【税理士監修】中高齢寡婦加算とはどのような制度?適用条件や令和4年度の受給額を解説
更新日:2023.9.8
国民年金保険や厚生年金保険に加入していた方が亡くなると、その方によって生計を維持されていた家族は遺族年金を受給できます。また、遺族厚生年金の受給者で適用条件に合致する方は、中高齢寡婦加算も受給可能です。「自分も中高齢寡婦加算を受け取れるのか」「いくら上乗せされるのか」といったように、疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では中高齢寡婦加算の適用条件や受給額を詳しく解説します。また、受給できないケースやその他の押さえておきたい年金制度も紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
中高齢寡婦加算とは
中高齢寡婦加算は、遺族年金に付帯される保険金の一種です。まずは、寡婦加算の概要や受給額といった基本情報を紹介します。公的制度を適切に活用するためにも、知識を深めておきましょう。
寡婦加算とはどのような制度か
厚生年金の加入者が亡くなった際に、配偶者や子供など一定条件に当てはまる家族は、遺族厚生年金を受け取ることができます。また、寡婦加算は遺族厚生年金の加算給付です。寡婦加算には、中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算の2種類があります。
・中高齢寡婦加算:被保険者の、40歳以上65歳未満の妻が一定期間受け取れる加算金
・経過的寡婦加算:被保険者の65歳以上の妻が受け取れる加算金
適用条件に合致する方は遺族厚生年金にプラスして寡婦加算も給付されます。中高齢寡婦加算の手続きは不要です。要件を満たせば自動的に給付が開始されます。
なお、寡婦とは夫と死別した女性のことです。そのため、妻を亡くした夫や子供、離婚した前妻などは寡婦加算の対象にはなりません。
中高齢寡婦加算の受給金額
中高齢寡婦加算の金額は、遺族基礎年金満額の4分の3程度です。公的年金の金額は毎年見直されるため、中高齢寡婦加算の受給金額も生涯一律ではなく年度により異なります。
2022年度の給付金額は年額583,400円です。ちなみに、2021年度は585,700円、2020年度は586,300円となっていました。遺族厚生年金の金額に追加され、一緒に受給することになります。
中高齢寡婦加算の適用要件
中高齢寡婦加算は、誰でももらえるものではありません。適用要件は以下の通りです。
・40歳から65歳までの妻
・生計を同じくする子がいないこと
65歳以降は中高齢寡婦加算がなくなるものの、経過的寡婦加算が受給できます。また、40歳から65歳の方でも子供がいる場合は中高齢寡婦加算の対象から外れます。
子供と見なされるのは、 18歳到達年度末日までの子(1、2級の障がいがある場合は20歳)です。遠方に住んでおり、仕送りをしている子も子供に含まれます。なお、子供がいる女性は中高齢寡婦加算の適用がない代わりに、遺族基礎年金を受給できます。
中高齢寡婦加算を受給できないケース
中高齢寡婦加算はもらえない方もいます。受給できないケースは大きく分けて3パターンです。各ケースの内容を詳しく紹介します。
遺族基礎年金を受給中の場合
遺族基礎年金は、厚生年金もしくは国民年金の被保険者が亡くなった際に、家族が受け取れる年金です。また、家族の対象範囲として、被保険者によって生計を維持されていた子または子のいる配偶者と定められています。子とは、18歳到達年度末日までの方か1、2級の障がいがある20歳までの方です。
一方、中高齢寡婦加算は適用条件に子供がいない妻と定められています。つまり、遺族基礎年金と中高齢寡婦加算は同時に受給できません。
被保険者の厚生年金加入期間が20年未満の場合
厚生年金を支払っていた夫がいるものの、厚生年金の加入期間が20年未満だった場合は注意が必要です。中高齢寡婦加算の受給対象外となります。例えば、夫が国民年金に10年、厚生年金に15年加入していたとしましょう。この場合、厚生年金の加入期間が20年に満たないため、中高齢寡婦加算は給付されません。
また、妻が病気や事故に遭い障害年金を受給することになると、障害年金を受け取る期間は遺族厚生年金の給付が停止されます。遺族厚生年金の給付停止に伴い中高齢寡婦加算も受給できなくなります。
夫との関係性が変わった場合
受給者が再婚して別の男性と夫婦関係になるなど、死別した夫との関係性が変わり妻の立場でなくなると、受給する権利を失います。受給権消滅事由にも、婚姻をしたときと明記されています。
なお、事実婚も同様です。法律上の婚姻関係があるかないかに関わらず、社会通念上の夫婦関係が認められる場合は再婚したものと見なされます。内縁関係と認められる条件は以下の通りです。
・夫婦になる意思がある
・共同生活を営んでいる
・社会的に夫婦と認められている
夫を亡くした女性の生活を支援するための加算給付であるため、他の方と生計を一にしている場合は給付対象から外れます。
中高齢寡婦加算はいくらになる?計算シミュレーション
中高齢寡婦加算は実際にいくら受給できるのでしょうか。18歳以上の子供ありのケースと子供なしのケースの計算シミュレーションを紹介します。以下の事例を参考にしながら、自身のケースでいくら受給できるか計算してみましょう。
子供なしのケース
子がいない夫婦のケースとして、以下の事例における計算シミュレーションを紹介します。
【事例】
・夫の死亡日:2022年12月1日
・妻の年齢:45歳
・厚生年金加入期間:25年
・夫の月収:約35万円
・遺族厚生年金適用要件:満たしているものとする
【受け取れる年金】
・2022~2042年の誕生日を迎えるまで:遺族厚生年金+中高齢寡婦加算(月額9.5万円程度)
・2042年の誕生日以降:遺族厚生年金+老齢基礎年金(月額11.1万円程度)
上記のケースでは、子がいないため遺族基礎年金は受給できません。しかし、遺族厚生年金と中高齢寡婦加算は受給できます。受け取れる金額の目安は、2022年度の場合月額9.5万円程度です。1年間では115万円程度となります。また、15年後の2042年に65歳を迎えると中高齢寡婦加算はなくなりますが、遺族厚生年金に加えて老齢基礎年金の受給が開始されます。
子供ありのケース
子供がいる妻は、遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給可能です。また、子が18歳を超えると遺族基礎年金の代わりに中高齢寡婦加算がプラスされます。
【事例】
・夫の死亡日:2022年12月1日
・妻の年齢:38歳
・子の年齢:13歳
・厚生年金加入期間:21年
・夫の月収:約35万円
・遺族厚生年金適用要件:満たしているものとする
【受け取れる年金】
・2022~2027年(子が18歳の誕生日を迎えるまで):遺族基礎年金+遺族厚生年金(月額13.0万円程度)
・2027~2049年(妻が65歳の誕生日を迎えるまで):遺族厚生年金+中高齢寡婦加算(月額9.5万円程度)
・2049年以降(妻が65歳を迎えた後):遺族厚生年金+老齢基礎年金(月額11.1万円程度)
上記のケースでは、子が18歳を迎えるまでは遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給できます。また、18歳を迎えると遺族基礎年金はなくなりますが、代わりに中高齢寡婦加算を受給可能です。さらに、65歳を迎えると自身の老齢基礎年金を受け取れます。
押さえておきたい中高齢寡婦加算以外の年金制度
中高齢寡婦加算以外にも受給できる可能性のある年金制度がいくつかあります。夫と死別し、生活に不安を感じている方は参考にしてみてください。
経過的寡婦加算
経過的寡婦加算とは、遺族厚生年金を受給する65歳以上の妻に支払われる年金です。受給できるタイミングは、以下のように2パターンあります。
・65歳以上で老齢基礎年金の受給を開始したとき
・中高齢寡婦加算を受給していた妻が65歳になったとき
経過的寡婦加算は65歳から一生涯適用されます。経過的寡婦加算の令和4年度の金額は日本年金機構のページにて確認できます。
年金給付の経過措置一覧表
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/nenkingaku/20150401-02.html
受給者が障害基礎年金を受給できる場合は、経過的寡婦加算の支給が停止されるため注意しましょう。また、中高齢寡婦加算と同じく、夫との関係性が変わったときや遺族基礎年金を受給している方、厚生年金の加入期間が足りないケースでは経過的寡婦加算は受給できません。
寡婦年金
夫が厚生年金に加入していなかった場合や加入期間が足りなかったときは、厚生年金を受給できないため寡婦加算も対象外となります。ただし、そういったケースでは、寡婦年金を受給できる可能性があります。寡婦年金は国民年金に加入していた夫が亡くなった際に、妻が受給できる年金です。適用要件は以下のようになります。
・死亡した夫が国民年金第1号被保険者として保険料を納付した期間(保険料免除期間含む)が10年以上あること
・夫との婚姻期間が10年以上あること
・死亡時、夫に生計を維持されていたこと
・60歳以上65歳未満であること
受給金額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金受給予定額の3/4です。夫が生きている間に老齢基礎年金や障害基礎年金を受給していたケースや、妻が老齢基礎年金の繰り上げ受給をしている場合、また、遺族年金を受け取っているときは、寡婦年金を受給できないため注意しましょう。
まとめ
中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金に上乗せで受給できる年金です。40歳から65歳までの夫と死別した妻が対象で、子供がいない場合に中高齢寡婦加算を受給できます。遺族基礎年金を受給していたり、夫の厚生年金加入期間が20年未満だったりすると受給できないため注意が必要です。
また、中高齢寡婦加算以外にも利用できる制度はあります。中高齢寡婦加算の対象外になってしまう方や、遺族厚生年金を受給できない方で、お金に関する困りごとがある場合は専門家に相談すると良いでしょう。各家庭の状況に合わせて的確なアドバイスをもらうことができます。
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監修者
小谷野 幹雄 小谷野税理士法人 代表社員税理士 公認会計士
84年早稲田大学在学中に公認会計士2次試験合格、85年大手証券会社入社、93年ニューヨーク大学経営大学院(NYU)でMBAを取得し、96年小谷野公認会計士事務所を開業。
2017年小谷野税理士法人を設立、代表パートナー就任。FP技能検定委員、日本証券アナリスト協会、プライペートバンキング資格試験委員就任。
複数のプライム市場上場会社の役員をはじめ、各種公益法人の役員等、社会貢献分野でも活躍。