【相続税の税率がすぐわかる】相続税の速算表と計算例のまとめ

更新日:2023.4.28

相続税の税率は、法定相続分に応ずる取得金額ごとに異なります。法定相続分に応じる取得金額は、「課税遺産総額-基礎控除額」にて算出可能です。課税遺産総額が3,600万円以内の場合には相続税は発生しません。

ここでは、相続税の税率および速算表と、相続税の計算の流れについてご紹介します。

相続税の税率・速算表

相続税の税率は「課税遺産総額-基礎控除額」にて算出された金額と、法定相続分によって按分した金額で決定されます。(法定相続分に応ずる取得金額)

以下は国税庁のホームページに記載されている速算表となります。相続税額は以下の表で概算することができます。

法定相続分に応ずる取得金額相続税率控除額
1,000万円以下10%0円
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm

基礎控除額の計算式は次のとおりです。

3,000万円+600万円×法定相続人の数

法定相続人の数基礎控除額
1人3,600万円
2人4,200万円
3人4,800万円
4人5,400万円
5人6,000万円
6人6,600万円
7人7,200万円
8人7,800万円
9人8,400万円
10人9,000万円

例えば法定相続人の数が1人の場合、課税遺産総額が3,600万円以内であれば、相続税は発生しません。

3,600万円(課税遺産総額)-(3,000万円+600万円×1人)=0円

※法定相続分に応じる取得金額が0円のため、相続税も0円です

法定相続人の数が1人、課税遺産総額が4,000万円の場合には相続税が発生します。

4,000万円(課税遺産総額)-(3,000万円+600万円×1人)=400万円

400万円×10%(相続税率)=40万円(相続税額)

相続税の速算表と相続税額の計算例

相続税は配偶者の存在をはじめとした状況により、税額が異なります。例えば、「配偶者の税額の軽減」が適用されることがその理由です。

次の金額のうちいずれか多い方の正味の遺産額に関しては、配偶者に対する相続税が課されることはありません。

・1億6,000万円

・配偶者の法定相続分相当額

上記の点を踏まえた上で、相続税の速算表を作成しています。

配偶者がいる場合

課税遺産総額配偶者+子ども1人配偶者+子ども2人配偶者+子ども3人
4,000万円0円0円0円
5,000万円40万円10万円0円
6,000万円90万円60万円30万円
7,000万円160万円113万円80万円
8,000万円235万円175万円137万円
9,000万円310万円240万円200万円
1億円385万円315万円262万円
1億5,000万円920万円748万円665万円
2億円1,670万円1,350万円1,217万円
2億5,000万円2,460万円1,985万円1,800万円
3億円3,460万円2,860万円2,540万円

※参照:https://www.jili.or.jp/lifeplan/houseeconomy/820.html

1億円の課税遺産総額にて、配偶者と子ども2人の場合の相続税額を計算してみましょう。

法定相続分に応ずる取得金額

1億円-(3,000万円+600万円×3)=5,200万円

法定相続分の課税遺産額

配偶者:5,200万円×50%=2,600万円

子ども①:5,200万円×25%=1,300万円

子ども②:5,200万円×25%=1,300万円

法定相続人ごとの課税額

配偶者:2,600万円×15%(相続税率)-50万円=340万円

子ども①:1,300万円×15%(相続税率)-50万円=145万円

子ども②:1,300万円×15%(相続税率)-50万円=145万円

法定相続分に基づき分割した課税額

配偶者:630万円×50%=315万円

子ども①:630万円×25%=157.5万円

子ども②:630万円×25%=157.5万円

配偶者に対しては、「配偶者の税額の軽減」が適用されます。

・1億6,000万円

・配偶者の法定相続分相当額

※上記のうち、いずれか多い方の金額に対しては相続税が課されません。

法定相続人ごとの相続税額

配偶者:0円

子ども①:1,575,000円

子ども②:1,575,000円

子どものみの場合

課税遺産総額子ども1人子ども2人子ども3人
4,000万円40万円0円0円
5,000万円160万円80万円20万円
6,000万円310万円180万円120万円
7,000万円480万円320万円220万円
8,000万円680万円470万円330万円
9,000万円920万円620万円480万円
1億円1,220万円770万円630万円
1億5,000万円2,860万円1,840万円1,440万円
2億円4,860万円3,340万円2,460万円
2億5,000万円6,930万円4,920万円3,960万円
3億円9,180万円6,920万円5,460万円
5億円1億9,000万円1億5,210万円1億2,980万円
10億円4億5,820万円3億9,500万円3億5,000万円

次は1億円の課税遺産総額にて、子ども2人の場合の相続税額を算出していきます。

法定相続分に応ずる取得金額

1億円-(3,000万円+600万円×2)=5,800万円

法定相続分の課税金額

子ども①:5,800万円×50%=2,900万円

子ども②:5,800万円×50%=2,900万円

法定相続人ごとの課税額

子ども①:2,900万円×15%(相続税率)-50万円=385万円

子ども②:2,900万円×15%(相続税率)-50万円=385万円

法定相続人ごとの相続税額

子ども①:770万円×50%=385万円

子ども②:770万円×50%=385万円

相続税の計算の流れ

相続税は次の流れに沿って進めていくことで算出されます。

  • 遺産の課税価格の合計額を計算する
  • 課税価格の合計額から基礎控除額を差し引く(課税遺産総額)
  • 課税遺産総額に法定相続分を掛け、各法定相続人の取得金額を計算する
  • 各法定相続人の取得金額に相続税率を掛け、税額を計算する

遺産の課税価格の合計額を計算する

まず最初に行うことは、遺産の課税価格の合計金額を求めることです。主な遺産には、以下のようなものがあります。

  • 不動産(土地や建物)
  • 預貯金
  • 有価証券(株式など)
  • 保険商品

預貯金や保険商品の場合は、通帳などから単純に金額を合計すれば問題ありません。不動産や株式に関しては、相続税評価額を算出することになります。

相続税評価額を算出するにあたっては、特例が適用されることも多く、専門家に任せる方が正確な金額を算出することができます。また、財産調査にも手間がかかるため、相続税申告を相続人のみで実施することは推奨できません。

課税価格の合計額から基礎控除額を差し引く(課税遺産総額)

遺産の課税価格の合計額を求めたら、次は課税遺産総額の算出を行います。

課税遺産総額=遺産の課税価格-基礎控除額

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

遺産の課税価格が7,000万円、法定相続人が2人の場合の課税遺産総額は、以下のとおりです。

7,000万円-(3,000万円+600万円×2)=2,800万円

課税遺産総額に法定相続分を掛け、各法定相続人の取得金額を計算する

続いて、課税遺産総額に法定相続分を掛けて、各法定相続人の取得金額の算出に進みます。法定相続人が子ども2人の場合、取得金額は以下のとおりです。

子ども①:2,800万円×50%=1,400万円

子ども②:2,800万円×50%=1,400万円

各法定相続人の取得金額に相続税率を掛け、税額を計算する

最後に各法定相続人の取得金額に相続税率を掛けて、税額を算出します。

子ども①:1,400万円×15%-50万円=160万円

子ども②:1,400万円×15%-50万円=160万円

上記の金額を相続税として期限までに納付すれば完了です。相続税の納付期限は相続が発生した日(被相続人が亡くなった日)から数えて10ヶ月後となります。

それから相続税の計算には「配偶者の税額の軽減」のほかにも、次の控除などを考慮するケースが存在するため、注意が必要です。

控除の種別内容
未成年者控除相続人が未成年者(18歳未満)の場合に適用される 控除額=(18歳-相続時の年齢)×10万円 ※2022年4月1日以降
障害者控除相続人が障害者認定されている場合に適用される 一般障害者の控除額 (85歳-相続時の年齢)×10万円 特別障害者の控除額 (85歳-相続時の年齢)×20万円
贈与税額控除相続人が被相続人から生前贈与を受けていた際に適用される 被相続人の亡くなった日からさかのぼって3年以内の贈与が対象

まとめ

相続税は遺産総額と税率だけで求められるわけではありません。各種控除や特例なども加味した上で、正確な相続税額を算出する必要があります。

相続税の納付期限は、相続が発生した日から10ヶ月以内と定められています。早期に専門家に相談することで複雑かつ面倒な手続きをスムーズに進めていくことが可能となります。 相続税の手続きについて、身内だけでの解決が難しいと感じた際は、ぜひ税理士へご相談ください。

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監修者

小谷野 幹雄

小谷野 幹雄 小谷野税理士法人 代表社員税理士 公認会計士

84年早稲田大学在学中に公認会計士2次試験合格、85年大手証券会社入社、93年ニューヨーク大学経営大学院(NYU)でMBAを取得し、96年小谷野公認会計士事務所を開業。2017年小谷野税理士法人を設立、代表パートナー就任。FP技能検定委員、日本証券アナリスト協会、プライペートバンキング資格試験委員就任。複数のプライム市場上場会社の役員をはじめ、各種公益法人の役員等、社会貢献分野でも活躍。