【税理士監修】駐車場は小規模宅地等の特例の対象となる?適用されるための条件とは?

更新日:2024.12.9

小規模宅地等の特例とは、土地の相続が発生した際に、土地の相続税評価額を8割又は5割減額できる特例であり、節税対策にも使われています。相続財産の額が高いと、思っていた以上に相続税が発生してしまう可能性が高いです。相続税の額が高ければ高いほど、残された遺族は生活できなくなってしまいます。小規模宅地等の特例は、そのような残された遺族が生活できるよう救済するための仕組みです。

相続財産には、家や土地、車など様々ありますが、駐車場も土地の1つであり相続財産に含まれます。しかし、土地とは言え必ずしも全ての駐車場に小規模宅地等の特例が当てはまるわけではありません。駐車場の設備の状態によっては、特例の対象とならず節税対策もできないため、どのような条件や状態であれば、小規模宅地等の特例の対象となるのか説明します。

対象とならない条件もあるため、事前に専門家へ相談し、相続発生時に必ず対象となるように対策することが大切です。

小規模宅地等の特例について

小規模宅地等の特例とは、土地を相続する際に適用される節税対策の1つです。土地の相続は、多額の相続税がかかる可能性が高く、特例を利用して節税を行う人が多いですが、土地であれば必ず適用されるものではありません。土地を所有している場合は、どのような条件であれば適用されるのか、事前に把握することが大切です。

小規模宅地等の特例とは

小規模宅地等の特例とは、自宅や事業に使用していた土地など、条件を満たす土地の場合、相続税の計算に利用される土地評価額を最大8割減額させる仕組みです。高額な税負担により、自宅から離れなければならない状況を作り出さないよう、配偶者や残された遺族を考慮するため創設されました。

例えば、評価額が2億円の土地を相続する場合、最大で4,000万円にまで評価額を減額することができます。また、相続税は基礎控除額も存在するため、家族構成や他の相続財産の額によっては、相続税が発生しなくなることもあります。

小規模宅地等の特例を上手に利用すれば、相続税の負担を抑えることができ、困窮することもありません。しかし、土地の状況や条件によっては対象とならないこともあるため、相続が発生する前にしっかりと確認することが大切です。

土地の中には、自宅や事業を行っていた土地、賃貸、そして駐車場も含まれているため、所有している土地について再確認しておきましょう。

小規模宅地等の特例の対象となる土地について

小規模宅地等の特例の対象となる土地は、以下3つです。

  • 実際に住んでいた土地
  • 事業を行っていた土地
  • 賃貸していた土地

駐車場は、土地を貸して車を駐車させる場所のため、賃貸していた土地に当てはまります。

次に、それぞれの土地の計算について説明しましょう。

故人が実際に住んでいた土地とは、特定居住用宅地等と呼び、330m2まで8割も評価額を減額することができます。宅地の相続税評価額は路線価を使用し、仮に面積330m2、路線価20万円の場合、評価額は以下のように計算が可能です。

  • 330m2×20万円×0.2=1,320万円

特例対象外の場合、6,600万円の評価額となるため、家族構成や法定相続人の数によっては相続税が多額になる可能性もあります。しかし、特例を適用すれば評価額を大幅に抑えることができるため、宅地を相続する際は利用すると良いでしょう。

事業を行っていた土地は、特定事業用宅地等と呼ばれています。400m2まで8割の評価額減額が可能であり、例えば個人商店や事務所、倉庫などに適用することが可能です。建物が親族経営されている有限会社、株式会社などの法人名義の場合、特定同族会社事業用宅地等と区分されます。いずれにせよ、どの分野に区分されても一定要件を満たせば、最大8割の減額が可能です。

一方、アパートやマンション、駐車場などが含まれる賃貸していた土地は、貸付事業用宅地等と呼ばれており、小規模宅地等の特例が適用されます。賃貸していた土地の場合は、200m2の土地まで5割の評価額減額が可能です。

つまり、駐車場は条件を満たしており、面積が200m2までであれば評価額を半額にすることができます。

上記の土地3つに関して、簡単に以下の表にまとめたため参考にしてください。

土地の種類概要
住んでいた土地330m2までの土地であれば、評価額が8割減額可能
事業を行っていた土地400m2までの土地であれば、評価額が8割減額可能
賃貸していた土地200m2までの土地であれば、評価額が5割減額可能

駐車場は小規模宅地等の特例の対象となる?

駐車場のように、賃貸していた土地であれば小規模宅地等の特例の対象となることが、上の項目で分かりました。特例の対象となれば、200m2までの土地であれば5割の減額ができます。しかし、全ての土地に対象となるわけではありません。どのような駐車場であれば、5割の減額が適用されるのか確認しましょう。

駐車場の上に構築物があれば対象となる

駐車場に、小規模宅地等の特例を適用させるためには構築物が必要です。駐車場の上に構築物があり、他社に貸し付けていれば特例の対象となります。構築物とは、タイムパーキングなどのアスファルト塗装や、精算機、電灯などが含まれます。例えば、簡単な看板でも設置されていれば構築物とみなされるため、特例を適用することが可能です。

構築物や建物があれば、その土地を所有していることの証拠ができます。そのため、他社に駐車場として貸し付けていたとしても、構築物がない場合は特例の対象とはなりません。

特例の対象となる駐車場であるかどうかは、構築物が肝です。

青空駐車場では対象とならない

青空駐車場とは、車両を覆う屋根がなく、土地の上に車をそのまま止める駐車場のことを指しています。例えば、ロープで駐車スペースを区切っているものや、アスファルトで塗装されたものなどタイプは様々です。青空駐車場は、屋根を覆うものを設置する必要がなく、簡易的に始めることができます。しかし、屋根が設置されていないため天候に左右されやすく、雪が降る地域であれば雪かきも必要なため管理が大変です。

一般的に、青空駐車場は更地とみなされるため、小規模宅地等の特例の対象とはなりません。人に貸している土地にも関わらず、青空駐車場のままでは相続税の減額対象とならないため注意が必要です。しかし、対象となる条件も後述しているため、確認してください。

青空駐車場が小規模宅地等の特例が適用されない理由

青空駐車場が、小規模宅地等の特例の対象とならない理由について確認しましょう。一方、特例を適用させるためには屋根の設置が必要なわけではないため、何が特例の適用の弊害となるのか理解しておくことが大切です。

土地の上に構築物がない

ロープで駐車区画を区切っただけ、車止めの石を置いただけなどの、ほぼ更地状態の駐車場では小規模宅地等の特例を適用させることができません。なぜなら、ロープで区切っただけ、車止めの石を置くだけでは費用がほとんどかからないからです。仮に、この状態で特例が適用されてしまえば、税負担を軽減するための条件が緩くなり、簡易的にしか駐車場を管理しない人が増えてしまうでしょう。

一方、砂利を敷き詰めたり看板を設置したりすれば、駐車場を経営したい意思が強く感じられ、資金も必要になります。構築物の設置は、駐車場所有者の意思を明確にするためのもののため、初期費用を抑えることは後々の節税につながりません。特例を適用させたいのであれば、初期費用を惜しまないことが大切です。

無償で貸している

相当な対価を得て、継続的に経営しているものでなければ駐車場として認められないため、小規模宅地等の特例が適用されません。例えば、無償であったり、低額で貸していたりするものは相当な対価を得ていないため、適用されないでしょう。

また、親族や知り合いに低額で貸している駐車場を所有している人もいます。駐車場に構築物があり、知り合いに低額で貸して継続的に経営していたとしても、上記の理由から特例の対象外です。

相当な対価を得ることで、初めて駐車場としてみなされるため、無償や低額で貸すことは控えましょう。

自家用車が置いてある

駐車場が、小規模宅地等の特例の対象となるケースは、他社に貸している場合のみです。仮に、アスファルトで塗装し、相当な対価を得ながら経営をしていたとしても、自家用車を駐車している部分は特例の対象外です。

駐車場の土地面積が200m2だとして、全てに特例を適用させたい場合は自家用車を置いてはいけません。仮に、自家用車を停車させている部分は適用外でも良いと考えている場合は、停車させても良いですが、相続税評価額は上がってしまうため、事前に正確な面積を知る必要があるでしょう。

一方、駐車場が自宅と隣接している場合は、小規模宅地等の特例の対象となることもあります。故人の居住地と駐車場が隣接していれば、駐車場と居住地全体を居住用宅地と考え、駐車場の土地も含めて小規模宅地等の特例の8割減額の対象にすることが可能です。

しかし、道路などにより間が分断されている場合は、居住用宅地とは認められず、小規模宅地等の特例の対象外となります。

青空駐車場を小規宅地等の特例の対象とするためには?

青空駐車場を、小規模宅地等の特例の対象とするためには、具体的に5つの方法があります。所有している駐車場が、特例の対象になるのか確認しましょう。仮に対象外だった場合、今からできることはないのか確認することも大切です。

アスファルトで土地を塗装する

アスファルトは、費用をかけてアスファルトを敷き詰める施工が行われるため、構築物として認められます。つまり、駐車場として経営する意思が見られるため、貸付事業用宅地等とみなされ、5割の減額対象にすることが可能です。アスファルト以外に、コンクリートによる塗装も同様です。

駐車場として認めてもらうためには、構築物の設置が必須です。アスファルトは、一度塗装してしまえば管理も楽であり、一番手っ取り早い方法とも言えます。管理も楽なアスファルトの塗装を、初期費用として済ませてしまえば駐車場として認められるため、特例の対象外になる可能性がある人は、アスファルトの塗装を行いましょう。

砂利を敷く

砂利敷きは、構築物の一種のため、砂利を敷き詰めている駐車場であれば特例の適用がされます。

砂利敷きは、アスファルトやコンクリートによる塗装よりも費用を抑えることが可能であり、多くの人が砂利敷きをしています。しかし、砂利敷きをしてから数年経過すると、土地に砂利が埋まったり、土地の表面が雨ざらしの状態になったりすることもあり、相続発生時に確実に砂利が敷き詰められている状態であるか判断ができません。仮に、相続発生時の状態が、そのような管理不十分な状態になっていた場合は、小規模宅地等の特例の対象外となるでしょう。

砂利敷きは費用を抑えることができるため、多くの人が利用しています。しかし、管理が大変であり、数年に一度は砂利を変える必要があり大変です。相続発生時に、駐車場であると認めてもらうことが大切なため、砂利敷きが不十分である状態を維持しないように気を付けましょう。

コインパーキング式の駐車場

コインパーキング式の駐車場は、駐車場の土地の持ち主がコインパーキングの業者に土地を貸出し、コインパーキング業者がアスファルト塗装や看板の設置をおこないます。そのため、土地の上に設置されている構築物はコインパーキングのものではありますが、こういった場合も小規模宅地等の特例の適用が可能です。

あくまで、土地の上に構築物があることが特例の対象条件のため、構築物を設置したのが誰なのかは関係ありません。

駐車場が自宅と隣接している

駐車場が自宅と隣接していれば、小規模宅地等の特例の対象です。さらに、駐車場と自宅全体を含めた上で居住地とみなされるため、8割の減額対象になります。

自宅と駐車場は必ず隣接している必要があり、仮に自宅と駐車場の間が道路によって分断されていた場合は、居住地とはみなされません。特例を適用させるためには、必ず隣接させていなければならないため、注意しましょう。

隣接している場合は、駐車場ではなく居住地とみなされるため、自家用車を駐車していても問題ありません。一方、仮に道路で分断されてしまえば居住地ではなく駐車場となるため、自家用車を駐車させていると、自家用車の駐車分だけ特例の適用外となります。自分の駐車場がどのような状況なのか、自宅と隣接しているのか分からない場合は、専門家へ相談することがおすすめです。

アパートやマンションなどの駐車場

アパートやマンションに隣接している入居者向けの駐車場は、アパートやマンションを含めた貸家建付地とみなされます。そのため、貸付用事業宅地として5割の減額の対象とすることが可能です。

しかし、アパートやマンションなどの場合、一時的な空き室でない限り、空き室部分は特例の適用外となります。一時的な空き室とは、いつでも入居可能な状況かどうかを示しているものであり、事業の継続性が背景にあれば特例の対象です。一方、新築の場合、空き室があれば特例の対象外となるため、新築でアパートを建てて駐車場も設置する場合は、小規模宅地等の特例が対象となるのか気にしなければなりません。

まとめ

駐車場も土地の一部ではあるため、小規模宅地等の特例が適用される可能性は高いです。しかし、適用されるためにはある程度の条件が必要となるため、土地の所有者は事前の確認を行いましょう。駐車場であるとみなされるためには、構築物の設置が必要です。構築物とは、アスファルトや砂利、コンクリート、看板などを指しています。

また、貸付けていたとしても、相当な対価を得ていない場合や、自家用車を駐車している場合なども、特例の適用外です。小規模宅地等の特例は、土地の相続が発生した際に相続税を大幅に減らすことができる制度であり、上手に使わなければ多額の税負担が待ち構えていることもあるでしょう。

相続発生時に、駐車場に特例が適用されなければ残された遺族が大変になります。仮に、青空駐車場を持っている場合は、相続が発生する前に、特例が適用されるのかどうか確認することが大切です。しかし、その時に条件を満たしていたとしても、相続発生時にじゃ条件を満たしていないこともあります。

確実に、駐車場であると認めてもらうためにも、専門家への相談を早めにしておくことがおすすめです。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。