【税理士監修】土地の評価額は複数存在する。評価額の調べ方や計算方法、注意点も解説
更新日:2023.9.8
土地の評価額には複数の種類があり、それぞれ計算方法や利用目的が異なります。土地の評価額ごとの違いや特徴を押さえなければ、誤った評価額や計算方法を用いてしまう恐れがあるため、十分な理解が必要です。
本記事で土地の評価額について、評価額の種類や計算方法、注意点などを詳しく解説します。
目次
土地の評価額の種類
土地の評価額は大きく5種類に分けられます。ひとつの土地に対して5種類の評価・価値が存在する様子から、土地は一物五価と表現されます。
土地の評価額の種類は以下の通りです。
- 公示地価
- 基準地価
- 実勢価格
- 固定資産税評価額
- 相続税評価額
それぞれの評価額について、特徴・使用する場面の例・確認する方法などを解説します。
公示地価
公示地価とは、国土交通省によって公表される土地の1平方メートルあたりの価格です。毎年1月1日時点の評価額であり、3月下旬に公表されます。
公示地価が使用される場面の例は以下の通りです。
- 不動産の売却相場を知りたい
- 公的機関による評価額を確認したい
公的機関によって算定された評価額であるため、土地の標準価格とも呼べます。
公示地価は、国土交通省が運営するサイトである土地総合情報システムで確認できます。公示地価を確認する流れは以下の通りです。
- 土地総合情報システムのサイトを開く
- 地価公示・都道府県地価調査を選択
- 対象となる都道府県を選択
- 市区町村を選択
- 調査年・用途区分など条件を指定して絞り込み検索を行う
公示地価は1つの地点につき2人以上の不動産鑑定士が鑑定を行い、鑑定結果を国土交通省が審査した上で決定されます。全国2万を超える標準地で評価が行われます。
基準地価
基準地価とは、都道府県によって公表される土地の1平方メートルあたりの価格です。毎年7月1日時点の評価額であり、9月に公表されます。
基準地価は国土交通省が公表する公示地価に近い性質を有します。公示地価と基準地価の違いは以下の通りです。
- 主体:公示地価は国土交通省、基準地価は都道府県によって公表される評価額です
- 調査時期および公表時期:公示地価は毎年1月1日時点の評価額で3月下旬に公表、基準地価は毎年7月1日時点の評価額で9月に公表されます
- 評価方法:公示地価は1つの地点につき2人以上の不動産鑑定士が鑑定を行います。基準地価は1つの地点につき鑑定する不動産鑑定士は1人です
- 評価対象となる標準地:基準地価の方が公示地価よりも少なめです
公示地価と基準地価を合わせて公示価格と呼ぶこともあります。基準地価は公示地価と同様に、公的機関による評価額や相場の確認で用いられます。
基準地価も前述した土地総合情報システムで確認可能です。検索条件指定の際に、対象として都道府県地価調査を選択することで、基準地価のみ表示されます。
実勢価格
実勢価格は実際の売買取引で成立した価格です。需要と供給がつり合い、売り手と買い手の間で取引が成立した価格となります。
公示地価・基準地価と同様に、土地総合情報システムから確認できます。実勢価格を確認する流れは以下の通りです。
- 土地総合情報システムのサイトを開く
- 不動産取引価格情報検索を選択
- 取引時期・種類(土地・土地と建物・農地など)・住所などの条件を設定、もしくは地図から都道府県を選択
- 画面の指示に沿って操作を進めると対象地域で実際に行われた取引一覧が表示される
結果は具体的な物件が特定できないように表示されますが、駅からの所要時間や面積、形状などの情報を把握できます。自身が売買を考えている物件に近い条件の取引を確認することで、過去の売買価格や売却相場の把握・推測が可能です。
固定資産税評価額
固定資産税評価額は、固定資産税・不動産取得税・都市計画税の基準となる価格です。市区町村が所轄となります。
固定資産税評価額は3年ごとに見直しが行われます。ただし、土地の区画や形質に変化があった場合や地価の大幅な下落があった場合は評価替えが可能です。
固定資産税評価額は、固定資産の納税通知書に添付されている課税資産明細書で確認ができます。固定資産税の納税通知書は市区町村から送付されます。
相続税評価額
相続税評価額は、相続税や贈与税の計算時に用いられる評価額です。路線価方式または倍率方式で計算します。
路線価方式とは、路線価が定められている場合の計算方法です。路線価とは主要な道路に面した土地の1平方メートルあたりの評価額を意味します。
路線価方式の計算式は路線価×面積であり、土地の形状や立地などの状況によっては補正率を乗じる必要があります。
倍率方式は路線価が設定されていない場合の計算方法です。固定資産税評価額×倍率で計算します。
路線価と倍率は、いずれも国税庁が運営する財産評価基準書というサイトから確認可能です。
【参考】不動産鑑定評価額
不動産鑑定評価額とは、不動産鑑定士が鑑定した土地の評価額です。不動産鑑定評価額は原則として、土地の一物五価には含まれません。
不動産鑑定評価額は公示価格や固定資産税評価額の算出時に用いられるため、国や自治体においては不動産鑑定が定期的に行われます。
公的機関による調査目的以外にも、不動産の担保価値の算定や相続トラブル回避のために不動産鑑定が行われるケースがあります。
土地の相続税評価額:具体例を用いて計算方法を紹介
土地の一物五価のうち、公示地価・基準地価・実勢価格・固定資産税評価額は、公表されているデータから簡単に確認が可能です。
一方で、相続税評価額は各々で計算が必要となります。
相続税評価額の計算方法について、具体例を用いて解説します。
路線価方式の場合
前述したように、路線価方式は路線価が設定されている土地で用いる計算方法です。計算式は路線価×面積であり、ケースによっては補正率を乗じます。
路線価を確認する流れは以下の通りです。
- 国税庁が運営する財産評価基準書を開く
- 路線価図・評価倍率表のトップページで都道府県を選択
- 遷移先のページで路線価図を選択
- 市区町村を選択
- 対象となる地名の路線価図ページ番号を選択するか、索引図ページを選択して路線価図を開く
路線価図を開くと、道路に115Dや300Cなどの数字が記載されています。この数字が路線価(千円単位)です。
例えば、道路に記載された数字110Dの場合、その道路に面している土地の路線価は110,000円であると意味します。
土地の面積は以下のように様々な方法で確認が可能です。
- 土地の登記簿謄本を確認する
- 固定資産税の納税通知書:固定資産税の納税通知書にも土地の面積(宅地面積)が記載されています
- 地積測量図
- 土地の賃貸借契約書
以上を踏まえた上で、路線価方式を使った計算方法を紹介します。今回用いる例は以下の通りです。
- 路線価:路線価図に記載されている数字は100D=路線価は100,000円
- 土地の面積:200平方メートル
上記の情報を計算式に当てはめると、結果は以下のようになります。
100,000円×200平方メートル=20,000,000円
今回の例の場合、土地の相続税評価額は2,000万円となります。
なお、今回紹介した例は、補正が必要ない場合です。土地の間口が狭い・形がいびつであるなどの場合は補正率を乗じる必要があります。補正の必要性や適用する補正率の判断には専門知識が必要となるため、専門家に相談するのが安心です。
倍率方式の場合
続いて倍率方式を用いる場合の計算例を紹介します。
まずは、適用する倍率の確認が必要です。倍率は以下の流れで確認できます。
- 財産評価基準書を開く
- 路線価図・評価倍率表のトップページから都道府県を選択
- 評価倍率表の欄に表示されているメニューから、一般の土地等用を選択
- 市区町村を選択
- 対象の土地の宅地欄に記載された数値を確認
※宅地欄に路線と記載されている場合、路線価が設定されているという意味であるため、路線価を確認した上で路線価方式を用いて計算を行います
倍率方式の計算式は、固定資産税評価額×倍率です。前述したように、固定資産税評価額は固定資産の納税通知書で確認可能です。
今回は以下の例を用いて相続税評価額を計算する流れを確認します。
- 固定資産税評価額:3,000万円
- 倍率:1.1倍
計算は単純で、それぞれの数字を掛け合わせるのみです。今回の場合、3,000万円×1.1=3,300万円が相続税評価額となります。
土地の評価額を確認する際の注意点
土地の評価額を確認するにあたって、以下の2点に注意が必要です。
- 評価方法によって金額の差が大きい
- 相続税評価額の計算には高度な知識が必要
それぞれ注意が必要である理由や、具体的な対策方法について解説します。
評価方法によって金額の差が大きい
土地は一物五価として複数の価値が存在し、評価方法によって金額の差が大きいです。評価方法ごとの金額の目安を紹介します。
- 公示地価・基準地価(公示価格):土地の評価額の基準となります
- 実勢価格:公示価格との間に一定の規則性を見出すことは難しく、物件状況によって変動があるため、個々に確認する必要があります
- 固定資産税評価額:公示価格の7割程度です
- 相続税評価額:路線価の場合は公示価格の8割程度が目安です。土地の利用状況や特例の適用によっては、さらに小さくなる可能性があります
倍率方式の場合は固定資産税評価額と同程度です
例えば、不動産の売却相場を把握したい場面において固定資産税評価額を用いてしまうと、実際の相場よりも小さい金額と認識してしまう恐れがあります。
土地の評価ごとの特徴や利用する場面などを押さえた上で、目的に合わせて適切な評価方法を使うことが大切です。
相続税評価額の計算には高度な知識が必要
一物五価のうち、公示地価・基準地価・実勢価格・固定資産税評価額は比較的容易に確認できます。計算が必要な場合もそれほど複雑ではありません。そもそも、計算によって把握する評価額はあくまで目安であり、実際は公的機関や不動産鑑定士が提示する金額を用いるケースがほとんどです。
一方で、相続税評価額は相続税申告の一環として当事者による計算が必要です。計算方法は一見簡単ですが、土地の形状や利用状況による影響も考慮する必要があります。特例の適用有無によっても金額が大きく左右されます。
土地の相続税評価額の計算は複雑な上に正確な計算が必要です。誤った評価額を算出してしまうと相続税の額にもズレが生じ、過少申告となる恐れがあります。
土地の相続税評価額を正しく計算するためには、当事者のみですべて対応しようとせず、専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
土地の評価額には複数の種類があり、目的によって使うべき評価額が異なります。評価方法によって金額が大きく変わるため、評価額ごとの特徴や目的などを押さえた上で適切な方法を用いる必要があります。
一物五価の中でも、特に複雑であるのが相続税評価額です。補正の有無や使う補正率、特例の適用有無によって金額が大きく変わります。相続財産の中でも土地は金額が大きくなりがちであるため、評価額の計算を誤ってしまうと、相続税に大きなズレを与えてしまう恐れがあります。
相続財産に土地がある場合、土地の正確な相続税評価額を計算するために専門家に相談するのが安心です。
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監修者
竹内 英雄 小谷野税理士法人 税理士 中小企業診断士
85年大手銀行入行、2016年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。【講演実績】公益財団法人不動産流通推進センター、株式会社きんざい、他多数の講演実績【メッセージ】相続の手続きは専門性が高い分野ですが、私の銀行員経験、多数の講演経験を活かして、難しいことを易しく丁寧に説明します。初めての経験であっても気軽に、安心して相談して下さい。