贈与税に課される加算税とは?種類・税率・計算例をわかりやすく解説

贈与税に課される加算税とは?種類・税率・計算例をわかりやすく解説

贈与税の申告をうっかり忘れてしまったら、どのようなペナルティが課されるのかご存じでしょうか。「少しくらいなら大丈夫」と思っていると、思わぬ負担に繋がる場合があるので注意しましょう。

本記事では、贈与税に課される加算税の種類や税率、延滞税との違い、さらに具体的な計算例や回避のための実務ポイントを解説します。贈与税の加算税について不安を抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

贈与税に課される加算税とは?

贈与税に課される加算税とは、申告期限までに申告や納付を行わなかった場合に課される制裁的な税金です。期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までと定められています。

この仕組みは国税通則法第65条に基づいており、無申告や過少申告があれば本税に加えて加算税が上乗せされます。その結果、本来の税額以上を支払う必要が生じるため、加算税は「申告義務違反」に対する罰則としての意味を持っています。

参考:国税通則法 | e-Gov 法令検索

参考:No.2026 確定申告を間違えたとき|国税庁

延滞税との違い

延滞税は加算税と似ていますが、性質は異なります。加算税が「申告義務違反」に対する制裁であるのに対し、延滞税は「納付遅延」に対する利息として課されます。

この仕組みは国税通則法第60条に規定されており、申告自体に誤りがなくても納付が遅れれば発生し、遅延期間が長引くほど金額は膨らみます。両者は、どちらも期限を守らなかった場合に追加の負担が生じる点では共通していますが、その対象と性質が異なっています。

参考:No.9205 延滞税について|国税庁

贈与税に課される加算税の種類と税率

贈与税に課される加算税には、申告や納付の状況に応じて複数の種類があり、それぞれ税率や適用条件が異なります。

無申告加算税

無申告加算税は、期限までに申告を行わなかった場合に課されるペナルティです

贈与税額

自主的に申告した場合

調査通知後〜調査前
に申告した場合

調査後に申告した場合

50万円以下の部分

5%

10%

15%
(再犯時25%)

50万円超〜300万円以下の部分

5%

15%

20%
(再犯時30%)

300万円超の部分

5%

25%

30%
(再犯時40%)

期限後、自主的に申告すれば一律5%で済みますが、調査前なら10〜25%、調査後は15〜30%と段階的に負担が重くなります。

さらに、過去5年以内に同じ税目で処分歴がある場合には再犯扱いとなり、最大40%まで引き上げられるので注意しましょう。

関連記事:タンス預金の無申告は税務署にばれる!最適な相続・贈与税対策は?

過少申告加算税

過少申告加算税は、期限内に申告していても税額が少なかった場合に課されます。追加で納める税額は「基準額」を境に2つに分けて計算します。基準額とは「期限内に申告した金額」と「50万円」のうち大きい方です。

例えば、30万円を申告していた場合は基準が50万円、80万円を申告していた場合は基準が80万円となり、それを超えた部分に高い税率がかかります。

区分

自主的に修正申告(調査前)

調査通知後〜調査前
に修正申告

調査後に修正申告

基準額※までの部分

なし(免除)

5%

10%

基準額※を超える部分

なし(免除)

10%

15%

※期限内申告額と「50万円」のうち大きい額

また、調査前に自主的に修正すれば加算税はかかりませんが、調査通知後は「低い部分」で5%、「高い部分」で10%、さらに調査後は「低い部分」で10%、「高い部分」で15%と、負担が段階的に重くなります。

重加算税

重加算税は、仮装や隠蔽といった故意の不正行為に対して課される最も重い制裁です

過少申告の場合は35%、無申告の場合は40%が課され、過去5年以内に同じ税目で処分歴がある場合は再犯扱いとなり、それぞれ45%・50%に引き上げられます。

過少申告の場合 無申告の場合
通常の場合 35% 40%
過去5年以内に加算税を受けた場合(再犯時) 45% 50%

延滞税の税率

延滞税は、申告をしていても納付が遅れた場合に課される税金で、年度ごとの基準金利や遅延日数によって税率が変わります

令和7年度では、納期限から2ヵ月以内は年2.4%、2ヵ月を超えると年8.7%が適用されます。

【令和7年度の場合】

納付の遅れ

適用税率

納期限から2ヵ月以内

年2.4%

納期限から2ヵ月を超える場合

年8.7%

参考:延滞税の割合|国税庁

贈与税に課される加算税と延滞税の具体的な計算例

相続・贈与に関する書類手続き

加算税や延滞税は、申告や納付の状況によって負担額が大きく変わります。代表的なケースを例に具体的な金額を確認してみましょう。

期限内に申告したが少なかった場合

期限内に申告していても本来より少ない金額しか申告していなかった場合は、追加で納める税額に「過少申告加算税」がかかります。調査前に自主的に修正すれば加算税は免除されますが、調査通知後や調査後に修正すると税率が段階的に高くなるので注意しましょう。

<追加納税額が180万円の場合>

  • 調査通知前に自主修正 → 加算税 0円(免除)
  • 調査通知後に修正 → 低い区分 5%/高い区分 10%
    例)180万円 x 5%= 90,000円、180万円 x 10%=18万円
  • 調査後に修正 → 低い区分 10%/高い区分 15%
    例)180万円 x 10%=18万円、180万円 x 15%=27万円
    (仮装・隠蔽が認定されると重加算税:180万円×40%=72万円)

申告をしなかった場合

申告を全く行わなかった場合には「無申告加算税」がかかります

負担は申告のタイミングで大きく変わり、自主的に期限後申告をすれば軽く済みますが、調査段階が進むにつれて急激に増えるので注意しましょう。

<200万円を申告しなかった場合>

  • 自主的に期限後申告 → 200万円×5%=10万円
  • 調査通知後に申告 → 200万円×15%=30万円
  • 調査後に申告 → 200万円×20%=0万円

納付が遅れた場合

申告内容に誤りがなくても、納付が遅れれば延滞税がかかります

延滞税は日数に応じて利率が切り替わる仕組みで、特に2ヵ月を超えると利率が大幅に上がるので注意しましょう。

<200万円を3ヵ月遅延した場合(令和7年度)>

最初の2ヵ月:200万円×2.4%×2/12=8,000円
その後1ヵ月:200万円×8.7%×1/12=14,500円
合計 ≒ 22,500円

贈与税に課される加算税を回避するための実務ポイント

加算税は発生すれば大きな負担になります。余計なリスクを避け、安心して贈与を行うために以下のポイントを押さえておきましょう。

必ず申告をすること

贈与を受けたにもかかわらず無申告で済ませてしまうと、税務調査で発覚し、高い確率で加算税が課されるでしょう。実際、国税庁の統計でも相続税・贈与税調査の非違件数の8割以上が無申告によるものとされています。

たとえ家族間のやり取りであっても、「少額だから」、「知られないだろう」と考えるのは危険です。贈与を受けた場合は必ず期限内に申告しましょう。

参考:令和5事務年度における相続税の調査等の状況|国税庁

申告内容を細かく確認することが重要

申告書の記載に誤りが残っていると、税務署からの指摘に繋がり、過少申告加算税の対象となります。特に控除額や課税価格の計算は複雑で見落としやすい部分です。小さな不備でも修正を迫られ、余計な手間や負担が生じるため、必ず細部まで確認するようにしましょう。

誤りに気づいたら早めに修正する

誤りに気づいたら早めに修正しましょう。申告後に誤りを発見した場合でも、調査前に自主的に修正申告をすれば加算税はかかりません。

逆に調査通知後や調査中に発覚すると5〜15%の加算が上乗せされ、対応の遅れがそのまま金銭的負担になります。気づいた時点ですぐに修正すれば、余計な課税を避けられます。

贈与の事実を証明できる資料を保管する

贈与税を納めていても、その事実を裏付ける資料がなければ税務調査で疑念を持たれる可能性があります

贈与契約書を作成していない、通帳に振込記録がないと「名義預金」と判断されるリスクが高まるため、契約書や振込記録など客観的に示せる証拠を必ず整備・保管しましょう。

贈与税における加算税に関してよくある質問

FAQ・Q&A

贈与税の加算税は仕組みが複雑なため、納税者から多くの疑問が寄せられます。特によく寄せられる質問を取り上げるので、制度を理解する参考にしてください。

Q1:加算税と延滞税は同時にかかるのですか?

同時にかかる場合もあります

加算税は申告を怠った場合の制裁、延滞税は納付が遅れた場合の利息的な税金で、それぞれ性質が異なるため、申告も納付も期限を過ぎてしまうと、両方が適用されるケースがあります。

例えば、無申告のまま納付も遅れた場合には、加算税と延滞税が重なり大きな負担になるでしょう。

参考:No.9205 延滞税について|国税庁

Q2:加算税は時効で消えることはありますか?

贈与税にも時効があり、課税権は一定期間を経過すると消滅します

国税通則法では、通常の加算税は申告期限から5年、仮装や隠蔽といった重加算税が対象となる悪質な場合は7年と定められています。

ただし、実際には税務署が相続の有無を把握して調査を行うケースが多く、質問検査権の行使によって時効が中断・延長される場合もあるため、時効の成立は極めて稀です。

参考:国税通則法 | e-Gov 法令検索

Q3:加算税は分割で納付できますか?

加算税は本税と同様に原則一括納付が求められます。

ただし、経済的に困難な場合には延納や納税猶予の制度を利用できる場合があります。延納は数年に分けて分割納付する仕組みで、納税猶予は一時的に納付を先送りできる制度です。

いずれも申請が必要で、担保の提供や利子税の負担を伴うため、結果的に総負担は増える点に注意してください。

参考:国税の納税の猶予制度 FAQ | 国税庁

関連記事:相続税の納税猶予制度とは?要件や注意点についてわかりやすく解説

贈与税における加算税でお悩みの方は専門家に相談

贈与税の加算税や重加算税は、国税通則法に基づいて高率の課税が行われ、場合によっては延滞税と重なり大きな負担になります。さらに過去の処分歴があると税率が上乗せされる場合もあり、個人での対応は非常にリスクが高いと言えます。

こうした複雑な制度を正しく理解し、最適な対応をとるためには、税務に精通した専門家へ相談するのが安心でしょう

小谷野税理士法人では、贈与税の申告や税務調査対応の豊富な経験を活かし、状況に応じた具体的なサポートを行っています。贈与税の加算税でお悩みの方は、ぜひ小谷野税理士法人へご相談ください。

相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。

相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。

やさしい相続相談センターでは、お客様の資産をお守りする適切な申告をサポートさせていただきます。
初回相談は無料です。ぜひご相談ください。

また、金融機関不動産関係者葬儀関連企業税理士・会計士の方からのご相談やサポートも行っております。
小谷野税理士法人の相続専門スタッフがお客様へのサービス向上のお手伝いをさせていただきます。

監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。