【税理士監修】地積規模の大きな宅地の評価とは?適用条件や計算方法を解説

更新日:2023.9.8

相続財産の中には、土地や建物といった不動産も含まれます。面積が広い土地は、地積規模の大きな宅地として、適用条件に合致する場合は評価額を約6~8割程度に減額することができます。
この記事では、地積規模の大きな宅地の評価について詳しく解説します。適用条件や適用できない地区、制度を利用する際のポイントなども紹介するため、土地の相続が発生した方に必見の内容です。ぜひ、参考にしてみてください。

地積規模の大きな宅地の評価とは

地積とは、登記簿に記されている面積のことです。土地の評価額は、面積や土地の形状、道路と土地の位置などを基に計算します。「地積規模の大きな宅地」に該当する場合、規模格差補正率を用いて評価額を計算することで、通常の評価額の6~8割程度となります。

この評価制度は、平成30年以降に適用が開始となった比較的新しい制度です。大規模な土地を戸建住宅用地として開発・分譲する場合の減価を考慮するものです。

地積規模の大きな宅地の評価の適用要件

地積規模の大きな宅地とはどのような土地なのでしょうか。適用条件を面積と地区に分けて、わかりやすく紹介します。

国税庁の公式ホームページにフローチャートが記載されているため、そちらも併せて参考にしてみてください。

地積の要件  

地積規模の大きな宅地に該当するのは、以下のような条件に合致する土地です。
・三大都市圏の場合500㎡以上あること
・三大都市圏以外では土地の面積が1,000㎡以上あること
なお、三大都市圏とは、以下のような土地のことです。
・首都圏整備法に規定する既成市街地や近郊整備地帯
・近畿圏整備法に規定する既成都市区域、近郊整備区域
・中部圏開発整備法に規定する都市整備区域
例えば、三大都市圏以外の宅地で、面積が800㎡だった場合、この制度は利用できません。

区分の要件

地積規模の大きな宅地に該当する地区は以下の通りです。

・路線価地域
普通商業、併用住宅地区、あるいは普通住宅地区にある宅地

普通商業や併用住宅地区、普通住宅地区にある宅地は基本的に戸建住宅用地として利用されることが多いため、地積規模の大きな宅地の対象となります。一方、これらの地区以外にある宅地は戸建住宅用地になることが少ないため、適用条件から外れることとなります。

また、倍率方式で評価額を算出する地域では、所在地区の決まりはありません。しかし、大規模工場用地に該当するものは制度の対象外となります。

地積規模の大きな宅地の評価を適用できない区域

市街化調整区域

市街化調整区域は、地積規模の大きな宅地の評価を適用できません。市街化調整区域とは、市街化を抑制する地域です。具体的に言えば、住宅や商業施設などの建設・開発ができない区域となります。

都市計画法に規定する工業専用地域

工業専用地域とは、工場の建設に特化した地域のことです。工場を建てる場合の条件は比較的緩く設定されている一方、工場以外の建物に関する決まりは厳しく、宅地としての使用は原則認められていません。そのため、工場専用地域も、地積規模の大きな宅地の評価の適用条件から除外されます。

指定容積率が400%以上の地域(東京都の特別区は300%)

指定容積率とは、都市計画によってあらかじめ定められた容積率の限度値のことです。指定容積率は、駅周辺や幅の広い大きな道路に面した土地などに適用されることが多くなっています。

指定容積率が400%以上(東京都特別区内では300%)ある土地は、マンションの建設目的として使用されるケースが多く、住宅の建設に利用することは少ないため、地積規模の大きな宅地の評価の適用対象外とされています。

倍率地域のうち評価通達に定める大規模工場用地

倍率地域とは、路線価のない土地のことです。また、路線価とは国税庁が毎年7〜8月に公表する土地の価格のことで、主要な道路に面した1㎡あたりの土地の価格となります。路線価は主に市街地に適用されており、郊外では倍率方式が採用されていることが多くなっています。

倍率方式が採用されている地域において、大規模工場用地に指定されている土地は、基本的に工場や倉庫など工業用に使用されます。住宅が建築されることはほとんどありません。そのため、このような土地も地積規模の大きな宅地の評価の対象から外れます。

地積規模の大きな宅地の評価・計算方法

対象となる土地が地積規模の大きな宅地に該当する場合、評価額がいくらになるのか計算しておきたいと考える方も多いでしょう。路線価地域に所在するケースでは、以下の計算式を基に評価額を算出します。

・補正路線価×画地補正率×規模格差補正率×地積(㎡)

画地補正率には奥行価格補正率や不整形地補正率などがあります。

また、対象となる土地が倍率地域に所在するときの計算式は以下の通りです。

・宅地の基準年度の固定資産税評価額×倍率

・宅地が標準的な間口・奥行を有する宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額×普通住宅地区の奥行価格補正率×規模格差補正率×地積(㎡)

上記のうちいずれか低い方の金額が適用されます。倍率方式の地域でも、路線価地域と同じように使い勝手の良し悪しに応じて補正率が適用されます。自宅の土地の形状をよく確認し、正しい金額を算出しましょう。

地積規模の大きな宅地の評価を適用する際のポイント

地積規模の大きな宅地の評価を適用することで、評価額の減額が可能となるのは大きなメリットです。適用条件に合致する土地を保有している方で、節税したい場合は適宜利用しましょう。ここでは、制度利用時の注意点や押さえておきたいポイントを紹介します。

申告時はチェックシートを添付する

相続税申告で地積規模の大きな宅地の評価を適用させるためには、適用要件チェックシートを評価明細書に添付しなければなりません。国税庁の公式サイトに適用要件チェックシートが掲載されているため、ダウンロードして必要情報を記載しましょう。

「はい」か「いいえ」に答える形で丸を付けるだけで記載が完了します。適用要件チェックシートに「いいえ」がつくときは、適用対象外となるため注意が必要です。自身の保有する宅地にも制度が適用されるかどうか確認したいと考えているときにも利用できます。

マンションや雑種地にも適用できる

地積規模の大きな宅地は、基本的に宅地や宅地比準方式で評価する土地に適用可能です。将来的に宅地化される可能性があるとして、農地や山林、雑種地なども評価の対象となります。また、建物の種類に関する決まりはないため、戸建住宅だけでなく、賃貸マンションや分譲マンション用の敷地にも地積規模の大きな宅地の評価が適用されます。

なお、該当の土地が共有地であった場合、共有地全体の地積が地積規模の判定に使用されます。例えば、三大都市圏に各自が300㎡ずつ合計600㎡を保有し共有している土地があるとしましょう。この場合、600㎡が基準となるため、地積規模の大きな宅地の評価を適用できます。

ただし、純農地や純山林、純原野と中間農地、中間山林、中間原野には制度を適用できません。このような土地は、以下のような条件に当てはまるものが多く、住宅地として利用される可能性が低いと判断され制度の適用対象外となっています。

・宅地として転用するためには多額の造成費を要するため

・急傾斜地のように宅地への転用に物理的な問題が発生しているため

・法律や条例で住宅の建設が制限されているため

小規模宅地等の特例との併用が可能

小規模宅地等の特例は、相続税の計算時に使用できる特例制度の一つです。高額な相続税により自宅を手放さなければならなくなるような事態を避けるための制度で、相続税評価額を最大80%減額できます。

土地の種類適用面積評価額の減額割合
特定居住用宅地等330㎡80%
特定事業用宅地等400㎡80%
特定同族会社事業用宅地等400㎡80%

この制度は、地積規模の大きな宅地の評価との併用が可能です。制度を適用する際の手順は以下のようになります。

  1. 地積規模の大きな宅地の評価を適用して土地の価額を求める
  2. 相続税額を計算する際に、小規模宅地等の特例を適用する

2つの制度を一緒に利用することで、評価額の減額割合を大きくできます。ただし、今後税制改正がなされて、併用が禁止となる可能性もあります。今後の税制改正の内容に注視しましょう。

相続税に詳しい専門家に相談する

土地は評価方法次第で評価額が大きく変わるものです。本来利用できる制度が適用されていなかったり、逆に適用できない制度を利用してしまっていたりすると、間違った評価額のまま相続税を計算することになります。
申告期限から5年以内であれば、すでに支払った相続税の還付請求が可能です。ただし、手続きの際は書類の提出が必要となります。自身がどの制度を適用できるか分からないときや税額計算に自信がない場合は、専門家に相談しましょう。制度内容について深く理解をしている方が計算することで、正確な計算方法で正しい金額を導き出すことができます。

まとめ

地積規模の大きな宅地の評価は、相続税評価の際に適用できる制度の一つです。平成30年1月1日以降に発生した相続より適用が開始された制度で、適用条件に合致する宅地は評価額が減額されます。
適用要件は細かく規定されているため注意が必要です。万が一相続税申告で金額を小さく見積もってしまった場合や、適用条件に合致しないのに制度を利用してしまったときは、過少申告加算税や延滞税といったペナルティーが発生する可能性があります。
土地の計算方法は複雑です。土地の評価額を正しく算出するためには、豊富な知識と経験を持つ専門家に相談することが大切です。専門家に相談することで、正しい税額の計算や相続税申告の代理、税金対策の相談といったサポートを受けられます。

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監修者

竹内 英雄

竹内 英雄 小谷野税理士法人 税理士 中小企業診断士

85年大手銀行入行、2016年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。【講演実績】公益財団法人不動産流通推進センター、株式会社きんざい、他多数の講演実績【メッセージ】相続の手続きは専門性が高い分野ですが、私の銀行員経験、多数の講演経験を活かして、難しいことを易しく丁寧に説明します。初めての経験であっても気軽に、安心して相談して下さい。