【税理士監修】準確定申告書とは?申告が必要なケース、必要書類や期限などを解説

更新日:2023.9.8

準確定申告は被相続人(亡くなった方)の所得を、相続人が所轄の税務署に申告および納付する手続きのことをいいます。

相続人が相続の開始があったことを知った日から4ヶ月以内に手続きを行う必要があり、相続税の申告期限である10ヶ月より短い期限となっています。

通常、人が亡くなった際は相続や相続税の手続きに意識が向きがちですが、準確定申告が必要になるケースもあるため、両方の概要を把握しておきましょう。

この記事では、準確定申告が必要なケースや、申告期限や必要書類などについてご紹介します。

準確定申告とは

準確定申告とは亡くなった方(被相続人)の代わりに、相続人が所得税の確定申告を行うことを指します。通常の確定申告と異なり、相続が発生したことを知った日の翌日から4ヶ月以内の手続きが必須です。

通常の所得税の確定申告との違い

通常の所得税の確定申告と準確定申告の違いを以下の表にまとめています。

 確定申告準確定申告
申告期限毎年3月15日 ※暦の関係で異なる場合があります相続人が相続の開始があったことを知った日の翌月から4ヶ月以内
対象となる期間前年の1月1日から12月31日その年の1月1日から亡くなった日まで
提出先住所地の所轄の税務署被相続人の住所地の所轄税務署
申告をする人本人(または税理士などの代理人)相続人

対象となる期間

準確定申告の対象となる期間は、相続が発生した日を含む年の1月1日から、相続が発生した日(被相続人が亡くなった日)までです。

たとえば2022年9月1日が亡くなった日の場合、2022年1月1日から2022年9月1日までが準確定申告の対象期間となります。

申告期限

準確定申告の申告期限は、相続が発生したことを知った日の翌日から4ヶ月以内です。期限内に所得税の申告と納税を済ませる必要があります。2022年9月1日に相続が発生したことを知った日の場合には、2022年9月2日の4ヶ月後となる2023年2月1日が申告期限です。

管轄となる税務署

準確定申告は、被相続人の住所地の所轄の税務署宛に行います。お住まいの地域の税務署は、以下のリンク先からご確認ください。

国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」

https://www.nta.go.jp/about/organization/access/map.htm

各種控除の取り扱い

準確定申告に関連する各種控除について、次の表にまとめています。

基本的には、亡くなった日までに被相続人が支払った医療費などが所得控除の対象です。亡くなった日の後に相続人などが支払った分は控除として計上することができません。

控除の種別所得控除の適用範囲
医療費控除亡くなった日までに被相続人が支払った医療費
社会保険料控除亡くなった日までに被相続人が支払った保険料
生命保険料控除亡くなった日までに被相続人が支払った保険料
地震保険料控除亡くなった日までに被相続人が支払った保険料
配偶者控除亡くなった日の現況にて判定
扶養控除亡くなった日の現況にて判定

各種書類は、被相続人が亡くなったことが判明しないと発行されないため、相続の手続きとあわせ、各保険会社等に早めに連絡するようにしましょう。

準確定申告が必要な人、必要になるケース

準確定申告は、主に以下のようなケースで必要となります。 通常の所得税の確定申告と同様の要件です。

・前年度に2,000万円以上の給与収入を得ている

・給与所得や退職所得を除いた所得の合計が20万円超である

・複数の企業からの給与を受け取っている

・事業所得や不動産所得を得ている

・公的年金などで400万円超の収入がある

・株式などの譲渡所得を得ている など

亡くなった方(被相続人)が、どこからどのように収入を得ていたのかを確認し、申告義務を確認しましょう。

準確定申告を期限までにしないとどうなるか(期限を過ぎた場合)

準確定申告を期限までに行わなかった場合、延滞税や無申告加算税が課される可能性があります。

延滞税

納付のタイミング延滞税率
納付期限の翌日から2ヶ月以内・特例基準割合+1% ・年7.3% ※上記のうち、いずれか低いほうの税率を採用
納付期限の翌日より2ヶ月超・特例基準割合+1% ・年14.6% ※上記のうち、いずれか低いほうの税率を採用

延滞税は、準確定申告の納付期限(相続が発生したことを知った日の翌日より4ヶ月)の翌日以降に発生します。

加算税

種別課税の要件課税の割合 ※増差本税に対する
過少申告加算税期限内申告において、修正申告や更正が発生した場合・10% ・15%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額の超過分)
無申告加算税・期限内申告や決定があった場合 ・期限内申告や決定の際に修正申告や更正が発生した場合・15% ・20%(50万円を超える部分)
不納付加算税源泉徴収などによる国税において、法定納期限の後に納税および納付の告知があった場合・10%
重加算税仮装や隠蔽が発覚した場合・35%(過少申告加算税や不納付加算税の代わりに徴収) ・40%(無申告加算税の代わりに徴収)

準確定申告で賦課されるケースが多いのは、無申告加算税です。申告期限を過ぎてからの申告には無申告加算税が課されるため、早めに手続きを行いましょう。なお、無申告加算税は自主申告と税務調査によるもので税率が異なります。

  • 納付期限から1ヶ月以内の自主申告:0%
  • 自主申告:5%
  • 税務調査によるもの:15%

準確定申告が不要である場合

準確定申告は、「収入-所得控除額(48万円+α)」がマイナスの場合には申告する必要はありません。この点においては通常の確定申告と同様です。ほかにも、下記のパターンに当てはまる方の場合、準確定申告は不要となります。

  • 1つの勤務先にて給与所得の年末調整を受けている
  • 1つの勤務先より給与所得を受け取り、その他の所得が20万円以下である
  • 年金収入が400万円以下であり、なおかつその他の所得が20万円以下である

準確定申告が不要な場合の住民税について

所得税の申告が不要な場合にも、住民税の申告は必須となります。とはいえ、住民税は毎年1月1日時点で納税義務の有無が判定されるため、住民税の申告の必要はありません。

準確定申告の申告期限・納付期限

準確定申告の申告期限および納付期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日より4ヶ月以内です。相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)よりも先に期限が訪れるため、早めに準備をすることが求められます。

準確定申告の仕方・必要書類

準確定申告は次の流れで行うとスムーズに進みます。

  • 相続人の代表を決める
  • 必要な書類を集める
  • 準確定申告書を作成する
  • 税務署に提出し、納付する

相続人の代表を決める

準確定申告は相続人全員の連署による提出が求められます。とはいえ、すべての手続きを複数人で進めていくのは現実的とは言い難いでしょう。推奨される方法は、相続人の代表を決めるものです。

相続人代表が書類の作成を担当し、作成した書類に他の相続人の書名と押印をしてもらいます。

必要な書類を集める

準確定申告に必要とされる主な書類を次の表にまとめています。

 内容
収入を証明するもの・源泉徴収票(勤務先、年金事務所) ・売上台帳 ・特定口座年間取引報告書 ・上場株式配当等の支払通知書 ・領収書(不動産取引など) ・賃貸契約書など
医療費・医療費の領収書 ・薬局の領収書(医薬品) ・通院の際の交通費など
保険料・生命保険料の領収書 ・社会保険料の領収書 ・地震保険料、火災保険料の領収書 ・小規模企業共済掛金払込証明書など
寄付金関連・ふるさと納税 ・各種団体への寄付金の領収書など

可能であれば、被相続人の生前に書類の保管場所を確認しておくことをおすすめします。

準確定申告書を作成する

準確定申告書は、国税庁の公式サイトより通常の確定申告書をダウンロードするか、税務署から受け取って作成します。さらに通常の確定申告では用いない準確定申告ならではの書類が加わります。

・確定申告書A

・確定申告書B

・収支内訳書

・青色申告決算書

・死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表

・委任状(準確定申告用)

※還付金を相続人代表などが受け取る場合

第一表

項目内容
タイトル確定申告書の前に「準」を書き加える
住所被相続人と相続人(代表)の住所をそれぞれ記載する 上部:被相続人 下部:相続人
氏名被相続人と相続人(代表)の氏名をそれぞれ記載する 上部:被相続人 下部:相続人
生年月日被相続人の生年月日を記入する
押印欄相続人の印鑑を押印する
個人番号被相続人の個人番号を記載する 余白に相続人の個人番号を記載する
死亡年月日余白に被相続人の死亡年月日を記載する

第二表

項目内容
タイトル確定申告書の前に「準」を書き加える
所得の内訳給与や年金収入などの金額や源泉徴収額を記載する
保険料控除等に関する事項国民健康保険や生命保険料などの納付額を記載する

税務署に提出し、納付する

準確定申告書が完成したら、被相続人の住所地を管轄する税務署の窓口に提出します。その際に所得税が発生しているようであれば納付して完了です。所得税は銀行などの金融機関でも支払うことができます。

準確定申告の注意点

準確定申告を行う際、次の3つの点に注意したいところです。

  • 相続人が2人以上いる場合
  • 医療費控除の取り扱い
  • 社会保険料・生命保険料・地震保険料控除の取り扱い

相続人が2人以上いる場合

相続人が2人以上いる場合の準確定申告では、各相続人による連署が必須です。相続人代表が作成した準確定申告書に、相続人全員の署名および押印を集めてから税務署に提出します。

医療費控除の取り扱い

準確定申告にて医療費控除の対象となるのは、被相続人が亡くなった日までの医療費です。相続人が被相続人の亡くなった後に支払った医療費については、準確定申告の医療費控除の対象外となります。

社会保険料・生命保険料・地震保険料控除の取り扱い

社会保険料や生命保険料、地震保険料控除についても医療費控除と同様、被相続人が亡くなった日(相続が発生した日)までの納付分が準確定申告の控除対象です。

まとめ

準確定申告は相続が発生したことを知った日より4ヶ月で、申告および納付期限が訪れます。早めに準備して臨むことが大切です。まずは、準確定申告の必要があるのかを確認していきましょう。

準確定申告を含めた相続の問題は専門家に相談することで、道が拓けるケースが大半です。相続や相続税関連で困ったことがあれば、まずは税理士への相談を検討しましょう。

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相続税の申告手続きは、初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし、適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。

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監修者

小谷野 幹雄

小谷野 幹雄 小谷野税理士法人 代表社員税理士 公認会計士

84年早稲田大学在学中に公認会計士2次試験合格、85年大手証券会社入社、93年ニューヨーク大学経営大学院(NYU)でMBAを取得し、96年小谷野公認会計士事務所を開業。2017年小谷野税理士法人を設立、代表パートナー就任。FP技能検定委員、日本証券アナリスト協会、プライペートバンキング資格試験委員就任。複数のプライム市場上場会社の役員をはじめ、各種公益法人の役員等、社会貢献分野でも活躍。