土地の相続税はいくら?計算方法と評価額の調べ方、控除や特例を解説

土地の相続税を計算する際は、まず土地の評価額を算出し、適用できる控除や特例を考慮して進めます。本記事では、相続税の計算シミュレーションから、負担を軽減するための控除、特例制度まで、一連の流れを分かりやすく解説します。
目次
土地を相続しても相続税がかからないケースとは?
土地を相続した場合でも、必ずしも相続税がかかるわけではありません。実際には、相続税の申告が必要となるケースは全体の1割弱にとどまります。
遺産の総額が一定の非課税枠(基礎控除額)を下回る場合には、相続税は0円となり申告も不要です。土地を相続したからといって、すぐに納税を心配するのではなく、まずは自身の状況が課税対象になるのかを確認することが大切です。
遺産総額が基礎控除額以下なら相続税は発生しない
相続税には「基礎控除」という非課税枠が設けられており、遺産の総額がこの基礎控除額を下回る場合は相続税がかかりません。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で算出します。
例えば、相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、基礎控除額は4,800万円です。土地や建物、預貯金など、すべての遺産を合計した金額がこの4,800万円以下であれば、相続税の申告も納税も不要となります。
関連記事:【税理士監修】相続税の基礎控除と法定相続人の解説。相続税の申告が不要になるケースは?
相続税の申告・納税期限は相続開始から10ヵ月以内
相続税の申告と納税には期限があり、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内に行う必要があります。この期限内に、必要な書類を揃えて税務署へ申告し、納税まで完了させなければなりません。
固定資産税のように、役所から納税通知書が送られてくるわけではないため、相続人自身が遺産額を計算し、相続税が発生するかどうかを判断して手続きを進める点に注意が必要です。期限は長いようで短いため、早めに準備を始めましょう。
関連記事:【税理士監修】遺産相続の手続きは何から始めるべきか?手順や期限、最適な相談先をわかりやすく解説
土地の相続税額がわかる計算シミュレーション
土地を含む遺産総額が基礎控除額を超える場合、相続税の計算が必要です。具体的な計算は以下の4つのステップで進めます。
【ステップ1】土地を含むすべての遺産総額を算出する
まず、相続税の対象となるすべての遺産を洗い出し、その総額を算出します。対象となるのは、土地や家、建物といった不動産、預金、有価証券などのプラスの財産です。
一方で、親が残したローンや借入金などのマイナスの財産は遺産総額から差し引きます。また、相続開始前7年以内(2024年1月1日以降の贈与)に被相続人から受けた贈与も、相続財産の価額に加算されるため注意が必要です。
土地の価格は時価(相場)ではなく、相続税評価額という特別な基準で評価した金額を用います。
関連記事:【税理士監修】建物の相続税評価額を計算する方法とは?注意点や節税方法について解説
【ステップ2】基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を求める
【ステップ1】で算出した遺産総額から基礎控除額を差し引きます。この基礎控除額を超える部分が、相続税の課税対象となる「課税遺産総額」です。
課税対象となる遺産総額の計算式は以下の通りです。
遺産総額-基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)
例えば、遺産総額が1億円で法定相続人が3人(基礎控除額4,800万円)の場合、課税遺産総額は1億円から4,800万円を引いた5,200万円です。この計算結果が0円以下になれば、相続税はかかりません。
【ステップ3】法定相続分で相続税の総額を仮計算する
次に【ステップ2】で算出した課税遺産総額を、法律で定められた相続割合(法定相続分)で分割したと仮定して、各相続人の取得金額を計算します。
法定相続分は相続人の構成によって異なります。例えば、配偶者と子ども2人の場合は、配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1です。
そして算出した各人の取得金額に所定の相続税率を掛け、控除額を差し引いて各々の税額を算出します。最後に全員の税額を合計したものが「相続税の総額」となります。
【ステップ4】実際の相続割合で各人の納税額を計算する
最後に【ステップ3】で算出した「相続税の総額」を実際の遺産の分割割合に応じて各相続人に割り振ります。この実際の分割割合は、遺言書の内容や相続人全員で行う遺産分割協議の結果によって決まります。
例えば、相続税の総額が1,000万円で、ある相続人が遺産全体の40%を取得した場合、その相続人が納める税額は1,000万円の40%である400万円となります。この金額が最終的に各人が納税する相続税額です。
関連記事:【相続税の税率がすぐわかる】相続税の速算表と計算例のまとめ
相続税の計算に必須!土地の評価額を調べる2つの方法
相続税の計算において、土地の評価額を正確に算出することは重要です。土地の評価方法は売買価格や固定資産評価額とは異なり、国税庁が定めた基準に基づいて行います。
主な調べ方として「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があり、土地が所在する地域によってどちらを用いるかが決まっています。この評価方法を正しく理解し、適用することが、適正な相続税額を算出するための第一歩となります。
路線価方式:前面道路に路線価が定められている土地の評価方法
路線価方式は、主に市街地の土地評価に用いられる方法です。国税庁が毎年公表する「路線価図」に記載された、道路ごとの1平方メートルあたりの単価(路線価)を基に計算します。
基本的な計算式は「路線価×土地の面積」ですが、土地の形状は様々であるため、奥行が長い、間口が狭い、旗竿地であるといった個別の状況に応じて、奥行価格補正率などの各種補正率を乗じて評価額を調整します。更地としての評価が基本となります。
倍率方式:路線価が定められていない郊外の土地などの評価方法
倍率方式は、路線価が定められていない郊外の農地や山林などの土地評価に用いられます。この方法は、土地の固定資産税評価額に、国税庁が地域ごとに定める一定の倍率を掛けて評価額を算出します。
計算式は「固定資産税評価額×倍率」とシンプルです。
固定資産税評価額は、毎年市区町村から送られてくる固定資産税の納税通知書や役所で取得できる固定資産評価証明書で確認できます。倍率は国税庁のウェブサイトで公表されています。
参考:財産評価基準書|国税庁
関連記事:【税理士監修】土地の評価額は複数存在する。評価額の調べ方や計算方法、注意点も解説
人に貸している土地やアパートが建っている土地の評価額
土地の評価額は、その利用区分によって減額される場合があります。
例えば、人に土地を貸している場合(貸宅地)や自身が所有する土地に賃貸アパートを建てて貸している場合(貸家建付地)は、所有者が自由に利用できないという制約があるため、更地として評価するよりも低い評価額となります。
土地を第三者に貸すことで、相続税評価額が減額され、結果として相続税の負担を軽減できる可能性があります。具体的な評価方法は、その土地の利用状況や賃貸割合などに応じて計算されます。
関連記事:【税理士監修】不動産評価額とは?調べ方や使用用途について解説
土地の相続税負担を軽くする特例・控除制度

Housing and knowledge
相続税の計算では、税負担を大きく軽減できる特例や控除制度が設けられています。これらの制度を適用できるかどうかで、納税額が大きく変わります。
代表的なものに「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」があります。どのような制度があり、自分が利用できるのかを知っておくことは、相続税の対策を考える上で重要です。ここでは、土地の相続に関連する主な特例・控除とは何かを解説します。
【最大80%減額】小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、被相続人の居住用や事業用の宅地について、一定の要件を満たす場合に、その土地の評価額を最大で80%減額できる制度です。
例えば、5,000万円と評価された居住用の土地がこの特例の対象となれば、評価額を1,000万円まで圧縮でき、相続税負担を大幅に軽減できます。適用には、相続する人や土地の面積、相続後の利用状況など細かな要件が定められています。
特に居住用宅地の場合、いわゆる「家なき子特例」のように、同居していない親族でも適用できるケースがあります。
関連記事:【税理士監修】小規模宅地等の特例対象となる同居とは?条件や定義について解説
関連記事:【税理士監修】小規模宅地等の特例の「家なき子特例」とは?要件や必要な手続き、注意点を徹底解説
配偶者の税額軽減で相続税が大幅に控除される
配偶者の税額軽減は、被相続人の配偶者が遺産を相続した場合に受けられる控除制度で、一般的に「配偶者控除」と呼ばれています。
この制度により、配偶者が取得した遺産額が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額までであれば、相続税はかかりません。
多くのケースで配偶者の相続税が0円になる非常に強力な制度ですが、適用を受けるためには、相続税の申告期限内に遺産分割を確定させ、申告書を提出する必要があります。
関連記事:【税理士監修】相続税の配偶者控除とは?計算方法や申告方法をわかりやすく解説
未成年者控除・障害者控除などその他の控除制度
相続人の中に未成年者や障害者がいる場合、それぞれの状況に応じて税額から直接差し引ける控除制度があります。
未成年者控除は、相続人が満18歳になるまでの年数1年につき10万円が控除されます。
障害者控除は、満85歳になるまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)が控除される制度です。
これらの控除は、相続税の総額からではなく、各相続人が納めるべき税額から直接差し引かれるため、節税効果が高いことが特徴です。
関連記事:【税理士監修】相続税の障害者控除を解説。適用要件や計算方法、申告不要となるケースまで
土地の相続税申告で押さえておきたい注意点
土地の相続税申告には、期限の遵守や事前準備が不可欠です。特に複雑な土地評価や特例の適用判断には専門知識が必要となるため、不安があれば税理士など専門家に相談することが大切です。
ここでは、申告手続きをスムーズに進めるために知っておきたい注意点を解説します。
相続税の申告期限を過ぎるとペナルティがある
前述の通り、相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。この期限内に申告と納税を完了しない場合、ペナルティとして「無申告加算税」や「延滞税」といった追徴課税が発生する可能性があります。余計な負担を避けるためにも、期限内に申告と納税を済ませるようにしましょう。
関連記事:【税理士監修】無申告加算税とは?税率やその他の加算税について
スムーズな手続きのために土地の権利関係を事前に確認する
土地の相続手続きを円滑に進めるには、法務局で登記情報を確認し、権利関係を正確に把握しておくことが重要です。2024年4月1日からは相続登記が義務化されており、正当な理由なく登記を怠ると過料の対象となります。
また、将来的に土地を売却する場合も、登記が完了していることが前提です。さらに、売却益が出れば相続税とは別に譲渡所得税の確定申告が必要になる点にも注意しましょう。
関連記事:【2024年4月開始】相続登記が義務化!放置のリスクや罰則、よくある質問を紹介
まとめ
土地の相続税は、専門的な知識が求められる複雑な手続きです。相続税額は、まず土地の評価額を算出し、遺産総額が基礎控除額を超える場合に発生します。
税負担を軽くする代表的な制度には「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」があります。これらの特例は要件が細かく、適用できるかどうかが納税額を大きく左右します。
相続税の申告には期限があり、過ぎてしまうとペナルティが課されるかもしれません。さらに2024年(令和6年)からは相続登記が義務化されるなど、制度の変更にも注意が必要です。
計算や申告手続きに少しでも不安がある場合や最適な節税対策を検討したい場合は、相続に詳しい税理士に相談することをおすすめします。専門家に依頼すれば、申告ミスのリスクを減らし、利用できる制度を最大限に活用できます。その結果、精神的にも金銭的にも負担を軽くすることができます。
相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。
相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。
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監修者

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長
96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。
【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他
【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。