贈与税の一般税率と特例税率の違いは?仕組みと注意点を解説

贈与税の一般税率と特例税率の違いは?仕組みと注意点を解説

贈与税は財産を無償で受け取ったときに課される税金で、一般税率と特例税率という2つの仕組みがあります。適用範囲や税率が異なるため、誤解したまま申告すると余計な税負担につながる可能性があります。本記事では、贈与税の基本から一般税率と特例税率の違い、利用時の注意点や関連制度との比較までをわかりやすく解説します。贈与や相続に備えて正しく理解しておきたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

贈与や相続に関する税金でお悩みの方は、初回無料相談をご利用ください。
秘密厳守で専門の税理士が丁寧に対応いたします。
お気軽にご相談ください。

▶初回無料相談はこちら

贈与税とはどんな税金か

夫婦で相続・贈与の検討

贈与税は、相続税と並んで財産の移転に関わる重要な税制です。贈与税の基本的な仕組みについて解説します。

贈与税は財産を無償で受け取ったときに課される

贈与税とは、個人が他人から財産を無償でもらった際にかかる税金です。相続税と同じく財産の移転に関わる重要な制度で、現金や預金だけでなく、不動産や株式など幅広い財産が課税対象になります。

納税義務を負うのは財産を受け取った側で、受贈者が申告と納付を行う必要があります。

参考:財産をもらったとき|国税庁

関連記事:【税理士監修】贈与税はいくらから?家族間の贈与での贈与税や特例について解説

暦年課税制度では年間110万円までは非課税

贈与税の基本的な仕組みは「暦年課税(れきねんかぜい)」であり、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与額を合計し、その金額から基礎控除110万円を差し引いた残りが課税対象となります。

年間の贈与額が110万円以内であれば贈与税はかからず、申告の必要もありません。

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

贈与税の一般税率とは

贈与税には「一般税率」と「特例税率」があり、一般税率は適用範囲が広く多くのケースで用いられる基本的な仕組みです。一般税率の対象となる贈与と税率の仕組みについて解説します。

直系尊属以外からの贈与に適用される

一般税率は、父母や祖父母といった直系尊属以外から贈与を受けた場合に適用されます。兄弟姉妹や配偶者、親戚からの贈与が該当し、幅広い贈与に適用される基本的な税率制度です。

税率は10%から55%までの累進課税方式

一般税率は累進課税方式を採用しており、贈与額が増えるほど税率も高くなります。最低税率は10%から始まり、最高税率は55%に達します。

国税庁が定める速算表を用い、課税価格に応じた税率を掛け、さらに控除額を差し引くことで正しい税額が算出されます。

【贈与税(一般税率)の早見表】

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

200万円以下

10%

300万円以下

15%

10万円

400万円以下

20%

25万円

600万円以下

30%

65万円

1,000万円以下

40%

125万円

1,500万円以下

45%

175万円

3,000万円以下

50%

250万円

3,000万円超

55%

400万円

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

贈与税の特例税率とは

一方の特例税率は、特定の関係で行われる贈与に適用される制度で、一般税率よりも低い水準で課税されるのが特徴です。特例税率の対象となる贈与と税率の仕組みについて解説します。

直系尊属から18歳以上の子や孫への贈与に適用される

特例税率は、父母や祖父母といった直系尊属から18歳以上の子や孫への贈与に適用されます。親から子、祖父母から孫への生前贈与が代表的なケースで、世代間の資産をスムーズに移転する仕組みとして位置づけられています。

特例税率は一般税率より低く設定されている

特例税率は、一般税率に比べて段階的に低く設定されています。同じ金額を贈与した場合でも負担が軽くなるため、特に高額の贈与では節税効果が大きく表れます。早めに資産移転を行えば、より有利に制度を活用できるでしょう。

【贈与税(特例税率)の早見表】

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

200万円以下

10%

400万円以下

15%

10万円

600万円以下

20%

30万円

1,000万円以下

30%

90万円

1,500万円以下

40%

190万円

3,000万円以下

45%

265万円

4,500万円以下

50%

415万円

4,500万円超

55%

640万円

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

適用には贈与者・受贈者の関係を示す書類が必要になる

特例税率を適用するには、贈与者と受贈者が直系尊属と18歳以上の子や孫であることを証明する書類が必要です

具体的には、戸籍謄本・戸籍抄本・住民票などが該当します。これらを申告時に添付しなければ、特例税率が認められず一般税率で課税されてしまう可能性があるため注意してください。

贈与税の一般税率と特例税率の違いとは

一般税率と特例税率は、適用対象となる関係や税率の水準が異なります。どちらに該当するかで納税額が大きく変わるため、違いを理解しておきましょう。

適用される贈与者と受贈者の範囲が異なる

一般税率と特例税率の最大の違いは、適用される贈与者と受贈者の範囲です。直系尊属以外からの贈与は一般税率が適用され、直系尊属から18歳以上の子や孫への贈与は特例税率の対象となります。

誰から誰に財産を移転するかによって、課税方法が変わる点を押さえておきましょう。

同じ金額でも特例税率を使うと税額が軽減される

同じ贈与の価格であっても、特例税率は一般税率よりも低く設定されています。これは、生前贈与を通じた世代間の資産移転を促進するための仕組みです。

特に高額の贈与では税負担の差が大きくなるため、特例税率を使うことで節税効果が高まります。

同一年中に両方の贈与がある場合は区分して計算する

同一年に一般贈与と特例贈与が混在する場合は、それぞれを区分して計算しなければなりません。両者は異なる速算表を用いるため、一括して同じ税率は適用できません。

具体的には、まず1年間の贈与額を合計し、そこから基礎控除110万円を差し引きます。次に、残額を一般贈与分と特例贈与分に分け、それぞれの金額に応じた速算表で税額を計算します。

例えば、同一年に「兄から400万円(一般)」と「親から600万円(特例)」を受けた場合、合計1,000万円から基礎控除110万円を差し引き、残り890万円を一般と特例に按分します。その上で、それぞれの速算表で税額を出し、最終的に両方を合算した額がその年の贈与税額となります。

この記事で紹介した一般税率・特例税率の内容が「自分に当てはまるか知りたい」という方は、ぜひご相談ください。
小谷野税理士法人が最適な方法をご提案します。

▶初回無料相談はこちら

贈与税の税率を利用する際の注意点

注意点、気を付けるポイント

贈与税の一般税率や特例税率を適切に使うためには、いくつかの留意点があります。制度を正しく理解しないと、思わぬ負担や不利益に繋がる可能性もあるため、重要なポイントを確認しておきましょう。

贈与契約書を作成して証拠を残す

贈与契約書を作成して証拠を残しましょう

贈与は契約行為であるため、口約束だけでは後に争いやトラブルの原因となります。書面を残しておけば「確かに贈与があった」という事実を客観的に示せるため、親族間の争いや税務調査でも有効な証拠となります。

また、申告書に添付する裏付け資料としても役立つため、正しい贈与の実行と安心に繋がるでしょう。

長期的な分割贈与は定期贈与と判断される可能性がある

分割して贈与を行う際は、定期贈与と判断される可能性がある点に注意しましょう

毎年同じ金額を渡し続けていると、形式的には贈与でも「実質的にはまとめて一度に贈与したもの」と見なされるかもしれません。このようなケースは定期贈与とされ、結果的に相続税の課税対象になる可能性があります。

例えば、毎年110万円の基礎控除内で贈与をしていても、定期贈与と見なされれば非課税枠が認められず課税される可能性があるということです。

関連記事:【税理士監修】相続税の申告が不要になるのはどのようなケースか?相続税の注意点についても解説

制度改正のリスクがあるため最新情報を確認する

必ず制度改正の最新情報を確認しましょう。贈与税は相続税との一体化が検討されており、過去にも基礎控除額や税率が変更された経緯があります。古い情報をもとに申告を行うと、本来必要のない税負担やペナルティを招く恐れがあります。

正しく制度を活用するためには、国税庁の最新情報や専門家の解説を確認し、常に最新のルールに沿って対応しましょう。

贈与契約や申告に不安を感じた方は、専門家にご相談ください。
多くの方が同じ悩みを抱えています。
小谷野税理士法人がトラブルを防ぐための具体策をご案内します。

▶初回無料相談はこちら

参考:令和6年分の贈与から贈与税・相続税の計算方法が変わります!  |  国税庁

関連記事:相続税と贈与税の一体化とは?実施の目的や具体的な施策を解説

一般税率・特例税率とあわせて知っておきたい贈与税の制度

教育資金贈与で贈与税がかからないケース

贈与税には一般税率や特例税率だけでなく、非課税枠や特別な課税方法といった制度も用意されています。代表的な制度について解説します。

相続時精算課税制度は2,500万円まで非課税だが選択制

相続時精算課税制度を利用すると、父母や祖父母から子や孫への贈与について累計2,500万円まで贈与税がかかりません。ただし一度選択すると暦年課税(年間110万円まで非課税)には戻せず、仕組みや計算方法も異なります。

将来の相続税計算に影響するため、利用を検討する際は慎重に判断しましょう。

参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁

関連記事:相続時精算課税制度とは?特別控除と新設の基礎控除を解説

住宅取得資金や教育資金の贈与は非課税枠がある

住宅購入や教育費に充てる資金には、目的を限定した非課税制度が用意されています。親や祖父母から子や孫への資金援助に活用でき、場合によっては暦年課税や特例税率と組み合わせて使える仕組みです。

ただし、対象となる費用や利用できる期間などに条件があるため、制度を使う際には必ず詳細を確認しましょう。

参考:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

参考:No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁

関連記事:【税理士監修】住宅取得資金の贈与には非課税枠がある。適用条件やメリットを解説

関連記事:教育資金贈与を使いきれない!贈与税がかからないケースと対策について

配偶者控除は2,000万円まで非課税の特例がある

婚姻期間20年以上の夫婦であれば、居住用の不動産やその購入資金を贈与しても最大2,000万円まで非課税とする特例(通称「おしどり贈与」)があります

夫婦間で円滑に財産を移転できる制度ですが、対象となる財産や要件は細かく決められています。利用する際は条件を正しく理解し、確実に手続きを進めましょう。

参考:No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|国税庁

関連記事:夫婦間の贈与に税金はかかる?使える特例「おしどり贈与」を紹介

贈与税の一般税率・特例税率でお悩みの方は専門家に相談

贈与税の一般税率や特例税率は、適用を誤ると余計な税負担が生じるリスクがあります。さらに制度改正の影響も受けやすく、古い情報のままでは思わぬトラブルに繋がりかねません。

安心して手続きを進めるには、専門家に相談するのが一番確実でしょう

小谷野税理士法人は贈与税や相続税に豊富な実績を持ち、税率の判定から申告まで丁寧にサポートしています。贈与税の一般税率や特例税率で迷ったときは、ぜひ小谷野税理士法人にご相談ください。

相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。

相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。

やさしい相続相談センターでは、お客様の資産をお守りする適切な申告をサポートさせていただきます。
初回相談は無料です。ぜひご相談ください。

また、金融機関不動産関係者葬儀関連企業税理士・会計士の方からのご相談やサポートも行っております。
小谷野税理士法人の相続専門スタッフがお客様へのサービス向上のお手伝いをさせていただきます。

監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。