相続税の未成年者控除とは?対象年齢・計算方法・申告手続きまで徹底解説

相続税の未成年者控除とは?対象年齢・計算方法・申告手続きまで徹底解説

相続税には「未成年者控除」という仕組みがあるのをご存じでしょうか。名前は聞いたことがあっても、どのような条件で使えるのか、いつから適用されるのか気になる方は珍しくありません。本記事では、未成年者控除の仕組みや対象年齢の変更点、計算方法や申告時の注意点まで整理して解説します。相続税の制度を正しく理解したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

未成年者控除の計算や申告は、年齢や家族構成によって大きく変わります。

「自分の場合はどうなるのか」を今すぐ知りたい方は、小谷野税理士法人へご相談ください。

▶初回無料相談はこちら

目次

相続税における未成年者控除とは

小さい子供のいる家庭

相続人が未成年のとき、相続税の負担が生活や教育に及ぼす影響は小さくありません。そこで相続税法には、未成年の相続人を守るための救済として「未成年者控除」が設けられています。

未成年控除の考え方と位置づけについて解説します。

未成年者の相続税を軽減できる制度

未成年者控除とは、相続人が未成年である場合に相続税額から一定額を差し引ける制度です年齢に応じて控除額が変わり、若いほど軽減幅は大きくなります。

未成年者の税負担を和らげるために設けられた仕組みであり、相続人の状況によって適用内容が異なるのが特徴です。

参考:No.4164 未成年者の税額控除|国税庁

関連:【税理士監修】相続税の基礎控除と法定相続人の解説。相続税の申告が不要になるケースは?

生活保障を目的としている

未成年者控除が設けられたのは、親を亡くした未成年者の生活や教育を守るためです

遺産を受け取っても、未成年者にはまだ安定した収入や生活基盤がありません。そこで、教育費や生活費を確保できるように、相続税の負担を軽減して自立するまでの支援を行うことが制度の目的です。

未成年者控除の適用要件

未成年者控除は誰でも自動的に受けられるものではなく、いくつかの条件を満たして初めて適用されます。相続税法で定められた適用要件について解説します。

相続や遺贈で財産を取得していること

未成年者控除を受けるには、実際に相続や遺贈によって財産を取得している必要があります。単に生活費の援助を受けているだけでは対象になりません。

例えば、未成年の子が親の遺産を相続する場合には適用されますが、財産を受け取っていなければ控除は使えない点に注意しましょう。

参考:相続税法 | e-Gov 法令検索

法定相続人であること

控除を受けられるのは、相続法上の「法定相続人」にあたる未成年者に限られます。

たとえ未成年であっても、法定相続人に含まれない孫などが財産を受け取った場合には対象外です。つまり、血縁や遺言の指定だけではなく、法律上の相続人かどうかが重要な基準となります。

関連記事:【税理士監修】相続人は誰がなるのか。相続人となる人の範囲や順位について解説

相続開始時に日本国内に住所があること

未成年者控除を受けるためには、相続開始時点で未成年者が日本国内に住所を有している必要があります。

海外に住んでいる未成年者は、原則としてこの制度の対象外です。そのため、留学や親の転勤による長期滞在などの場合には、「住所が国内にあると認められるかどうか」を事前に確認しておきましょう。

相続開始時に18歳未満であること

未成年者控除の対象年齢は、相続開始日によって18歳未満か20歳未満かが決まります。

2022年(令和4年)4月1日以降に開始した相続は「18歳未満」が基準で、それ以前は「20歳未満」が基準です。

これは、民法改正により成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴い、相続税法第19条の3も改正されたためです。被相続人の死亡日がどちらの時期にあたるかで、適用年齢が変わる点に注意しましょう。

参考:⺠法の改正 成年年齢引下げ に伴う贈与税・相続税の改正のあらまし | 国税庁

参考:第19条の3《未成年者控除》関係|国税庁

未成年者控除の計算方法

未成年者控除の金額は、相続人の年齢や相続の状況によって変わります。具体例を交えながら、未成年控除の計算の流れについて解説します。

控除額は「(18歳 − 相続時の年齢)×10万円」で計算する

未成年者控除は、相続開始時に18歳未満である相続人に適用されるため、控除額は「18歳になるまでの残りの年数 × 10万円」で算出します。

例えば、15歳で相続が発生した場合は、18歳まであと3年残っているため、(18 − 15)×10万円=30万円が控除されます。

年齢は満年齢で計算し、端数は切り捨てる

控除額の計算に使う年齢は「満年齢」です1年未満の端数は切り捨てるため注意しましょう。

例えば、17歳11ヵ月で相続が発生しても、「18歳まであと1ヵ月」とは数えず、17歳として計算します。そのため控除額は(18 − 17)×10万円=10万円となります。

過去に控除を受けた場合はその分を差し引く

同じ人が複数回相続によって財産を取得する場合もあります。その場合は、過去に受けた未成年者控除の金額を差し引いて計算しなければなりません

例えば、前回の相続で10万円の控除を受けていた15歳の人が、今回さらに相続を受ける場合、本来の控除額は(18 − 15)×10万円=30万円ですが、すでに10万円使っているため、今回利用できるのは残り20万円となります。

控除額は一見わかりやすくても、過去に相続を受けていたり扶養関係が絡むと計算が複雑になります。

「自分の場合はいくら控除できるのか」を安心して確認したい方は、ぜひ専門家にご相談ください。

▶初回無料相談はこちら

未成年者控除が相続税額を上回る場合の取り扱い

未成年者控除は相続税額を軽減する制度ですが、控除額が相続税額を超えるケースもあります。そのような場合、余った控除をどう扱うのかについて解説します。

余った控除は扶養義務者の税額から引ける

未成年者控除の金額が、本人の相続税額を上回った場合、残りは扶養義務者(親など、民法上の扶養義務を負う人)の相続税額から差し引くことができます

例えば、未成年者の相続税額が50,000円で、控除額が30万円の場合、本人の相続税は0円となり、余った25万円を親の相続税額から差し引けます。

それ以上は他の相続人に繰り越せない

ただし、扶養義務者の相続税額を差し引いても控除が余ってしまった場合、他の相続人に回したり、翌年以降に繰り越したりすることはできません

未成年者控除は、あくまで本人とその扶養義務者の範囲でのみ適用される仕組みである点に注意しましょう。

未成年者控除を受けるための相続税申告について

相続税の申告

未成年者控除を利用するには、相続税の申告が必要となるケースがあります。制度を正しく活用するために、手続き上のポイントを押さえておきましょう。

相続税が控除後ゼロになる場合は申告不要

ただし、控除を適用した結果、相続税額がゼロになるときは申告を行う必要はありません

例えば、課税額が20万円で控除額が30万円ある場合、差し引き後はゼロとなり、納税義務も申告義務も発生しません。

相続税申告書には第6表「未成年者控除・障害者控除の計算書」を添付する

未成年者控除を適用する場合、相続税申告書に「第6表 未成年者控除・障害者控除の計算書」を必ず添付しなければなりません

この書類は控除額の算定根拠を示す重要な資料であり、提出がなければ控除が認められない可能性があります。記載内容に誤りがないか、必要な計算が正しく反映されているかを確認し、忘れず添付しましょう。

参考:第6表「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」 | 国税庁

未成年者控除を利用する際の3つの注意点

未成年者控除を適用するには、要件や計算方法だけでなく、実務上の注意点も理解しておく必要があります。手続きに不備があれば控除が受けられなかったり、相続協議そのものが無効となるリスクもあるため、以下3つのポイントを確認しておきましょう。

  1. 特別代理人の選任が必要となる場合がある
  2. 親権者が離婚などで異なる場合は注意
  3. 胎児も相続人となり控除の対象になる場合がある

特別代理人の選任が必要となる場合がある

親と未成年者の利害が衝突する場合は、特別代理人を選任しましょう

親権者がそのまま代理すると不公平が生じる恐れがあるため、家庭裁判所に申立てて第三者を代理人とする必要があります。

この手続きを省略すると遺産分割協議そのものが無効となる恐れがあります。代理関係に利益相反がないかを必ず確認し、必要に応じて特別代理人を選任してください。

参考:特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合) | 裁判所

関連記事:遺産分割後に遺言書が見つかった場合のケース別対処法

親権者が離婚などで異なる場合は注意

両親が離婚している場合は、正しい親権者を確認しましょう。親権を持つ親にのみ代理権があり、誤った親が手続きを行った場合は相続に法的な効力が及ばない恐れがあります。

戸籍で親権者を確認せずに進めると、控除の適用漏れや遺産分割協議の停滞に繋がるため、必ず確認してから手続きを進めましょう。

胎児も相続人となり控除の対象になる場合がある

相続開始時に胎児がいる場合は、出生後に控除の適用を検討しましょう。 民法上、胎児は相続開始時点で存在していれば出生を条件に相続人とみなされるため、出生後には未成年者控除を適用できる可能性があります。

申告や計算の際に胎児の存在を見落とすと、本来受けられる軽減措置を逃す恐れがあるため、胎児がいるケースでは必ず出生後の手続きを確認しましょう。

代理人の選任や親権の扱いなど、注意点を誤ると控除が無効になる可能性があります。

小谷野税理士法人では、法的根拠に基づいた安全な手続きをサポートしています。

お気軽にご相談ください。

▶初回無料相談はこちら

未成年者控除に関してよくある質問

最後に、未成年者控除について多く寄せられる質問を取り上げますので、制度の理解を深める参考にしてください。

未成年者控除は各相続人ごとに計算するのですか?

はい、未成年者控除は各相続人ごとに個別に計算します。兄弟姉妹が複数いる場合も、それぞれの年齢に応じて「18歳になるまでの年数 × 10万円」で控除額を算出します。

未成年者控除の控除順序はどうやって決まりますか?

相続税法では、税額から控除を差し引く順序が明確に定められています。まず未成年者控除や障害者控除といった「税額控除」を最初に適用し、その後に配偶者控除や相次相続控除など、その他の控除を順に差し引きます

この優先順位を守ることで、控除の重複や計算上の誤りを回避し、適正な税額が算出される仕組みになっています。

参考:No.4152 相続税の計算|国税庁

関連記事:【税理士監修】相続税の基礎控除と法定相続人の解説。相続税の申告が不要になるケースは?

相続放棄をした未成年者も控除できますか?

いいえ、相続放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされるため、未成年者控除を受けられません。相続放棄を検討する場合は、控除の適用ができなくなる点を理解しておきましょう。

参考:相続の放棄の申述 | 裁判所

関連記事:【税理士監修】相続で知っておくべき相続放棄の基本とデメリット。手続き方法もあわせて解説

相続の未成年者控除でお悩みの方は専門家に相談

未成年者控除は、相続人の年齢や相続開始日によって条件が変わり、計算方法や申告手続きも複雑です。代理人の選任や過去の控除適用状況など、専門的な判断が必要となるケースもあります。

自己判断で進めると控除を受け損ねたり、相続協議が無効になったりするリスクもあるため、相続に詳しい専門家へ相談するのが有効でしょう

小谷野税理士法人では、豊富な実務経験をもとに未成年者控除を含む相続税申告をサポートしています。正確かつ有利に制度を活用するためにも、ぜひ小谷野税理士法人にご相談ください。

複雑な相続手続き、すべてお任せください

戸籍収集から財産評価、遺産分割協議書の作成、税務申告までワンストップで代行。あなたは故人を偲ぶ時間に集中してください。

相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。

相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。

やさしい相続相談センターでは、お客様の資産をお守りする適切な申告をサポートさせていただきます。
初回相談は無料です。ぜひご相談ください。

また、金融機関不動産関係者葬儀関連企業税理士・会計士の方からのご相談やサポートも行っております。
小谷野税理士法人の相続専門スタッフがお客様へのサービス向上のお手伝いをさせていただきます。

監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。