【税理士監修】不動産を相続したら名義は変更するべき?手続きやトラブルなどを解説

更新日:2024.12.9

相続が発生すると、被相続人が所有していた土地や家などの相続が待っています。土地や家の相続をする際は、不動産の名義変更をしなければなりません。2023年時点では義務ではありませんが、売却を考えている場合は、必ず名義変更を行わなければならないため、行うようにしましょう。

また、2024年以降、不動産の名義変更は義務化されます。これまで放置していた人達もまた、名義変更が義務化されてしまうため、名義変更の手続きを行わなければなりません。さらに、今後は不動産の相続が発生した場合、名義変更は必ず行うこととなります。

しかし、相続した不動産の名義変更の手続きに悩んでいる人もいるでしょう。必要な書類や、支払う費用について不安に感じる人もいます。

そこで、この記事では、不動産の名義変更に必要な書類や手続き方法だけではなく、仮に名義変更を行わなかった場合どのようなトラブルが生じるのかについて説明します。相続が発生した際に、焦ることのないように不動産の名義変更についてはあらかじめ把握しておくことが大切です。

相続による不動産の名義変更について

相続が発生する際、相続財産の中に不動産があり不動産を相続することになった場合は、名義変更を行わなければなりません。不動産は、所有者が誰なのかが分かるように履歴事項証明書、つまり登記謄本によって公示されており、その公示の手続きを行うことを登記と言います。

さらに、相続が発生すると、通常土地や家の所有権は被相続人から法定相続人へと移ります。しかし、故人の名義のままでは相続人が相続したことにはならず、所有者の名義を相続人の名義に変更して、初めて相続したということが可能です。この、相続時に不動産の名義を変更することを相続登記と呼びます。

相続登記は、2023年時点では義務化されていません。そのため、相続登記をせずに放置したままの人もいるでしょう。相続登記には、必要な提出書類や納めなければならない税金、煩雑な手続き等があるため、面倒に感じることもあります。

しかし、2024年からは義務化されるため、早めに相続登記を行わなければなりません。さらに、相続してすぐに売却を考えている場合も、相続登記は必須です。

不動産の相続が発生した際は、相続登記を行い、不動産を確実に相続するようにしましょう。

不動産の名義変更の方法は?

不動産の名義変更、つまり相続登記を行う際は、専門家に頼むか、個人的に行うかの2つの方法があります。

どの方法を選ぶ場合でも、相続登記を行うことはできますが、簡単さなどが異なります。自分にあった方法を選び、相続登記を行いましょう。

簡単に相続登記をする方法

簡単に相続登記をしたい場合は、司法書士に依頼してください。司法書士に依頼すれば、自分で煩雑な手続きを行う必要がありません。一方、提出しなければならない必要書類を自ら用意する必要はありますが、個人で行う時よりは時間もかからないため、短い時間で済ませたい場合はおすすめです。

しかし、司法書士に相続登記を依頼すると、費用がかかります。そのため、個人で手続きを行いたい人もいるでしょう。

個人で相続登記を行うことは、可能です。しかし、複雑な相続が発生している場合は、個人ではなく司法書士などの専門家に依頼した方が、問題が起こることなくスムーズに済ませることができます。

複雑な相続とは、例えば以下の通りです。

  • 遺言書がなく、相続人が多い
  • 相続する不動産の数が多い
  • 不動産の所在地が遠い
  • 不動産を売却したい
  • 疎遠となっている相続人がいる

個人で相続登記を行い、複雑なトラブルに発展するよりかは、司法書士に依頼した方がスムーズです。司法書士へかかる費用は、依頼費用のほかに登録免許税や書類の申請費用などの実費があります。依頼費用は、司法書士の事務所によって異なるため、比較してから依頼する司法書士を決めましょう。

自分で相続登記する方法

遺言書もあり、相続人が少ないなどのシンプルな相続のケースであれば、自分で相続登記を行っても面倒にならない可能性が高いです。

相続登記の手続きをする場合、登記申請書と添付書面を、不動産所在地の各法務局に提出する必要があります。各法務局を知りたい場合は、法務局のホームページ で確認しましょう。

登記申請書は、法務局のホームページに申請書の書式例などがあるため、参考にしながら記入しましょう。

また、必要な書類は、遺言書がある場合とない場合で異なります。詳しくは、以下の表で説明しているため、確認してください。

相続時の状況必要な書類
遺言書がある場合◆  遺言書→被相続人が生前に作成していたものに限る
◆  検認調書(もしくは検認済証明書)→被相続人の死亡時の住所を管轄する家庭裁判所で、相続人が立ち合いした上で開封
◆  被相続人の戸籍謄本→被相続人の本籍のある市町村区役所で申請
◆  被相続人の住民票の除票→被相続人の死亡した住所地の市町村区役所で申請
◆  不動産を相続する人の戸籍謄本→相続する人の本籍地の市町村区役所で申請
◆  不動産を相続する人の住民票→相続する人の住んでいる場所の市町村区役所で申請
◆ 遺言執行者の選任審判書謄本→被相続人が死亡した際の住所を管轄している家庭裁判所から交付される
遺言書はないが、遺産分割協議書はある場合◆  遺産分割協議書→相続する人全員で作成したもの
◆  被相続人の出生から死亡までの戸籍→被相続人の本籍地の市町村区役所で申請
◆  被相続人の住民票の除票→被相続人の死亡した際に住んでいた場所の市町村区役所で申請
◆  相続人全員の戸籍→相続する人全員の本籍地の市町村区役所で申請
◆  相続人全員の印鑑証明書→相続する人全員の住所地の市町村区役所で申請
◆ 不動産を相続する人の住民票→不動産を相続する人の住所地の市町村区役所で申請
遺言書も遺産分割協議書もない場合 (シンプルな場合のみ。例えば、相続人は1人だけで、法定相続分通りに相続する場合)◆  被相続人の出生から死亡までの戸籍→被相続人の本籍地の市町村区役所で申請
◆  被相続人の住民票の除票→被相続人の死亡した際に住んでいた場所の市町村区役所で申請
◆  相続人全員の戸籍→相続する人全員の本籍地の市町村区役所で申請
◆  相続人全員の印鑑証明書→相続する人全員の住所地の市町村区役所で申請
◆ 不動産を相続する人の住民票→不動産を相続する人の住所地の市町村区役所で申請

不動産の名義変更でかかる費用とは?

相続登記には、登記申請時に登録免許税という税金を支払う必要があります。また、戸籍謄本や住民票などの必要書類を発行する際にも費用が掛かります。さらに、司法書士に依頼する場合は、依頼費用もかかるでしょう。

登録免許税は、相続する土地や家の、固定資産税評価額に0.4%を掛け合わせた金額です。例えば、1,000万円の固定資産税評価額だった場合、4万円が登録免許税です。戸籍謄本や住民票などの書類は、1通あたり数百円ほどかかりますが、通常の4人家族であれば、10,000円以内に収まることも多いでしょう。

司法書士にかかる依頼費用は、事務所によって異なります。大体10万円程度に収まることがほとんどですが、いくつかの司法書士事務所を比較してから、依頼することをおすすめします。

相続登記を行わなかったらどうなる?

相続登記は、現時点では義務化されていません。そのため、放置している人も多いでしょう。しかし、2024年以降、相続登記は義務化されるため、早めに手続きをした方が良いです。

仮に、相続登記を放置していたら、どのような問題が起きるのでしょうか。考えられるリスクについて、確認しましょう。

面倒な手続きが発生する

例えば、祖父の不動産を相続登記せずに、父親が相続した場合、その父親が死亡し息子が相続すると、相続登記は祖父の代から行わなければなりません。さらに、数次相続も発生し、相続人同士の関係性がこじれ、話し合いがまとまらなくなる可能性もあります。

仮に世代を超えて相続登記を行う場合は、必要な書類も大量であり、手続きも大変になるでしょう。さらに、昔の書類の場合は取り寄せるにも時間がかかります。

このような場合は、個人で書類を用意するのは困難になるため、司法書士などの専門家に頼る方が良いでしょう。

差し押さえられるリスクがある

相続登記を行わずに、法定相続人が相続したという事実だけがある場合は危険です。何故なら、複数の相続人の内の1人による単独の行動によって、相続人全員の共有名義である不動産を、勝手に売却されることもあります。

さらに、相続人の中に借金を背負っている人がいると、債権者から不動産が差し押さえられることもあります。仮に差し押さえられた後に遺産分割協議を行い、相続を決めたとしても債権者に対抗することはできません。

そのため、差し押さえられるリスクを防ぐためにも、早めに遺産分割協議を行い、誰が相続するのか決めることが大切です。さらに、相続した人は素早く相続登記を行う方が、トラブルを抑えることができます。

書類が揃わない恐れがある

相続登記をするためには、提出に必要な書類がいくつかあります。必要書類の中でも、住民票の除票については保存期間が短く、仮に世代を超えた相続登記をしなければならない場合、必要書類が揃わない可能性も高いです。

令和元年6月より、保存期間は5年であった除票の保存期間が、150年に延長されました。しかし、一度廃棄されたものは再発行できません。また、古い戸籍は解読もしにくく、手続き自体が複雑になります。

そのため、祖父の代から相続登記を行うことになった場合、すぐに相続登記を終わらせることができなくなるでしょう。いざという時に、相続登記がすぐに終わらず、時間がかかることもあります。トラブルを起こさないためにも、できる限り、相続登記は放置せずに行うようにしましょう。

まとめ

相続登記は、2023年時点では義務化されていません。しかし、2024年以降は義務化されるため、早めに行うようにしましょう。

相続登記には必要な書類が多く、手続きも煩雑であるため、放置している人も多いです。しかし、相続登記をしなければ不動産の売却もできません。不動産を相続した後に、売却を考えているのであれば、必ず相続登記は行った方が良いです。また、世代を超えて相続登記が必要になる場合は、必要となる書類を揃えることも大変になります。

義務化により、相続登記は必ずしなければならなくなります。煩雑な手続きでありますが、早めの行動を心がけましょう。

相続登記は、自分で手続きすることも可能です。しかし、司法書士などの専門家に依頼した方が、より正確に手続きを進めることができます。時間がない場合や、書類の不備などに不安を抱いている場合は、専門家に相談した方が良いでしょう。

相続登記をせずに放置したままでいると、様々なトラブルに発展することも考えられます。義務化される前に、できる限り早めに手続きを行うようにしましょう。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。