準確定申告とは?必要なケースの具体例や流れ、よくある質問を紹介

準確定申告とは?必要なケースの具体例や流れ、よくある質問を紹介

準確定申告とは亡くなった人の所得についての確定申告です。準確定申告の義務は必ず発生するわけではなく、一定額を超える所得がある場合に必要になります。準確定申告の期日は相続税よりも早く設定されているため、必要性の判断や作業を手早く進めることが大切です。今回は準確定申告について詳しく解説します。

準確定申告とは

準確定申告とは亡くなった人の所得について行う確定申告です。相続人や包括受遺者に義務があります。

準確定申告の期日

準確定申告の期日は相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内です。

なお、前年分の確定申告をする前に亡くなった場合は、前年分についての準確定申告も必要です。すなわち、タイミングによっては2年分の義務が発生します。

本来、所得税の申告期日は翌年の3月15日です。ただし前年分の準確定申告の期日は亡くなった年の分と同じく、相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内となります。

通常の確定申告との相違点

通常の確定申告との主な相違点は以下の5つです。

確定申告

準確定申告

申告義務者

納税者本人

相続人等

納付義務者

同上

同上

申告先

納税者の住所地を所轄する税務署

亡くなった時の納税地を所轄する税務署

期日

翌年の3月15日

土日祝にあたる年は翌平日

相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内

所得控除の対象となる範囲

1年間の支払額

原則として亡くなる当日までに支払済みの額

※対象範囲について詳しくは後述

準確定申告が必要になるケース

税務署

結論として、被相続人に一定額を超える所得があれば準確定申告が必要です。該当するケースの具体例を紹介します。

必要なケースの例

準確定申告が必要なケースの例として、以下の5つが挙げられます。

  • 事業や不動産賃貸業を営んでおり、その年に48万円を超える所得がある
  • 2ヵ所以上から給与を受け取っている
  • 給与収入が2,000万円を超える
  • 公的年金による収入が400万円を超える
  • 給与所得や退職所得以外の所得が20万円を超える
    (副業による所得、株式の譲渡所得、満期保険金や解約払戻金など)

基本的に、生前に確定申告をしていたのであれば準確定申告が必要な可能性が高いです。また、一定額を超える特別な収入があった際にも必要となります。

準確定申告が必要か否かを出来る限り早いうちに判断できるよう、生前の収入について早急に調査を進めましょう。

不要なケースの例

続いて、準確定申告が不要なケースの例を3つ紹介します。

  • 所得が1ヵ所からの給与収入のみで、額面給与2,000万円以下
  • 公的年金の受給額が400万円以下
  • 給与所得や退職所得以外の所得が20万円以下

ただし、所得が一定額以下でも医療費控除や還付などを受けるために申告した方が有利になる可能性もあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

関連記事:副業所得20万円以下で確定申告は必要?ポイントや注意点を解説!

準確定申告の流れ

準確定申告の流れを3つのステップに分けて解説します。

ステップ1:必要書類を集める

準確定申告の必要書類として以下の例が挙げられます。

  • 確定申告書
  • 死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(★)
    相続人が複数かつ連署による提出をする際に必要
  • 収支内訳書または青色申告決算書
  • 収入、経費、控除等に関する書類
  • 委任状(★)
    相続人が複数人かつ還付金を誰かが代表して受け取る場合に必要

上記のうち、先頭に(★)マークのついた書類が準確定申告ならではの書類です。それ以外は通常の確定申告と同じように用意します。書類の詳細や手配の流れについては以下の記事をご覧ください。

関連記事:【税理士監修】確定申告のやり方ガイド!いつからいつまでの収入?郵送のケースや必要書類・マイナンバーカードについて

ステップ2:申告書を作成する

前述した書類がすべて揃ったら申告書の作成を進めましょう。作成時の注意点として以下の2つが挙げられます。

  1. 亡くなった人のマイナンバーは記載不要(マイナンバーの欄は空欄のまま)
  2. 申告書の住所や氏名欄の書き方が通常の確定申告とは異なる

特に注意するべきなのが2つめです。住所や氏名欄に書くのは被相続人と相続人の情報となります。各欄を2段に分け、上段に被相続人、下段に相続人の情報を記載します。

収入、経費、控除額の計算方法などの基本的な流れは通常の確定申告と同様です。

ステップ3:準確定申告書の提出および納税をする

前述のように、準確定申告の期日は相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内です。亡くなった時の納税地を所轄する税務署へ提出します。

準確定申告に関するよくある質問

Q&A

最後に、準確定申告に関するよくある質問7つを紹介します。

Q1:所得控除の対象範囲はどこまで?

準確定申告で所得控除の対象になる範囲は以下の通りです。

控除の種類

対象額

備考

医療費控除

亡くなる当日までに本人が支払済みの分

亡くなった後に相続人等が支払った分は対象外

社会保険料控除

生命保険料控除

地震保険料控除

小規模企業共済掛金控除

亡くなる当日までに本人が支払済の保険料等の額

控除証明書は毎年10月頃に発行されるのが一般的。期日に間に合いそうになければ保険会社等へ問い合わせが必要

扶養控除

配偶者控除

配偶者特別控除などの人的控除

月割計算はせず、確定申告と同様の控除額を適用

死亡日の状況で控除の適用可否を判断

Q2:相続人が各々個別に提出することは可能?

全員による連署ではなく、各人が個別に提出することも可能です。個別に提出する際は、準確定申告を行なった事実や内容をほかの相続人に通知する必要があります。

Q3:相続放棄をした人の義務はどうなる?

相続放棄をした人には準確定申告の義務がありません。相続放棄をすると最初から相続人ではなかったとみなされるため、準確定申告の義務者でもなくなります。

相続放棄の期日は、自己のために相続の開始があった旨を知った日から3ヵ月以内です。期日までに家庭裁判所へ「相続放棄申述書」を提出する必要があります。

参考:民法 | e-Gov 法令検索

相続放棄の詳しい流れは以下の記事をご覧ください。

関連記事:【税理士監修】相続放棄の費用はいくら?手続きの進め方や注意点も解説

なお、全員が相続放棄をすると、準確定申告の義務を負う者は以下のように変わります。

条件

申告義務を負う者

申告期日

包括受遺者がいる

包括受遺者

遺贈を知った日の翌日から4ヵ月を経過した日の前日

包括受遺者がいない

相続財産法人

相続財産法人の清算人が確定した日の翌日から4ヵ月を経過する日

参考:民法上の相続人が不存在の場合の準確定申告の手続|国税庁

Q4:誤った内容で申告してしまったらどう対処すれば良い?

誤りに気付いたのが申告期限前であれば、正しい内容の申告書を改めて提出すれば問題ありません。同年分の申告書が期日までに複数回提出された場合、最新分を用いて処理が進められます。

誤りに気付いたのが期限後の場合は特別な手続きを要します。申告税額が少なければ「修正申告」が、申告税額が多ければ「更正の請求」が必要です。

修正申告と更正の請求では作成方法や注意するべきポイントが異なるためご注意ください。詳しいやり方は以下の記事で解説しています。

関連記事:【税理士監修】確定申告が間違っていたときの修正申告のやり方・流れ

Q5:納付税額や還付金は相続税の計算に含める必要がある?

納付税額はマイナスの財産、還付金はプラスの財産として計算に含める必要があります。納付税額等を計算に含めるのを忘れてしまうと税額にズレが生じてしまうためご注意ください。

Q6:青色申告特別控除は満額の適用が可能?

青色申告特別控除は扶養控除などの人的控除と同じく満額適用が可能です。月割計算は必要ありません。

控除額は65万円・55万円・10万円の3パターンで、条件により適用額が異なります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

関連記事:青色申告特別控除の「65万円控除」の条件とは?10万円、55万円の条件と比較

Q7:申告ミスや漏れに対してどのようなペナルティを課せられる?

申告ミスや漏れに対するペナルティとして以下の例が挙げられます。

名称

概要

延滞税

本来の納付期日を過ぎると課せられるペナルティで、利息のような性質をもつ。納付期日からの経過日数に応じて計算

過少申告加算税

申告した税額が本来よりも少ない場合に課せられるペナルティ

無申告加算税

申告期日を過ぎた場合に課せられるペナルティ

被相続人に一定額を超える所得があれば準確定申告が必須

原則として、被相続人に一定額を超える所得があれば準確定申告が必要です。期日は相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内と、相続税よりも早く設定されています。

申告書作成の流れには通常の確定申告と同じ部分も多くあります。ただし細かな記載事項や提出先など異なる要素もあるため注意が必要です。

準確定申告はわかりにくい部分が多く、不慣れ故に戸惑ってしまい、スムーズに進められないとお困りの人もいるでしょう。少しでも疑問や不安があれば1人ですべて対処しようとせず、専門家である税理士に相談するのが安心です。

相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。

相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。

やさしい相続相談センターでは、お客様の資産をお守りする適切な申告をサポートさせていただきます。
初回相談は無料です。ぜひご相談ください。

また、金融機関不動産関係者葬儀関連企業税理士・会計士の方からのご相談やサポートも行っております。
小谷野税理士法人の相続専門スタッフがお客様へのサービス向上のお手伝いをさせていただきます。

監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。