【税理士監修】親等のわかりやすい数え方。相続において必要な知識を解説
更新日:2023.9.8
親等は親族関係の遠近を表す単位であり、相続において重要な概念のひとつです。相続に限らずさまざまな場面で登場する概念ではありますが、定義の説明を求められると戸惑ってしまう人も多いのではないでしょうか。
親族関係について正しく理解するためには、親等の数え方に関する知識が必要不可欠です。本記事では、親等の数え方や注意点について詳しく解説します。
目次
親等の数え方
民法におけるさまざまな決まりや相続について正しく理解するためには、親等の数え方を押さえることが必要不可欠です。はじめに、親等の定義および数え方について解説します。
親等とは
親等とは、親族関係の遠近を表す単位です。身近な例でいうと、親子は一親等、祖父母や兄弟は二親等、叔父や叔母は三親等となります。親等の数が小さいほど近い親戚、大きいほどに遠い親戚であることを意味します。
親等は民法で多く登場する概念です。例えば、民法では親族の範囲が○親等内という表現で明確に定義されています。また、扶養義務者や相続人の決定にも、親等について正しく認識したうえで適切に数えることが必要です。
親等の数え方
続いて、親等の数え方について解説します。親等の数え方について簡単に表現すると、親族間の世代数を1つ介する度に1つ増やすという考え方になります。
本人からみた親の場合は、本人→親となり、介する世代数が1つであるため一親等です。本人からみた祖父母は、本人→親、親→祖父母で世代は2つであり、二親等となります。
本人からみた兄弟姉妹の場合は、本人→親と親→子(本人からみた兄弟姉妹)となり、介する世代数が2つであるため二親等です。このように、親等を数える際は、共通の始祖までさかのぼる必要があります。
なお、配偶者は世代を介さないため、本人と同じ位置づけになります。あえて表現するなら0親等となりますが、基本的には何親等にもならない、本人と同じ立ち位置という扱いです。
配偶者の血縁者にも、本人の血縁者と同じ親等が与えられます。例えば、配偶者の親は一親等、配偶者の兄弟姉妹は二親等です。ただし、親等が同じだからといって、必ずしも本人の親族に該当するとは限りません。本人の血縁者と配偶者の血縁者では、親族に該当する範囲が大きく異なる点に注意が必要です。
親族に該当する範囲については後述します。
親族とは
民法第725条において、親族は次のように定められています。
- 六親等内の血族
- 配偶者
- 三親等内の姻族
法的には、これらに該当しない者は親族として扱われません。本人や配偶者の血縁者を簡単に親族と表現するケースが多いですが、法的な親族に該当するかを判断するためには、正確な親等をしっかり数える必要があります。
親戚関係を表す代表的なものに、親・祖父母・曽祖父母・子・孫・ひ孫・叔父叔母・兄弟姉妹・甥姪・いとこ・はとこなどが挙げられます。本人の血族の場合、これらはすべて親族です。一方で、配偶者の血族(本人の姻族)の場合、本人にとっての親族に該当する範囲は狭くなります。
血族・姻族それぞれの概要および親等の数え方について、詳しい内容は後述します。
血族と姻族の親等
親族の定義について前述した中に、血族と姻族という言葉が登場しました。親族は血縁関係の有無によって、血族と姻族の2つに分けられます。親族の定義として紹介したように、血族と姻族では、親族に該当する親等の数が異なります。
血族と姻族の親等について、それぞれ詳しく解説します。
血族とは
血族とは、本人と血縁関係にある人です。民法においては、六親等以内の血族が親族と定められています。
前項のなかで、親族に該当する親戚関係の例をいくつか紹介しました。それぞれの親等を数えると以下のようになります。
- 親:一親等
- 祖父母:二親等
- 曽祖父母:三親等
- 子:一親等
- 孫:二親等
- ひ孫:三親等
- 兄弟姉妹:二親等
- 甥姪:三親等
- 叔父叔母:三親等
- いとこ:四親等
- はとこ:六親等
なお、法的には、養子縁組をした養子なども血族とみなされます。このような考え方を法定血族といい、通常の血族と同じ扱いになる点に注意が必要です。養子縁組を行うと、養子は養親の血族に加わることになります。養子がいる場合の親等の数え方については後述します。
姻族とは
姻族とは配偶者の血族や、血族の配偶者を意味する言葉です。本人から見た義理の両親(配偶者の両親)や、本人から見た兄弟姉妹の配偶者などが該当します。
姻族にも血族と同じ親等が与えられます。例えば、配偶者の両親は、本人から見ると一親等の姻族となります。
前述のように、法的な親族として扱われるのは三親等以内の姻族です。したがって、配偶者のいとこ・はとこなど三親等より数が大きい姻族は、本人にとっての親族には該当しません。配偶者のいとこなどを便宜的に親族と呼ぶケースもありますが、法的な親族ではないと認識する必要があります。
また、配偶者の血族の配偶者も姻族にはならない点に注意が必要です。例えば、配偶者の妹の夫(配偶者)は姻族に該当せず本人の親族として扱わないため、親等で表すこともありません。姻族に該当するのは、あくまでも配偶者の血族のみです。
なお、民法第728条において、姻族関係は離婚によって終了すると定められています。夫婦の一方が死亡し、生存配偶者が姻族関係を終了する意思表示をした場合も同様に、姻族関係が終了となります。
親等の数え方の注意点
親等は必ずしもスムーズに数えられるとは限りません。親等の数え方が難しいケースとして、以下の4つが挙げられます。
- 養子がいる場合の親等
- 離婚した場合の親等
- 連れ子の親等
- 内縁関係の親等
このようにやや特殊なケースについて、親等の数え方を誤ってしまうと、相続手続きのミスや大きなトラブルにつながる恐れが大きいです。それぞれのケースについて詳しく解説します。
養子がいる場合の親等
養子縁組をした子供は通常の親等と同じように数えます。したがって、本人からみた養子は一親等です。
養子に血のつながりはありませんが、養子縁組をした場合、法定血族として通常の血族と同じように扱われることになります。養子縁組を行うことによって、養親の血族に加わるという考え方です。したがって、養親の場合も同様に一親等として扱われます。養親に血のつながりがある実子がいる場合、養子と実子は兄弟関係として二親等の扱いになります。
なお、本人の血族と養子の実親の血族は、血族・姻族のどちらにも該当しない関係です。例えば、養親である本人と養子の実の兄弟姉妹は、親族関係にはありません。したがって、両者の間には親等という概念も存在しない点に注意が必要です。
離婚した場合の親等
配偶者と離婚した場合、姻族関係もすべて解消されます。したがって、元配偶者の血族は親族ではなくなり、親等で数えることもできなくなります。
ただし、離婚した場合でも、親子同士は一親等のままです。親権の有無は関係なく、親子である以上は一親等になります。絶縁などにより実態としては親子関係がなくなっている状態でも、原則として親子関係を完全に解消することはできません。法定相続人としての権利は残ったままです。
ただし、特別養子縁組をした場合は、実親と実子の親子関係が消滅するため例外的な扱いになります。子供の親権を有している元配偶者が別の人と再婚し、再婚相手と子供が特別養子縁組をした場合には、本人と子供の親子関係が失われます。したがって、親等を数えることもできません。
連れ子の親等
再婚相手に連れ子がいた場合、本人からみて連れ子は一親等になります。しかし、連れ子は本人にとっての血族ではなく、姻族としての扱いです。連れ子を法定血族とするためには、養子縁組を行う必要があります。
なお、互いに連れ子がいる場合、連れ子同士に親族関係は発生しない点に注意が必要です。したがって、親等を数えるという概念もありません。ただし、養子縁組をした場合は法定血族となるため、実の兄弟姉妹と同様に二親等となります。
内縁関係の親等
内縁関係、すなわち結婚していない状態の場合、姻族関係は成立しません。内縁の妻(配偶者)の両親は親族に該当せず、親等での表現もできない点に注意が必要です。
一方、内縁関係の男女間に生まれた子供の場合、母子関係は必ず一親等です。父と子に関しては、父が認知している場合は一親等になります。認知していない場合は親族関係もないという扱いになるため、親等の概念も発生しません。
親族の種別
親等の数え方や親族について正しく理解するためには、親族の種別について押さえると効果的です。親族の種別として、大きく以下の2種類が存在します。
- 直系と傍系
- 尊属と卑属
それぞれの意味や違いについて詳しく解説します。
直系と傍系の違い
直系と傍系は、世代がどのようにつながっているかを示す言葉です。
直系とは、本人から直接的な親子関係としてつながる系統を意味します。上下方向にまっすぐつながる親族系統というイメージです。本人からみた親や子に限らず、祖父母や曾祖父母、孫、ひ孫などが直系に該当します。
一方で、傍系とは、直系から枝分かれした系統です。家系図を書いた際に、共通の祖先から横に分かれた部分が傍系に該当します。直系ではない親族は、すべて傍系に該当するという認識で問題ありません。傍系に該当する親族として、兄弟姉妹・叔父叔母・甥姪・いとこ・はとこなどが挙げられます。
直系や傍系である血族のことを、それぞれ直系血族・傍系血族と呼びます。姻族の場合の呼び方は直系姻族・傍系姻族です。
尊属と卑属の違い
尊属と卑属は、本人からみて上の世代か下の世代かで判断します。尊属は本人からみた上の世代の血族、卑属は本人からみた下の世代の血族です。これらと直系や傍系と合わせて、直系尊属、直系卑属、傍系尊属、傍系卑属と呼びます。それぞれに該当する例を紹介します。
- 直系尊属:親・祖父母・曽祖父母
- 直系卑属:子・孫・曽孫
- 傍系尊属:叔父叔母
- 傍系卑属:甥姪
なお、兄弟姉妹・いとこ・はとこなどは、本人と同じ世代の血族です。この場合、尊属・卑属どちらにも該当しません。
また、尊属・卑属は、本人の血族を区分するために用いる概念です。したがって、姻族には適用されません。
まとめ
親等は親族関係を考えるうえで重要な概念です。民法においても、親等という言葉が多く登場します。相続が発生した場合には、親等の数え方や法的な親族関係を正しく把握する必要があります。
親等の数え方を誤ってしまうと、手続きのミスやトラブルにつながります。しかし、今回紹介したように、親等の数え方には複雑な部分が少なくありません。
親等の数え方や親族関係を正しく把握できているか不安な場合は、税理士など相続の専門家へ相談・サポートを依頼するのが安心です。
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監修者
小谷野 幹雄 小谷野税理士法人 代表社員税理士 公認会計士
84年早稲田大学在学中に公認会計士2次試験合格、85年大手証券会社入社、93年ニューヨーク大学経営大学院(NYU)でMBAを取得し、96年小谷野公認会計士事務所を開業。
2017年小谷野税理士法人を設立、代表パートナー就任。FP技能検定委員、日本証券アナリスト協会、プライペートバンキング資格試験委員就任。
複数のプライム市場上場会社の役員をはじめ、各種公益法人の役員等、社会貢献分野でも活躍。