【税理士監修】小規模宅地等の特例対象となる同居とは?条件や定義について解説

更新日:2023.9.8

相続が発生すると、場合によっては相続税の申告が義務付けられる人もいます。相続財産が高ければ高いほど、相続税の額は高くなり、大変になる人も多いです。相続税には、様々な相続財産が含まれていますが、土地や家の場合は評価額が高額になる可能性も高く、相続税の負担に困る人もいます。評価額が高額になれば、その分相続税も多額になり負担がかかるため、どれだけ節税できるかが大切です。

土地や家を相続する場合は、相続税を少しでも減らすために、小規模宅地等の特例という制度が存在します。小規模宅地等の特例が適用されれば、土地の評価額を最大で8割も下げることができ、大幅に相続税を減らすことが可能です。

しかし、小規模宅地等の特例の適用要件の一つに被相続人と同居していたというものがあります。一方、同居と言われてもどの範囲までを同居とみなすのか、同居の判断がしにくい部分でもあります。そこで、この記事では、同居とみなされる条件と、みなされない条件について詳細に説明します。

小規模宅地等の特例の条件、「同居」の定義とは?

被相続人の家を相続する際に、小規模宅地等の特例の要件として被相続人と同居していたことがあります。小規模宅地等の特例における同居とは、被相続人が亡くなる直前まで家で共に生計を同一にしていたことを指します。

生計を同一にしていたということは、生活費を同一にしていたということです。つまり、水道や光熱費、住所も同一であることを指しており、本当に同居しているのか審査するために、送付物の住所の調査や、水道光熱費など細かいところまで確認されることもあります。

同居という定義を満たすためには、どこまでも同一でなければなりません。しかし、配偶者であれば、被相続人と同居していない場合でも小規模宅地等の特例が適用されます。

例えば、夫が亡くなった場合、例え共に住んでいなくとも妻は無条件で適用されます。仮に長男が同居していた場合も適用されますが、家を離れて暮らしていた次男には適用されません。

しかし、同居には様々なパターンも考えられるため、自分が同居に当てはまるのか分からない人もいます。自分は被相続人と同居していたとみなされるのか、気になる方は後述している項目を確認してください。

同居人に小規模宅地等の特例が適用される要件

例えば、仮に被相続人と同居していたとしても、必ず全ての人に小規模宅地等の特例が適用されるわけではありません。小規模宅地等の特例を利用するためには、満たさなければならない条件もあります。同居していたから、という理由だけでは小規模宅地等の特例の対象になるかは分かりません。同居後の行為によっては、小規模宅地等の特例が適用されなくなることもあるため、小規模宅地等の特例が確実に適用されるための条件を、確認しましょう。

同居している親族

小規模宅地等の特例が適用される同居人は、必ず親族である必要があります。親族とは、6親等以内の血族、3親等以内の姻族です。

血族とは、被相続人と血の繋がった家族のことを指します。仮に、養子縁組をしている場合でも血族です。

一方、姻族とは配偶者の血族であり、具体的には、義父母、義祖父母、義兄弟姉妹などが含まれます。

例えば、夫が死亡し、妻と子どもが法定相続人となった場合、それ以外の血族は一般的には法定相続人とはなりません。しかし、被相続人である夫と同居していたのが孫であり、かつ、遺言書などにより孫が引き継ぐことになった場合は、孫は被相続人の親族のため小規模宅地等の特例が適用されます。

同居という条件を満たすためには、まず親族である必要があるため、法定相続人以外が引き継いだとしても特例の利用は可能です。

相続開始時から相続税の申告期限まで住んでいること

相続発生時から、相続税申告期限までその家を所有し、住んでいなければ同居とされません。何よりもまず、相続発生時に同居していることが大切です。仮に、相続発生前にどれだけの年数を被相続人と同居していたのかは、法令上定められてはいないため関係ありません。つまり、相続発生時の前に同居しており、相続発生時には同居していなかった場合は、小規模宅地等の特例が適用されないため注意してください。

相続税申告期限は、相続発生時から10カ月です。そのため、相続発生時から最低でも10カ月はその家に住む必要があります。

これは「同居」?小規模宅地等の特例は適用される?

小規模宅地等の特例における同居には、場合によっては同居とみなしても良いのか分からないケースも多いです。例えば、単身赴任している場合や老人ホームに入居した場合など、同居とはどういう条件を指すのか判断がつきにくいこともあります。

基本的に、どういった場合が同居とみなされるのかについて、確認しましょう。

単身赴任

元々同居をしており、仕事の関係上仕方なく単身赴任をしている場合は、同居とみなされます。単身赴任とは、赴任期間が終了すればまた同居を開始する形態のことであり、多くの場合生活拠点は同居していた家のはずです。一般的な生活拠点が、故人と同居していた自宅なのであれば、同居とみなされるため、小規模宅地等の特例が適用されます。

被相続人が老人ホームに入居している

元々、被相続人と同居しており、同居人が老人ホームなどの施設に入居後亡くなった場合も同居とみなすことができます。しかし、老人ホームへの入居には以下の条件を満たす必要があります。

  • 故人が生前に要介護認定、もしくは要支援認定を受けている
  • 自宅を賃貸していない
  • 都道府県知事へ届出を提出している介護施設に入居している

上記の条件を満たしていない場合、小規模宅地等の特例は適用されません。被相続人が、老人ホームなどへ入居する前に、必ず上記の条件について確認しておきましょう。

二世帯住宅

二世帯住宅とは、親世代と子供世帯の2つの世帯家族が共に暮らす住宅のことです。二世帯住宅は、同じ家に2世帯が暮らす形態だけではなく、家の中にそれぞれの居住スペースが確保されている家も指します。

二世帯住宅には、以下2つの種類が存在します。

  • 居住スペースを区分登記している
  • 居住スペースを区分登記していない

二世帯住宅には、一つの家の中でそれぞれの世帯の居住スペースが確保されている形態の家がありますが、居住スペースごとに区分登記をしている場合、別々の居住地となるため同居にはなりません。二世帯住宅でも同居と同じ扱いにするためには、区分登記をしないことが必須です。

また、建物の名義が故人以外の名義の場合も適用はされません。仮に共有名義で保有していた場合は、亡くなった故人が保有していた分にのみ、小規模宅地等の特例が適用されます。

上記をまとめると、二世帯住宅において特例を適用させるためには、以下の条件が必須です。

  • 区分登記をしない
  • 故人の単独名義で全体に特例を適用させる
  • 故人との共有名義で故人の分にだけ適用させる

二世帯住宅には、入口や居室も全て分ける完全分離型、一部の居住スペースを共有する部分共有型、寝室だけ分けて他は全て共有する完全同居型など様々な二世帯住宅の形式があります。区分登記さえしていなければ、完全分離型の二世帯住宅でも、小規模宅地等の特例は適用可能です。

二世帯住宅にすることで、相続税において損することがないように、住宅を建てる前に二世帯で確認しておきましょう。

小規模宅地等の特例が適用されない同居とは?

 小規模宅地等の特例における同居の中には、同居とみなされない同居もあります。同居だと本人達が思っていても、法律上認められていないこともあるため、確認しましょう。

相続税の負担がかかるのは、残された遺族です。特例を適用するためには、どうすれば良いのか、あらかじめ特例が適用されない同居の条件について確認しておきましょう。

介護のための一時的な同居

故人の介護のために、一時的に同居していたとしても、それは同居とはみなされません。しかし、生活拠点を故人が生活していた住宅に移して介護をしていたのであれば、同居とみなされます。つまり、生活拠点が同じであるのかが同居を認めるためには必要な条件であり、住む場所がある状況での介護は、同居とはみなされません。

一方、生活拠点を移しさえすれば、数か月程度の同居だとしても、同居とみなされます。同居を何年していたかなど、同居の期間は小規模宅地等の特例を適用させるためには必要ありません。そのため、短い間だとしても生活拠点を移しさえしていれば、小規模宅地等の特例を適用することが可能です。

同じ土地で別々に暮らす

同じ土地に、2棟の家を建てて別々に暮らしていた場合も、同居とはみなされません。これは、二世帯住宅において区分登記されているのと同じであり、居住スペースを明確に分けることになるからです。別々の家を建てるということは、登記上も別々になります。登記上、住んでいる場所は異なることになるため、同居にはなりません。

住民票はあるが暮らしていない

住民票は実家だとしても、自分の生活拠点が異なる場所にある場合は、同居ではありません。住民票が同じであるという理由が、生計を同一にしていることを証明できるわけではないからです。生計を同一にするということは、家賃や光熱費なども同一にしているということを指しており、共に生活しているかどうかが重要です。

住民票が実家にあるだけで共に暮らしていない場合、生活を共にしていません。そのため、同居とみなすことは不可能です。

同居していなくても小規模宅地等の特例が適用される例

故人と同居していなくとも、以下の条件の場合、小規模宅地等の特例が適用されることもあります。

  • 持ち家のない親族が、亡くなった人が一人で暮らしていた家を相続する場合

この場合を、家なき子の特例と言います。家なき子の特例が適用されるのは、以下の条件が満たされる場合です。

  • 被相続人に配偶者も同居している親族もいない
  • 宅地を相続した親族は、相続開始前の3年以内に、自身または自身の配偶者、3親等以内の親族、特別な関係がある法人などが所有している持ち家に住んだことがない
  • 相続した宅地を相続税の申告期限まで所有する
  • 相続開始時に居住している家を過去に所有したことがない

まず、家なき子の特例が適用されるためには、被相続人が独身、もしくは死別により家で同居している人が誰もいないことが必須です。さらに、相続発生時に、相続する人が持ち家に住んでいないことも条件となります。

持ち家とは、自分名義のものだけではなく、配偶者や3親等以内の親族などが所有する家も含まれます。3親等には、義理の両親や義理の祖父母も含まれるため注意してください。

また、相続税申告期限まで保有し続ける理由は、相続した家をすぐに売却することを防止するためです。小規模宅地等の特例とは、相続税の負担を減らすための制度のため、すぐに売却するのはルール違反ともいえるでしょう。

しかし、売却しなければ良いため、住み続ける必要はありません。

家なき子の特例を利用すれば、同居していなくとも小規模宅地等の特例が適用される可能性があります。しかし、適用させるためには必須の条件があるため、確認しておきましょう。配偶者がいない方は、事前に条件を確認し、引き継がせたい方を決めておくのも大切です。

まとめ

小規模宅地等の特例が適用されると、相続する土地や家の評価額を8割も減額することが可能です。相続税を大幅に減少することができるため、小規模宅地等の特例はできる限り利用するべきでしょう。しかし、小規模宅地等の特例を適用させるためには、被相続人と同居していたという事実が必要になります。

同居には、同居とみなされるものと、みなされないものがあるため、自分自身は故人と同居していたと断言できるのか確認することが大切です。

小規模宅地等の特例における同居とは、以下の通りです。

  • 故人と生活を共にしていた親族

一方、以下の場合でも同居とみなすことができます。

  • 単身赴任
  • 同居人が老人ホームへ入居
  • 区分登記をしていない二世帯住宅

同居であるとみなされるためには、細かい条件を満たす必要があります。仮に、本当に同居していたのか検査が入った場合は、水道や光熱費など細かい部分も調べられる可能性も高いです。自分が、被相続人との同居の条件を満たしているのか不安に感じる場合は、専門家に相談してみましょう。

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監修者

竹内 英雄

竹内 英雄 小谷野税理士法人 税理士 中小企業診断士

85年大手銀行入行、2016年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。【講演実績】公益財団法人不動産流通推進センター、株式会社きんざい、他多数の講演実績【メッセージ】相続の手続きは専門性が高い分野ですが、私の銀行員経験、多数の講演経験を活かして、難しいことを易しく丁寧に説明します。初めての経験であっても気軽に、安心して相談して下さい。