申告書等閲覧サービスとは、納税者が過去に提出した申告書や税務関連書類を閲覧できるサービスです。納税者本人や相続人、一定の要件を満たす代理人が利用できます。今回は申告書等閲覧サービスの利用方法や、申告書等閲覧サービスを利用する場面の具体例などを詳しく解説します。
目次
申告書等閲覧サービスとは
申告書等閲覧サービスは、過去の申告書や税務関連書類を閲覧できるサービスです。納税者本人のほか、相続人や一定の要件を満たす代理人が利用できます。
サービスを利用できるのは、申告書等を作成するために過去に提出した申告書等の内容を確認する必要があると認められる場合のみです。それ以外の目的では利用できません。
国税庁の案内では申告書等閲覧サービスを利用できない目的の例として「第三者からの申告内容の問合せに対する回答」が挙げられています。
申告書等閲覧サービスを利用できる人
申告書等閲覧サービスを利用できる人は、閲覧する申告書等の提出者が生存している個人か否かで異なります。生存している個人の場合と死亡した個人の場合それぞれについて解説します。
生存している個人の場合
閲覧する申告書等が生存している個人のものである場合、申告書等閲覧サービスを利用できる人は以下の通りです。
- 納税者本人
- 代理人:代理人の範囲は以下の通りです。
- 未成年者または成年被後見人の法定代理人
- 配偶者
- 4親等以内の親族
- 納税管理人
- 税理士、弁護士、行政書士等の専門家
死亡した個人の場合
相続税申告に際して申告書等閲覧サービスを利用するケースもあります。死亡した個人に関する申告書等閲覧サービスを利用できる人は以下の通りです。
- 相続人
- 代理人:代理人の範囲は前項「生存している個人の場合」で紹介した内容と同様です。
申告書等閲覧サービスの閲覧申請に必要なもの
申告書等の閲覧申請時に必要な書類は、サービスを利用する人によって異なります。以下で利用者のパターン別に必要書類を解説します。
本人が申請をする場合
申告書等閲覧サービスを利用するのが本人の場合、必要な書類は以下の2つです。
1.申告書等閲覧申請書
国税庁の公式サイトもしくは税務署の窓口で入手できます。
2.本人確認書類
本人確認書類として認められる書類の例は以下の通りです。
- 運転免許証
- 健康保険等の被保険者証
- 個人番号カード(マイナンバーカード)
- 住民基本台帳カード
- 在留カード
- 特別永住者証明書
相続人が申請をする場合
相続人が閲覧申請をする場合、以下の書類が必要です。
- 申告書等閲覧申請書
- 本人確認書類
- 相続人全員を明らかにする戸籍謄本(または戸籍沙本)、もしくは法定相続情報一覧図の写し
- 相続人が複数いる場合、閲覧申請者以外の相続人全員の実印を押印した委任状及び印鑑登録証明書の原本
※3と4は申請日前30日以内に発行されたものに限ります。
代理人が申請をする場合
申告書閲覧サービスを利用するのが代理人の場合、代理人の区分によって必要書類が異なります。そのうち共通して必要となるのは以下の3点です。
- 申告書等閲覧申請書
- 代理人本人であることを証明する書類(代理人の本人確認書類)
- 委任状 ※未成年者又は成年被後見人の法定代理人の場合は不要
その他の必要書類は以下の画像をご確認ください。
申告書等閲覧サービスを利用する流れ
申告書等閲覧サービスを利用する流れは大きく4つのステップに分けられます。各ステップについて詳しく解説します。
ステップ1:事前準備
まずは事前準備として必要書類の用意が必要です。前章で紹介したように閲覧申請をする人によって必要書類が異なるため、必ず自身のケースにおける必要書類を確認しましょう。
ステップ2:申請書の提出
書類が揃ったら税務署に申請書と必要書類を提出します。
なお閲覧申請は税務署の窓口でのみ受け付けています。電子申請や郵送での申請はできない点にご注意ください。
ステップ3:閲覧サービスの利用
提出書類の確認や事務処理の完了後、閲覧サービスの利用が可能になります。原則として申請した日に閲覧ができますが、以下のような理由から閲覧できるのが後日になるケースもあります。
- 対象の申告書や税務関連書類が税務署以外で保管されている
- 何らかの理由により事務処理(マスキング)に時間がかかる
ステップ4:必要な情報の取得
申告書や税務関連書類を閲覧し、必要な情報の取得をしましょう。
申告書等閲覧サービスの利用時にコピーの取得はできません。情報を記録する方法は原則として書き写しですが、デジタルカメラやスマートフォンでの撮影も認められています。ただし書類を撮影する際は以下の5点に注意が必要です。
- 申請書の「写真撮影の希望」欄にチェックを入れる必要がある
- 撮影に使用できるのはデジタルカメラやスマートフォン等、写真をその場で撮影できる機器のみ
- 動画の撮影は不可
- 撮影した写真は税務署の担当者がその場で確認する。対象書類以外が写り込んでいた場合は該当の写真の消去を指示される。
- 個人情報や収受日付印は隠した状態での撮影となる。これらの情報を記録する場合は書き写しをする必要がある。
申告書等閲覧サービスが必要な場面の例
申告書等閲覧サービスを利用する場面の代表例が相続税申告書の作成時です。正確には相続税に関する一部の制度を用いる場合に、申告書等閲覧サービスを利用する必要があります。
相続税申告を誤ってしまうと税務調査で指摘を受け、追徴課税の対象になる恐れがあるためご注意ください。相続税の税務調査については以下の記事で解説しています。
関連記事:相続税の税務調査の時期はいつ?調査期間・範囲や調査が来るのが多いタイミングを解説!
相次相続控除
相次相続控除とは相続発生後10年以内に2回目の相続が発生した場合に、今回(2回目)の相続税から前回支払った相続税の一部を控除できる制度です。1回目の相続を一次相続、2回目の相続を二次相続といいます。
例えば祖父が亡くなり、当時相続人であった父が相続税を支払ったとします。その後10年以内に父が亡くなった場合、相続人である子供は相次相続控除の適用を受けられる可能性が高いです。
しかし、今回(二次相続)の相続人である子供は一次相続には関わっていないため、一次相続において父がいくら相続税を支払ったか知りません。一次相続の相続税申告書の控えがあれば確認できますが、保管の有無や保管場所を知らないケースも多いでしょう。
相次相続控除による控除額を計算するには、前回の相続に関する相続税の情報が必要です。しかし二次相続の相続人は一次相続の内容を知らないことが多いです。したがって、相次相続控除の適用を受けるために、申告書等閲覧サービスを利用するケースが多くみられます。
障害者控除・未成年者控除
障害者控除・未成年者控除は、いずれも相続税額から一定額を控除できる制度です。それぞれの控除額は原則として以下の方法で計算します。
- 障害者控除:相続人である障害者が満85歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額
※特別障害者の場合は1年につき20万円 - 未成年者控除:相続人である未成年者が満18歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額
※いずれも1年未満の期間があるときは切り上げて1年とする
ただし、障害者控除・未成年者控除を過去の相続税申告で適用していた場合、控除額の計算時に過去の分を差し引く必要があります。過去に適用した障害者控除・未成年者控除の額を確認するために、申告書等閲覧サービスを利用するケースも多いです。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与をする際に選択できる贈与税の制度です。
相続時精算課税制度を適用した場合、対象の贈与者から受ける贈与について累計2,500万円までは贈与税が非課税となります。ただし贈与者が亡くなった後に、贈与財産の価額と相続等により取得した財産の価額を合計し、その金額を基に相続税を計算する必要があります。
「相続時精算課税制度が適用されていたかわからない」「贈与財産の価額がわからない」等の場合、申告書等閲覧サービスの利用が必要です。
まとめ
申告書等閲覧サービスは、過去に提出した税務申告書や税務関連書類を閲覧できるサービスです。生存している個人の場合は納税者本人および代理人、死亡している個人の場合は相続人および代理人が利用できます。
申告書等閲覧サービスは事前準備が必要なほか、閲覧時に押さえるべき注意点も存在します。サービスを利用し必要な情報を確実にチェックできるよう、申告書等閲覧サービスの注意点等を事前に押さえておきましょう。
「サービスを利用するべきか判断できない」「制度のルールについて疑問や不安がある」等のお悩みがあれば、ぜひ税理士へご相談ください。