【税理士監修】除籍謄本とは?戸籍謄本等との違いや取得方法、注意点などを解説
更新日:2023.9.8
除籍謄本とは、その戸籍に誰もいないことを証明するための書類です。相続手続きにおいて必要となるケースが多くあります。
除籍謄本は戸籍のあった自治体に申請すれば取得できます。しかし、除籍謄本の取得手続きは複雑になりやすく注意点も多いため、専門家に取得の代行を依頼するのが安心です。
当記事では除籍謄本について、似た書類との違いや取得方法、注意点などを解説します。
目次
除籍謄本とは
除籍謄本とは、該当の戸籍から人が全員いなくなった事実を証明する書類です。謄本とは原本の内容をそのまま写した書類を意味します。
なお、除籍謄本は戸籍の情報を戸籍簿として紙で保管している場合の呼び方です。戸籍の保管方法が電子化されている自治体の場合、戸籍情報を写した資料は全部事項証明書と呼ばれ、除籍謄本の正式名称も除籍全部事項証明書となります。ただし、除籍謄本という呼び方でも問題なく通じます。そのうえ、役所の窓口を含め、除籍謄本という呼び方のほうを用いるケースが多いです。本記事でも、以降の文章では除籍謄本という呼び方に統一しています。
除籍謄本の保管期限は、除籍の翌年から150年です。
除籍となるケースの例
これまで入っていた戸籍から抜けることを除籍と呼び、該当の戸籍から全員が除籍された状態を証明する書類が除籍謄本です。除籍となるケースとして、主に以下の例が挙げられます。
- 婚姻:結婚すると夫・妻ともに親の戸籍から抜け、夫婦で新しく戸籍を作ります。
- 離婚:離婚すると、結婚前の戸籍に戻る、もしくは新しい戸籍を作ります。
- 養子縁組:養子縁組をした場合、養子が養親の現在の戸籍に入る、もしくは養子・養親で新たな戸籍を作るのが一般的です。前者の場合は養子が現在の戸籍から除籍、後者の場合は養子・養親ともに除籍となります。
- 分籍:戸籍の筆頭者およびその配偶者以外で戸籍に在籍している成人が、戸籍から抜けて新たな戸籍を作ることを分籍といいます。
- 転籍:本籍を別の自治体に移す行為です。もとの自治体にあった戸籍からは除籍扱いとなります。
- 失踪宣告:生死不明の者を法律上は死亡したものと扱う制度です。家庭裁判所に申し立てを行い、失踪宣告が出されれば死亡扱いとなるため、戸籍からも抜けます
- 未婚の子が出産:未婚の子が出産した場合、それまで在籍していた親の戸籍から抜け、生まれた子供と新しい戸籍を作るケースがあります。
- 死亡:戸籍に登録されるのは生きている人の身分のみです。そのため死亡した場合、除籍扱いとなります。
除籍謄本が必要になる場面
続いて除籍謄本が必要になる場面です。一般的に、除籍謄本が必要な場面の多くは、相続手続きに関係します。具体的な例は以下のとおりです。
- 相続人調査や相続税申告など:相続人を確定するため、亡くなった被相続人の除籍。謄本をすべて集める必要があります
- 被相続人の銀行預金の相続:金融機関は被相続人の死亡が確認できる書類として、除籍謄本を必要書類として定めているケースが多いです。なお、遺言書の有無によって、必要書類の数や種類が異なります。
- 被相続人の保険金の相続:被相続人が加入していた生命保険会社に保険金を請求する際も、除籍謄本が必要です。保険金の受取人の指定有無によって必要書類に違いがあります。
- 不動産の名義変更(相続登記):不動産の名義変更では、除籍謄本を含め、被相続人の出生から死亡まですべての戸籍謄本が必要です。
- 自動車・株の名義変更:被相続人の死亡がわかる書類として、死亡の事実が記載された戸籍謄本または除籍謄本が必要です。
ほぼすべての相続手続きにおいて、除籍謄本が必要といえます。
戸籍謄本・戸籍抄本との違い
除籍謄本と似た書類として、戸籍謄本と戸籍抄本が挙げられます。それぞれの意味および除籍謄本との違いは以下のとおりです。
- 戸籍謄本:戸籍にいる全員が記載された書類です。戸籍に存命の人が一人でもいる場合、除籍謄本ではなく戸籍謄本になります。除籍謄本は該当の戸籍からすべての人が抜けた事実を証明する書類であるため、生きている人の有無が大きな違いです。
- 戸籍抄本:戸籍にいる一部の人だけが記載された書類です。抄本とは、戸籍に記載されている一部の人についての証明を意味します。一部の人の除籍のみを証明した書類は、除籍抄本と呼ばれます。
一般的に、相続手続きで必要となるのは、戸籍に在籍する(在籍していた)すべての人の情報が記載された書類である戸籍謄本です。
除籍謄本の取得方法
除籍謄本の取得方法は、窓口で申請する方法と郵送で請求する方法の2種類です。2種類の取得方法について、それぞれ詳しく解説します。
窓口で申請する
まずは窓口で申請する方法です。本籍地のある自治体の役所へ行き、窓口で手続きを行います。以下のいずれかに該当する人が申請できます。
- 配偶者
- 両親・祖父母(直系尊属)
- 子供・孫(直系卑属)
上記以外の第三者が申請する場合、代理人の身分証明書と委任状が必要です。戸籍謄本を請求する理由の詳しい説明も必要となります。
窓口での申請で必要な書類は以下のとおりです。
- 除籍謄本の請求用紙(当日役所で記載する、もしくは事前にダウンロードする)
- 窓口へ来た人の本人確認書類
- 戸籍謄本など親族関係を証明できる書類 代理人が申請する場合は委任状
- 手数料750円
窓口で申請する大きなメリットは、除籍謄本を申請したその日のうちに受け取れる点です。手続きをスピーディーに進められます。一方で、開庁時間内に出向く必要がある、遠方の場合は行くのが難しい点がデメリットとなります。
郵送で請求する
続いて郵送で請求する方法を紹介します。本籍地のある役所に郵送で申請して取り寄せます。
申請できる人の条件は、窓口で申請する場合と同様です。以下の必要書類を本籍地のある役所に郵送します。
- 除籍謄本の請求用紙
- 申請する人の住所が記載された本人確認書類の写し
- 戸籍謄本など親族関係を証明できる書類 代理人が申請する場合は委任状
- 返信用封筒
- 手数料750円(定額小為替又は現金書留で支払う)
窓口申請との大きな違いとして、返信用封筒が必要な点と、手数料の支払い方の2点が挙げられます。
郵送での請求は、遠方でも負担を最小限にできる点が大きなメリットです。開庁時間の心配も必要ありません。デメリットとして、申請から手元に届くまでに時間がかかる点が挙げられます。また、書類に不備があった場合など、再度手続きを行う際の手間が大きくなりがちです。
除籍謄本を請求する際の注意点
除籍謄本を請求する際の注意点として、以下の3つが挙げられます。
- 出生から死亡までの登録内容が途切れていないか確認する
- 亡くなった直後は取得できない可能性が高い
- 除籍謄本の有効期限の有無を確認する
注意点について、それぞれ詳しい内容と対策のために押さえたいポイントを解説します。
出生から死亡までの登録内容が途切れていないか確認する
除籍謄本を含め、戸籍関係の書類を集める際は、被相続人の出生から死亡まで途切れなくすべての書類を取得しているか入念な確認が必要です。
相続手続きを進めるためには、法定相続人を確定する必要があります。除籍謄本や戸籍謄本などの書類に一通でも不足がある場合、法定相続人に漏れや誤りが生じる恐れがあるため、相続手続きを実施できません。
また、除籍謄本が必要な場面の例として、被相続人の銀行預金の相続を挙げました。その際に、遺言書の有無によって必要書類の数や種類が異なると解説しています。
遺言書がある場合、被相続人の戸籍に関する資料としては、死亡が確認できる戸籍謄本等ひとつで問題ないケースが多いです。一方で、遺言書がない場合、被相続人の出生から死亡まですべての戸籍謄本類が求められます。
生命保険金の受け取りについても同様です。受取人の指定があれば、戸籍関係の書類は除籍謄本ひとつで済みます。受取人の指定がない場合、出生から死亡までの戸籍謄本類が必要です。このように、相続手続きに際して、すべての戸籍謄本・除籍謄本の用意が必要な場面は少なくありません。
連続性の途切れに気づかず手続きを進めてしまうと、書類不足が発覚した際に、大きな手間やトラブルになる恐れがあります。戸籍謄本・除籍謄本を取得する際は、必ず日付の連続性を確認し、一切の漏れなく書類を集めることが大切です。
亡くなった直後は取得できない可能性が高い
除籍謄本は、亡くなった直後は取得できない可能性が高いです。
一般的に、死亡届を役所に提出してから戸籍に死亡による除籍と記載されるまで、1週間から10日ほどかかります。そのため、亡くなってすぐに除籍謄本を申請しても、まだ取得できないという事態が起こりやすいです。
相続手続きは複雑で時間がかかるため、必要な書類は早めの取得が推奨されています。しかし、亡くなった直後は除籍の情報が反映されておらず、除籍謄本を取得できない恐れがあります。
除籍謄本の取得申請は、死亡届を提出してから10日ほど経過してから行うのが確実です。
除籍謄本の有効期限の有無を確認する
除籍謄本の提出先によっては有効期限を設けている場合があります。そのため、除籍謄本の提出先ごとに、有効期限の有無の確認が必要です。
有効期限外の除籍謄本が使えない場合、改めて取得する必要性が生じるため二度手間になります。申請手続きを一度で済ませられるよう、有効期限に合わせて取得申請を行うのが安心です。
なお、除籍謄本の有効期限がある提出先の例として金融機関が挙げられます。金融機関によって有効期限の有無および長さが異なるため、事前に提出先の金融機関ごとに確認が必要です。
法務局・税務署・裁判所などは、原則として除籍謄本の有効期限は設定されていません。ただし、ルールが変化する可能性はゼロではないため、手続きを行う際に確認する必要があります。
除籍謄本の取得は専門家に依頼するのが安心
除籍謄本は配偶者や親族だけではなく、第三者である代理人による申請も可能です。自身や関係者が除籍謄本の取得を行うのではなく、専門家に依頼するという選択肢も存在します。
除籍謄本を専門家に依頼する大きなメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 取得の手間がかからない:役所の窓口へ行く・郵送準備をするなどの手間がかかりません。
- 必要な書類を漏れなく確実に取得できる:相続手続きでは出生から死亡まですべての除籍謄本・戸籍謄本が必要です。専門家に取得を依頼すれば、連続性の途切れを起こすことなく、必要書類を漏れなく取得できます。
- 記載内容を正確に読み解いてもらえる:書類が古いものだと、旧字体が使われている・毛筆で書かれているなど、読み方がわからない恐れがあります。除籍謄本の読み方に精通した専門家であれば、記載内容を正確に読み解いてもらえるため安心です。
- 相続に関するほかの手続きやサポートも依頼可能:相続手続きに強い専門家であれば、除籍謄本の取得に限らず、ほかの手続きやサポートの依頼も可能です。
まとめ
除籍謄本は該当の戸籍から人が全員いなくなった事実を証明します。銀行預金や不動産など、さまざまな相続手続きで必要な書類です。
除籍謄本は、役所の窓口で直接申請する方法と、郵送で請求する方法の2種類があります。申請できるのは原則として配偶者または直系親族・直系卑属ですが、委任状を用意すれば第三者による申請も可能です。
除籍謄本の取得にはさまざまな注意点があるうえ、申請手続きも複雑で手間がかかります。専門家に依頼すれば、自身の手間を最小限に抑えながらも、必要な除籍謄本を確実に取得できて安心です。
除籍謄本の取得以外にも、相続関連の手続きは複雑で難しいものが多く存在します。自身で無理に対応しようとせず、ぜひ専門家である税理士にご相談ください。
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監修者
小谷野 幹雄 小谷野税理士法人 代表社員税理士 公認会計士
84年早稲田大学在学中に公認会計士2次試験合格、85年大手証券会社入社、93年ニューヨーク大学経営大学院(NYU)でMBAを取得し、96年小谷野公認会計士事務所を開業。2017年小谷野税理士法人を設立、代表パートナー就任。FP技能検定委員、日本証券アナリスト協会、プライペートバンキング資格試験委員就任。複数のプライム市場上場会社の役員をはじめ、各種公益法人の役員等、社会貢献分野でも活躍。