除籍した子供に相続権ってある?相続のルールを解説

除籍した子供に相続権ってある?相続のルールを解説

戸籍からその人を外すことを除籍と言います。本記事では、離婚などにより除籍した子供に相続権があるのか解説しています。

また、初心者の方でも分かりやすい相続のルールも併せて説明しています。除籍した子供の相続について知りたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

除籍と相続権とは

除籍した子供に相続権があるか否かを確認する前に、まずは基本的な知識について理解しておきましょう。以下では、除籍や相続について解説していきます。

戸籍と除籍

戸籍とは、日本で生まれた人の死亡までの身分についての記録を指します。戸籍には出生から死亡の記録はもちろん、婚姻関係や親戚関係まで登録されるのです。原則として、1つの戸籍には夫婦・夫婦と同じ姓の子供についてを登録します。

その戸籍から、死亡や離婚、結婚などにより抜けることを除籍と呼びます。例えば子供が結婚すると、親の戸籍から抜けて新たに配偶者との戸籍を持つことになります。離婚して姓がバラバラになると、当然戸籍も別のものになるのです。

関連記事:【税理士監修】除籍謄本とは?戸籍謄本等との違いや取得方法、注意点などを解説

相続権とは

相続権とは、亡くなった方の財産を引き継ぐ権利のことを指します。原則として、相続権を有するのは法定相続人のみとなっています。法定相続人以外の方に財産を引き継いでもらうには、遺贈という方法を用いて財産を譲るのが一般的です。

法定相続人の範囲と相続順位の基本ルール

相続権を持つ法定相続人には、誰でもなれる訳ではありません。また、相続には順位が決められおり、法定相続人=必ず相続できるという事でもないのです。

以下では、法定相続人の範囲と相続順位について詳しく解説していきます。

法定相続人ってだれ?

原則として法定相続人に該当するのは、亡くなった方の配偶者、子供(直系卑属)、両親(直系尊属)、兄弟姉妹です。配偶者+血縁関係のある人だと覚えておくと良いでしょう。

直系卑属とは、子供や孫などの自分よりも下の世代の血縁者です。対する直系尊属とは、両親や祖父母などの自分より上の世代の血縁者を指します。

法定相続人の順位

法定相続人は、以下の順番に従って相続を行います。なお、配偶者はどんなケースでも必ず相続できます。

相続順位

亡くなった方との関係

第一順位

子供(直系卑属)

第二順位

両親(直系尊属)

第三順位

兄弟姉妹

例えば、配偶者と子供がいる場合はこの2者が相続をします。子供がいない夫婦のケースでは配偶者と両親が相続をするというように、相続権が下の順位に移っていく仕組みです。ただし、相続には代襲相続という制度があります。

代襲相続とは、相続人になる予定だった方が既に亡くなっている場合に、次の世代の人に相続権が移ることを指します。具体的には、相続時に子供がすでに亡くなっており孫がいる場合は、孫が子供に代わって相続人になるのです。孫も亡くなっておりひ孫がいる場合はひ孫が相続人になり、これを再代襲相続といいます。

ただし、第三順位に関しては甥・姪までしか相続できません。

関連記事:【税理士監修】遺産相続の順位とは?法定相続人の意味や相続割合、具体的な例などを解説

関連記事:代襲相続とは?代襲相続人の範囲と相続割合をパターン別に解説

法定相続割合とは

法定相続人には、それぞれ相続できる財産の割合が決められています。原則として、遺言書で指定されていない限りは法定相続割合に則って財産を分割することになっています。

具体的な法定相続割合は下記の通りです。

相続人の組み合わせ

配偶者の割合

相続人の割合

配偶者+直系卑属

2分の1

2分の1

配偶者+直系尊属

3分の2

3分の1

配偶者+兄弟姉妹

4分の3

4分の1

上記をみて分かるとおり、配偶者の法定相続割合は他の相続人との組み合わせによって決まります。法定相続人の相続割合は、第一順位から順に少なくなる仕組みです。

除籍した子供に相続権はある?

離婚した子の相続権や財産分与について

法定相続人の第一順位は子供ですが、除籍した子供にも相続権はあるのでしょうか。以下では、除籍した子供の相続権の考え方について解説していきます。

除籍しても実子であることに変わりはない

前提として、法定相続人になれるのは亡くなった方と血縁関係にある人+配偶者です。離婚などにより除籍していたとしても、子供と亡くなった方の血縁関係自体が消えるわけではありません。実子であることに変わりはないため、当然除籍した子供にも相続権はあります。

除籍した子供の法定相続割合

除籍した子供の法定相続割合は、通常通りの2分の1です。除籍したからといって法定相続割合が減ることはありません。例えば、5,000万円の財産を配偶者と子供で分ける場合は2分の1の2,500万円を相続できます。亡くなった方に配偶者がいない場合は、子供がすべてを相続します。

また、再婚して新たに子供が生まれていた場合などでも、除籍した子供の相続権がなくなることはありません。このような場合は、子供の法定相続割合である2分の1を子供の人数で等分することになります。

関連記事:離婚した子供に相続を知らせなくても良い?相続権についても解説

除籍した子供に相続させないことはできる?

基本的に、法定相続人には遺留分という最低限相続できる財産の割合というのが民法で決められています。そのため、たとえ遺言書に「除籍した子供に相続させない」と記していたとしても、遺留分相当額を相続することができるのです。また、遺言書がない場合の遺産分割協議は、すべての相続人が参加しなくてはなりません。

除籍した子供を除いて遺産分割協議を行うと、その協議自体が無効となってしまいます。このことからも分かるように、除籍した子供に完全に相続させないことは困難であると言えるでしょう。

仮に、遺留分侵害請求が行われると、相続人が遺留分侵害相当額を支払うことになります。原則として、子供の遺留分割合は法定相続割合の2分の1です。子供の法定相続割合は2分の1なので、実際の遺留分割合は1/2×1/2=1/4ということになります。

仮に、遺言書などによって除籍した子供に相続させない旨を記載していた場合、除籍した子供自身が遺留分侵害請求を行わない限りは遺留分を支払う必要はありません。遺留分侵害請求には1年または10年の時効が設けられており、時効が成立するまではいつでも遺留分侵害請求をされるリスクがあります。

遺留分侵害請求のリスクを背負うよりも最低限、遺留分相当額の財産を相続させたほうが安心です。心理的な事情はあるでしょうが、トラブル回避のためにも相続人の権利を奪うようなことは避けましょう。

関連記事:【遺留分の基礎知識】遺留分の割合と計算方法について解説

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子供の相続権がなくなるケース

子供に限らず、相続欠格または相続廃除に該当する法定相続人は相続権を失います。以下では、相続欠格と相続廃除について詳しく解説していきます。

相続欠格に該当する場合

相続欠格とは、遺言書の偽装や隠蔽などの欠格事由に該当する行為を行った相続人の相続権を取り消すことを指します。具体的な相続欠格となる事項は次の通りです。

  • 遺言書を偽装や隠蔽した
  • 自ら同順位以上の相続人を死亡させた、死亡させようとして刑に処せられた者
  • 被相続人を故意に死亡させ、刑に処された者
  • 詐欺や脅迫を行って、遺言書の内容変更または取り消しを妨げた
  • 詐欺や脅迫を行って、遺言書の内容変更または取り消しを行わせた

上記に当てはまる行為があった相続人は相続権を失います。

相続廃除に該当する場合

相続廃除とは、亡くなった方に対して生前に虐待などの非行を行った相続人から相続権をはく奪することを指します。相続廃除は遺言書によって行われる遺言廃除と、家庭裁判所の判断のもと行われる生前廃除の2種類があります。

相続廃除の理由となる具体的な行為は以下の通りです。

  • 亡くなった方に対して虐待を行っていた
  • 亡くなった方に対して侮辱を行った
  • 目に余る非行があった

具体的には、不倫や暴力、借金の肩代わりなどが該当します原則として、相続廃除の申立てができるのはその行為を受けた人のみで、他の相続人によって相続廃除を行うことは不可能です。そのため、上記に該当するような行為があった場合は、自ら手続きをしなくてはなりません。

ただし、被相続人が遺言で意思表示をしていれば、遺言執行者が手続きを行うことができます。

除籍した子供に相続権はある!事前対策で相続トラブルに備えよう

基本的に、除籍をしたからといって子供の相続権が失われることはありません。これは、除籍後も血縁関係は継続しているためだと言えます。除籍をした子供でも法定相続人の一員であり、法定相続割合の財産を引き継ぐ権利を有します。

仮に、遺言書などで除籍した子供に相続をさせない、ごくわずかな財産のみを相続するようにするといったことを行うと、遺留分侵害請求をされる可能性があります。遺留分侵害請求をされると他の相続人が金銭的な負担を強いられることになるため、基本的には最低でも遺留分相当額の財産は相続できるようにしておきましょう。

相続についての不安や悩み事は、税理士などの専門家にアドバイスをもらうことも大切です。本記事を参考に、相続について考えてみましょう。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。