増えるリスクがあります。特に「家なき子特例」や「貸付事業用宅地」などは、細かな条件を満たすかどうかで結果が大きく変わります。

制度の解釈や書類の整備に不安がある場合は、相続税に精通した専門家へ早めに相談しましょう

小谷野税理士法人では、これまで多数の相続案件をサポートし、特例の適用可否の判断から申告手続きまで丁寧に対応しています。複雑な制度に迷ったら、ぜひ小谷野税理士法人へご相談ください。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。