教育資金贈与はいつまで?非課税になる期限と利用時のポイントを解説
財産を無償で譲ることを贈与と呼び、贈与によって受け取った財産には贈与税がかかります。
しかし、贈与税では特定の目的の贈与に課せられる税金が一定額まで非課税になる特例が設けられているのをご存知でしょうか。そのうちの1つが教育資金の一括贈与です。
本記事では、制度の概要や期限、利用時のポイントについて解説していきます。
目次
贈与税のしくみ
財産を譲る行為を贈与と呼びます。贈与によって譲り受けた財産には贈与税という税金が課せられ、受け取った人が支払うルールです。
以下では、贈与税のしくみについてより詳しく解説していきます。
暦年課税と相続時精算課税
贈与税の課税方法には、暦年課税と相続時精算課税という2種類があります。暦年課税は、1年間に受け取った財産の総額に対して税金を課す方法です。対する相続時精算課税は、相続時までに受け取った財産の総額を相続財産と合算して相続税を課す方法です。
関連記事:暦年課税と相続時精算課税の併用は不可!主な違いや選び方、おすすめできるケースの例を紹介
相続税対策としての生前贈与
相続時に課せられる相続税は、相続財産の金額が高いほど税率も高くなります。そこで、亡くなる前にあらかじめ財産を譲っておき、相続財産を減らすことで節税に繋げる方法が注目されています。この方法を生前贈与と呼びます。
贈与税には110万円の基礎控除が設けられています。基礎控除があることで、1年ごとに受け取った財産の総額から110万円を差し引くことができ、税金は差し引き後の金額に対してのみ課せられるのです。そのため、暦年課税の場合は年間110万円以下であれば贈与税が課せられないのです。毎年基礎控除内に収まるように生前贈与を行い、ある程度相続財産を減らしておけば、相続時の税負担を抑えられます。
これまで、相続時精算課税は基礎控除がありませんでしたが、令和6年1月1日以降の贈与から基礎控除が適用されることになりました。加えて、相続時精算課税では特別控除として、相続時までに受け取った財産の総額から2,500万円を控除できるため、大幅な節税が期待できます。
このように、贈与税の制度をうまく活用すれば相続税の負担を抑えられるため、生前贈与が相続税対策として注目されているのです。
税負担をさらに抑える特例制度
贈与税には基礎控除や特別控除など、税負担を抑えるしくみが整えられています。しかし、この他にも特定の目的で行われた贈与にかかる税金が非課税になる特例が設けられているのです。具体的には、下記の特例が挙げられます。
- 結婚・子育て資金の一括贈与に関する特例
- 住宅等取得資金に関する特例
- 教育資金の一括贈与に関する特例
これらの利用には細かなルールがありますが、条件を満たせば大幅な節税が可能です。
以下では、教育資金の一括贈与をピックアップして解説していきます。
関連記事:贈与税が非課税になるケースはある?税率と注意点も解説
教育資金の一括贈与の特例とは?

教育資金の一括贈与の特例とは、30歳未満の直系卑属(子どもや孫など)が直系尊属(両親や祖父母など)から教育資金を譲り受けた場合に利用できる特例です。利用の際には、教育資金口座の開設が求められます。また、その際に教育資金非課税申告書を金融機関に提出することになるため、あらかじめ準備しておきましょう。
対象となる教育資金は入学費用や学費、学用品の購入費用など学校教育にかかる費用で、非課税上限額は1,500万円です。塾やピアノ、スイミングなどの習い事にかかる費用も対象ですが、非課税上限額は500万円となっています。
この制度を使って受け取った資金は、好きな時に好きなだけ使える訳ではありません。教育資金が必要になったタイミングで必要分だけを引き出し、領収書などの支払いを証明する書類を金融機関に提出する決まりになっています。あくまでも、教育資金として使うことが前提の制度であることを覚えておきましょう。
参考:No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁
関連記事:【税理士監修】教育資金の一括贈与は非課税になる?注意点と手続き方法を解説
教育資金贈与の特例の期限はいつまで?
教育資金の特例は恒久的な制度ではありません。また、一度受けた贈与でも期限内に使い切らなければならないというルールがあります。
以下では、制度が利用できる期間と教育資金の使い切りの期限について解説していきます。
制度が適用される期間
本制度が適用されるのは、令和8年3月31日までの贈与が対象となっています。この期限を過ぎてしまうと、通常通りの贈与税が課せられてしまう点に注意が必要です。
本来の期限は令和5年3月31日まででしたが、3年間の延長が決まり令和8年3月31日までは利用できる運びとなりました。今後も延長される可能性はゼロではありませんが、現時点で制度の利用を考えている方は、はやめに教育資金口座の開設をしておきましょう。
贈与された教育資金には使い切り期限もある
特例を用いて贈与された教育資金は、定められた期間内に使い切らなければなりません。具体的には、贈与を受けた方が30歳になるタイミングが使い切り期限となっています。贈与の際には期限までに使い切れるかといった点も意識しましょう。
教育資金贈与の注意点

特例を利用する場合は、注意すべきポイントがいくつかあります。これらのポイントを知らないまま制度を利用すると、かえって税負担がかかる恐れがあります。せっかくの贈与を無駄にしないためにも、以下で確認しておきましょう。
受贈者が23歳に達すると制限が増える
特例の年齢制限自体は30歳ですが、贈与で資金を受け取った方が23歳に達すると対象となる教育資金に制限がかかります。30歳までに使い切ることに加え、23歳に達して以降の制限についても理解したうえで贈与の設計を行いましょう。
都度学費を渡しても税金は課せられない
入学、学納金の支払い時など、都度必要なタイミングで金銭を渡したとしても、そのやりとりは贈与にはなりません。そのため申告する必要はなく、税金を課されることもないのです。単純に教育資金を支払ってあげたいという目的で贈与を検討しているのであれば、あえて手続きをせずとも非課税でお金を渡すことはできます。
相続税対策も併せて行いたい場合は、特例の利用を検討してみましょう。
贈与者が亡くなった場合は課税されるケースもある
教育資金を贈与してくれた方が亡くなった場合、贈与されたお金は基本的に相続財産として扱われ、相続税の対象となります。
ただし、以下のいずれかの条件に当てはまる場合、贈与されたお金は相続財産にはなりません。
- 贈与を受けた人が23歳未満である
- 贈与を受けた人が学校に在籍している、または職業訓練を受けている
もし、贈与を受けた人が上記の条件を満たしておらず、かつ贈与者の相続人ではない場合でも、一定の金額については相続財産と見なされ、2割加算の相続税が課されることがあります。
使い残しがあった場合はどうなる?
原則として、財産を譲り受けた人が30歳になった時点で金融機関との契約は終了します。そのため、贈与を受けた人が30歳になった時点で使い残しがある場合は、残高に対して贈与税が課せられる決まりになっています。
ただし、財産を譲り受けた人が30歳になった時点で学校に在学していたり、職業訓練を受けている場合はこの限りではありません。このようなケースでは、学校を卒業した時点もしくは40歳に達した際に税金を課せられます。
関連記事:教育資金贈与を使いきれない!贈与税がかからないケースと対策について
教育資金贈与の期限は令和8年度まで!早めに手続きをしよう
通常、財産の持ち主が亡くなると、相続によってその財産が引き継がれていきます。相続の際には、財産を引き継ぐ人たちに対して相続税が課せられます。相続税は、相続財産の金額によって税率が決められているため、相続財産の金額を減らすことが節税に繋がるのです。
相続税の節税対策として注目されているのが生前贈与です。生前贈与とは、亡くなる前にあらかじめ財産を譲っておくことで相続時の財産の総額を減らすという方法を指します。贈与の際に課せられる贈与税には、特定の目的の贈与を行った際に非課税になる特例が設けられているのです。
その特例の1つである教育資金贈与は、教育にかかる費用を一括で贈与した際に1,500万円までが非課税になるという制度です。この制度を利用すれば大幅な節税に繋がりますが、利用できる期間は令和8年3月31日までとなっています。まもなく終了してしまうので、利用を検討されている方は早めに手続きを開始することをおすすめします。
特例を使ったとしても、定められた期間内で使い切れなければ贈与税が課せられてしまうため、財産を受け取る方の年齢や所有している財産の金額によって節税効果があるか否かは異なります。より確実に節税を行いたい場合は、税理士などの専門家に相談してみましょう。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
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