【税理士監修】相続登記の必要書類は?登記の必要性や法務局での申請手順も解説
更新日:2023.9.8
相続登記は、不動産を相続した際に、名義を故人から新しい所有者に変更する手続きです。相続によって不動産を取得した方の中には、相続登記をするべきか悩んでいる方や相続登記の必要書類が分からず悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は相続登記の概要や登記申請の流れ、必要書類について解説します。相続登記の必要性や手続きをしない場合のデメリットも併せて解説するため、相続登記を控えている方に必見の内容です。ぜひ参考にしてみてください。
目次
相続登記とは
相続が発生し、相続登記という言葉に初めて触れたという方もいるでしょう。ここではまず、相続登記の概要や期限といった基本情報について解説します。
相続登記の概要
相続が発生すると、預貯金や有価証券などの財産を相続することになります。相続登記は、土地や家、事業所などの不動産する際に行う、名義変更の手続きのことです。不動産の一例は以下の通りです。
・住宅 ・事業所 ・土地 ・私道 ・アパート ・マンション ・駐車場など |
相続登記では、法務局にある登記簿に、土地や建物の所在地、状態、所有者、担保の金額などを記載します。これにより、不動産の所有者を明確にし、権利の所在を明らかにできます。
相続登記の期限
相続登記は義務ではないため、現状では相続登記に期限は設けられていません。
ただし、相続登記を義務化する動きはあり、2024年の4月28日までに施行される予定になっています。不動産登記法が改正されると、相続が発生したことを知った日から3年以内に手続きを行わなければなりません。また、相続登記と一緒に、住所変更登記の義務化も施行されます。住所変更登記の申請期限は2年です。
義務化された後、申請期限までに手続きを行わない場合、過料が請求される恐れがあります。遺産分割協議が完了したら早めに手続きを進めましょう。
相続登記は必要か?手続きをしない場合のデメリット
現状、相続登記には期限が設けられていないため、手続きを後回しにしている方やうっかり忘れてしまったという方もいるでしょう。相続登記をしなかった場合、どのようなデメリットが発生するのでしょうか。ここでは、相続登記の必要性について解説します。
遺産分割協議が進まなくなる
遺産分割協議とは、故人が亡くなった後に法定相続人が集まり、相続する財産の種類や相続割合を決める話し合いのことです。遺産分割協議は法定相続人全員が、話し合いの内容に合意するまで行われます。相続登記をしない場合、遺産分割協議が進まなくなる恐れがあるため注意が必要です。
遺産分割協議は通常、相続財産と法定相続人の洗い出しを完了させた後に行います。新しい相続財産や相続人が後から出てくると、遺産分割協議をやり直ししなければならなくなるためです。
例えば、父親の不動産を長男が受け継ぎ、相続登記をしないまま亡くなった場合、父親のケースの法定相続人と長男のケースの法定相続人で遺産分割協議をすることになります。法定相続人の数が増えることで、意見がまとまりにくくなり話し合いが難航することが予想されます。
不動産を売却できなくなる可能性がある
相続した不動産を早めに売却したいと考える方も少なくありません。しかし、相続登記を行わないでいると、不動産を売却できなくなる可能性があります。不動産の売却時は、名義変更を完了させておく必要があるためです。仲介する不動産会社や購入希望者からすると、所有者不明の不動産を購入するのには大きなリスクが伴います。
また、法定相続人の中に債務がある方がいる際に、不動産を差し押さえられてしまうリスクもあります。遺産分割協議が完了するまでは、相続財産は法定相続人共有の財産とみなされるためです。たとえ話し合いが完了していても、相続登記を終えていなければ自身のものであると証明することができません。
必要書類を揃えられなくなる
相続登記の手続きをする際は、相続人全員の戸籍謄本や住民票といった複数の書類が必要となります。しかし、書類の中には保存期間が定められているものもあるため、保存期間を過ぎてから手続きしようとすると、書類の入手に時間と手間がかかる恐れがあります。
例えば、被相続人の住民票除票の保存期間は5年間です。5年を過ぎてしまうと書類が廃棄される可能性があり、この書類を入手するために、さらなる書類の提出や手続きを求められることになります。
すぐに相続登記を行っておけば、スムーズに手続きを進められます。相続登記には期限がないからといって後回しにせず、できるだけ早く登記を済ませましょう。
相続登記の必要書類一覧
相続登記を行う予定のある方は、以下のような必要書類を揃えて提出しましょう。
【共通する必要書類】
書類名 | 入手できる場所 |
相続人全員の戸籍謄本 | 住所地の市区町村の役所 |
相続人全員の住民票 | 住所地の市区町村の役所 |
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 | 住所地の市区町村の役所 |
被相続人の住民票除票 | 住所地の市区町村の役所 |
不動産を相続する人の住民票 | 住所地の市区町村の役所 |
不動産の固定資産評価証明書 | 不動産所在地の市区町村の役所 |
収入印紙 | 法務局や郵便局、コンビニなど |
登記申請書 | 法務局窓口やホームページからダウンロード |
その他、相続関係説明図や遺言書、印鑑証明書、委任状などが必要となる場合もあります。ケースによって必要書類が異なる点に注意しましょう。パターン別に必要書類(追加分)を記載すると以下のようになります。
【法定相続分に従って相続するケース】
法定相続分に従って相続する場合は、追加資料は必要ありません。ただし、法定相続人以外が申請する際は委任状が必要となります。
【遺産分割協議に基づき相続するケース】
共通の必要書類に加えて必要となる提出書類は以下の通りです。
書類名 | 入手できる場所 |
遺産分割協議書 | 自分で作成 |
相続人全員の印鑑証明書 | 住所地の市区町村の役所 |
印鑑証明書は必ず原本を提出する必要があります。
【遺言書に基づき相続するケース】
共通の必要書類に加えて必要となる提出書類は以下の通りです。
書類名 | 入手できる場所 |
遺言書 | 故人が作成 |
遺言執行者の印鑑証明書(遺言執行者が選任されていた場合) | 住所地の市区町村の役所 |
相続人の印鑑証明書(遺言執行者が選任されていない場合) | 住所地の市区町村の役所 |
遺言執行者選任審判謄本(家裁の審判で遺言執行者を選任する場合) | 家庭裁判所 |
遺言執行人の有無やどのように選任するかによって必要書類が異なります。
相続登記に必要な書類の概要
相続登記に必要となる書類の概要を紹介します。書類を間違えないよう、また、不備のないよう丁寧に準備を進めましょう。
登記事項証明書
不動産の正式な地番や家屋番号などを入力するために必要となる書類です。提出の義務はありません。登記事項証明書には、不動産の詳細が記載されています。相続登記の申請書作成の際に参考にしましょう。
登記事項証明書の請求は、登記所や法務局の証明サービスセンター窓口での受け取りだけでなく、郵送またはインターネットによる交付申請も可能です。インターネットの場合、平日でも夜9時まで申請を受付しています。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
被相続人がどのような方だったのかを証明するための書類です。出生から結婚や転籍など、死亡までの全てが記録されているものでなければなりません。被相続人の本籍地がある市区町村役場・役所で取得できます。
本籍地が分からない場合は、被相続人の除住民票を本籍地ありで交付すると確認できます。手間はかかりますが、死亡時の戸籍から遡っていき、出生までの全ての戸籍謄本を揃えるようにしましょう。
被相続人の住民票の除票
住民票の除票とは、住民登録から抹消された後の住民票のことです。登記簿に記載のある被相続人と戸籍上の被相続人が同じ人であることを証明するために必要となります。
登記簿と住民票の除票に記載のある住所が異なる場合は、前の住所地で住民票の除票を取り寄せるか、戸籍の除附票を取得します。住所が変わったことを証明できるようにしなければなりません。
相続人全員の戸籍謄本
相続人全員の戸籍謄本は、被相続人と相続人の関係性を確認するために必要な書類です。相続発生時の相続人を調べることが目的であるため、現在の戸籍謄本だけで問題ありません。
戸籍謄本は、相続人の本籍地にある市区町村の役所で交付します。相続人それぞれの本籍地を調べ、交付申請をする必要があるため時間がかかるでしょう。ただし、戸籍謄本は郵送やコンビニで交付申請することもできます。
相続人の住民票
住民票は、住民の居住関係を明らかにするための書類です。法定相続人全員の住民票が必要となります。住民票は、現在の住所地にある市区町村の役所窓口か郵送にて交付申請可能です。また、マイナンバーカードがあればコンビニでも交付できます。住民票は交付から3~6ヵ月以内のものと指定されることもあります。事前に確認しておくと安心です。
遺産分割協議書・印鑑証明
法定相続人が集まり、遺産の分割割合や取得者を定めることを遺産分割協議と言います。また、その取り決めによって定められた内容を記載するのが遺産分割協議書です。遺産分割協議書の形式に決まりはありませんが、必要事項を記載し、相続人全員の実印を押印します。
また、印鑑証明書は、遺産分割協議書と一緒に提出する書類です。印鑑が本人のものであり有効かどうかを見極める際の判断材料となります。遺産分割協議書に押印した印鑑と、印鑑証明書に登録されている印鑑に相違がないか確認しましょう。
相続関係説明図
被相続人と相続人の関係を分かりやすく表した図です。家系図のようなものと考えるとイメージしやすいでしょう。相続関係説明図を提出すると、戸籍謄本を返却してもらうことができます。
なお、相続関係説明図は自身で作成します。法務局のホームページに書式や記載例が確認できるため、参考にしながら作成しましょう。
固定資産評価証明書
固定資産評価証明書は、土地や建物といった不動産の評価額が記載された書類です。不動産の目安金額を確認できるようになっており、その金額を基に固定資産税額を計算します。
固定資産評価証明書は不動産のある市区町村の役所で交付可能です。交付の際は、申請書や本人確認書類、300円程度の手数料が必要となります。
相続登記申請書
相続登記をするための申請書です。申請書の形式には特別な決まりはなく、自身で作成できます。ただし、記載が必要な項目は定められているため、記載漏れには注意が必要です。記載する項目は以下の通りです。
・登記の目的 ・登記の理由 ・被相続人の名前 ・不動産を相続する人の名前、住所、電話番号 ・添付書類 ・登記識別情報通知番号 ・課税価格と登録免許税の金額 ・申請日と管轄法務局の名称 ・不動産の情報 ・収入印紙(添付) |
心配な場合は法務局のホームページを確認しながら作成しましょう。
相続人全員の本人確認書類
相続登記の際は、相続人全員の本人確認書類の提出が求められます。本人確認書類として使用できる書類の代表例は、運転免許証やマイナンバーカードなどです。提出する書類によっては1点でなく2点ほど提出を求められるケースもあります。
また、相続人でない方が手続きをする際は委任状も必要です。本人が作成するものでも問題ありませんが、専門家に依頼する場合は受託者が委任状を作成してくれるケースがほとんどです。ただし、本人が内容を確認し、印鑑を押印する必要があります。
法務局での登記申請の流れ
相続登記は、以下のような手順で進めましょう。
- 登記申請書の準備
- 必要書類の提出
- 登録免許税の納付
まず、登記申請書や必要書類を用意します。書類は複数必要であるため、時間に余裕を持って進めましょう。登記申請書は、対象の不動産がある住所地管轄の法務局に提出します。相続人の住所地ではないため注意が必要です。
また、相続登記の際は、登録免許税の納付も行います。登録免許税は固定資産評価額×0.4%で算出可能です。自身で計算し、算出した金額の印紙を購入しましょう。印紙を登記申請書に貼り付けて提出します。
書類の確認と審査は、1週間から10日ほどで完了します。書類の収集から登記完了までは、早くても1ヵ月程度かかるでしょう。
まとめ
相続登記は、相続によって不動産を取得した際に行っておきたい手続きのひとつです。相続登記に必要な書類は複数あり、ケースによって必要な書類が異なります。自身のケースではどのような書類が必要になるのかを確認し、余裕を持って準備を進めましょう。
相続登記にお悩みの方や、相続に関する手続きに難しさを感じる方は専門家に相談するのが得策です。相続に関する手続きは一連の流れの中で進めていくとスムーズに完了できます。相続に強く、ワンストップ対応が可能な税理士に相談しましょう。
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監修者
小谷野 幹雄 小谷野税理士法人 代表社員税理士 公認会計士
84年早稲田大学在学中に公認会計士2次試験合格、85年大手証券会社入社、93年ニューヨーク大学経営大学院(NYU)でMBAを取得し、96年小谷野公認会計士事務所を開業。2017年小谷野税理士法人を設立、代表パートナー就任。FP技能検定委員、日本証券アナリスト協会、プライペートバンキング資格試験委員就任。複数のプライム市場上場会社の役員をはじめ、各種公益法人の役員等、社会貢献分野でも活躍。