遺産分割協議書の作成方法と必要性をわかりやすく解説

遺産分割協議書の作成方法と必要性をわかりやすく解説

相続が発生した際、遺産の分け方を明確にするために「遺産分割協議書」を作成しておくと安心です。作成は任意ですが、実際の相続登記や預貯金の名義変更などで求められるケースが多く、相続手続きでは欠かせない書類といえます。

しかし遺産分割協議書を作成するためには様々な書類の用意や、調査が必要であり、大変に感じる方も多いでしょう。

そこで、この記事では遺産分割協議書について、作成手順や作成後の手続きについて解説します。遺産分割協議書の作成にかかわる良くあるミスやトラブルについても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

遺産分割協議書とは?

遺産分割協議書

相続人全員が合意した遺産分割の内容を記録する書類です。協議書を作成することで、「誰が」「どの財産を」「どのように相続するか」を明確にできます。

記載すべき項目

遺産分割協議書は自分たちで協議を行ったうえで、自由書式で作成が可能です。ただし、ご自身で作成される場合は、正確な内容で作成できるよう準備しましょう。

基本的には以下の項目を漏れなく記載します。

  • 被相続人の氏名・死亡日・本籍
  • 相続人全員の氏名・住所
  • 各相続人が取得する財産の内容(例:不動産、預貯金など)
  • 「本書に記載の通り相続人全員で合意した」旨の文言
  • 作成年月日
  • 相続人全員の署名・押印

また、不動産を記載する場合は登記事項証明書の表記(所在・地番など)を正確に転記しましょう。

表記ミスは登記所により書き戻しを求められることがあるため、注意が必要です。

参考:No.4202 相続税の申告のために必要な準備|国税庁

参考:➍ 相続税の申告書の記載例|国税庁 PDF 36ページ参照

作成するタイミング

遺産分割協議書は、相続人全員の話し合いで分割内容が決まった段階で作成します。まだ協議中か未成立のままの書面は、後日の修正・再協議の対象になる可能性があるため、慎重に作成タイミングを見定めましょう。

遺産分割協議書が必要になる主なケース

遺産分割協議書は法律上、作成が義務づけられているわけではありませんが、実際には次のような場面で提示や提出を求められることがあります。

  • 不動産の名義変更(相続登記)
  • 預貯金の払い戻し・解約手続き
  • 株式や投資信託の名義変更
  • 相続税の申告書への添付(遺言書がない場合)

特に2024年4月の法改正により、相続登記が義務化されました。その際、法務局への登記申請に遺産分割協議書が必要になるため、正確な内容で作成しておきましょう。

参考:相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地 !~:東京法務局

遺産分割協議書の作成手順

相続の割合・遺産分割の問題のイメージ

前述の通り、遺産分割協議書の内容や協議方法は自由ですが、書類を作成する上では決まった記載方法がある点が特徴です。ここでは、遺産分割協議書の作成手順を簡単に解説します。

具体的な協議の進め方や注意点は以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

1. 相続人を確定する

作成に際しては相続人全員の参加が必須となるため、最初に行わなければならないことは相続人の調査です。

まず被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、すべての相続人を明らかにしましょう。すべての相続人の参加を確保し、記載対象から漏れがないよう、注意する必要があります。相続人が誰になるのかわからない場合は、相続人調査も行うと、より安心です。

2. 相続財産の調査、一覧化する

続いて、すべての遺産内容を把握し、「遺産目録」としてまとめましょう。

遺産目録には、主に次の内容をまとめます。

  • 不動産
  • 預貯金
  • 有価証券
  • 負債

相続するためには、相続するべき遺産の全内容を理解しなければならないため、場合によっては相続財産調査を行う場合もあります。

3. 誰がどの遺産を取得するか内容を決定する

相続するべき人、相続される遺産すべてが明らかになった後に、遺産分割協議を行うことが一般的です。誰がどの財産を取得するかを、相続人全員で協議して決めます。

遺産分割協議書に遺産分割内容を記載する場合は、相続人の続柄や氏名を正しく記載しましょう。

4. 協議書の作成、押印および署名

遺産分割協議書に合意した内容を文書化し、人数分用意します。人数分の遺産分割協議書が揃ったら、すべてに相続人全員の署名押印が必要です。

押印はその人の住所地の市区町村長の印鑑証明を受けた実印でしなければならないため、印鑑証明書も準備しましょう。

協議書を複数部作成する場合は、全員が同じ書面に割印を押しておくと後のトラブル防止につながります。

押印・署名に関する注意点

最初から実印での押印と印鑑証明書の準備をしておくとスムーズです。

また書類が2ページ以上になる場合は、ページの綴じ目に「契印」を押すことで、同一書類であることを示します。

割印・契印は法律上の必須要件ではありませんが、登記窓口で書類を差し戻される可能性もあるため、押しておくほうが安全です。

参考:➍ 相続税の申告書の記載例|国税庁 PDF36ページ参照

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遺産分割協議書が完成したら

遺産分割協議書が完成した後は、相続手続きをしましょう。

ここでは、相続するために必要な名義変更について解説します。

預貯金の名義変更

預貯金を相続した人は、相続するために預貯金の名義を変更または払い戻し手続きを行わなければなりません。

預貯金の名義変更や解約をするためには、金融機関に遺産分割協議書を持参し、名義変更もしくは解約の手続きを行いましょう。

金融機関によって、必要な書類や書式などは異なりますので、事前に確認することをおすすめします。

不動産の名義変更

不動産を相続する人は、法務局で名義変更(相続登記)を行う必要があります。

相続登記には協議書のほかにも、被相続人の戸籍謄本、印鑑登録証明書など多くの書類が必要です。

自分一人で行うのは難しいと判断した場合は、司法書士に遺産分割協議書を預けて相続登記を行うとよいでしょう。

法定相続情報証明書を受け取っておくと安心

相続登記を行うと「法定相続情報証明書」を受け取れます。

法定相続情報証明書は、預貯金の名義変更や株式の名義変更、行政手続きなどにも使える書類です。

交付は無料です。(2025年10月時点)不動産の名義変更ついでに申請すれば、後の相続手続きもスムーズになるため、受け取っておきましょう。

参考:相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地 !~:東京法務局

参考:「法定相続情報証明制度」について:法務局

株式の名義変更

株式を相続する人も、名義変更が必要です。証券会社に協議書の写しを提出し、相続人名義の口座へ移管します。

また、証券会社ごとに必要な書類は異なるため、必要に応じて手続きを行いましょう。

遺産分割協議書作成時に良くあるミスやトラブル防止策

相続放棄・親族間の相続問題

ここでは、遺産分割協議書を作成するにあたって、良くあるミスやトラブルを回避する方法をご紹介します。

遺産や相続の状況は、人によって様々です。起こりうるケースを事前に把握しておけば、安心して遺産分割協議書の作成を行えるでしょう。

遺言書がある場合

遺言書が残されていた場合は、遺産分割協議を行う必要はありません。

しかし、遺言書には書かれていない遺産が発覚した場合は、遺産分割協議を行う必要があります。

相続人が1人欠けていた

相続人が1人でも欠けた時点で、遺産分割協議は無効です。相続人全員が署名・押印しているか必ず確認しましょう。

相続人に未成年者がいる

相続人の中に未成年者がいる場合、単独で遺産分割協議に参加できません。

利害関係の対立を避ける目的で、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てる必要があります。

特別代理人は未成年者に代わって協議に参加し、他の相続人と同様に署名・押印を行います。

手続きの詳細は、家庭裁判所または弁護士・司法書士に確認すると安心です。

参考:No.4202 相続税の申告のために必要な準備|国税庁

参考:➍ 相続税の申告書の記載例|国税庁 PDF36ページ参照

相続財産を一部書き漏らした

遺産分割協議書に「後日発見された財産は別途協議する」という一文を入れておくことをおすすめします。

遺産分割協議書を1通しか作らなかった

本来であれば、相続人全員分の押印・署名済み書面が必要です。

相続人全員が保管できるよう、人数分作成し直す必要があります。

自由書式だと正しく記載できたか心配

国税庁のホームページに遺産分割協議書のひな形が公開されているため、参考にしながら記載項目を確認できます。

しかし、遺産分割にはすべての遺産を明らかにし、相続割合も考えなければなりません。法律に詳しくない人が集まり話し合いをすることは難しい可能性もあります。

そのため、税理士や弁護士などの専門家に相談しながら、遺産分割協議書を作成する方が無難でしょう。

参考:➍ 相続税の申告書の記載例|国税庁 PDF36ページ参照

相続人に海外在住者がいる

相続人の中に海外在住者がいる場合、遺産分割協議書の押印・署名に時間を要します。

加えて該当の人が不動産を取得予定であれば、速やかに在留証明書も取得しなければなりません。

距離や時差で手続きが遅くなるため、該当者は以下を確認し、スムーズな手続きを心がけましょう。

一時帰国が可能な場合

一時帰国が可能であれば、日本の公証役場での署名(サイン)証明の手続きが可能です。

パスポートや、在留証明や免許証等といった海外の住所がわかるものを持参し、公証人の前で、遺産分割協議書にサインします。

帰国が難しい場合

印鑑証明がない場合は、在住国の日本大使館で署名(サイン)証明を取る必要があります。

  1. 在住国の日本大使館・領事館へ行く
  2. 遺産分割協議書に、領事の面前でサインする
  3. 本人がサインしたものの証として、サイン証明書を発行してもらう
  4. 遺産分割協議書を郵送する、または一時帰国して揃える

※国・地域により方式が異なる可能性があるため、在住国の日本大使館等の制度を確認しましょう

遺産分割協議書へのサインは、領事の前で行わなければなりません。必ず相続人本人が出向かなければならない点に注意が必要です。

相続人に外国籍の人がいる

外国籍の人を相続人として遺産分割協議書に掲載する場合、その人に印鑑証明がないこともあるでしょう。

印鑑を所有していない人は、サインでも認められます。その際は現地公証人に署名(サイン)証明の取得を依頼しましょう。

遺産分割協議書作成の流れを把握してスムーズなやりとりを

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を明確に残せます。「本当はこの相続割合に不満がある」などという気持ちになりにくいため、相続人間のトラブル回避に繋がったり、名義変更の手続きを円滑にしたりするためには欠かせません。

遺産分割協議書の作成自体は自分でもできますが、、内容に不備があると登記や税務で差し戻されることがあります。

加えて財産の種類が多い場合や、相続人が複数いる場合、相続人が海外に住んでいるなどといった場合は手続きに時間を要しがちです。

遺産分割協議書の作成に当たっては、事前に専門家に確認してもらえば、正確な書式と手続きで安心して進められます。

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監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。