【税理士監修】相続税の土地評価額の計算方法とは?土地評価額を抑える方法も解説!

更新日:2023.9.8

土地を相続した場合、相続税の計算では市場における土地の売買価格ではなく、土地の評価額を用いて計算します。したがって、相続税を正しく計算するためには、相続税の土地評価額の正しい計算が必要不可欠です。

本記事で、相続税の計算に用いる土地評価額の計算方法や、土地評価額を抑える方法を紹介します。

相続税の土地評価額の計算方法

相続税計算における土地評価は、路線価方式と倍率方式のどちらかで行います。それぞれの計算方法や、計算に必要な資料を紹介します。

路線価方式

路線価方式は路線価が定められている場合に用いる計算方法です。路線価とは主要な道路に面した土地の1平方メートルあたりの評価額を指します。

路線価方式の計算式は以下の通りです。

路線価×面積×補正率

補正率とは、土地の形状や立地などを考慮して調整するために用いる要素です。たとえば、土地の奥行が長すぎて使いにくいといった場合に、補正率を乗じて評価額を減額します。

路線価は国税庁が運営する財産評価基準書というサイトから確認できます。なお、単位が千円である点に注意が必要です。

倍率方式

路線価が設定されていない土地では、倍率方式で評価額を計算します。倍率方式の計算式は以下の通りです。

固定資産税評価額×倍率(評価倍率)

倍率方式の計算で用いる倍率は、国税庁が運営するサイトから確認できます。倍率は以下の手順で確認します。

  1. 国税庁が運営する財産評価基準書を開く
  2. 路線価図・評価倍率表のトップページで都道府県を選択
  3. 評価倍率表のうち、一般の土地等用を選択
  4. 市区町村を選択
  5. 対象の土地の宅地欄に記載された数値を確認

対象の土地の宅地欄に記載された数値が、倍率方式で用いる倍率です。数値ではなく路線と記載されている場合、路線価が設定されているという意味であるため、路線価を確認し路線価方式で計算を行います。

相続税の土地評価額の計算に必要な資料

相続税の土地評価額を計算するにあたって、以下の資料が必要です。

  • 固定資産税の納税通知書:毎年4月から5月あたりに市区町村から届きます。納税通知書に記載された情報のうち、路線価方式の場合は土地の面積、倍率方式の場合は固定資産評価額を用います
  • 登記簿謄本:土地を複数人で共有している場合、持分割合を確認するために土地の登記簿謄本が必要です。土地の地番や所有者等の確認にも用います

上記に加え、国税庁が運営する財産評価基準書(Webサイト)で、路線価または倍率の確認も必要です。

相続税の土地評価額計算で補正が必要なケース

土地の面積そのものが同じであっても、土地の形状や立地によって使い勝手の良し悪しが変わります。そのため、路線価方式の場合は土地の状況によって補正率を乗じる必要があります。補正率は国税庁の公式サイトで確認可能です。

相続税の土地評価額計算において補正が加わるケースの例を4つ紹介します。

間口狭小補正

間口狭小補正とは、道路に面している間口が狭く使い勝手が悪い場合に適用される補正です。

計算に用いる補正率は国税庁の公式サイトに掲載されている間口狭小補正率表をご確認ください。間口狭小補正率表の一部を抜粋します。

間口距離(メートル)/地区区分ビル街地区高度商業地区繁華街地区普通商業・併用住宅地区普通住宅地区
4未満なし0.850.900.900.90
4以上6未満なし0.941.000.970.94
6以上8未満なし0.971.001.000.97
8以上10未満0.951.001.001.001.00

引用元|国税庁公式サイト 間口狭小補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外改正)

例えば、普通住宅地区で間口距離が6メートル以上8メートル以下の場合、補正率0.97を乗じます。

以降に紹介する補正についても、国税庁の公式サイトで補正率が公表されているため、計算に際してご確認ください。

奥行長大補正

奥行長大補正は、間口の長さに対して土地の奥行が大きい場合に行う補正です。奥行距離を間口距離で割った結果が一定を超える場合に適用されます。

奥行長大補正の適用対象となる土地の例を紹介します。

  • 最も奥行きがある場所と道路の距離が間口距離の2倍以上である(奥行距離÷間口距離が2以上)
  • 土地が道路に対し垂直方向へ長い

不整形地補正

不整形地補正とは、対象となる土地の形がいびつな場合に行う補正です。土地が正方形や長方形ではない場合に適用します。

不整形地補正の適用対象となる土地の例を紹介します。

  • 土地が台形や三角形
  • 土地がカーブしている道路に沿っている(土地がカーブした形状になっている)
  • 土地の一部が突出した形状である

不整形地の評価額を計算する流れは以下のとおりです。

  1. 想定整形地の評価額を計算する
    ※想定整形地:不整形地を長方形または正方形で囲んで整形地として見立てたもの
  2. 想定整形地の地積から、不整形地補正で用いる地積区分を確認する
  3. かげ地割合を算出する
    ※かげ地:想定整形地と不整形地の差の部分。想定整形地に足りない、形がいびつな部分を指す
    ※かげ地割合:(想定整形地の地積-不整形地の地積)÷想定整形地の地積 で計算する
  4. かげ地割合および土地の地区区分・地積区分から補正率を確認

不整形地補正では、国税庁公式サイトで公表されている地積区分表・不整形地補正率表を用いる必要があります。それぞれの表について一部を抜粋します。

地積区分表

地区区分 / 地積区分  ABC
普通商業・併用住宅地区650平方メートル未満650平方メートル以上1,000平方メートル未満1,000平方メートル以上
普通住宅地区500平方メートル未満500平方メートル以上750平方メートル未満750平方メートル以上

引用元|国税庁公式サイト 地積区分表(平11課評2-12外追加・平18課評2-27外改正)

不整形地補正率表

地区区分高度商業地区、繁華街地区、普通商業・併用住宅地区、中小工場地区普通住宅地区
かげ地割合 / 地積区分ABCABC
10%以上0.990.991.000.980.990.99
15%以上0.980.990.990.960.980.99
20%以上0.970.980.990.940.970.98

引用元|国税庁公式サイト 不整形地補正率表(平11課評2-12外追加・平18課評2-27外改正)

例えば、500平方メートル以上750平方メートル未満の普通住宅地区に該当するエリアの場合、地積区分は普通住宅地区のBです。この土地のかげ地割合が15%以上20%未満と仮定すると、普通住宅地区Bのがけ地割合15%のマス、すなわち補正率0.98となります。

不整形地補正は確認が必要な数値が多い上に計算が複雑であるため、専門家に相談するのが安心です。

地積規模の大きな宅地の評価

三大都市圏の場合は500平方メートル、それ以外の場合は1,000平方メートルを超える土地の場合は、規模格差補正率を乗じて計算を行います。倍率方式で計算する土地であっても、条件を満たせば規模格差補正の適用が可能です。

地積規模の大きな宅地の評価に用いる数値は、土地の面積や地区区分によって明確に定められています。国税庁の公式サイトに記載されているためご確認ください。

なお、前述した面積を超える土地の場合でも、以下に該当する土地は地積規模の大きな宅地の対象外となります。

  • 市街化調整区域に所在する土地
  • 都市計画法において、用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する土地
  • 指定容積率が400%以上(東京都特別区の場合は300%)の地域に所在する土地
  • 財産評価基本通達22-2の定めにある大規模工場用地に該当する土地

相続税の土地評価額を抑える方法

相続税は課税対象となる相続財産の額を用いて計算します。相続財産の合計額が小さくなれば、相続税の額も小さくなります。すなわち、相続財産に土地が含まれる場合、土地の相続税評価額を小さくすれば相続税の節税が可能です。

前章で紹介したように、土地の評価額を減額できる要件に当てはまる場合、各種補正の適用は欠かせません。

補正の適用以外にも、相続税の土地評価額を抑える方法として以下の2つが挙げられます。

  • 小規模宅地等の特例を活用する
  • 土地を有効活用する

それぞれの方法について、相続税の土地評価額を抑えることにつながる理由や、具体的な方法・ポイントを紹介します。

小規模宅地等の特例を活用する

小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たす宅地を相続した場合、評価額について一定の割合の減額を受けられる制度です。対象となる宅地として以下の3種類が挙げられます。

  • 特定事業用宅地等:被相続人の事業の用に供されていた宅地等
  • 貸付事業用宅地等:賃貸アパートや駐車場など貸付事業の用に供されていた宅地等
  • 特定居住用宅地等:被相続人等の居住の用に供されていた宅地等
  • 特定同族会社事業用宅地等:同族会社の事業の用に供されていた宅地等

上記の宅地に該当し要件を満たす場合、土地評価額について最大80%の減額を受けられます。評価額を大幅に抑えるため、相続税の大きな節税効果が期待できる方法です。

なお、宅地の種類ごとに限度面積および減額割合が異なります。また、小規模宅地等の特例には細かな適用要件や必要書類が存在するため、ミスを防ぐため入念な確認が必要です。 

まとめ

相続税の計算において、土地は時価ではなく相続税評価額を用います。土地の相続税評価額は、路線価方式または倍率方式で計算を行い、土地の形状や立地などの状況によっては補正も必要です。

土地の相続税評価額は複雑な計算が必要であり、専門知識がない人が正確に計算するのは容易ではありません。土地の評価額を誤ってしまうと相続税額にもズレが生じ、加算税が生じる原因にもなり得ます。

相続財産に土地が含まれている場合、正しい計算のために専門家に相談するのが安心です。

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監修者

竹内 英雄

竹内 英雄 小谷野税理士法人 税理士 中小企業診断士

85年大手銀行入行、2016年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。【講演実績】公益財団法人不動産流通推進センター、株式会社きんざい、他多数の講演実績【メッセージ】相続の手続きは専門性が高い分野ですが、私の銀行員経験、多数の講演経験を活かして、難しいことを易しく丁寧に説明します。初めての経験であっても気軽に、安心して相談して下さい。